事業承継・M&A補助金2023年(第5回)・経営革新枠製造業新潟県

精密測定の設備を入れ、半導体・医療の部品加工へ踏み出す

株式会社和田挽物

新潟県の金属小型部品の加工業(従業員19名)国が公開している採択事例です

この事例のポイント

  • 理念やビジョンがなく離職が続いた職場を、交流の場づくりから立て直した。
  • 言われた仕様どおりにつくる受け身の形から、仕様から提案する形へ切り替えた。
  • アウトドアブームの沈静化を受け、半導体・医療機器の部品へ進む計画を立てて測定設備を入れた。
  • 地元の商工会議所に将来の構想まで話しておき、補助金や計画づくりの支援を続けて受けている。

事業の経緯

1981年、先代と現代表の父が共同で会社を興し、洋食器の持ち手の加工から始めた。現代表は高校卒業後に東京で働いたのち、2001年に入社した。当時の職場には理念やビジョンがなく、トップダウンの経営のもとで人の入れ替わりが続いていた。

2016年に取締役になると懇親会などで社内の関係づくりを始め、2019年の事業承継で代表に就いてからは株式会社化と移転を進めた。仕様どおりに作る受け身の形から提案型へ切り替え、アウトドアブームの沈静化を受けて半導体製造装置や医療機器の部品加工への進出を決めた。その計画のもとで2023年に事業承継・引継ぎ補助金に申請し、三次元測定機を導入した。

事業の内容

  1. 課題:人が定着しない職場1981年に洋食器の持ち手の加工から始まった会社で、現代表は高校卒業後に東京で働いたのち、20歳の2001年に入社した。当時は理念やビジョンがなく、職人気質の先代によるトップダウンの経営のもと、従業員同士の意見がぶつかっては人が辞めることが繰り返されていた。
  2. 課題:受け身の事業形態と需要の変化受注した仕様どおりに生産するやり方では、新しく生産を打診してくる顧客の要望に応えきれなかった。2019年ごろからのアウトドアブームで受注は伸びたが、2022年後半から落ち着き、次の柱が必要になった。
  3. 取り組み:社内の関係づくり2016年に取締役になったころから社員の懇親会を始めた。忘年会はあえて業務時間中に開き、飲食費は会社が持って全員が参加できるようにした。この取り組みは今も続いている。2019年に代表になってからは、有限会社から株式会社に変え、会社を移転した。
  4. 取り組み:提案型への転換と新分野への進出顧客の要望を自社で取りまとめ、仕様から提案する形に切り替えた。そのうえで、アウトドア関連から半導体製造装置や医療機器の部品加工へ進む方針を立てた。
  5. 取り組み:測定設備の導入事業承継・引継ぎ補助金(経営革新枠)を使い、半導体製造設備の部品加工に進むために、より精密な加工と測定ができるよう三次元測定機を導入した。計画には展示会への出展による販売促進も盛り込み、地元の商工会議所が出る全国の展示会に加え、自分で申し込んだ催しにも出ている。

補助金を使った経費

記事の内容から、事業承継・M&A補助金の経費区分にあてはめた区分です。

設備費三次元測定機

事業の効果

  • 半導体製造装置や医療機器の部品加工に進むための、精密な加工と測定の体制が整った。
  • 地元の市の品質管理の認証を取得した。
  • 計画どおり全国の展示会に出て、新しい販路を探している。

事業者の声

幼少の頃、父が経営する工場に出入りし、掃除や雑務を手伝った経験があります。いずれは自分もここで働くのだろうなと、うっすら思っていた記憶があります。ただ、学校卒業後にそのまま父が経営する工場に入社することに抵抗を感じ、一度東京に出て働いてみることにしました。

ゼロから事業を立ち上げていくには、相当な時間とエネルギーを消費する必要があります。自分には、親の会社で働く選択肢もあり、それは自分のキャリアのベースになる可能性があるのではないかと考えました。

従業員同士の仲は良かった記憶はあるものの、会社に理念やビジョンはありませんでした。今思うと、社長から現場の従業員まで、ただ目の前の仕事を必死にこなしていただけだった気がします。

日々、各々が目の前の仕事を一生懸命やっていて、その中でお互いの意見がぶつかってしまう。そして、人が辞めていく。ああ、また辞めてしまったなということを都度感じていました。

何かを成し遂げたい、何かを変えたい、何かを大事にしたいという「本気の想い」が大切だと思っています。「本気の想い」があって何かを言う、行動を起こせば、その言葉を発する人間の覚悟が伴います。逆に、「本気の想い」が伴わない発言や行動では、他人を動かすこともできないし、自分自身の意志も継続できないと考えています。

会社の中に“和”を作りたかった。経営の土台となる人の関係性を強くしたいと考えていました。

忘年会は、あえて業務時間中に実施し、飲食にかかる費用も会社負担としました。意図としては、全員参加してほしいということを考えていました。現在でもこの取り組みは続けています。

部品制作を受注して、仕様に沿って生産している事業形態では、新規に生産を打診してくれる顧客のニーズは満たせません。顧客が展開する製品・サービスにあった部品を積極的に提供するため、自社で顧客の要望を取りまとめて、仕様から提案していく必要があります。

商工会議所青年部に参加し、普通の付き合いであれば手の内を明かさないような仕事の内容、例えば、失敗したことから学んだ工程の工夫など、自社だけでは経験できないトライ&エラーの知恵を得ることもできています。補助金の活用についても、同じ経営者同士で情報交換をしています。

燕商工会議所の担当者には、特定の補助金の申請のことだけでなく、将来の事業シナリオを話して理解してもらっています。投資に対して補助金を活用する場合でも、当社のシナリオを理解いただいている状態でのアドバイスが得られるため、これまで継続して的確な支援をいただいています。

社員は、何も働きかけなければ現状からの変化を避ける傾向があると感じています。企業としては、工夫と探求を続けることが、事業を継続していくための必須条件として考えています。設備投資がひと段落した状況にあるので、内部の強化に取り組んでいきます。

従業員が、自分が勤める会社について誇りを持ち、家族や知人に語れるような状態にしていくべき時期が到来していると感じています。

新潟県の金属小型部品の加工業(従業員19名)
出典

相談先と計画づくり

商工会議所燕商工会議所

経営者が描く将来の事業シナリオを商工会議所が継続して聞き取り、事業環境の分析から計画づくりまでを支援した。計画は半導体製造設備の部品加工への進出を軸にまとめ、展示会出展による販売促進も盛り込んだ。あわせて経営力向上計画や事業継続力強化計画づくりの提案も受けた。

今後の展望

設備投資がひと段落したため、今後は内部の強化に力を入れる。経営理念と10年ビジョンを今年度中につくり、次年度に理念と結びついた人事制度を入れる予定。ISOの取得もめざし、社員が自社に誇りを持てる会社にしたいと考えている。

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