創業融資を借りられる人・借りられない人|会社員・年齢・業種・FCの条件
この記事の要点
日本政策金融公庫の創業融資は開業前から開業後おおむね7年以内の人が対象で限度額7,200万円。在職中・年齢・外国籍・業種・許認可・FCや事業買取・個人か法人か・物件契約の時期まで、創業前の人向けに公式情報で条件を整理します。
この記事の目次
日本政策金融公庫の創業融資(新規開業・スタートアップ支援資金)は、これから事業を始める人と開業後おおむね7年以内の人が対象で、融資限度額は7,200万円です。
確認した公式ページには、在職中かどうかや年齢の上限で申込を断る記載はなく、判断の中心は創業計画書で示す事業計画と、それをやり遂げる力です。
許認可が必要な業種は原則として許認可が要り、法人の資本金に充てるお金は借りられないため、物件・許認可・会社設立の順番を申込前に決めておきます。
会社を辞める前に借りられるのか、50代でも大丈夫か、フランチャイズや事業の買い取りでも使えるのか。創業前の不安は、人によって中身が違います。この記事では、日本政策金融公庫と自治体の制度融資について、公式ページで確かめた対象者の条件と、状況別の考え方をまとめます。
日本政策金融公庫と自治体の制度融資は、どんな人が使える?
日本政策金融公庫の新規開業・スタートアップ支援資金は「新たに事業を始める人」か「事業開始後おおむね7年以内の人」が使え、個人か法人かは問いません。
ただし、公庫は条件をひとつ付けています。新しく営む事業について適正な事業計画をつくっていて、その計画をやり遂げる力が十分にあると認められる人に限る、という条件です。公庫はこれを創業計画書(事業の中身、必要な資金、売上の見込みなどを書く公庫所定の書式)の提出などで確かめます。
自治体の制度融資(都道府県や市区町村が信用保証協会・金融機関と組んで用意する融資)でも、創業前の個人が対象に入ります。例として東京都の制度融資『創業』と、日本政策金融公庫の新規開業・スタートアップ支援資金を並べました。
| 項目 | 日本政策金融公庫 新規開業・スタートアップ支援資金 | 東京都 制度融資『創業』 |
|---|---|---|
| 対象者 | 新たに事業を始める人、事業開始後おおむね7年以内の人 | 事業を営んでいない個人で具体的な創業計画がある人、創業5年未満の中小企業者、分社化の会社など(都内に事業所があり、保証対象業種であること) |
| 融資限度額 | 7,200万円 | 3,500万円 |
| 返済期間 | 設備資金20年以内、運転資金10年以内(据置期間はいずれも5年以内) | 設備資金10年以内、運転資金7年以内(据置期間1年以内を含む) |
| 担保・保証 | 相談して決める(創業期は原則無担保・無保証人で利用可能) | 東京信用保証協会の保証付き(都が保証料の一部を補助) |
出典:日本政策金融公庫「新規開業・スタートアップ支援資金」、東京都創業NET「東京都中小企業制度融資『創業』」(いずれも2026年10月13日確認)
利率は公庫が基準利率で、女性、35歳未満または55歳以上の人などは特別利率になります。税務申告を2期終えていない人は、創業支援貸付利率特例制度で利率が0.65%下がります(公庫「融資のご案内」令和8年度版、令和8年8月1日時点)。限度額や利率は改定されることがあるため、申込前に最新の公式ページで確認が必要です。
公庫と制度融資の窓口の違いや併用の考え方は、創業融資はどこで借りるかの記事にまとめています。
会社員のままでも申し込める?別の会社を経営している場合は?
