地域初、患者に優しいチタンの切削加工技術獲得による冠製造

京都府の従業員3人の歯科技工所が、ものづくり補助金でチタン冠の切削加工技術を習得し、患者に優しい冠を製作できるようになった事例です。

株式会社Spica

この事例のポイント

  • 高硬度のチタンを切削加工する技術と体制が当社にはなく、取引先の要望に応えられませんでした。
  • 高硬度のチタンを切削できる加工機として、ジオメディ社製のジオミルアルム 5X-200を導入しました。
  • 切削加工によるチタン冠の製作体制を構築し、近隣の歯科技工所に先駆けてチタン冠を提供できるようになりました。

事業者のプロフィール

事業者名株式会社Spica
所在地京都府 京都市右京区
業種その他のサービス業
技術分野精密加工
従業員数3人
資本金1万円
設立2016年

事業の背景

当社は2008年に歯科技工所の個人ラボとして創業し、2023年に西大路五条近くへ移転しました。CAD/CAM冠やジルコニア冠などの歯科補綴物を製作し、近隣の歯科医院等に提供しています。

2023年度の再製作数は年間2千本のうち50本となっています。国内では金属アレルギーの患者が急増しており、銀歯に多く使われるパラジウムはアレルギー反応を引き起こすうえ非常に高価です。

チタン冠が保険適用となったことをきっかけに、取引先からも製造の要望を受けるようになりました。

課題と取り組み

抱えていた課題

  • 新製品・新技術高硬度のチタンを切削加工する技術と体制が当社にはなく、取引先の要望に応えられませんでした。
  • 品質・精度チタンは硬く加工が難しいため寸法精度が低くなりやすく、噛み合わせの調整や磨き上げが十分にできないと、噛み合わせる側の歯に負担がかかり患者様が不快に感じてしまいます。
  • 納期・工程歯科医院から切削技術によるチタン冠を6営業日以内に納品するよう要望を受けていました。
  • 新製品・新技術アレルギーリスクが低く価格も安いチタン冠を、パラジウムの代替として提供する必要がありました。

やったこと

高硬度のチタンを切削できる加工機として、ジオメディ社製のジオミルアルム 5X-200を導入しました。石膏模型をスキャンするため、デンケン・ハイデンタ社製の3Dデンタルスキャナー フリーダム HDを導入しました。

両社から操作方法の研修を受け、スキャナーおよびチタン冠の切削加工操作技術の習得に取り組みました。切削加工の条件設定を繰り返し検証した結果、CAD/CAM冠の寸法と同程度の±1µm以内の精度で、上顎・下顎とも目標時間内に製作できるようになりました。

新しい製品・サービス:切削加工による純チタン2種冠(チタン冠)

補助金で入れた設備

経費の区分は「機械装置・システム構築費」です。

事業の効果

切削加工によるチタン冠の製作体制を構築し、近隣の歯科技工所に先駆けてチタン冠を提供できるようになりました。他社が約1万円前後の技工料であるのに対し、当社は6,400円に設定し、価格面でも優位性を発揮しています。

チタン冠とプラスチック・セラミックを材料とするCAD/CAM冠の両方を切削できるため、歯科補綴物の製作において生産性の向上を図ることができました。また、石膏材料費の削減や配送時間の短縮にもつながる見込みです。

出た効果の種類(押すと同じ効果の事例へ)

審査の観点ごとの評価

新事業進出・ものづくり補助金

観点の平均3.2 / 514観点のうち13観点で評価

この事例が強かった観点

  • 4
    強み・弱みを踏まえた優位性他社約1万円に対し当社は6,400円を設定し、±1µm以内の精度や6営業日内納品を実現しており、強みを活かした優位性が明確。
  • 4
    課題の認識と解決アレルギーリスクや高価なパラジウムという課題を認識し、チタン切削で精度と価格を両立させる実効性の高い計画となっている。
  • 4
    付加価値・賃上げの目標目標精度±5µm、上顎・下顎とも1時間前後の切削加工時間を設定し、検証データも示されている。

もう一歩だった観点

  • 2
    成長分野への進出デジタル技術の活用は触れられているが、日本経済の構造転換への寄与を示す記述は薄い。
経営戦略との整合性3.7
  • これまでの取組との一貫性3

    創業来のデジタル技術活用とCAD/CAM冠の既存事業に沿い、取引先要望を受けてチタン冠の切削加工を始める流れで一貫性がある。

  • 強み・弱みを踏まえた優位性4

    他社約1万円に対し当社は6,400円を設定し、±1µm以内の精度や6営業日内納品を実現しており、強みを活かした優位性が明確。

  • 課題の認識と解決4

    アレルギーリスクや高価なパラジウムという課題を認識し、チタン切削で精度と価格を両立させる実効性の高い計画となっている。

事業の実現可能性3.4
  • 付加価値・賃上げの目標4

    目標精度±5µm、上顎・下顎とも1時間前後の切削加工時間を設定し、検証データも示されている。

  • 事業を進める体制3

    社員自らが納品に伺う体制や、機器メーカーからの研修を受けて操作技術を習得する取組が書かれている。

  • 顧客とニーズの裏付け4

    歯科医院からの取引先要望やチタン冠の保険適用を背景に、低価格・短納期・精度という選ばれる理由が整理されている。

  • 事業化までの道筋3

    精度とタイムの目標を検証しながら加工条件を繰り返し設定し、今後の遠隔データ活用による製作体制構築の方向性も示している。

  • 財務と資金の調達3

    財務の状況は公開されている事例には出ないため、中間の3としています。

新市場性・高付加価値性4.0
  • 新しさ・高付加価値4

    国内で切削によるチタン冠製作を目指す技工所は少なく、他社が約10µm精度を目標とする中で±1µmの高水準を目指している。

公的補助の必要性3.0
  • 波及効果・雇用3

    金属アレルギー患者の急増という社会課題に対応し、アレルギーリスクの低いチタン冠を普及させる公益性がある。

  • 費用対効果ー

    公開情報では判断できません。

  • イノベーションへの貢献3

    3Dスキャナーや切削加工機を用い、クラウドで口腔内データを共有しリアルタイムに製作する仕組みを構築しようとしている。

政策面2.0
  • 成長分野への進出2

    デジタル技術の活用は触れられているが、日本経済の構造転換への寄与を示す記述は薄い。

  • 地域経済への波及2

    京都の歯科技工所として近隣医院に供給する地域性は見えるが、地域経済や雇用の牽引を示す記述は薄い。

今後の展望

口腔内および顔貌をスキャンしたデータをクラウドから取得し、補綴物を当社でリアルタイムに製作できる体制を構築します。歯科医院と患者様の歯の情報を精密かつリアルタイムに共有し、理想的な補綴物の製作を目指します。

今後も歯科技工士が活き活きと働ける職場づくりを進めます。

同じ業種・悩みの採択事例

出典・注記
  • 出典:公式の事例集(令和元年度、全国中小企業団体中央会)。事例集の再利用は中央会の許可を得ています。
  • 課題・取り組み・設備・効果・展望は、事例集の本文からAIで項目に分けて短くまとめたものです。数字は事例集に書かれているものだけを載せ、時間の単位などをそろえています。原文のまま載せているのは事業者の声だけです。
  • 審査の観点:公募要領 p.44(審査項目)
  • 代表者名・電話番号・番地は載せていません。法人の形が名前にない事業者は名前を出していません。