鋳物メーカーがジュエリーの会社を迎え入れ、新しいブランドを育てる
株式会社能作
富山県の鋳物メーカー(従業員253名)国が公開している採択事例です
この事例のポイント
- 産業観光で来場者と社員の関係を深めたいと考え、結婚10周年を祝う式の事業を始めた。
- ジュエリーに必要な宝石の調達や仕上げの技術が自社になく、一貫生産できる会社との統合で補った。
- 取引のある地方銀行から補助金を紹介され、代表が自ら申請書と計画書を書いた。
- 統合した会社の社員を招いて理念を共有し、意見交換や技術交流で企業文化の融合を進めている。
事業の経緯
1916年に創業し、1965年に会社を設立した鋳物メーカー。先代のもとで職人のものづくり、自社ブランドの製品、直営店で事業を広げた。現代表は2011年に通販会社から転じて入社し、本社の拡張移転にあわせて2017年に産業観光を立ち上げ、2019年には来場者が年13万人になった。
来場者と社員の関係を深めるため、旅行業の免許を取って結婚10周年を祝う式の事業を始め、ジュエリーにも取り組もうとした。2023年3月に父から事業を継ぎ、同年6月にジュエリーを一貫生産できる会社と経営統合した。取引のある地方銀行に紹介された事業承継・引継ぎ補助金で、2社の技術を生かしたブランドづくりを進めている。
事業の内容
- 課題:来場者との関係づくり1916年創業の鋳物メーカーで、職人のものづくりと自社ブランドの製品、直営店で事業を広げてきた。本社の拡張移転にあわせて2017年に産業観光を始め、器で地元の食材を味わえる食事処と、鋳物づくりを体験できる工房を開いた。来場者は2019年に年13万人になったが、来てくれた客ともっと深い関係を築く方法を探していた。
- 取り組み:結婚10周年の式旅行業の免許を取り、宿泊施設と組んだツアーで結婚10周年を祝う式を企画した。客の人生の節目を通じて社員と客の絆を築く事業で、申し込みは県外や海外からも増えた。
- 課題:ジュエリーの技術式とあわせてジュエリーに取り組もうとしたが、宝石の調達や宝石を留める爪をつくる技術、ジュエリー特有の繊細な仕上げの技術が自社にはなかった。
- 取り組み:経営統合M&Aの仲介会社が持ち込んだ譲渡情報から、2023年6月に新潟県の、地金の鋳造から原型、細工、石留め、仕上げまでジュエリーを一貫生産できる会社と経営統合した。そうした会社が希少で、技術力も高いことが決め手になった。デューデリジェンスや対話、条件の調整を重ねたうえで統合した。
- 取り組み:ブランドづくり取引のある地方銀行から、M&A後の投資に使える事業承継・引継ぎ補助金を紹介された。代表が自ら申請書と計画書を書き、銀行は公募要領に沿った要件の確認と、計画の書きぶりの見直し案を出した。補助金で、2社の技術を組み合わせたジュエリーブランドを開発するための試作品を作り、ブランドの価値づけと流通のための構築を外部に委託した。
補助金を使った経費
記事の内容から、事業承継・M&A補助金の経費区分にあてはめた区分です。
| 原材料費 | 試作品の製作 |
|---|---|
| 委託費 | ブランド構築の業務委託 |
事業の効果
- 自社になかったジュエリーの一貫生産の技術を取り込み、2社の技術を組み合わせた製品の研究開発が始まった。
- 統合先の社員にも混乱はなく、今後の事業への期待が高まった。
- 統合先の社員を招いて理念を学んでもらい、意見交換会や技術交流で2社の企業文化を近づけている。
事業者の声
現場でデザインされた製品から次々とヒット商品が生まれていました。父は自ら職人として現場に立ち、職人の地位向上を掲げながら、ものづくりを楽しんでいました。その姿に従業員も感化され、技術の向上や製品開発に積極的に取り組んでいました。
私にとって父はスーパーマンのような存在。父が実現しようとする未来を私が支えたい。その想いで働いていました。
父はカリスマ性を持ち、自分の目指す世界観を具現化してきた人。夫は能作の製造現場で職人の道を究めようとしている。では、私はどこを目指すべきか。迷いながら自問自答していた時期がありました。この頃、本社の拡張移転に合わせ、産業と観光を融合した「産業観光」を本格化したいという構想を父から聞きました。
