プラント工事を一貫で請け負い、受け身の営業から抜け出す
有限会社戸崎鐵工所
長野県の鉄工所(従業員7名)国が公開している採択事例です
この事例のポイント
- 単発の受注に左右される受け身の営業で売上が安定せず、ベテランの給与も長く上がっていなかった。
- 取引先からの工事の打診を機に、調査・設計から製造・設置までを一貫で請け負う事業を立ち上げた。
- 地元の信用金庫が県外の工事現場まで足を運び、経営革新計画と補助金の活用を提案した。
- 計画づくりを通じて、自社の強みを顧客の利益につなげる道筋を具体的に描けるようになった。
事業の経緯
1889年にボイラー製造から始まり、のちに工場の高圧配管設備の製作やメンテナンスへと業容を広げた。現代表は大学で建築設計を学び、都内の設計事務所に勤めたのち、2008年に家業に入った。現場の職人として働くなかで、顧客の依頼を待つ受け身の営業に課題を感じるようになった。
30代半ばから業績やコストの数字を見るようになり、従業員の給与を上げるには事業の柱が必要だと考えた。取引先から工事の仕事を打診されたことを機に地元の信用金庫に相談し、経営革新計画をつくって事業承継・引継ぎ補助金に採択された。2022年に父から事業を承継し、作業場所の改修と溶接機の導入で一貫受託の新事業を本格化させた。
事業の内容
- 課題:受け身の営業1889年の創立からボイラー製造、高圧配管設備の製作・メンテナンスへと業容を広げてきたが、仕事は顧客からの依頼に左右される単発の受注が中心だった。売上が安定せず、60歳前後のベテラン職人の給与は長年上がっていなかった。
- 課題:古い設備事業の柱をつくる必要を感じていたが、工場内の設備は古いままだった。新事業を始めるには、資金、職人の人数、働き方、業務ノウハウのすべてで手当てが必要だった。
- 取り組み:一貫受託の新事業顧客側ではプラント工事が工程ごとに別々の業者へ発注されていた。取引先から工事の打診を受けたのを機に、工事前の現況調査と設計、金属製品の製造加工、設置工事までをまとめて請け負うサービスを始め、納期短縮、コスト削減、工事品質の向上をねらった。
- 取り組み:計画づくり地元の信用金庫の支店長と担当者が県外の工事現場を視察して事業を確かめたうえで、経営革新計画と補助金の活用を提案した。市場のニーズを踏まえた複数年度の計画を担当者と二人三脚でつくり、県の承認を得てから事業承継・引継ぎ補助金に申請した。
- 取り組み:作業場の改修と溶接機の導入プラント設備の改修期間に向けて、大型の製造物に対応できるよう作業場所を改修した。あわせて溶接機を複数台入れ、効率よく製作できる作業環境を整えた。
補助金を使った経費
記事の内容から、事業承継・M&A補助金の経費区分にあてはめた区分です。
| 設備費 | 作業場所の改修 |
|---|---|
| 設備費 | 溶接機 |
事業の効果
- 大型工事を発注している顧客から、従来と比べて納期、コスト、工事品質のすべてが格段に向上したと評価されている。
- 大型工事の受注が進んでいる。
- 計画づくりを通じて、自社の強みをどう提供し、顧客がどんな利益を得るかを具体的に考えられるようになった。
事業者の声
大学入学前に、自分の家業を継ぐために何を学ぶべきかと考えましたが、デザインを学びたいと気づき、自分の意志を父も尊重してくれました。
従業員の給与を上げるには、業績を安定させなければならない。そのためには、受注のあり方を変える自社の事業の柱が必要である。しかし、事業の柱を新たに作るにも、工場内設備は古いまま。事業の内容そのものを変えていくべきである。という想いは日増しに強くなっていきました。
飯田近隣の会社に、どんな金属製品を使っているのか。その製品をどのように使い、どのくらいのサイクルで買い替えをするのかを一軒一軒調べたこともありました。
飯田信用金庫のネットワークの中で話をすることが多かったと思います。
実際に工事が始まった後、当時の飯田信用金庫 切石支店の支店長と担当者が、長野県外にある自社の工事現場まで視察に来てくれました。自分たちが支援する上で、取引先がどんなことをやっているのか、自分たちの目で見て理解する必要があるとのことでした。正直、驚きました。
経営革新計画や補助金申請に必要な計画を作成したことで、自分自身が考えていたことに偏りがあったことに気づきました。
自社の強みを、どのように提供するか。その結果、顧客がどんな利益を得るかというシナリオを考えきれていなかったと感じました。また、事業計画という形式で未来の数値計画を作る過程で、営業をしていく先のこと、提供するサービスの具体的なスキームまで考えることができるようになりました。
現在、大型の工事を発注いただいている顧客から、従来と比較して納期、コスト、工事品質の全てが格段に向上していると評価をいただいているところです。
このサービスを、もっと広く社会に知ってもらいたい。また、地元の飯田市の雇用に貢献するために社員も増やし、社員の処遇もさらに向上させたい。
長野県の鉄工所(従業員7名)
出典
- 中小機構「補助金活用ナビ」の事例記事(当社が書き直し・要約。事業者の声は記事中の発言の引用です)
- 経費区分は、事業承継・M&A補助金の公募要領の区分に当社があてはめたものです
- 採択率:中小企業庁「採択結果」(15次)
相談先と計画づくり
| 信用金庫 | 飯田信用金庫 |
|---|
新事業の内容と市場のニーズを踏まえ、複数年度にわたる経営革新計画を担当者と一緒につくった。自社の強みをどう提供し、顧客がどんな利益を得るかという筋道と、営業先や提供するサービスの具体的な仕組みまでを整理した。
今後の展望
新しい一貫受託のサービスを広く社会に知ってもらうことをめざす。地元の雇用に貢献するために社員を増やし、社員の処遇もさらに良くしていきたいと考えている。
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