顧客情報を見える化し、後継ぎに渡せる畳店をつくる
堀田畳製作所
山梨県の畳製造・張替店(従業員3名)国が公開している採択事例です
この事例のポイント
- 県内の畳店が15年で半分以下に減るなか、後継者に引き継げる畳店をめざした。
- 顧客情報をシステムで見える化し、顧客が幹線道路沿いに集中していることを突き止めた。
- 撥水防汚畳や抗ウイルス処理畳など、新しい畳を飲食店・旅館・介護施設に売り込んだ。
- 地元の商工会の経営指導員がやりたいことを整理し、5回のうち4回の申請に伴走した。
事業の経緯
1913年に創業した畳店で、2001年に現代表が事業を引き継いだ。引き継ぎの際、年間売上の2倍を超える畳製造ロボットを導入し、手作業で1日8枚にとどまっていた生産を大きく伸ばした。一方で、職人には販路開拓の知識がなく、顧客情報も先代の頭の中にしかなかった。
2015年に地元の商工会のセミナーで持続化補助金を知り、経営指導員の後押しで初めて申請して採択された。顧客管理システムで顧客の分布を見える化し、その後も撥水防汚畳、抗ウイルス処理畳、ホームページの自動見積と、合わせて5回補助金を活用して販路を広げた。現在は息子2人が加わり、家族で事業を続けている。
事業の内容
- 課題:減り続ける畳店県内の畳店は15年で125店から55店に減り、その半数以上で経営者が65歳を超えている。先代の時代は手作業で1日8枚しかつくれず、後継者がいなければ地元で畳を頼みたいという声に応えられなくなるおそれがあった。
- 課題:販路開拓の知識と資金職人として技術はあっても、販路開拓の知識やノウハウがなかった。チラシとホームページのどちらを使い、どんな内容にすれば新しい顧客に届くのか、費用をどう工面するのかが分からなかった。顧客情報は経営者の頭の中にしかなく、後継者に引き継げなかった。
- 取り組み:顧客情報の見える化2015年に地元の商工会が開いた持続化補助金のセミナーをきっかけに初めて申請して採択され、顧客管理システムを導入した。顧客情報をデータにして分析し、効果的な販路開拓と、張替時期に合わせた声かけに使えるようにした。
- 取り組み:地域を絞った周知顧客の所在地を地図に落とすと、幹線道路沿いに帯状に集中していることが分かった。2017年ごろから、その地域に新聞折込チラシや道路沿いの看板で重点的に知らせた。
- 取り組み:新しい畳の販路開拓2019年には、い草の生産者と共同開発した撥水防汚畳を、汚れを嫌う飲食店や旅館に売り込んだ。2020年には抗ウイルス処理を施した畳のチラシをつくり、老人福祉施設や介護施設に知らせた。いずれも持続化補助金を活用した。
- 取り組み:ホームページの自動見積2021年には、畳の模様と畳縁を選ぶと完成イメージと費用が表示される自動見積の仕組みをホームページに載せ、畳の種類や価格を顧客が自分で確かめられるようにした。
補助金を使った経費
記事の内容から、小規模事業者持続化補助金の経費区分にあてはめた区分です。
| 機械装置等費 | 顧客管理システム |
|---|---|
| 広報費 | 抗ウイルス処理畳のチラシ |
| ウェブサイト関連費 | ホームページの自動見積システム |
事業の効果
- コロナ禍でも売上が右肩上がりで伸びている。
- 撥水防汚畳を客単価の高い飲食店や旅館に販売し、売上の増加につながった。
- 抗ウイルス処理畳は、コロナ禍で除菌への関心が高まるなか、多くの問い合わせを集めた。
- 息子2人の技能大会での受賞などがメディアで取り上げられ、従来の商圏の外からも問い合わせが増えた。
事業者の声
山梨県では、かつて125の畳店が存在していましたが、ここ15年の間に55の畳店にまで減少しています。更に問題なのはそのうち半数以上の畳店の経営者が65歳を超えているということです。後継者がいない場合、10年後にはこれらの畳店は廃業してしまうことになります。そうなると、畳の製造や張替を地元の業者にお願いしたいというお客様の声に十分に応えることができなくなります。こうした事態を防ぐためにも『後継者に継いでもらえる畳店』を目指していく必要があります。そのために、生産設備の導入による生産性向上や顧客の管理等による販路の開拓に取り組む必要がありました。
周りからは、「そんなに投資して大丈夫か」と言われました。しかし、畳を製造することで家族を食べさせていかなければならないし、2人分の生産量を自分1人が手作業で対応するのは無理がありました。そのため、多少背伸びしても生産設備を導入し生産性の向上を図りました。
畳職人は、畳を作る技術や熱意は確かなものがあります。しかしどんなに良い畳を作っても、知られなければお客様にご購入いただけません。職人には畳を作る技術はあっても販路開拓の知識やノウハウはない。販路開拓における課題は、周知の方法‧内容、資金調達の2点あると考えています。周知の方法‧内容については、チラシを活用するのか、ホームページを活用するのか、またどのような内容にすれば新規の顧客に訴求できるのか分からないこと、資金調達については、費用がどの程度かかり、資金を売上から捻出するのか、融資を受ければ良いのか、他に調達手段があるのかが分からないことが課題でした。
