東京都のデジタル導入促進補助事業|対象経費と助成額・申請の流れ
この記事の要点
都内の中小企業や個人事業主が、クラウド会計や業務の自動化などのツールを新しく入れるときに使える東京都中小企業振興公社の助成です。対象になる会社と経費、申請の流れ、国のデジタル化・AI導入補助金との併用の決まりを募集要項で整理しました。
この記事の目次
中小企業デジタル導入促進補助事業は、都内に本店か支店があり都内で事業をしている中小企業・個人事業主が、クラウド会計や業務の自動化といったパッケージのツールを新しく入れるときの経費を、東京都中小企業振興公社が一部助成する制度です。
上限は150万円、助成率は2分の1以内で、小規模企業者か環境負荷を減らすツールなら3分の2以内です。申請はJグランツだけで、締切は2027年1月29日(金)ですが、予算に達すると早く終わります。
都内でクラウドのツールを入れたい会社が、この助成を使えるか、いくら出るか、いつまでに何をすればよいかを知りたい方に向けた記事です。公社の公式ページと募集要項で確かめた範囲で書いています。
東京都のデジタル導入促進補助事業とは?
対象は、申請の時点で都内に登記上の本店か支店があり、都内で実際に事業をしている中小企業者(株式会社・合同会社・個人事業主など)と中小企業団体です。登記だけ置いて都内で活動していない会社は、納税や従業員の雇用の状況から実態がないと判断されることがあります。
個人事業主は開業届の控えで都内の事業を示します。本店が都内なら、ツールを使う場所は都内のほか神奈川・埼玉・千葉など周辺の7県でもよく、支店だけが都内の会社は都内の事業所で使うことが条件です。
助成率が上がる小規模企業者は、常時使用する従業員が製造業・その他は20人以下、商業(卸売・小売)・サービス業は5人以下の会社です。中小企業団体は、構成員が小さな会社ばかりでも小規模企業者として扱われません。
対象にならないのは次のような場合です。
- 一般社団法人・一般財団法人・NPO法人・医療法人・社会福祉法人・学校法人などの法人
- 同じ募集回に、同じ人が代表や担当をしている複数の会社からそれぞれ申請する場合
- 過去にこの事業(前の名前の事業を含む)で採択され、その助成金額がまだ確定していない場合や、前回と同じ目的のツールを申請する場合
公社のほかの助成金も合わせて比べたいときは、東京都中小企業振興公社の助成金一覧で制度ごとに並べています(東京都中小企業振興公社「令和8年度第2回 中小企業デジタル導入促進補助事業 募集要項」 p.10『4 申請要件』)。
いくらまで出て、どの経費が対象?
助成の対象は、パッケージのソフトウェアやクラウドサービスを新しく契約し、運用を始めるまでの経費です。経費は4つの区分に分かれ、ツール本体以外は区分ごとに上限があります。
| 経費の区分 | 中身の例 | 区分の上限 |
|---|---|---|
| ①ツール本体 | クラウド会計、勤怠・給与、受発注、在庫管理、予約管理などのソフトやクラウドの利用料 | 区分の上限なし(全体の上限の範囲内) |
| ②関連経費 | 導入時の初期設定、自社に合わせたカスタマイズ、運用・保守のサポート | 50万円 |
| ③その他 | 設備の稼働や故障の状況を見える化するソフトにつなぐ専用の機器 | 20万円 |
| ④機器等本体 | ツールを使うのに欠かせない専用のハードウェア(スマートレジなど。レンタルは除く) | 75万円 |
出典:東京都中小企業振興公社「令和8年度第2回 中小企業デジタル導入促進補助事業 募集要項」 p.5『2 事業の内容』
申請できる助成金の額は5万円からです。小さなツール1つだけだと、この額に届かないことがあります。
対象にならない経費も多く、見積を取る前に分けておくと手戻りが減ります。
- OS、セキュリティソフト、表計算・文書作成ソフトのように、どの会社でも使う汎用のソフト
- パソコン・サーバー・スマートフォン・タブレットなどの汎用の機器と、社内の通信環境の整備
- 一から作るスクラッチ開発、すでに使っているツールのライセンス追加や通常の更新
- 導入前の調査・提案・要件定義などのコンサルティングに当たる費用
- リース・レンタル、中古品、自社の製品、消費税、振込手数料
セキュリティ対策の機器やサービスを入れたい場合は、公社の別の制度が受け皿になります。中身は東京都のサイバーセキュリティ対策促進助成金で取り上げています。
申請から入金までの流れと締切は?
