ものづくり補助金平成25年度情報通信業東京都

HPCクラウドコンピューティングを用いた電子機器基板等のシミュレーション環境の提供

株式会社エム・イー・エル

この事例のポイント

  • マイクロ波解析とプリント基板解析のシミュレータは高機能コンピュータが必要でソフトウェアも高価なため、普及速度が遅い。
  • 自社開発のシミュレーションソフトを改造し、HPCクラウドコンピュータ上にセットアップして、シミュレーション環境を時間単位で提供するサービスを開発した。
  • 時間単位でシミュレーション環境を利用できるようになり、高性能コンピュータやソフトを持たないユーザーもノイズ解析を手軽に行えるようになった。

事業者のプロフィール

事業者名株式会社エム・イー・エル
所在地東京都 港区
業種情報サービス業
従業員数1人
資本金1,000万円

事業の背景

電子機器製造では、基板製造において他の機器に悪影響を与えるノイズを出さず、自らもノイズに耐える製品を作ることが重要課題となっている。当社は自社開発したマイクロ波解析用とプリント基板解析用のシミュレーションソフトウェアを持つ。当社製品は主要電機・機械メーカー各社や省庁に導入されており、同業他社は世界中に数社ほどしかない。

課題と取り組み

抱えていた課題

  • 生産能力マイクロ波解析とプリント基板解析のシミュレータは高機能コンピュータが必要でソフトウェアも高価なため、普及速度が遅い。
  • コスト・採算電子回路技術者がプリント基板のノイズ解析を行うには、高性能コンピュータや高価なシミュレータへの設備投資が必要になる。
  • 生産能力従来のプリント基板は膨大な数のポリゴン図形を含むため、処理速度が課題となっていた。
  • 生産能力プリント板のノイズ解析は大型コンピュータが必要で、解析条件設定すら明確になっていなかった。

やったこと

自社開発のシミュレーションソフトを改造し、HPCクラウドコンピュータ上にセットアップして、シミュレーション環境を時間単位で提供するサービスを開発した。物理サーバー内に複数の仮想サーバーを作れるハードウェアを導入し、並列コンピューティングとクラウド上で効率よく動作するCADデータの読み込み・変換プログラムを整備した。並列計算ルーチンを高速化し、クラスタシステムライブラリーを導入して、より規模の大きい基板解析に対応した。グラフ理論を用いた図形処理ライブラリ「LEDAライブラリ」を導入して高速化と高精度化を実現し、ノイズ解析・実験基盤セットにより解析条件の確立と解析精度の検証を可能にした。これらを統合したソフトウェア「S-NAP PCB Suite」を開発し、英語版シミュレータも用意して、英語圏を含むワールドワイドでの解析環境を提供できるようにした。

その他物理サーバー(複数の仮想サーバーを作成可能なハードウェア)
ソフトクラスタシステムライブラリー
ソフトLEDAライブラリ
その他ノイズ解析・実験基盤セット

新しい製品・サービス:クラウド型シミュレーションサービス「S-NAP PCB Suite」(オシロスコープ、テスター、スイープジェネレーター、Sパラメーターの各モードとビューワ機能を持つプリント基板解析ソフト)

事業の効果

時間単位でシミュレーション環境を利用できるようになり、高性能コンピュータやソフトを持たないユーザーもノイズ解析を手軽に行えるようになった。並列計算の高速化とクラスタライブラリにより、より大規模な基板解析が可能になった。LEDAライブラリの導入で図形処理が高速化・高精度化した。テスト運用を行ったユーザーからは時間単位で利用できる利便性などから高評価を得ている。

審査の観点ごとの評価

いま募集している新事業進出・ものづくり補助金の公募要領にある審査の観点14つで見ています

観点の平均2.6 / 5

出典:公募要領 p.44(審査項目)

経営戦略との整合性67%
  • これまでの取組との一貫性3

    自社開発のマイクロ波・基板解析ソフトを活かしクラウド提供へ展開しており、既存製品との連続性は読み取れるが、経営戦略上の位置付けは具体的に書かれていない。

  • 強み・弱みを踏まえた優位性4

    特許取得の電磁界シミュレータや、世界的に同機能が無いプリント基板シミュレータ、主要電機メーカーへの導入実績など強みが具体的に示されている。

  • 課題の認識と解決3

    高機能コンピュータとソフトの高価さが普及の課題と示されており、時間単位のクラウド提供で解決を図る流れは読み取れるが、成長への定量的な見通しは薄い。

事業の実現可能性52%
  • 付加価値・賃上げの目標2

    高付加価値化や賃上げの目標値は書かれていない。1ヶ月単位の利用形態やテスト運用の評価がうかがえる程度。

  • 事業を進める体制3

    従業員1人の体制で開発を進めたことは読み取れるが、人材や事務処理体制の具体的な記述は薄い。

  • 顧客とニーズの裏付け4

    ノイズ解析の需要と、時間単位で手軽に使えるクラウド提供という顧客価値、ユーザー高評価が示されている。

  • 事業化までの道筋3

    英語版開発やサポートシステム整備など段階的な開発項目は示されているが、スケジュールや期間の記載は薄い。

  • 財務と資金の調達1

    公開されている事例からは読み取れません。

新市場性・高付加価値性80%
  • 新しさ・高付加価値4

    プリント基板ノイズ解析を含むシミュレータは同機能が世界的にないと示され、高付加価値な独自分野であることが読み取れる。

公的補助の必要性47%
  • 波及効果・雇用2

    電子機器の基板ノイズ対策という産業上の意義はうかがえるが、雇用創出や波及効果の記述はない。

  • 費用対効果1

    公開されている事例からは読み取れません。

  • イノベーションへの貢献4

    クラウド上で高性能シミュレーションを提供し、ボーダレス利用やワールドワイドでの解析環境を実現した点が示されている。

政策面30%
  • 成長分野への進出2

    クラウド運用の一般化を予想する記述があり、成長分野への進出がうかがえるが、構造転換との関連は明示されていない。

  • 地域経済への波及1

    公開されている事例からは地域特性を活かした取組は読み取れません。

5=数字や事実つきで具体的に読み取れる、4=具体的に読み取れる、3=読み取れるが具体性が薄い、2=わずかにうかがえる、1=公開情報からは読み取れない。公開されている事例を公募要領の観点に照らして当社が整理したもので、実際の審査の点数ではありません。

今後の展望

快適なサービス環境を提供できる技術的な実証は済んだが、大手メーカーはクラウド上で重要機密情報を扱うことに制約が厳しく、手軽な利用は難しい。将来はクラウド運用が一般化すると予想される。

業種と困りごとが近い成果事例

千葉県情報通信業平成25年度

障害者関連事業で商品と顧客サービスを革新する就労支援事業

障害者就労支援器具「ワークサンプル幕張版」で使う30段棚を、既存の台湾製木製棚から国産のプラスチック製棚に変更した。

効果:台湾産木製棚から国産プラスチック製棚にしたことで軽量化、高品質化、低コスト化が実現した。

出典とまとめ方
  • 出典:公式の事例集(平成25年度、全国中小企業団体中央会)。事例集の再利用は中央会の許可を得ています。
  • 課題・取り組み・設備・効果・展望は、事例集の本文から当社がAIで項目に分けて短くまとめたものです。数字は事例集に書かれているものだけを載せ、時間の単位などをそろえています。原文のまま載せているのは事業者の声だけです。
  • 代表者名・電話番号・番地は載せていません。法人の形が名前にない事業者は名前を出していません。