セルフレジと急速冷凍で、弁当店の待ち時間と食材ロスを減らす
杏亭グループ
和歌山県の弁当店・仕出し弁当店(従業員41名)国が公開している採択事例です
この事例のポイント
- 週末の昼は会計に2人がかかりきりになり、調理の手が足りず客を待たせていた。
- セルフ注文・レジでおすすめの追加メニューを自動で出し、客単価を上げた。
- レジのデータで売れ筋をすぐ確認できるようになり、メニューの見直しが楽になった。
- 急速冷凍で作り置きができるようになり、仕出し弁当の仕込み時間を大きく減らした。
事業の経緯
父が創業した弁当店に現代表が1993年に加わり、2002年に跡を継いで社長になった。2003年に会社を設立し、のちに店名を改めた。2015年からは食べ残しを減らす副菜づくりなど、食品ロスを減らす取り組みに力を入れている。
2019年には高級仕出し弁当のフランチャイズ展開を始めた。コロナ禍で仕出しの需要が減る一方、持ち帰りの客が増え、会計の混雑で調理が追いつかなくなった。2020年にIT導入補助金でセルフ注文・レジを、ものづくり補助金で急速冷却冷凍装置を入れ、店の運営を大きく変えた。
事業の内容
- 課題:会計に人手を取られる店頭で注文を受けてから調理して出す形で、土日の昼は2人の会計担当がレジにかかりきりになった。調理の人手が足りず、提供が遅れて多くの客をレジ前で待たせていた。売れ筋の確認も、レジから出る長い記録紙を見て年に1回行うだけだった。
- 取り組み:セルフ注文・レジ経営者仲間の勧めでIT導入補助金を使い、旗艦店にタッチパネル式のセルフ注文・レジを2台入れた。調理に人手を回し、会計ミスと待ち時間を減らすのが目的。混雑時に声をかけにくかった追加メニューも、画面で自動的に勧められるようにした。国の事業で派遣されたIT専門家の助言も受け、売上データの分析をボタン一つでできるようにした。
- 取り組み:ネットでの予約・注文電話だけで受けていた予約注文を、スマートフォンのメッセージアプリから受けられるようにした。調理中で電話に出られず注文を逃すことを減らすため。
- 取り組み:急速冷却冷凍装置ものづくり補助金で急速冷却冷凍装置を入れ、調理した食材を保存し、注文に応じて解凍できるようにした。食材ロスを減らし、高級仕出し弁当の仕込みの負担を軽くするため。
補助金を使った経費
記事の内容から、デジタル化・AI導入補助金の経費区分にあてはめた区分です。
| ソフトウェア購入費 | タッチパネル式セルフ注文・レジシステム |
|---|
事業の効果
- 会計ミスが約9割減った。
- おすすめメニューの自動表示で追加注文が増え、客単価が約2割上がった。
- 調理を丁寧にできるようになり、品質と顧客満足度が上がった。
- 年4回のメニュー見直しにかかる時間が大きく減った。
- ネットでの登録者が2,400人を超え、ネット注文が全体の10〜20%になった。
- 急速冷凍の導入で食材ロスが3〜4割減り、仕出し弁当の仕込みが7〜8時間から3時間ほどになった。
事業者の声
2015年の国連サミットで『持続可能でよりよい世界を目指す国際目標』(SDGs)が設定され、自分たちもSDGsに沿った取り組みをしなければと考えるようになったことがきっかけです。
従業員が『残されそうですね』と感じた副菜は入れないようにして、副菜づくりにも手間を惜しまないようにしました。
杏亭は店頭で注文を受けてから調理をして提供するかたち。土日のお昼時は2人の会計担当がレジにかかりっきりになるため、調理を行う人が足りず、お弁当の提供スピードが落ちて、多くのお客様がレジの前で待たされるケースが続発していたのです。
考えられないほど業務が効率化されました。
混雑時には焼きムラがあったり、盛り付けが雑になったりすることもありましたが、丁寧に作れるようになって品質も向上し、顧客満足度も上がりました。
混雑時は忙しすぎて『お弁当と一緒にお惣菜もいかがですか?』とお勧めするのが難しかったのですが、タッチパネルなら自動的にオススメオプションメニューが表示できる。この販促機能によって追加注文が増えて、客単価は2割もアップしたのです。追加注文を促す従業員の心理的負担も減らすことができました。
以前はレジから出てくる長いジャーナル(売上情報や精算情報を記した紙)を見て、年に1回だけ、売れ筋と不人気商品をチェックしていました。それが、レジシステムの導入とIT専門家のアドバイスもあり、ボタンひとつでできるようになった。年に4回行うメニューの改廃に要する時間も劇的に減少しました。
電話だけで予約注文を受けていたときは、調理で電話を取れないこともあったのに、それも解消されました。機会損失も減ったと言えるでしょう。
生産性向上の余地はまだまだある。
棚を見て、少なくなったなと思ったら仕入れを行うので、在庫過多になったり、欠品することがしばしばある。
一般にお弁当屋の原価率は40~45%ですが、杏亭や実のり庵の原価率は一時50%を超えていました。同業他社に比べて高すぎる原価率をいかにして下げるかが今後の課題です。
グループの10年先まで考えるようになった。
和歌山県の弁当店・仕出し弁当店(従業員41名)
出典
- 中小機構「補助金活用ナビ」の事例記事(当社が書き直し・要約。事業者の声は記事中の発言の引用です)
- 経費区分は、デジタル化・AI導入補助金の公募要領の区分に当社があてはめたものです
- 採択率:中小企業庁「採択結果」(26年4次)
相談先と計画づくり
| 民間の専門家 |
|---|
会計に取られている人手を調理に回すことを優先し、セルフ注文・レジの導入を決めた。IT専門家の助言を受け、レジのデータを売れ筋の分析やメニューの見直しに使う仕組みも整えた。
今後の展望
アナログのままの在庫管理と仕入れをデジタル化し、在庫の過多や欠品を減らす。同業より高い原価率を下げることが課題で、補助金をきっかけに10年先を見すえた計画づくりを進めている。
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デジタル化・AI導入補助金(旧IT導入補助金)について
直近の26年4次の採択率は44.4%(応募1,836件・採択816件)。いま申請できる回は「デジタル化・AI導入補助金」として募集されています。いま申請できる回の締切・補助額・対象経費は、最新の公募の解説でまとめています。
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