在職中の申込を禁じる記載は公庫の制度ページにはなく、問われるのは「新たに事業を始める人」に当たるかと、事業計画の中身です。
新規開業・スタートアップ支援資金の対象者欄には、勤務先の有無に関する条件は書かれていません。会社員のまま準備を進め、退職前に公庫へ相談すること自体は妨げられていません。ただ、公庫は面談で資金の使いみちと事業計画を聞き取り、店舗や事業所の予定地も訪問します。「いつ辞めて、いつ開業するのか」が決まっていないと、売上や経費の見込みを説明できません。
自治体の制度融資は、信用保証協会の創業関連保証を使う場合に時期の条件があります。全国信用保証協会連合会の案内では、事業を営んでいない個人なら1か月以内に開業する具体的な計画がある人(法人を設立する場合は2か月以内)が対象です。市区町村の認定特定創業支援等事業(市区町村が認定した創業セミナーや相談など)の支援を受けた場合は、6か月以内に延びます。退職日と開業日が保証の時期の条件に合うか、逆算して決めます。
すでに別の会社を経営している人については、公庫の制度ページに専用の記載はありません。東京都の制度融資『創業』と創業関連保証は、分社化(既存の会社が事業の一部を切り出して新しい会社をつくること)による新会社も対象に入れています。新しい事業がいまの会社とどう分かれているのか、売上・取引先・資金の流れを計画書で説明できるようにしておきます。
出典:全国信用保証協会連合会「創業をお考えの方」(2026年10月13日確認)
年齢の上限はある?外国籍の人は?
確認した公庫の制度ページに年齢の上限は書かれておらず、逆に35歳未満と55歳以上は利率が下がる対象として挙がっています。
新規開業・スタートアップ支援資金の特別利率の表では、1番目の要件が「女性、35歳未満または55歳以上の方」です。定年後に開業する人も、若くして開業する人も、年齢だけで外される扱いにはなっていません。審査で見られるのは、返済期間を通じて事業を続けられる計画かどうかです。
外国籍の人については、同じ特別利率の表に「外国人起業活動促進事業における特定外国人起業家で、新たに事業を始める方」が入っています。それ以外の在留資格の人がどう扱われるかは、公庫の公式ページでは確かめられませんでした。在留資格と在留期間を手元にそろえ、最寄りの支店に相談してから申し込みます。
出典:日本政策金融公庫「新規開業・スタートアップ支援資金」利率欄(2026年10月13日確認)
借りられない業種はある?許認可が取れる前はどうなる?
公庫はほとんどの業種で利用できるとしつつ、「業種や経営内容等によってはご利用いただけない場合がございます」と明記しています。
公庫の公式ページで確認できたのは、この注意書きまでです。どの業種が外れるかの一覧は、確認した範囲の公式ページには載っていませんでした。業種の名前だけでは対象かどうか判断がつかない事業を考えている人は、申込前に事業資金相談ダイヤル(0120-154-505)か支店で対象になるかを聞いておきます。
業種とは別に、使いみちで対象外になるお金もあります。公庫は次の3つを融資の対象外としています。
- 店舗付き住宅の住宅部分の資金
- 法人設立のための資本金
- 増資のための出資金
許認可(飲食店なら保健所の営業許可、酒類販売なら税務署の免許のように、法令で許可・免許・登録などが要る事業)が必要な業種は、原則として許認可がないと公庫の融資を利用できません。ただし、創業前などで今後許認可を受けることが確実な場合は、利用できることがあると公庫は案内しています。インターネット申込の必要書類にも、許可や届出が必要な事業では許認可証が挙がっています。
飲食店の内装工事のように、許認可の検査より前に支払いが来るお金があります。許認可の取得予定日、工事代金の支払日、融資の実行日を1枚の日程表に並べ、どの支払いを自己資金で先に払うかを決めてから相談します。
出典:日本政策金融公庫「国民生活事業をはじめてご利用の方へ」(2026年10月13日確認)
フランチャイズ加盟や事業の買い取りでも借りられる?
事業を譲り受けるための資金は公庫に融資を申し込めますが、フランチャイズ加盟を審査で有利に扱うという記載は公庫の公式ページにはありません。
フランチャイズ(FC、本部の看板とノウハウを使って加盟店として開業する形)で創業する場合も、申込の流れは同じです。公庫が見るのは、立地を踏まえた売上と経費の見込みです。本部が示す収支モデルをそのまま写すのではなく、出店予定地の家賃、人件費、ロイヤリティ(本部に払う使用料)を自分の数字で積み上げ、本部の数字との違いを説明できるようにします。
事業の買い取りで創業する場合、公庫の事業承継マッチング支援のQ&Aでは、事業の譲受に必要な資金の融資を申し込むことは可能としています。事業を営んでいない人でも、事業を受け継いで創業する「継ぐスタ」を希望すれば、マッチング支援を無料で利用できます。譲受の価格が新規開業・スタートアップ支援資金の限度額(7,200万円)の中に収まるか、自己資金をいくら入れるかを、交渉の前に試算しておきます。
出典:日本政策金融公庫「事業承継マッチング支援 Q&A」(2026年10月13日確認)
個人と法人のどちらで借りる?資本金はいくらにする?
