ものづくり補助金平成25年度製造業宮城県

高塗着効率塗装ヘッドの開発

加美電子工業株式会社

成果塗装距離 150mm→30mm

この事例のポイント

  • 有機溶剤を使わない水系塗装専用工場を導入するなど以前からVOC削減に取り組んできたが、コストの負担が大きいことが課題だった。
  • 約50μmの穴から吐出した液体を外部振動エネルギーで液滴化する「振動による液滴吐出ヘッド」を試作した。
  • 塗装距離 150mm→30mm。振動による液滴吐出ヘッドでは、塗装距離を従来のスプレーの150mmから30mmまで近づけられ、オーバーミストを減らせる…

事業者のプロフィール

事業者名加美電子工業株式会社
所在地宮城県 加美郡加美町
業種プラスチック製品製造業
技術分野精密加工,表面処理
従業員数110人
資本金4,800万円
設立1970年

事業の背景

近年、大気汚染の原因物質であるVOC(揮発性有機化合物)が問題視されている。塗料を薄める有機溶剤を多量に使う塗装業界はVOC総排出量の3割を占めるとされ、業界全体で削減に取り組んでいる。同社は水系塗装工場の導入などで早くからVOC削減に努めてきたが、コスト面の負担が課題となっていた。そこで有機溶剤の代わりに超臨界状態のCO2で希釈する技術に平成18年から取り組み、世界で初めて超臨界CO2塗装技術を完成させた。

課題と取り組み

抱えていた課題

  • コスト・採算有機溶剤を使わない水系塗装専用工場を導入するなど以前からVOC削減に取り組んできたが、コストの負担が大きいことが課題だった。
  • 新製品・新技術有機溶剤の代わりに超臨界CO2を使う塗装技術の開発は一気には進まず、塗装ヘッドの高効率化が必要だった。

やったこと

約50μmの穴から吐出した液体を外部振動エネルギーで液滴化する「振動による液滴吐出ヘッド」を試作した。また、固定円板部にφ300μm、その円周にφ100μmの吐出穴を設け、回転中に穴の位置が合ったところで液滴化させる「回転スリット板による液滴吐出ヘッド」を試作した。これら独自に開発した試作ヘッドの実証試験を繰り返し、最終的には超臨界状態で高圧吐出を試験した。その結果を踏まえ、最適な方式を選定して完成を目指した。

新しい製品・サービス:高塗着効率塗装ヘッド(振動による液滴吐出ヘッド、回転スリット板による液滴吐出ヘッド)

事業の効果

  • 塗装距離 150mm→30mm

振動による液滴吐出ヘッドでは、塗装距離を従来のスプレーの150mmから30mmまで近づけられ、オーバーミストを減らせることを確認した。これにより塗着効率の大幅な改善につながることが分かった。一方、液滴化できているのは吐出圧力1MPa程度までで、最終目標の8MPa程度の高圧条件下では改善が必要という結果となった。回転スリット板によるヘッドは液滴吐出は確認できたが、高圧高回転下で可動部から液体が漏れないようシールすることに難航した。

審査の観点ごとの評価

いま募集している新事業進出・ものづくり補助金の公募要領にある審査の観点14つで見ています

観点の平均2.7 / 5

出典:公募要領 p.44(審査項目)

経営戦略との整合性60%
  • これまでの取組との一貫性3

    平成18年から超臨界CO2塗装技術を開発し、世界初の完成に至った経緯が書かれ、過去の取組との一貫性がうかがえる。

  • 強み・弱みを踏まえた優位性3

    VOC削減への規制強化や取引先の指定に触れ、独自開発の試作ヘッドや既存商品「加美グリーンE・CO50」など強みも示される。

  • 課題の認識と解決3

    有機溶剤のコスト負担という課題が示され、新ヘッドで環境負荷とコストを低減する方向性が書かれている。数値目標は乏しい。

事業の実現可能性44%
  • 付加価値・賃上げの目標2

    塗装距離150mmから30mmへの改善や吐出圧力1MPa程度といった数値はあるが、付加価値や賃上げの目標値は書かれていない。

  • 事業を進める体制2

    試作ヘッドの実証試験や補助事業の活用は書かれるが、人材や事務体制についての記述はない。

  • 顧客とニーズの裏付け3

    小物部品へ高効率で塗装できる点や、VOC削減とコスト低減という顧客価値が書かれている。

  • 事業化までの道筋3

    回転スリット板ではシール課題が難航し、振動方式を先行させ平成28年度中の完成を目指すと課題対応が示されている。

  • 財務と資金の調達1

    公開されている事例からは読み取れません。

新市場性・高付加価値性80%
  • 新しさ・高付加価値4

    世界初の超臨界CO2塗装技術で、従来の有機溶剤塗装から大幅な排出量削減を実現するという高付加価値の位置づけが示される。

公的補助の必要性53%
  • 波及効果・雇用3

    VOC削減という業界全体の課題や地元雇用への貢献、グローバル展開の期待が書かれている。

  • 費用対効果3

    排出量3分の1の削減や塗料使用量の低減が書かれるが、補助金額に対する費用対効果の数値は示されていない。

  • イノベーションへの貢献2

    超臨界CO2塗装は工場や発電所の排出CO2を利用する環境技術として書かれるが、デジタル技術やサプライチェーンへの言及は薄い。

政策面60%
  • 成長分野への進出3

    VOC規制強化で市場成長が見込まれる分野への進出であることが、ヨーロッパの動向とともに書かれている。

  • 地域経済への波及3

    宮城県加美町での事業立地と地元雇用への貢献が書かれ、地域の経済成長への寄与が示される。

5=数字や事実つきで具体的に読み取れる、4=具体的に読み取れる、3=読み取れるが具体性が薄い、2=わずかにうかがえる、1=公開情報からは読み取れない。公開されている事例を公募要領の観点に照らして当社が整理したもので、実際の審査の点数ではありません。

今後の展望

補助事業終了後も新しい塗装ヘッドの開発を続けており、完成すれば使用する塗料も減らせるため、さらなる環境負荷とコストの低減が実現する見込みである。VOC排出量の規制はヨーロッパではすでに強化されており、日本でも同様の動きが予想される。当社が開発した超臨界CO2塗装は従来に比べて排出量を3分の1に削減でき、グローバル展開のチャンスと期待している。

業種と困りごとが近い成果事例

出典とまとめ方
  • 出典:公式の事例集(平成25年度、全国中小企業団体中央会)。事例集の再利用は中央会の許可を得ています。
  • 課題・取り組み・設備・効果・展望は、事例集の本文から当社がAIで項目に分けて短くまとめたものです。数字は事例集に書かれているものだけを載せ、時間の単位などをそろえています。原文のまま載せているのは事業者の声だけです。
  • 代表者名・電話番号・番地は載せていません。法人の形が名前にない事業者は名前を出していません。