キャリアアップ助成金の正社員化コースとは?要件と申請の流れ
この記事の要点
キャリアアップ助成金の正社員化コースは、パートや契約社員などを正社員に転換した会社に1人ごとに支給される厚生労働省の助成金です。額の決まり方、上乗せされる加算、対象になる社員の条件、計画の提出から申請までの順番を整理しました。
この記事の目次
キャリアアップ助成金の正社員化コースは、有期雇用やパート、派遣などの社員を正社員に転換した会社に、1人ごとに支給される厚生労働省の助成金です。
受け取るには、転換の前日までにキャリアアップ計画を労働局に出し、就業規則に転換の決まりを置き、転換後6か月の賃金を転換前より3%以上増やすことが要ります。申請は、その6か月分の賃金を払った日の翌日から2か月以内です。
パートや契約社員を正社員にしたいと考えていて、キャリアアップ助成金の正社員化コースの要件と、いつ何をすればよいかを知りたい方に向けた記事です。
厚生労働省のキャリアアップ助成金(正社員化コース)のリーフレットと、キャリアアップ助成金のご案内(令和8年度版)から、額、対象になる社員、手続きの順番を整理します。
キャリアアップ助成金とは?
キャリアアップ助成金は、有期雇用・短時間・派遣などの非正規雇用の社員の待遇をよくした会社を支える、厚生労働省の雇用関係助成金です。令和8年度は、正社員化コース、障害者正社員化コース、賃金規定等改定コース、賃金規定等共通化コース、賞与・退職金制度導入コース、短時間労働者労働時間延長支援コースの6つに分かれています。
この中で使う会社がいちばん多いのが、正社員への転換を助成する正社員化コースです。経済産業省の補助金との違いは補助金と助成金の違いとは?で取り上げています。
正社員にすると1人いくら出る?
額は、転換する前の雇用の形と、その社員が「重点支援対象者」に当たるかで決まります。中小企業の額は次のとおりです。
| 転換する社員 | 有期雇用から正社員 | 無期雇用から正社員 |
|---|---|---|
| 重点支援対象者 | 80万円(40万円×2期) | 40万円(20万円×2期) |
| それ以外 | 40万円(1期) | 20万円(1期) |
出典:厚生労働省「キャリアアップ助成金(正社員化コース)のご案内」(リーフレット)助成額の表
重点支援対象者とは、雇い入れてから3年以上たつ有期雇用の社員、3年未満でも過去5年間に正社員だった期間が合計1年以下で、この1年は正社員でなかった有期雇用の社員、派遣の社員や母子家庭の母などのことです。重点支援対象者は、転換後6か月で1期目を申請し、さらに6か月雇い続けると2期目を申請できます。
有期雇用の期間が通算5年を超えた社員は、無期雇用の社員として扱われるため額が下がります。人件費の助成を受けられる制度の全体は人件費に使える補助金はある?で取り上げています。
額が上乗せされる3つの取組は?
正社員化コースには、1事業所につき1回だけ受けられる加算があります。中小企業の加算額は次の3つです。
- 正社員転換制度を新しく就業規則に置いて転換した場合:20万円。
- 勤務地限定・職務限定・短時間正社員のどれかの制度を新しく置いて転換した場合:40万円。
- 正社員への転換についての情報を、自社のサイトか職場情報総合サイト(しょくばらぼ)で公表した場合:20万円。
勤務地限定正社員とは、転勤の無い正社員のことです。子育てや介護で転勤や長い時間の勤務が難しい社員を正社員にするときに、制度の整備と加算をまとめて進められます。
社員の働き方を整えて補助金の加点にもつなげる方法はくるみん・えるぼしで補助金の加点を取る方法で取り上げています。
対象になる社員と正社員の条件は?
転換した後の働き方が、会社のほかの正社員と同じ扱いであることが求められます。リーフレットは、正社員の就業規則が適用され、転換の時点で賞与か退職金の制度と、昇給が適用されていることを条件にしています。
- 転換前に、有期雇用・無期雇用・派遣などで一定の期間雇われていること。
- 転換後に、正社員の就業規則・賃金の決まりがそのまま使われること。
- 転換後6か月の賃金が、転換前6か月より3%以上増えていること。
- 新卒で雇い入れてからまだ間もない社員ではないこと。
出典:厚生労働省「キャリアアップ助成金(正社員化コース)のご案内」(リーフレット)主な受給条件
正社員になった後に、予定していた賞与や昇給が実際には適用されないと、対象にならない場合があります。給与の決まりを変えるときは、賃上げの計画とあわせて考えます。補助金で求められる賃上げの考え方はベースアップに使える補助金は?で取り上げています。
転換から申請までの順番と期限は?
正社員化コースは、計画を出してから転換し、6か月の賃金を払った後に申請します。順番を入れ替えると受け取れません。
- 事業所ごとにキャリアアップ管理者を決め、キャリアアップ計画を作る。
- 転換の前日までに、キャリアアップ計画を管轄の労働局に出す。
- 就業規則に正社員への転換の決まりが無ければ、改定して置く。
- 就業規則にもとづいて社員を正社員に転換する。
- 転換後6か月分の賃金を払う。
- 6か月分の賃金を払った日の翌日から2か月以内に、労働局に支給申請をする。
出典:厚生労働省「キャリアアップ助成金(正社員化コース)のご案内」(リーフレット)申請の流れ
転換を決めてから申請するまで、早くても8か月ほどかかります。転換したい社員が決まったら、まず計画の提出日を逆算して決めます。電子申請に要るGビズIDの準備や共通の書類は雇用関係助成金の申請方法と対象者で取り上げています。
専門家から見た正社員化のポイント
正社員化コースは、人手不足の中で今いるパートや契約社員に長く働いてもらうための助成金です。補助金の採択事例でも、生産性・人手不足を課題に挙げた事例は全体の29.9%を占め、人を採るより今の社員を育てて定着させる計画が多く見られます。
向いている会社
雇い入れて3年以上たつ有期雇用の社員がいて、その人を正社員として長く任せたい会社です。重点支援対象者に当たれば2期に分けて受けられ、加算の制度づくりも1回で済みます。
迷う会社
正社員の賞与や昇給の決まりがはっきりしていない会社です。決まりが無いまま転換すると、正社員の条件を満たさない場合があります。先に賃金の規程を整え、そのうえで転換の時期を決めます。同じ人の賃金に補助金と助成金を重ねられるかは助成金と補助金は同じ経費で両方もらえる?で取り上げています。
間違えやすい点
正社員化コースで間違えやすいのは、計画を出す時期と、転換後の賃金の比べ方です。
キャリアアップ計画は、転換の前日までに労働局に出します。転換した後に計画を出しても、その転換は対象になりません。案内では、1か月前など余裕を持って出すことを勧めています。
3%以上の増額は、転換前6か月と転換後6か月の賃金で比べます。正社員になって残業代が減り、合計が増えていない場合もあるため、基本給と手当の組み方を先に計算します。
補助金と助成金を同じ年に使うときの順番は補助金は併用できる?で取り上げています。
よくある質問
1年に何人まで申請できますか?
正社員化コースは、1年度に1事業所あたり20人までが上限です。重点支援対象者の2期目の申請は、この人数に数えません。
親族の社員を正社員にしても対象ですか?
事業主の3親等以内の親族は、原則として対象になりません。親族以外の社員を転換する計画で考えます。
派遣で来ている人を直接雇って正社員にした場合も対象ですか?
対象です。派遣の社員は重点支援対象者に当たるため、有期雇用から正社員にした場合と同じ扱いの額になります。
個人事業主でも申請できますか?
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