公庫の創業支援サイトのQ&Aは、個人と法人で申込に大きな違いはなく「どちらが有利ということはありません」と答えています。
違いは書類と時期です。法人で借りる場合は履歴事項全部証明書(会社の登記簿の写し)が要り、融資の対象になるのは設立登記の後です。申込窓口も分かれ、個人は創業予定地、法人は登記上の本店所在地を管轄する支店が原則です。
公庫の『創業の手引』は、個人と法人を手続・税金・責任・信用の4項目で比べています。要点を表にしました。
| 項目 | 個人事業 | 法人 |
|---|---|---|
| 手続 | 簡単で費用がかからない | 設立に手間と費用がかかる |
| 税金 | 所得が低いうちは差が小さい | 所得が大きくなると節税効果が高い |
| 責任 | 事業の債務を全財産で弁済する | 出資分が限度(経営者が保証人になる場合あり) |
| 信用 | 法人のほうが優れるとされる | 一般的には信用力に優れるとされる |
出典:日本政策金融公庫『創業の手引』p.35
資本金は、法人設立の資本金に充てるお金を公庫から借りることはできません。資本金は自分で用意した自己資金から払い込みます。『創業の手引』によると、創業資金の総額に占める自己資金の割合は平均22.9%です(日本公庫「2025年度新規開業実態調査」)。資本金の額を決めるときは、自己資金のうち会社に入れる額と、開業後の生活費として手元に残す額を分けて考えます。自己資金に数えられるお金の範囲は創業融資の自己資金の記事にまとめています。
法人で借りる場合は、公庫の経営者保証免除特例制度も選べます。新たに事業を始める法人も対象で、法人から経営者への事業上必要のない貸付金などがないことが条件です。この特例は上乗せ利率がありません。
事務所や店舗はいつ契約する?
公庫は創業予定地が決まってから申し込むよう案内しており、物件の場所が決まっていない段階では計画が固まらないと説明しています。
理由は売上と経費の見込みにあります。立地が決まらないと、来店客数も家賃も決まりません。公庫は面談の際に店舗や事業所の予定地を訪問するとしています。一方で、賃貸借契約書が必要書類として求められるかどうかは、公庫の公式ページでは確かめられませんでした。
『創業の手引』の準備の流れでは、自己資金で足りない分の借入の見通しを立て、そのうえで店舗契約や雇用契約に着手し、業種によっては許認可の手続きに入る順番が示されています。実務では、次の順で進めると手戻りが少なくなります。
- 候補物件を1〜2件に絞り、家賃・保証金・内装費の見積もりを取る
- 物件の条件を入れた創業計画書を書き、公庫か自治体の窓口に相談する
- 融資の見通しが立った段階で賃貸借契約を結ぶ
- 許認可の申請を進め、融資の実行日と支払日をそろえる
申込から送金完了までの目安は、公庫の案内で1か月程度(土日・祝日を含む)です。家賃の発生日が融資の実行より早くならないよう、契約開始日を交渉しておきます。
出典:日本政策金融公庫 START「Q&A」(2026年10月13日確認)
専門家から見たポイント
創業融資は「誰なら借りられるか」よりも「計画書で何を示せるか」で結果が分かれ、公式ページの対象者の条件は入口を広くとっています。
向いているのは、物件・設備・仕入れの見積もりがそろい、開業日を日付で決められる人です。在職中でも、年齢が高くても、計画の数字が具体的なら申込の土台は整います。公庫の利率の特例や、市区町村の認定特定創業支援等事業による利率の優遇(東京都の制度融資では0.4%)は、条件に当たるかを申込前に確かめると差が出ます。特定創業支援の中身は特定創業支援事業の記事で扱っています。
融資を受けられる可能性を高めるには、公庫が審査で聞く点に先回りして答えます。公庫の面談では資金の使いみちと事業計画を聞き取り、予定地も訪問します。創業の動機、これまでの経験と事業のつながり、売上見込みの根拠(客単価×客数など)を、計画書の中で数字で示します。
よくある失敗は、順番の取り違えです。資本金を借りる前提で会社をつくる、許認可の取得前に工事代金の支払日が来る、物件を決めずに申し込んで計画を説明できない。この3つは、公庫の公式ページに書かれた条件を先に読めば避けられます。
審査で見られる点と落ちやすいパターンは、創業融資の審査対策の記事で詳しく扱っています。
よくある質問
会社に勤めながら融資は受けられる?
