環境制御装置導入によるブランドイチゴ『しずかちゃん』の生産性の向上

静岡県のイチゴ農園が、ものづくり補助金で環境制御装置を導入し、生育環境と作業効率を改善した採択事例です。

この事例のポイント

  • 賃金の上昇やハウス施設の建設費、重油代、肥料価格などの高騰により、利益率が低下していました。
  • 同園は、収量増加と品質向上を目指して、最新の養液栽培システムや環境制御装置を導入しました。
  • ハウス内の温度を下げられるようになり、イチゴの生育環境が改善されるとともに、作業者の負担が軽減され作業効率も向上しました。

事業者のプロフィール

所在地静岡県 掛川市
業種農業
設立1976年

事業の背景

同園は掛川市で約50年前からイチゴを栽培しており、栽培面積は約8,000㎡で、日本の平均的なイチゴ農家の約4倍の経営規模です。全国的に人気の高い「紅ほっぺ」や「きらぴ香」のほか、独自ブランドの「しずかちゃん」などを栽培しています。

イチゴは本来春が旬ですが、促成栽培や品種改良により冬から初夏にかけて収穫され、生食や製菓の材料としての需要が拡大しています。

課題と取り組み

抱えていた課題

  • コスト・採算賃金の上昇やハウス施設の建設費、重油代、肥料価格などの高騰により、利益率が低下していました。
  • 生産能力デジタル化や機械化を進め、生産性をさらに高める必要がありました。
  • 生産能力需要の高い冬場の収量を増やすため、ハウス内の温度や湿度、CO2濃度を細かく制御する必要がありました。
  • 人手・技能栽培は長年の経験と勘に頼る面が大きく、技術の習得が新規就農の大きな障壁になっていました。

やったこと

同園は、収量増加と品質向上を目指して、最新の養液栽培システムや環境制御装置を導入しました。ハウス上部のカーテンを開閉して急激な温度上昇を抑えるとともに、冷え込む夜間の放熱を軽減し、暖房コストを抑えました。

細霧装置で細かい霧を発生させ、気化熱を利用した冷房や湿度のコントロールを可能にしました。従来はハウス内全体にCO2を充満させていましたが、必要な量を必要な場所にだけ供給する仕組みを構築し、CO2施用の効率を大幅に改善しました。

ハウス内の気温、湿度、CO2濃度、日射量などをモニタリングし、品質や収量に与える関係性を研究しました。

補助金で入れた設備

経費の区分は「機械装置・システム構築費」です。

事業の効果

ハウス内の温度を下げられるようになり、イチゴの生育環境が改善されるとともに、作業者の負担が軽減され作業効率も向上しました。暖房コストを抑えられ、CO2施用の効率も大幅に改善されました。

また、ハウス内の環境データを分析することで栽培技術の見える化を図ることができ、既存の生産者や新規にイチゴ生産を目指す人の大きな助けになると考えられます。

出た効果の種類(押すと同じ効果の事例へ)

審査の観点ごとの評価

新事業進出・ものづくり補助金

観点の平均3.2 / 514観点のうち13観点で評価

この事例が強かった観点

  • 4
    強み・弱みを踏まえた優位性県内品評会で度々表彰され、独自ブランド「しずかちゃん」を持つ強みを、環境制御とデータ活用で生かす計画になっている。
  • 4
    課題の認識と解決冬場の収量不足と暖房・重油代などコスト高騰を課題に挙げ、環境制御とCO2効率化で解決を図る具体策を示している。
  • 4
    波及効果・雇用栽培技術の見える化で新規就農者育成や雇用創出、地域活性化につなげる波及効果が具体的に書かれている。

もう一歩だった観点

  • 2
    事業化までの道筋導入後の技術の見える化や新規就農者育成は触れられているが、スケジュールや遂行方法の記述は薄い。
経営戦略との整合性3.7
  • これまでの取組との一貫性3

    約50年の栽培蓄積と経験・データを活かし環境制御装置を導入しており、既存の栽培経験との一貫性が読み取れる。

  • 強み・弱みを踏まえた優位性4

    県内品評会で度々表彰され、独自ブランド「しずかちゃん」を持つ強みを、環境制御とデータ活用で生かす計画になっている。

  • 課題の認識と解決4

    冬場の収量不足と暖房・重油代などコスト高騰を課題に挙げ、環境制御とCO2効率化で解決を図る具体策を示している。

事業の実現可能性2.8
  • 付加価値・賃上げの目標ー

    公開情報では判断できません。

  • 事業を進める体制3

    約8,000㎡の経営規模と長年の栽培ノウハウ、データ分析の体制があり、補助事業を遂行できると読み取れる。

  • 顧客とニーズの裏付け3

    高品質ないちごの需要が高い10〜12月出荷を狙い、「しずかちゃん」の甘みという選ばれる理由が整理されている。

  • 事業化までの道筋2

    導入後の技術の見える化や新規就農者育成は触れられているが、スケジュールや遂行方法の記述は薄い。

  • 財務と資金の調達3

    財務の状況は公開されている事例には出ないため、中間の3としています。

新市場性・高付加価値性3.0
  • 新しさ・高付加価値3

    イチゴ栽培は一般的だが、独自ブランド「しずかちゃん」で高品質・高価格化を図る点が示されている。

公的補助の必要性3.3
  • 波及効果・雇用4

    栽培技術の見える化で新規就農者育成や雇用創出、地域活性化につなげる波及効果が具体的に書かれている。

  • 費用対効果2

    暖房コスト削減や作業効率化は触れられているが、補助金額に対する付加価値増加の数字が示されていない。

  • イノベーションへの貢献4

    ハウス内環境の自動制御やCO2を必要な場所だけ供給する仕組みなどデジタル技術を活用し、栽培技術の見える化で産地へ貢献する。

政策面3.5
  • 成長分野への進出3

    次世代農業の実現としてデジタル化・機械化で生産性を高める方向性が示され、農業の構造転換に関連する。

  • 地域経済への波及4

    県内有数の生産者が地域の特性を活かし、新規就農者育成と雇用創出で地域農業を牽引する姿が書かれている。

事業者の声

農業の魅力や可能性を伝え、地域の農業を牽引できるような、未来志向の農園作りをしていきたい

公式の事例集より(原文のまま)

同じ設備を入れた採択事例

出典・注記
  • 出典:公式の事例集(令和元年度、全国中小企業団体中央会)。事例集の再利用は中央会の許可を得ています。
  • 課題・取り組み・設備・効果・展望は、事例集の本文からAIで項目に分けて短くまとめたものです。数字は事例集に書かれているものだけを載せ、時間の単位などをそろえています。原文のまま載せているのは事業者の声だけです。
  • 審査の観点:公募要領 p.44(審査項目)
  • 代表者名・電話番号・番地は載せていません。法人の形が名前にない事業者は名前を出していません。