従業員が会社を継ぎ、測定機を入れて品質を保証する
有限会社池工作
島根県の精密金属加工メーカー(従業員10名)国が公開している採択事例です
この事例のポイント
- 納期遅れや長時間残業が当たり前で、納品後に品質の不足が分かることもあった。
- 県の事業承継・引継ぎ支援センターと毎月話し合い、承継計画をつくって従業員に引き継いだ。
- 三次元測定機で工程のチェックを二重にし、精度の高い製品の品質を保証した。
- 案件ごとの原価を把握し、赤字で受けていた仕事を見直した。
事業の経緯
1984年に創業者が自宅の隣に工場を建てて金属加工を始め、翌年に会社を設立した。1990年に現在地へ移り、医療機器や自動車、半導体、ロボットなどの治具部品を手がけてきた。現代表は1994年に入社し、約20年前に創業者から承継の意向を聞いて工場長に就いた。
改善の進め方で創業者と考えが合わず、承継はなかなか進まなかった。2021年に創業者が引退を具体的に考え始め、県の事業承継・引継ぎ支援センターの専門家と月1回話し合って承継計画をつくった。2023年5月に従業員として会社を引き継ぎ、事業承継・引継ぎ補助金で三次元測定機を導入して品質の改善を進めた。
事業の内容
- 課題:品質と働き方医療機器や半導体、ロボットの治具部品などをつくるが、納期に間に合わず長時間残業が当たり前だった。図面どおりにつくったつもりでも、納品後に品質が足りないと分かることがあり、従業員が誇りを持てない状態が製品にも表れると考えていた。
- 課題:原価が見えない個々の案件の原価を把握しておらず、赤字で受けている仕事もあった。精度の要求が高い製品では、納品後に微細な誤差が見つかることもあった。
- 取り組み:承継計画づくり2021年に創業者が引退を具体的に考え始め、県の事業承継・引継ぎ支援センターの専門家と月1回、創業者と後継者の3者で話し合い、承継計画をつくった。2023年5月、工場長だった従業員が社長に就いた。
- 取り組み:三次元測定機の導入精度を保証するため、測定機を加えて製造工程のチェックを二重にすることにした。県の産業振興財団に資金の相談をし、申請書と計画書の確認や必要書類の助言を受けて事業承継・引継ぎ補助金を活用し、三次元測定機を導入した。
- 取り組み:個別採算の原価管理見積もりを担うようになった現社長が、案件ごとの利益の構造を把握し、採算の悪い仕事に偏らないよう売価を設定する仕組みを整えた。従業員が原価を理解して仕事ができるようにすることもめざした。
補助金を使った経費
記事の内容から、事業承継・M&A補助金の経費区分にあてはめた区分です。
| 設備費 | 三次元測定機 |
|---|
事業の効果
- 承継計画をつくったことで、承継の時期と事業の課題がはっきりした。
- 工程のチェックを二重にし、精度の高い製品の品質保証を強めた。
- 案件ごとの原価管理で、採算の悪い仕事を見直す土台ができた。
事業者の声
納期に間に合わない。長時間残業は当たり前、図面通りに作ったつもりでも、納品してから品質面で不十分であったとわかることがありました。
会社を良くしたいという思いは同じでも、会長は少しずつ変わっていければ良いとの意見だったのに対し、自分は改善すべきものは即改善するべきという意見を持っていました。
会長はご自分の活動年齢を意識されていましたので、早めに事業承継を行い、会長ご自身の人生でやるべきことに時間を充てたいお考えであることを聴いていました。事業承継が進まない過程では、私に事業を引き継ぐ覚悟ができていないとお叱りをいただいたこともありました。
従業員が、自分自身が製造に関わる仕事に関して、製造原価を理解して仕事ができるようになるためには、どうしたら良いか。利益を残すためには何をすべきか。自分が見積りをするようになってから考えるようになりました。
完璧な製品をお客様に納品したつもりでも、精度要求の高い製品では納品後の製品の微細な精度に誤差が出ているものもありました。
お客様にとっても、当社にとっても、より良い取引を増やして、会社を大きくしていきたいです。その上で、従業員が定時で帰宅できて、かつ待遇面でも良い状態を、日本一の会社を目指していきたいと考えています。
事業を渡す側と受け継ぐ側のコミュニケーションは大事だと思っています。後継者が思っていることを言わず、事業を承継した後に両者の関係がギクシャクすると、会社全体に及ぼす負の影響も出てくると思います。
島根県の精密金属加工メーカー(従業員10名)
出典
- 中小機構「補助金活用ナビ」の事例記事(当社が書き直し・要約。事業者の声は記事中の発言の引用です)
- 経費区分は、事業承継・M&A補助金の公募要領の区分に当社があてはめたものです
- 採択率:中小企業庁「採択結果」(15次)
相談先と計画づくり
| 県などの公的支援機関 | 島根県事業承継・引継ぎ支援センター |
|---|---|
| 県などの公的支援機関 | 公益財団法人しまね産業振興財団 |
承継の時期と、引き継いだあとの事業の課題を承継計画にまとめた。設備投資の計画では、外部環境をはっきりさせ、投資がどれだけの受注につながるかを重点的に確かめた。
今後の展望
取引の質を高め、会社を大きくしていく。従業員が定時に帰れて待遇も良い会社をめざす。機器が増えて工場が手狭になってきたため、敷地内に建て増しを計画している。
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