包餡を機械化し、繁忙期の徹夜作業から抜け出す
合同会社糸賀製餅店
島根県の餅製造業(従業員14名)国が公開している採択事例です
この事例のポイント
- 事業を広げすぎて赤字が続いたが、地元の商工会の助言で地域の餅店としての原点に戻った。
- 2回の不採択のあと、期待する効果を数字で示す計画に直して採択された。
- 熟練者の手作業だった包餡を機械にし、繁忙期の負担を大きく減らした。
- 設備投資で現場に余裕ができ、販路を広げることを考えられるようになった。
事業の経緯
1976年に両親の農業から転じて餅の製造を始め、委託加工で堅調に営んできた。父が亡くなったときは家業を継ぐか迷ったが、母や親戚とともに続けると決めた。2000年代に入ると祝い事の簡素化で需要が減り、喫茶や百貨店への出店など事業を広げたものの赤字が続いた。
地元の商工会の助言で地域の餅店としての原点に戻り、餅を48時間柔らかく保つ独自の製法を開発した。2019年に法人化し、コロナ禍ではスーパーでの売上が伸びて製造が追いつかなくなった。2回の不採択を経て、2021年度にものづくり補助金に採択され、包餡を機械化した。
事業の内容
- 課題:広げすぎた事業1976年に両親の農業から転じて餅の製造を始め、当初は委託加工で利益も堅調だった。2000年代に入ると祝い事の簡素化で餅の需要が減り、喫茶、催事販売、百貨店への出店を試みたが赤字が続いた。地元の商工会に相談し、事業を広げすぎず地域の餅店に集中するよう助言を受けて原点に戻った。
- 取り組み:独自製法の開発触ったときに柔らかい方が売れるのではと考え、もち米の餅を48時間柔らかく保つ独自の製法を開発した。特許は取らず、製法は外に出していない。
- 課題:早朝の製造と繁忙期の負担コロナ禍では持ち帰り需要でスーパーでの売上が落ちず、製造が追いつかなくなった。朝8時の納品に間に合わせるため、製造開始は6時から5時、4時へと早まった。お彼岸やお盆には4日間、毎日2,000〜3,000個をつくり、3日間は昼夜通しの作業だった。包餡は熟練者4名が手作業で行い、2,000個に約3時間かかっていた。
- 取り組み:計画の見直しと設備の導入商工会は伝統の技術と独自の製法を、工程の改善と体制の強化という面から革新的な取り組みとして計画に組み立てた。不採択だった申請書では効果が定性的だったため、数値で示す形に直し、3度目で採択された。包餡を自動化して熟練者でなくても対応でき、繁忙期の量産に耐えられるよう自動包餡機を、あわせて専用洗浄機を導入した。
- 取り組み:製造ラインの最適化採択後は、平常時には段取りや洗浄の手間から手作業の方が早いこともあり、機械の稼働率に課題が残った。手作業の工程が機械の速さに追いつかないボトルネックもある。商工会と県の中小企業支援センターが専門家の派遣を調整し、地元の大手パソコンメーカーとも製造ラインや動線、作業工程の見直しに取り組んでいる。
補助金を使った経費
記事の内容から、ものづくり補助金の経費区分にあてはめた区分です。
| 機械装置・システム構築費 | 自動包餡機 |
|---|---|
| 機械装置・システム構築費 | 専用洗浄機 |
事業の効果
- お彼岸やお盆に3日間昼夜通しだった作業が、7時間で終わるようになった。
- 社員の負担が大きく軽くなった。
- 納品先のスーパーが採択時の20店舗から42店舗に増えた。
- 広島県の大手スーパーへの卸売が始まり、テレビの取材も受けた。
- つきたての餅を瞬間冷凍した冷凍餅を商品化し、オンラインショップで売上を伸ばしている。
事業者の声
父が亡くなったとき、家業を継ぐかどうか迷った。しかし、母や親戚とともに続けていくしかないと決意した。最初は委託加工業だったが、粗利も高く、経営は堅調だった。
デパートでの販売は夢だったが、相当な赤字を出した。困り果てて地元の斐川町商工会に相談したところ、『事業を広げすぎるのはやめて、地域の餅店として集中すべき』との助言を受け、目が覚めた。
触ったときに柔らかい方が売れるのでは。
コロナ禍は当社にとって追い風だった。持ち帰り需要が増えたことで、スーパーでの当社製品の売上は落ちなかった。
感覚でやっていたことを、支援機関との対話を通じて数値で“見える化”できたのが大きかった。それでこの取り組みが面白くなってきた。
お彼岸やお盆のピーク時には、3日間24時間体制で作業していた。それが機械導入によって一気に楽になり、現在では7時間で作業が完了するようになった。社員の負担も大きく軽減された。
販路拡大を考えられるようになったのは、ものづくり補助金を活用して設備投資ができたからである。それまでは現場が疲弊していた。
当社は固定費率が高いので売上が損益分岐点を超えると収益性が飛躍的に向上する。
つきたての餅を瞬間冷凍し、冷凍餅として販売する。
経営が厳しい時期には、“どうやってやめようか”と考えていたこともあった。しかし今は、“いとがの餅”として、次の世代に残していけるかもしれないと思えるようになった。
島根県の餅製造業(従業員14名)
出典
- 中小機構「補助金活用ナビ」の事例記事(当社が書き直し・要約。事業者の声は記事中の発言の引用です)
- 経費区分は、ものづくり補助金の公募要領の区分に当社があてはめたものです
- 採択率:中小企業庁「採択結果」(23次)
相談先と計画づくり
| 商工会 | 斐川町商工会 |
|---|
伝統の技術と独自の製法を、工程の改善と体制の強化という面から革新的な取り組みとして組み立てた。不採択だった申請書と採択時の申請書を比べ、期待する効果を定性的な書き方から具体的な数値に置き換えた。
今後の展望
製造ラインや動線の見直しで機械の稼働率を高め、ボトルネックを解消する。平常時の生産量を確保するため、Uターンで入った営業経験のある社員とともに営業を強め、冷凍餅を新たな主力に育てて海外も視野に入れる。店を次の世代に残せるかもしれないと考えている。
この事例の取り組み
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ものづくり補助金について
直近の23次の採択率は35.1%(応募1,275件・採択448件)。いま申請できる回は「新事業進出・ものづくり補助金」として募集されています。いま申請できる回の締切・補助額・対象経費は、最新の公募の解説でまとめています。
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