ベースアップに使える補助金は?賃上げ特例で上がる補助と届かないときの返還
この記事の要点
ベースアップをする会社は、補助金の賃上げ特例で補助上限が上がります。新事業進出・ものづくり、省力化、持続化の特例の要件、給与支給総額の伸びとの違い、届かなかったときの返還と減点を公募要領で整理しました。
この記事の目次
ベースアップ(基本給の底上げ)をする会社は、補助金の「賃上げ特例」を使うと補助上限が上がり、持続化補助金では上乗せも受けられます。新事業進出・ものづくり補助金、省力化補助金、持続化補助金に、それぞれの特例があります。
ただし特例は、約束した賃上げに届かないと、上乗せ分の返還や補助金が出ないことにつながります。賃上げの計画は、売上の見込みと人件費の余力から逆算して決めます。
ベースアップや昇給を予定していて、それを補助金でどう生かせるかを知りたい方に向けた記事です。
新事業進出・ものづくり補助金、省力化補助金、持続化補助金の公募要領から、賃上げで補助が増える特例と、届かなかったときの扱いを整理します。
ベースアップで補助上限が上がる特例
補助金の賃上げ特例は、通常の賃上げ要件より高い賃上げを約束する代わりに、補助の上限を上げるしくみです。主な3つの制度の特例を表にします。
| 制度 | 特例の要件 | 増える補助 |
|---|---|---|
| 新事業進出・ものづくり補助金 | 賃上げ特例:一人当たり給与支給総額の年平均成長率を合計+6.0%以上、事業場内最低賃金を合計+50円以上(毎年)。適用で補助上限額を引上げ | 補助上限額の引き上げ |
| 省力化補助金(一般型) | 大幅賃上げ特例:1人当たり給与支給総額 年平均成長率+3.5%に加え更に+2.5%以上(合計+6.0%以上)、かつ事業場内最低賃金を最低賃金+50円以上の水準 | 大幅賃上げ特例の引き上げ額:5人以下250万円/6~20人500万円/21~50人1,000万円/51~100人1,500万円/101人以上2,000万円 |
| 持続化補助金(通常枠) | 補助事業実施期限日を終点とした連続する12か月とその前年同月の12か月を比較し、従業員1人あたり給与支給総額を3.0%以上増加させること(2027年4月1日〜2028年3月31日と前年同月を比較) | 賃金引上げ特例対象事業者は150万円の上乗せ(最大200万円) |
出典:中小企業省力化投資補助事業(一般型)公募要領(第8回公募) p.12『1-5(3) 特例措置要件【大幅賃上げ】』台帳で見る
賃上げの加点まで含めた制度ごとの条件は補助金の賃上げ加点とは?で取り上げています。
ベースアップと給与支給総額の伸びの違い
ベースアップは基本給の底上げですが、補助金の賃上げ要件は「1人当たり給与支給総額」の伸びで見ます。給与支給総額には基本給だけでなく、賞与や残業代などの手当も入ります。
- ベースアップをしても、賞与を減らすと給与支給総額は伸びないことがある。
- 残業が減ると、基本給が上がっても総額の伸びが小さくなることがある。
- パートを増やすと、数え方しだいで1人当たりの額が下がることがある。
基本給の上げ幅だけでなく、年間の給与支給総額でいくら伸びるかを計算しておきます。何を含めるかは給与支給総額に含まれるものは?で取り上げています。
事業場内最低賃金を上げる要件の中身
賃上げ特例には、給与支給総額とは別に、社内でいちばん低い時給(事業場内最低賃金)を上げる要件がついていることがあります。新事業進出・ものづくり補助金と省力化補助金の特例は、どちらも事業場内最低賃金の引き上げを求めています。
パートやアルバイトの時給を一律で上げると、事業場内最低賃金の要件を満たしやすくなります。ベースアップを正社員だけで考えず、時給で働く人の賃金も一緒に計画します。事業場内最低賃金を引き上げる助成金は業務改善助成金とは?で取り上げています。
賃上げ特例に届かなかったときの扱い
特例で上限を上げた分は、賃上げに届かないと返すことになります。省力化補助金は「大幅賃上げ特例要件(+6.0%・+50円)のいずれか未達の場合、補助上限引き上げ額分を返還」としています1。
持続化補助金はさらに厳しく、通常枠および賃金引上げ特例の要件を1つでも満たさない場合、補助金は交付されない(全体が交付対象外)としています。上乗せ分だけでなく、補助金の全体を受け取れなくなる点に気をつけます。届かなかったときの扱いは効果報告で目標に届かなかったら?でも取り上げています。
未達のときの他の補助金での減点
賃上げの特例や加点で採択されて届かなかった場合、その後に申請するほかの補助金でも不利になります。持続化補助金の公募要領は「賃金引上げ特例・賃金引上げ加点で採択され未達の場合、様式第14で未達報告から18ヵ月の間、中小企業庁所管補助金への申請で大幅に減点」としています2。
次の補助金も使う予定がある会社は、届く見込みのある賃上げ幅で特例を選びます。申請の順番を考えるときは補助金の準備はいつから始める?もあわせて確かめてください。
専門家から見たベースアップと補助金のポイント
ベースアップは、補助金をもらうためではなく、人を採って辞めさせないためにするものとして計画すると、無理のない数字になります。省力化補助金の採択事例28件では、課題に人手不足を挙げた事例の割合が100.0%で、省力化と賃上げを一緒に進める計画が中心です。
特例を選んでよい会社
すでに毎年の昇給の仕組みがあり、設備で生まれる利益の増え方から、賃上げの原資を説明できる会社です。
特例を見送ったほうがよい会社
売上が季節や取引先に大きく左右され、数年先の人件費の余力が読めない会社です。通常の要件で申請し、賃上げは自社のペースで進めるほうが安全です。省力化補助金で人手不足を示す書類はカタログ注文型の人手不足要件の証拠書類で取り上げています。
間違えやすい点
ベースアップと補助金で間違えやすいのは、期間の取り方と、表明の時期です。
賃上げを比べる期間は制度ごとに決まっています。申請の直前にベースアップをすると、比べる元の数字が上がり、その後の伸びが小さく見えることがあります。
賃上げの目標は、決められた時期までに従業員に表明しておく必要があります。社内での発表の方法と日付を記録に残しておきます。
従業員の数で補助上限が変わる制度は、補助金の従業員数の数え方で数え方を確かめてください。
よくある質問
定期昇給だけでも賃上げ要件を満たせますか?
給与支給総額が要件の割合だけ伸びれば満たせます。ベースアップか定期昇給かは問われず、年間の総額の伸びで判断されます。
賃上げ特例と賃上げの加点は両方使えますか?
制度によって組み合わせ方が違います。公募要領で、特例と加点の両方を選んだときの条件と、届かなかったときの扱いを確かめます。
従業員がいない会社でも賃上げ特例を使えますか?
ほかの質問も見る補助金のよくある質問出典(2件)
- 中小企業省力化投資補助事業(一般型)公募要領(第8回公募) p.13『1-6(3)』
- 持続化補助金 通常枠 第20回 公募要領 第8版 p.42『13.(16) 賃金引上げに係る申請内容未達時の対応』
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