申請はJグランツと専用フォームの電子申請だけで、紙では受け付けていません。ツールの契約や支払いは交付決定のあとに行い、運用を始めてから実績を報告して、助成金が振り込まれます。
- GビズIDプライムを取る。発行までの目安は2週間程度です。取り方はGビズIDプライムの取得方法で取り上げています。
- 導入するツールの見積を取る。税抜100万円を超えるツールは2社以上の見積書が必要で、関連経費は「一式」ではなく項目ごとの内訳を書いてもらいます。
- Jグランツで申請する。受付期間は2026年9月28日(月)~2027年1月29日(金)(予算に達し次第終了)です。書類は受付の最終日の時点でそろっている必要があります。
- 書類審査を受ける。届いた順ではなく、不備のない申請から順に審査されます。
- 交付決定を受ける。時期は2026年10月~2027年3月の原則毎月末日付(予定)。受理された月の翌月以降です。
- ツールを契約・支払いし、運用を始める。助成対象期間は交付決定日の翌月1日から2年間で、この間に済ませた分だけが対象です。
- 実績報告を出す。期限は事業完了後15日以内で、過ぎると助成金は出ません。
- 完了検査で額が確定したら請求し、請求からおよそ1か月で振り込まれます。
交付決定は申請が受理された月の翌月以降の日付になり、時期を選ぶことはできません。年度内に入れたいツールがある会社は、受付期間の後半を待たずに出すほうが計画を立てやすくなります(東京都中小企業振興公社「令和8年度第2回 中小企業デジタル導入促進補助事業 募集要項」 p.8『3 事業のスケジュール』)。
間違えやすい点
不採択よりも多いのは、交付決定のあとに経費が対象から外れるケースです。契約の時期と支払い方は、申請前に決めておきます。
交付決定の前に契約・支払いをしたツールは、助成の対象になりません。助成対象期間が始まるのは交付決定日の翌月1日からです。
支払いは会社名義(個人事業主は本人名義)の口座からの振込が原則です。役員や従業員の個人の口座から払った分、関連会社を通して払った分は対象外です。クレジットカードは、本人(法人は法人)のカードの一括払いで、口座からの引き落としまで期間内に終わるものに限られます。
「この助成の対象ツールに認定されています」とうたう業者や、キャッシュバックをつける勧誘に注意します。公社は特定の製品や販売店を認定しておらず、販売店が実質的に自己負担分を肩代わりした場合は交付決定が取り消されることがあります。
このほか、現金払いは1回の取引が税込10万円以下で振込が難しい場合だけ、手形・小切手・電子記録債権での支払いは認められません。サブスクリプションは、助成対象期間の中で契約・利用・支払いが終わった分だけが対象です。実績報告はこの事業専用の様式で出し、ほかの事業の様式は使えません(東京都中小企業振興公社「令和8年度第2回 中小企業デジタル導入促進補助事業 募集要項」 p.25『13 経費の支払いに関する注意事項』)。
国の補助金を使う場合の支払いや手続きの決まりは、その公募要領で別に定められています。国の制度の中身はデジタル化・AI導入補助金の通常枠で取り上げています。
国のデジタル化・AI導入補助金と併用できる?
同じ経費に、この助成と国の補助金の両方を受けることはできません。募集要項は、同じ内容の経費について、公社・国・都道府県・区市町村などから重複して助成を受けていないこと、交付決定のあとも受けないことを申請の条件にしています。過去に受けた分も含みます。
申請の段階では、同じ経費を国などの別の補助金に出すこと自体は止められていません。ただし両方で交付決定が出た場合は、どちらか一方を取り下げる決まりです。公社のほかの助成事業に、同じ経費で同時に申請することはできません。
募集要項が禁じているのは同じ経費の重複で、ツールごとに経費を分けてそれぞれの制度に出すことを禁じる記載はありません。分ける場合は、国の補助金の側の決まりもその公募要領と事務局で確かめます。国の補助金の次の締切は2026年10月30日(金)17:00です。
国の補助金の枠と対象ツールはデジタル化・AI導入補助金の新枠と対象で取り上げています(東京都中小企業振興公社「令和8年度第2回 中小企業デジタル導入促進補助事業 募集要項」 p.11『4 申請要件』)。
専門家から見たポイント
この助成は、登録されたツールや販売店を前提にしない分、御社が使いたいパッケージやクラウドを選びやすい制度です。その代わり、経費の区分分けと支払い方を自分で管理する手間がかかります。
向いている会社
従業員の少ない会社が、クラウド会計や勤怠管理など月額のツールをまとめて入れる場合は、小規模企業者の助成率が使えるため自己負担を抑えやすくなります。
紙の請求書や契約書を電子化したい会社は、環境負荷を減らすツールとして高い助成率を狙えます。条件は小規模企業者、または環境負荷軽減に役立つツール(紙の削減・省エネ・脱炭素)を導入する場合で、業務の効率化だけが目的のツールは当たりません。申請のときに環境負荷軽減計画書を出します。
インボイスに対応した会計・受発注のソフトを国の制度で入れる道もあり、要件はデジタル化・AI導入補助金のインボイス対応類型で取り上げています。
迷う会社
パソコンやタブレットの入れ替えが主な目的の会社は、機器が対象外のため助成の効果が小さくなります。前にこの事業で採択された会社は、前回の額が確定しているか、今回のツールが別の目的かを先に確かめます。年度内に運用を始めたい会社は、交付決定が受理の翌月以降になる点から逆算します。
年額を前払いするサブスクリプションは、助成対象期間を越える分が対象から外れます。契約の開始日と支払いの単位を、交付決定の時期に合わせて販売店と決めておきます。
御社のツールがどの区分に入るか、国の補助金と分けて使えるかは、専門家に無料で相談できます。
よくある質問
個人事業主も申請できる?
できます。都内で事業をしていることを開業届の控えや確定申告書で示します。従業員の数によっては小規模企業者として高い助成率が使えます。
パソコンやタブレットも一緒に買える?
汎用の機器は対象外です。対象になるのは、スマートレジのようにツールを使うのに欠かせない専用のハードウェアだけで、レンタルの場合は対象になりません。
交付決定の前にツールを契約してもいい?
交付決定の前に契約・支払いした分は対象になりません。申請中は見積の段階で止めておき、交付決定のあとに契約します。
本店が都外でも使える?
都内に登記上の支店があり、都内で実際に事業をしていれば対象になり得ます。その場合、ツールを使う場所は都内の事業所に限られます。
前にこの事業で採択されたが、また申請できる?
前回の助成金額が確定していて、今回のツールが前回と同じ目的でなければ申請できます。同じ目的かどうかは事務局が判断します。
ほかの質問はよくある質問にまとめています。
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