ものづくり補助金平成26年度製造業大分県

「角の井」ブランドの向上にむけた設備投資

株式会社井上酒造

この事例のポイント

  • 200キロ用の大型設備では作業や温度管理などの効率が悪く、少量で個性ある酒を造ることができなかった。
  • 200キロ用の極小サイズの洗米機、甑(こしき)、タンクを導入し、少量ながら杜氏の想いが反映できる新しい酒を造る準備を整えた。
  • 『百合仕込み』は平成28年に完成し、2年目にして一定の層に支持されるようになった。

事業者のプロフィール

事業者名株式会社井上酒造
所在地大分県 日田市
業種飲料・たばこ・飼料製造業
技術分野バイオ,製造環境
従業員数21人
資本金4,500万円
設立1804年

事業の背景

株式会社井上酒造は文化元年(1804年)創業で、200余年にわたり日本酒を製造してきた。明治41年から販売する『角の井』が看板商品だったが、近年は消費者の嗜好が日本酒から焼酎へ移り、麦焼酎『百助』が『角の井』を超える人気商品となった。日本酒と焼酎の生産比率は3:7で、業績を牽引しているのは焼酎である。

課題と取り組み

抱えていた課題

  • 生産能力200キロ用の大型設備では作業や温度管理などの効率が悪く、少量で個性ある酒を造ることができなかった。
  • 新製品・新技術看板商品『角の井』とは異なる方向性の新しい日本酒を造り、蔵元としての存在感を高めて自社製品全体の人気を底上げしたかった。

やったこと

200キロ用の極小サイズの洗米機、甑(こしき)、タンクを導入し、少量ながら杜氏の想いが反映できる新しい酒を造る準備を整えた。自家製の米を蔵人全員で育てた一反四畝(約1388㎡)の水田で収穫し、敷地内の地下水を仕込み水として使用した。通常のタンクの10分の1ほどの量で仕込むことで、『百合仕込み』を製造した。

加工機200キロ用の洗米機
加工機甑(こしき)
加工機タンク

新しい製品・サービス:特別純米酒『百合仕込み』

事業の効果

『百合仕込み』は平成28年に完成し、2年目にして一定の層に支持されるようになった。春の蔵開きには遠方からも多くの日本酒愛好家が訪れ、蔵全体に活気が生まれた。『百合仕込み』の話題化により『角の井』や『百助』にも注目が集まっている。少量限定生産の立ち位置は維持し、蔵元で販売することで蔵元と顧客をつなぐ方針である。

審査の観点ごとの評価

いま募集している新事業進出・ものづくり補助金の公募要領にある審査の観点14つで見ています

観点の平均2.6 / 5

出典:公募要領 p.44(審査項目)

経営戦略との整合性60%
  • これまでの取組との一貫性3

    200余年の日本酒製造の歴史と『角の井』『百助』の展開が書かれ、新ブランドを三本目の柱に育てる狙いが読み取れるが、戦略上の位置付けの説明は簡潔。

  • 強み・弱みを踏まえた優位性3

    焼酎へ需要が移り日本酒と焼酎の生産比率が3:7とあり、外部環境は読めるが、自社の経営資源の強み・弱みを踏まえた競争優位の記述は薄い。

  • 課題の認識と解決3

    既存の大型設備では少量の仕込みが非効率だったという課題と、極小設備導入による対応が書かれているが、高付加価値化の定量的な計画は示されていない。

事業の実現可能性48%
  • 付加価値・賃上げの目標2

    限定300本から500本への製造量増加は書かれているが、付加価値額や賃上げの目標値は示されておらず、わずかにうかがえる程度。

  • 事業を進める体制3

    蔵人総出で米を育てる体制や、既存の蔵の運営に触れてあるが、補助事業の遂行体制(人材・事務処理能力)の記述は薄い。

  • 顧客とニーズの裏付け4

    料理と合わせる食中酒という特徴、甘い醤油や味噌を好む九州人の味覚への対応、即日完売した200本など、ターゲットと選ばれる理由が具体的。

  • 事業化までの道筋2

    今後の増産可能性や生産量と需要のバランスを考えるという方向性はあるが、スケジュールや課題の解決方法は示されていない。

  • 財務と資金の調達1

    公開されている事例からは読み取れません。

新市場性・高付加価値性80%
  • 新しさ・高付加価値4

    少量生産の『百合仕込み』は年間500本限定で、既存の『角の井』とは異なる高付加価値の個性ある味わいとして位置付けられている。

公的補助の必要性33%
  • 波及効果・雇用2

    蔵全体に活気を呼び込み、地元の農家との協力にも触れているが、波及効果や雇用創出を国が補助する理由としては明確に述べられていない。

  • 費用対効果2

    補助金額や投資額に対する付加価値の増加は示されず、費用対効果を裏付ける数値は書かれていない。

  • イノベーションへの貢献1

    公開されている事例からは読み取れません。

政策面60%
  • 成長分野への進出2

    焼酎需要の拡大など市場変化に触れているが、日本経済の構造転換に資するという記述はうかがえる程度。

  • 地域経済への波及4

    日田の寒冷な気候や英彦山の伏流水、自家製の米と地下水を使う地域資源の活用が具体的に書かれ、地域の特性を活かす事業と読み取れる。

5=数字や事実つきで具体的に読み取れる、4=具体的に読み取れる、3=読み取れるが具体性が薄い、2=わずかにうかがえる、1=公開情報からは読み取れない。公開されている事例を公募要領の観点に照らして当社が整理したもので、実際の審査の点数ではありません。

今後の展望

少量限定生産の立ち位置は変えず、販売先を広げずに蔵での販売を続ける。現状の年間500本から、近隣農家の協力で少しずつ増産できるかを検討していく。『百合仕込み』を通じて蔵元の特徴を際立たせ、全体の売り上げ増加につなげたい。

  • 目標:年間製造本数 300本→500本
  • 目標:500本のうち200本を生酒として春の蔵開きで販売し、即日完売した

業種と困りごとが近い成果事例

出典とまとめ方
  • 出典:公式の事例集(平成26年度、全国中小企業団体中央会)。事例集の再利用は中央会の許可を得ています。
  • 課題・取り組み・設備・効果・展望は、事例集の本文から当社がAIで項目に分けて短くまとめたものです。数字は事例集に書かれているものだけを載せ、時間の単位などをそろえています。原文のまま載せているのは事業者の声だけです。
  • 代表者名・電話番号・番地は載せていません。法人の形が名前にない事業者は名前を出していません。