ものづくり補助金平成29年度製造業佐賀県

新規熱膨張計導入による有田焼陶土出荷時の見せる化

有限会社渕野陶磁器原料

この事例のポイント

  • 熱膨張率を示す数値を出荷時に表示できず、定期的な抜き取り検査での利用に留まっていた。
  • 試料が変形しない程度の荷重を加えながら、試料の温度を一定のプログラムで変化させたときの寸法変化を測定する熱膨張計を新たに導入した。
  • 新規の熱膨張計の導入により、陶土の品質を検査し、書類に熱膨張率を表示して出荷できるようになった。

事業者のプロフィール

事業者名有限会社渕野陶磁器原料
所在地佐賀県 嬉野市
業種窯業・土石製品製造業
従業員数10人
資本金900万円
設立1996年

事業の背景

創業130年以上、主に食器を作るための粘土を製造している。焼き物産地の不況の影響で、原料である陶土の生産量は最盛期の6分の1程度に落ち込んでいる。業界全体の浮揚は望めず、同業者の淘汰がさらに進むと予測される。

課題と取り組み

抱えていた課題

  • 品質・精度熱膨張率を示す数値を出荷時に表示できず、定期的な抜き取り検査での利用に留まっていた。
  • 品質・精度窯元の燃料費削減に伴う焼成条件の変更で、ヒビや割れが起こりやすくなっていた。
  • 生産能力従来の熱膨張計は制御部のOSが古く、データ形式も装置固有のため他の事務機器と連携できず、品質表示の書類作成が困難だった。
  • 販路・情報発信同業他社は熱膨張率を提示しておらず、差別化と顧客の信頼獲得が課題だった。
  • その他熱膨張計の測定部のサポート期間終了が近づき、今後の継続的な検査測定ができなくなることが予測された。

やったこと

試料が変形しない程度の荷重を加えながら、試料の温度を一定のプログラムで変化させたときの寸法変化を測定する熱膨張計を新たに導入した。測定結果から得られる熱膨張率で、陶土の性能や釉薬との適合性を判断し、成分やその割合、異常膨張の有無を確認できるようにした。出荷時の品質表示のため、出荷前に熱膨張計で検査する期間を確保し、従来より約2週間早く作業を進めて在庫をストックする体制に変更した。

事業の効果

新規の熱膨張計の導入により、陶土の品質を検査し、書類に熱膨張率を表示して出荷できるようになった。出荷前の検査期間を確保するため生産工程を見直し、約2週間早く作業を進めて在庫をストックする体制が整った。これにより「品質の見せる化」を実施する社内体制が整った。有田焼・波佐見焼でのシェアアップに加え、他産地や食器以外の新分野への販路拡大の目処が立った。

審査の観点ごとの評価

いま募集している新事業進出・ものづくり補助金の公募要領にある審査の観点14つで、採択された計画の標準を3として見ています。公開情報では判断できない観点は点数を出さず、平均にも入れていません

観点の平均2.8 / 514観点のうち13観点で評価

出典:公募要領 p.44(審査項目)

この事例が強かった観点

  • 4
    課題の認識と解決熱膨張率の未表示や焼成条件変更によるヒビ・割れを課題と認識し、出荷時表示と約2週間前倒しの生産体制で対応したと具体的に書かれている。
  • 4
    地域経済への波及有田焼・波佐見焼の地域産業に根ざし、他産地や食器以外の新分野への販路拡大の目処が立ったと書かれている。

伸びしろがあった観点

  • 2
    付加価値・賃上げの目標目標値や数値目標は記載がなく、出荷時表示を順次進めるとの方向性のみうかがえる。
経営戦略との整合性3.3
  • これまでの取組との一貫性3

    最盛期の6分の1程度の生産量と、以前から熱膨張計を保有していた経緯が書かれ、事業の延長線上の取組と読み取れる。

  • 強み・弱みを踏まえた優位性3

    同業他社が熱膨張率を提示していないこと、差別化で顧客の信頼を得る狙いが書かれている。強みの数値的根拠は薄い。

  • 課題の認識と解決4

    熱膨張率の未表示や焼成条件変更によるヒビ・割れを課題と認識し、出荷時表示と約2週間前倒しの生産体制で対応したと具体的に書かれている。

事業の実現可能性2.8
  • 付加価値・賃上げの目標2

    目標値や数値目標は記載がなく、出荷時表示を順次進めるとの方向性のみうかがえる。

  • 事業を進める体制3

    今後の課題として全商品の品質表示のための人員確保が挙げられており、体制面の課題認識は読み取れる。

  • 顧客とニーズの裏付け3

    顧客は窯元で、熱膨張率の提示による納入先トラブル削減や新商品開発の時間短縮が期待と書かれている。

  • 事業化までの道筋3

    全商品への出荷時表示を人員確保を進めつつ段階的に実現し、粒度分布の表示も検討するとの計画が示されている。

  • 財務と資金の調達3

    財務の状況は公開されている事例には出ないため、中間の3としています。

新市場性・高付加価値性3.0
  • 新しさ・高付加価値3

    熱膨張率の提示は業界で行われていなかった点が書かれ、同分野で差別化を図る内容と読み取れる。

公的補助の必要性2.0
  • 波及効果・雇用2

    焼き物産地の不況や業界の縮小に触れており、地域産業の維持にうかがえる程度の記述がある。

  • 費用対効果2

    投資額や付加価値額の数値は記載がなく、費用対効果はうかがえる程度である。

  • イノベーションへの貢献2

    デジタル技術の活用は記載されていないが、データ連携の課題とサービス向上が触れられている程度である。

政策面4.0
  • 成長分野への進出ー

    公開情報では判断できません。

  • 地域経済への波及4

    有田焼・波佐見焼の地域産業に根ざし、他産地や食器以外の新分野への販路拡大の目処が立ったと書かれている。

今後の展望

現在、商品への品質表示を順次進めており、人員確保などを行って全商品に出荷時表示を行う体制を少しずつ実現していく。今後は粒度分布など熱膨張計と異なる測定器から得られるデータも表示することを検討する。出荷時表示により納入先のトラブル削減が期待でき、納入先の新商品開発の時間短縮にも寄与できると考えている。

業種と困りごとが近い成果事例

出典とまとめ方
  • 出典:公式の事例集(平成29年度、全国中小企業団体中央会)。事例集の再利用は中央会の許可を得ています。
  • 課題・取り組み・設備・効果・展望は、事例集の本文から当社がAIで項目に分けて短くまとめたものです(画像のPDFを文字起こししてから読み取りました)。数字は事例集に書かれているものだけを載せ、時間の単位などをそろえています。原文のまま載せているのは事業者の声だけです。
  • 代表者名・電話番号・番地は載せていません。法人の形が名前にない事業者は名前を出していません。