自分の頭の中にしかない顧客情報をデータとして可視化し分析することで、効果的な販路開拓に活用することができるのではないか。
もしかしたら自分も補助金を活用できるのではないか。
当時、補助金について全く分からない状況でした。まずはやりたいことを明確にし、経営計画書は長田さんに何度も添削していただき、自社の現状や目指すべき姿を分かりやすく整理していただきました。
経営指導員から助言をもらうことで、新規顧客にどのように自社を周知すれば効果的か道筋をつけることができた。補助金を活用することで費用負担が少なくなり、課題であった周知の方法‧内容と資金調達の2点を解決することができました。また、顧客管理システムを導入したことにより販路開拓を試みる上で必要な情報を整理することが出来ました。
経営者の頭の中にしか顧客情報がない場合、後継者に顧客を引き継ぐことができません。畳の張替は長ければ20年以上のスパンとなり、顧客も経営者も代替わりする可能性が高い。そうした時に、顧客情報が見える形で蓄積されていれば、『この家は20年前に畳を張り替えたから、そろそろお声がけするか』という判断ができる。畳業界は3,000人の顧客があれば一生食べていけると言われており、3,000人の顧客を確保し、その顧客を見える化してから事業承継することが目標です。
これまで顧客がどの地域に多いかということについて意識していませんでした。しかし、顧客の所在地を可視化したところ、幹線道路沿いにベルト状に顧客が集中していることが分かりました。
元来い草が持つ抗菌作用に加え、抗ウイルス処理を施した畳についてのチラシを作成し、老人福祉施設や介護施設をターゲットに周知しました。コロナ禍で抗菌‧除菌の意識が高まる中、多くの引き合いをいただきました。
畳をPRするためには、お客様に畳がどういうものかを知っていただく必要があります。畳床の材質、畳表‧畳縁にはどのような種類があり、いくらくらいかかるのか。ホームページには自動見積機能を備え、多様な選択肢をお客様に提示できるようにしています。
畳店が減っていく中で今後も畳産業を振興させていくためには、自分だけが発展していくのではなく、共存‧共栄を目指していくことが重要。自分が取り組んでよかったことは、同業他社にも是非取り組んでいただきたい。
最初は『堀田のやり方はダメだ』と批判を受けることもありましたが、徐々に『堀田のやり方でなければ後継者が出てこない』と言われるようになりました。持続化補助金を紹介し、商工会の指導を受けることを勧めると、すぐに行動を起こし、採択された方もました。私が取り組んでよかったことは同業他社も取り組んでもらい、共存‧共栄ができれば良いと思っています。
2人が入職したことで、顧客の広がりを感じています。次男が"国内最年少技能士"であることや兄弟そろって京都畳技術競技会で京都府知事賞、京都市長賞を受賞していることをメディアに取り上げていただき、従来商圏の範囲外だった、甲府市近隣以外の市町村にお住まいのお客様からの引き合いも増え、好循環が生まれています。これからも家族で一体になって、お客様のご希望に適う畳をお届けしていきます。
山梨県の畳製造・張替店(従業員3名)
出典
- 中小機構「補助金活用ナビ」の事例記事(当社が書き直し・要約。事業者の声は記事中の発言の引用です)
- 経費区分は、小規模事業者持続化補助金の公募要領の区分に当社があてはめたものです
- 採択率:中小企業庁「採択結果」(第19回)
販路開拓の手段
- 顧客管理システム:顧客情報をデータ化し、顧客の多い地域や張替時期を把握した。
- 新聞折込チラシ・看板:顧客が集中する幹線道路沿いの地域に重点的に知らせた。
- 新しい畳の売り込み:撥水防汚畳を飲食店や旅館に、抗ウイルス処理畳を介護施設などに提案した。
- ホームページの自動見積:模様と畳縁を選ぶと完成イメージと費用が分かるようにした。
相談先と計画づくり
| 商工会 | 中央市商工会 |
|---|
やりたいことを5W1Hで整理し、どれから進めると効果的かを経営指導員と一緒に考えた。課題とあわせて経営計画に落とし込み、自社の現状とめざす姿を分かりやすくまとめた。
今後の展望
顧客情報を見える化し、3,000人の顧客を確保してから事業を承継することを目標にしている。息子2人が加わり、多様な加工や注文に応えられる体制を整えた。同業者にも補助金と商工会の支援を勧め、畳産業全体での共存・共栄をめざす。
この事例の取り組み
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小規模事業者持続化補助金について
直近の第19回の採択率は47.2%(応募16,576件・採択7,819件)。いま申請できる回の締切・補助額・対象経費は、最新の公募の解説でまとめています。
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