産業観光に取り組むことは、地域を盛り上げるだけでなく、伝統工芸の現場で働く職人の地位向上を目指し、未来を担う子どもたちの憧れの仕事にしていきたい、そんな父の想いも込められていることを理解していました。その想いを実現するには、職人が見ている現場の世界観とは別の視点が必要ではないかとも考えました。これは父にはできないことかもしれない。自分自身が持つ感性や、通販誌編集の経験を活かし、新しい挑戦ができるかもしれないと感じていました。
この意見を聞いて、来場されるお客様と当社社員との間に関係性を築けるサービスを提供したいと考えるようになりました。
お客様の人生において大切な節目である結婚10周年を祝う錫婚式事業を通して、当社社員とお客様の絆を築ける。お客様と社員の双方が幸せを感じられると考えました。
錫婚式を事業として取り組みたい、ブライダルを企画したい。
ちょうど私自身が結婚10周年を迎えるタイミングでした。父と社員が、私と夫に錫婚式をプレゼントしてくれました。
結婚指輪の上に錫製のリングを重ねた時、なんとも言えない幸せを感じました。こんなに自分が幸せに感じることだから、お客様にもぜひ体験してほしい。これは私が取り組むべき事業だと確信しました。
ジュエリーに使う宝石の調達や宝石を固定する爪を作る技術など、これまでの自社にはないノウハウが必要でした。また、ジュエリーの製作は繊細で、専門的な仕上げの技術を必要とします。そうした課題を父にも相談していました。
父はこの情報をすぐに私のところに持ってきてくれました。こちらからジュエリーを作れる会社のM&A情報を要求したわけではなく、偶然でした。宝石や金属の調達から仕上げまで一貫して生産できる会社自体が希少とのことでしたので、大変魅力的に感じました。
やりたいことが明確になっていましたので、事業承継・引継ぎ補助金の申請書と計画書の作成はスムーズでした。
ユーボネクスの統合に際しては、先方の従業員は混乱することもなく、むしろ今後の事業展開への期待が高まっていました。
契約成立の初期段階で、父と私がユーボネクスを訪れ、能作とユーボネクスの2つの会社が一緒に目指す世界観や、世に出していく価値について従業員に話をしました。その際、社員の表情を見て、良い感触を持つことができました。
今日の伝統工芸は、技術が継承されず、日々失われていく状況に直面しています。伝統工芸に必要な技能や技術を残す方法として、M&Aの活用していく必要があると考えています。
富山県の鋳物メーカー(従業員253名)
出典
- 中小機構「補助金活用ナビ」の事例記事(当社が書き直し・要約。事業者の声は記事中の発言の引用です)
- 経費区分は、事業承継・M&A補助金の公募要領の区分に当社があてはめたものです
- 採択率:中小企業庁「採択結果」(15次)
相談先と計画づくり
| 地方銀行 | 富山銀行 |
|---|---|
| 民間の専門家 |
ものづくりの先にある客の体験価値をつくるという方向を定め、2社の技術を組み合わせた製品開発とブランドの価値づけ・流通を計画の柱にした。やりたいことがはっきりしていたため、銀行の要件確認と書きぶりの見直しを受けながら代表が自ら書き上げた。
今後の展望
2社の技術を組み合わせた製品開発とブランドの価値づけを進め、ものづくりの先にある客の体験価値をつくる。社員の交流を続けて企業文化を一つにしていく。失われつつある伝統工芸の技能を残す方法として、今後もM&Aを生かす考え。
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事業承継・M&A補助金について
直近の15次の採択率は61.3%(応募551件・採択338件)。いま申請できる回の締切・補助額・対象経費は、最新の公募の解説でまとめています。
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