下請けの製版から抜け出し、DMとネット受注で踏みとどまる
株式会社メディアクロス水戸
茨城県の印刷・販促支援会社(従業員43名)国が公開している採択事例です
この事例のポイント
- 製版の下請けから元請けへ転換したが、震災と業界の縮小で売上が落ち込んだ。
- 外部のコンサルタントに任せた申請は5回不採択。社長が自分で計画を書くようにして初めて採択された。
- DMの印刷から発送までを受ける設備や、顧客がネットで入稿・校正できる仕組みを整えた。
- 地元の信用金庫が補助金を案内し、不採択の設備もリースや融資で導入を支えた。
事業の経緯
1965年に写真製版の会社として創業し、印刷会社の下請けとして製版を営んできた。1990年代にDTP化で製版の需要が急に減ると、制作部門の強化や地域情報誌の発行、ホームページ制作などに取り組み、ほぼすべてを元請けの仕事に切り替えた。2010年に社名を改め、株式会社に改組した。
2011年の震災で既存の売上の約4割を失い、2012年に社屋を直して印刷工場をつくり内製化を進めた。地域の同業者との統合を呼びかけたが実現せず、単独で力をつけることを決め、2014年からものづくり補助金に挑んだ。5回の不採択を経てDM関連設備で初めて採択され、その後もネット受注の仕組みなどで採択を重ねた。
事業の内容
- 課題:業界の縮小と震災製版の下請けから出発し、DTP化で製版需要が急減したあとは制作部門の強化で元請けへ転換した。しかし震災で2年のうちに既存の売上の約4割を失い、3期連続の赤字となった。印刷出荷額は県内で絶頂期から約6割減り、価格競争やネット印刷との競合、地域外への仕事の流出も重なった。
- 課題:投資資金の不足2012年に被災した社屋を直して印刷工場をつくり内製化を進めたが、借入が増えた。製本設備や小ロットに対応できる印刷設備が必要だったものの、赤字の解消中で投資資金を用意するのが難しかった。
- 取り組み:不採択からの立て直し2014年にメインバンクの信用金庫から説明会の案内を受け、製本設備やオンデマンド印刷設備でものづくり補助金に5回申請したが、いずれも不採択だった。コンサルタント任せで計画が形式的になり、革新性を表せなかったと振り返る。不採択の設備も信用金庫のリースや融資で導入した。
- 取り組み:DM関連設備元市の産業活性化コーディネーターの支援を受け、社長自身が計画書を書き、10回以上の面談で練り上げた。6回目でDMの印刷・加工、宛名印刷、封入・発送までを受けるための設備が初めて採択された。
- 取り組み:ネット受注の仕組みコロナ禍で販促やイベントの仕事が激減したため、2021年ごろ、顧客がネット上でデータを入力・校正できる非接触型の受注の仕組みで2度目の採択を受けた。2023年にはネット受注の拡大、遠隔地の顧客への対応、生産性の向上のための設備で3度目の採択を受け、自社で書いた計画で事業再構築補助金にも採択された。
補助金を使った経費
記事の内容から、ものづくり補助金の経費区分にあてはめた区分です。
| 機械装置・システム構築費 | DM関連設備 |
|---|---|
| 機械装置・システム構築費 | 非接触型のネット受注システム |
| 機械装置・システム構築費 | ネット受注の拡大と生産性向上のための設備 |
事業の効果
- DM事業の採択後、2019年7月からの期の途中まで月平均15%の売上拡大を実現した。
- コロナ禍の打撃を受けたが、DM事業によって売上の落ち込みを抑え、収益を維持できた。
- 2024年の売上は2019年比3%減にとどまり、業界の中では健闘している。
- 補助金への挑戦を通じて計画づくりの力がつき、事業再構築補助金は自社で書いた計画で採択された。
事業者の声
事業計画の革新性が弱かった。コンサル主導で作成を依頼してしまい、同社との対話が少なく、形式的に計画づくりをしてしまったことで革新性を表現できなかったことや加点要素の取り込みができていなかったことも採択に影響したかもしれない。
当時は採択には至らなかったが、ものづくり補助金へのチャレンジは事業計画立案等に有効だった。
当時の印刷業界は継続的な減少傾向にあったので、同社の15%アップは優秀な成果だったと思う。
逆に、DM事業に取り組まなければ、売上減少額はさらに大きなものになっていた。全体の収益を伸ばすことはできなかったが、維持できたこと自体が大きな成果だったと思う。
ものづくり補助金の制度があったおかげで、新しいことに積極的に取り組むことができた。それをもって大成功に至ってはいないものの、何もやらずにいる状態とは大きな開きがあると感じている。また、新たなチャレンジをすることで見えてくるものがある。それが次のチャレンジへの足掛かりになるというメリットもある。
一歩踏み出すことで次の景色が見えてくる。ものづくり補助金は“踏み出す背中を押してくれる制度”。中小企業の経営は“丘を登っているようなもの”で、一歩踏み出すことで、丘の向こう側に広がる海が見えることがあるが、踏み出さないと丘の頂上しか見えない。
ただし、広がる海に出ようとすると、船が小さすぎることや馬力が足りないことに気づかされ、結局は波打ち際でジタバタしている。
ここで辞めた社員たちは、若くてやる気のある人たち。こうした社員たちに希望を持たせるためにも積極的な取り組みは必要だ。
稼げる業界を作らなければならない。東京へ行かなくても、地元で十分な収入でやりがいのある仕事があるという状態を作る必要がある。そのためには、効率化できる生産部門はとことん効率化して競争力を持たせ、地域外に流出していた難易度の高い業務はすべて取り込める体制を整備し、次世代に必要な業務への取り組みを強化していく必要がある。地域事業者との事業統合を進める提案は実現していないが、地域の印刷業界において“集約が必須”だ。
茨城県の印刷・販促支援会社(従業員43名)
出典
- 中小機構「補助金活用ナビ」の事例記事(当社が書き直し・要約。事業者の声は記事中の発言の引用です)
- 経費区分は、ものづくり補助金の公募要領の区分に当社があてはめたものです
- 採択率:中小企業庁「採択結果」(23次)
相談先と計画づくり
| 信用金庫 | 水戸信用金庫 |
|---|---|
| 民間の専門家 |
外部に任せた計画では革新性を伝えられなかった反省から、社長自身が計画を書き、支援者と一緒に練り上げた。審査する側を顧客と考え、伝わる計画にすることを意識した。
今後の展望
生産部門はとことん効率化し、地域の外に流れていた難しい仕事を取り込める体制を整える。地元で十分な収入とやりがいのある仕事がある状態をつくり、若い社員に希望を持たせるためにも積極的な取り組みを続ける。地域の印刷業界は集約が必要だと考えている。
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