公庫の制度ページには、在職中の申込を禁じる記載はありません。対象者は「新たに事業を始める方」で、判断の中心は事業計画です。自治体の制度融資で創業関連保証を使う場合は、事業を営んでいない個人は1か月以内(法人設立は2か月以内)に開業する具体的な計画が求められるため、退職日と開業日を先に決めます。
別に会社を経営していても借りられる?
公庫の制度ページに専用の記載はなく、個別に支店で確認することになります。東京都の制度融資『創業』と創業関連保証は、分社化でつくる新会社も対象に入れています。新しい事業がいまの会社とどう分かれているかを、計画書で数字を使って説明できるようにします。
何歳まで借りられる?外国人でも借りられる?
確認した公庫の制度ページに年齢の上限は書かれておらず、35歳未満と55歳以上は特別利率の対象です。外国籍の人は、外国人起業活動促進事業の特定外国人起業家が特別利率の対象に挙がっています。それ以外の在留資格の扱いは公式ページで確かめられなかったため、支店に相談してから申し込みます。
創業融資を借りられない業種はある?
公庫は「業種や経営内容等によってはご利用いただけない場合がございます」としています。対象外の業種の一覧は、確認した公式ページには載っていません。業種で迷う場合は、事業資金相談ダイヤル(0120-154-505)で申込前に確認します。
許認可前に借りられる?
許認可が必要な業種は、原則として許認可がないと公庫の融資は利用できません。ただし、創業前で今後許認可を受けることが確実な場合は、利用できることがあると公庫は案内しています。取得予定日と支払日を並べた日程表を用意して相談します。
FCで創業すると有利?事業を買い取って創業する場合は?
フランチャイズ加盟を審査で有利に扱うという記載は、公庫の公式ページにはありません。事業の譲受に必要な資金は、公庫に融資を申し込むことができます。どちらの場合も、本部や売り手の数字ではなく、自分で積み上げた売上と経費の見込みを計画書に書きます。
個人と会社はどちらが有利?資本金はいくらにする?
公庫は、個人と法人の申込に大きな違いはなく、どちらが有利ということはないと答えています。法人の資本金に充てるお金は融資の対象外のため、資本金は自己資金から出します。創業資金総額に占める自己資金の割合は平均22.9%(日本公庫「2025年度新規開業実態調査」)で、会社に入れる額と生活費に残す額を分けて決めます。
事務所を借りてからでないと貸してくれない?
公庫は、創業予定地が決まってから申し込むよう案内しています。賃貸借契約書が必要書類かどうかは、公式ページでは確かめられませんでした。候補物件を絞って見積もりを取り、融資の見通しが立ってから契約する順番が手戻りの少ない進め方です。
ほかの質問はよくある質問(融資)にまとめています。
まとめ
創業融資の対象者の条件は入口が広く、在職中・年齢・個人か法人かよりも、計画の数字と準備の順番で差がつきます。次にやることは、物件候補・許認可の予定・自己資金の額を1枚に書き出し、公庫か自治体の窓口に相談の予約を入れることです。自分の状況で使えるか、どう準備すれば融資を受けられる可能性が高まるかは、専門家がお答えします。
参考資料
- 日本政策金融公庫「新規開業・スタートアップ支援資金」
- 日本政策金融公庫「国民生活事業をはじめてご利用の方へ」
- 日本政策金融公庫「創業予定の方」(手続きの流れ・必要書類)
- 日本政策金融公庫 START「Q&A」
- 日本政策金融公庫『創業の手引』(PDF)
- 日本政策金融公庫「融資のご案内」(令和8年度版、令和8年8月1日時点)
- 日本政策金融公庫「経営者保証免除特例制度」
- 日本政策金融公庫「事業承継マッチング支援 Q&A」
- 東京都創業NET「東京都中小企業制度融資『創業』」
- 全国信用保証協会連合会「創業をお考えの方」
確認日:2026年10月13日
中小企業診断士 神谷 恒一が内容を確認しました(2026年10月13日)。
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