ものづくり補助金平成25年度卸売業、小売業愛媛県

高付加価値魚介類の提供を可能とする超効率的個別冷凍技術の最適化

この事例のポイント

  • 従来の個別冷凍は人手で1尾ずつ分断するため労力と時間を浪費し非効率である。
  • 急速冷凍に優れた液体凍結装置「リジョイスフリーザー」(処理量50kg/h)を導入し、個別冷凍品の商品化を行った。
  • 個別冷凍による製造体制が構築され、水産加工品販売部門として株式会社魚一家を立ち上げ、事業化に至った。

事業者のプロフィール

所在地愛媛県 愛南町
業種飲食料品卸売業
技術分野製造環境
従業員数16人
資本金250万円
設立1941年

事業の背景

当地は宇和海の豊富な水産資源で栄えてきたが、漁獲量の減少や魚種の変化により業者を取り巻く環境は厳しさを増していた。キビナゴなどの小型魚介類は数十〜数百尾をまとめて冷凍するのが基本で、1尾ずつ個別冷凍すると非常に高値で取引される。ブロック凍結による市場取引ではキビナゴで200円/kg前後が相場だが、個別冷凍による加工出荷では600〜800円/kgで受け入れられる市場がある。

課題と取り組み

抱えていた課題

  • 生産能力従来の個別冷凍は人手で1尾ずつ分断するため労力と時間を浪費し非効率である。
  • 品質・精度急速冷凍に用いられるブライン冷凍は事後的に個別化できず、真空パック封入の状態で個別冷凍を実現することが課題であった。
  • 新製品・新技術既存の個別冷凍技術は凍結速度が遅く、急速冷凍のブライン凍結に比べ品質の低下を避けられなかった。
  • 販路・情報発信鮮度劣化の速い小型魚介類は都市部にほとんど流通しておらず、都市部の市場に販路を開拓する必要があった。

やったこと

急速冷凍に優れた液体凍結装置「リジョイスフリーザー」(処理量50kg/h)を導入し、個別冷凍品の商品化を行った。当技術に適した冷凍冷蔵設備も導入して製造体制を構築した。愛媛大学南予水産研究センターとの共同開発により、食品を一定濃度の食用エタノール等で製造した不凍液に魚介類を浸漬させてから凍結させる個別冷凍技術を確立した。多様な魚種で試作を実施し、キビナゴ等は不凍液に浸けた後に真空パックへ封入して液体凍結機で凍結させた。大型魚は三枚におろした後に同様に真空パックで封入し、機械に通して切り身を個別凍結した。

加工機リジョイスフリーザー(液体凍結装置)
その他冷凍冷蔵設備

新しい製品・サービス:不凍液を用いた超効率的個別凍結技術により個別冷凍された魚介類(キビナゴ、大型魚の切り身など)および手すくいしらすの商品化。

事業の効果

個別冷凍による製造体制が構築され、水産加工品販売部門として株式会社魚一家を立ち上げ、事業化に至った。小型魚介類や大型魚の切り身を高付加価値の商品として都市部のユーザーに提供できるようになった。今後は首都圏市場への販路開拓と地域ブランディングに取り組む計画である。

審査の観点ごとの評価

いま募集している新事業進出・ものづくり補助金の公募要領にある審査の観点14つで見ています

観点の平均3.0 / 5

出典:公募要領 p.44(審査項目)

経営戦略との整合性73%
  • これまでの取組との一貫性3

    祖父の代から70年続く老舗で水産業を営み、冷凍加工の事業化へつなげた経緯は読み取れるが、経営戦略上の位置づけの記述は薄い。

  • 強み・弱みを踏まえた優位性4

    キビナゴの個別凍結品は200円/kg前後のブライン品に対し600〜800円/kgで受け入れられるとの相場差が示され、強みが具体的に読み取れる。

  • 課題の認識と解決4

    漁獲量減少と都市部販路の必要性を課題として挙げ、個別凍結品による高付加価値化と首都圏販路開拓で解決する計画が読み取れる。

事業の実現可能性56%
  • 付加価値・賃上げの目標2

    高付加価値化の目標値や売上・単価の数値目標は書かれておらず、実現可能性の根拠はうかがえる程度にとどまる。

  • 事業を進める体制3

    従業員16名、新会社設立と製造体制構築の記述はあるが、補助事業を遂行する人材や事務体制の具体的記述は薄い。

  • 顧客とニーズの裏付け4

    都市部の市場で高値で受け入れられる個別冷凍品という価値、キビナゴ等の対象魚種と販路の方向性が具体的に示されている。

  • 事業化までの道筋3

    首都圏販路開拓や鮮度維持が課題として挙げられているが、スケジュールや解決方法の具体性は薄い。

  • 財務と資金の調達2

    資本金250万円の新会社設立は書かれているが、財務状況や金融機関からの資金調達の記述は読み取れない。

新市場性・高付加価値性80%
  • 新しさ・高付加価値4

    不凍液を用いた個別凍結は既存のブライン凍結と差別化された技術で、小型魚の個別冷凍という水準の高い高付加価値化が読み取れる。

公的補助の必要性53%
  • 波及効果・雇用3

    地域の水産資源減少や過疎化への対応、地域貢献の役割に言及があるが、雇用創出や波及効果の数字は示されていない。

  • 費用対効果2

    手作業の個別冷凍を機械化し効率化した点はうかがえるが、補助金額に対する付加価値増加の数値は示されていない。

  • イノベーションへの貢献3

    不凍液技術の特許化とライセンス販売、大学との共同開発が書かれ、技術面での波及は読み取れるがデジタル技術の活用は見られない。

政策面50%
  • 成長分野への進出1

    公開されている事例からは読み取れません。

  • 地域経済への波及4

    愛南町の天然魚を活かした地域特産品として高付加価値化し、地域過疎化への対応を担う事業であることが具体的に示されている。

5=数字や事実つきで具体的に読み取れる、4=具体的に読み取れる、3=読み取れるが具体性が薄い、2=わずかにうかがえる、1=公開情報からは読み取れない。公開されている事例を公募要領の観点に照らして当社が整理したもので、実際の審査の点数ではありません。

今後の展望

株式会社魚一家として愛南町産の海産資源を活かした加工品の開発と首都圏市場への販路開拓に注力する意向である。特許を取得した不凍液のライセンス販売にも力を入れる。

  • 目標:キビナゴの販売単価 200円/kg→600円/kg

業種と困りごとが近い成果事例

出典とまとめ方
  • 出典:公式の事例集(平成25年度、全国中小企業団体中央会)。事例集の再利用は中央会の許可を得ています。
  • 課題・取り組み・設備・効果・展望は、事例集の本文から当社がAIで項目に分けて短くまとめたものです。数字は事例集に書かれているものだけを載せ、時間の単位などをそろえています。原文のまま載せているのは事業者の声だけです。
  • 代表者名・電話番号・番地は載せていません。法人の形が名前にない事業者は名前を出していません。