大腸がん化学療法における新しい抗がん剤選択方法の開発

京都府の学術研究・専門技術サービス業者が、ものづくり補助金で大腸がんの治療効果予測システムを開発した採択事例です。

京ダイアグノスティクス株式会社

この事例のポイント

  • 大腸がん患者の抗がん剤選択は担当医師の経験とガイドラインに頼り、効果が出るまで薬剤を変えて投薬を繰り返すため、患者の心身の負担と医療費がかさむ。
  • 患者のがん組織から、純粋ながん幹細胞だけをスピーディーに培養する独自技術を高度化しました。
  • がんスフェロイドの培養成功率が従来の40%から90%に向上し、培養した大腸がんスフェロイドを200例超保存できるようになりました。

事業者のプロフィール

事業者名京ダイアグノスティクス株式会社
所在地京都府 京都市左京区
業種技術サービス業(他に分類されないもの)
技術分野バイオ
従業員数3人
資本金2,800万円
設立2016年

事業の背景

当社は京都大学医学研究科の研究成果を事業化するために設立された大学発ベンチャーで、大腸がん患者から摘出したがん細胞を高精度に培養し、抗がん剤の効果判定や転移・再発の検査情報を提供している。大腸がんの患者数は約16万人と最も多いがんとされ、術後の再発や転移を防ぐために化学療法が行われている。

一方、現場の抗がん剤選択は試行錯誤を伴うため、エビデンスに基づく個別化治療が求められている。

課題と取り組み

抱えていた課題

  • 品質・精度大腸がん患者の抗がん剤選択は担当医師の経験とガイドラインに頼り、効果が出るまで薬剤を変えて投薬を繰り返すため、患者の心身の負担と医療費がかさむ。
  • 生産能力患者から摘出したがん組織から純粋ながん幹細胞だけを培養する従来技術の成功率は40%にとどまっていた。
  • コスト・採算既存の発光法は発光酵素をがんスフェロイドに組み込む必要があり、時間とコストがかかる。
  • 人手・技能感受性の解析や培養などの作業を手作業で行っており、工程が標準化されていなかった。
  • 納期・工程患者のがん組織を医療機関から安全に輸送し、検体を管理する体制が整っていなかった。

やったこと

患者のがん組織から、純粋ながん幹細胞だけをスピーディーに培養する独自技術を高度化しました。培養した大腸がんスフェロイドは200例超を凍結保存しています。

評価には大腸がん化学療法のガイドラインで使用する6種類の薬剤を用い、各々6つの濃度を設定しました。京都大学から提供された発光酵素を組み込んだ30種類について発光法と画像解析法で試験し、両手法の結果の違いを確認して画像解析法のプログラムを改良しました。

保有する100種類のスフェロイド株について画像解析法で試験し、各抗がん剤に対する感受性のデータをまとめ、実臨床データを持つ7例のうち「薬剤効果あり」と判定されたものは臨床結果と相関がみられました。医療現場の医師100名へのアンケートや専門家の指導を通じて、術後から薬剤投与までの約1ヶ月を個別化治療の計画期間として、検体の入手方法、ID付与、輸送、温度管理を明確にした管理システムを構築しました。

新しい製品・サービス:大腸がん患者の薬剤感受性試験に基づくがん治療効果予測システム

補助金で入れた設備

経費の区分は「機械装置・システム構築費」です。

事業の効果

がんスフェロイドの培養成功率が従来の40%から90%に向上し、培養した大腸がんスフェロイドを200例超保存できるようになりました。発光法と画像解析法の比較により画像解析法のプログラムを改良し、薬剤感受性の評価を進められるようになりました。

感受性の解析や培養などの手作業の工程を標準化し、自動分注装置システムの開発につなげることができました。複数の大学と契約を締結でき、今後は医療機関との連携を進めて臨床データの実績とノウハウを増やします。

出た効果の種類(押すと同じ効果の事例へ)

審査の観点ごとの評価

新事業進出・ものづくり補助金

観点の平均3.1 / 5

この事例が強かった観点

  • 4
    強み・弱みを踏まえた優位性培養成功率90%(従来技術40%)と独自技術の優位性が数字で示され、画像解析法は発光酵素の組込み不要で時間とコストを削減できるとしている。
  • 4
    事業化までの道筋術後から薬剤投与までの約1ヶ月を計画策定期間と設定し、検体の管理システムや自動分注装置の開発など遂行方法と課題解決が具体的に示されている。
  • 4
    新しさ・高付加価値がんスフェロイドを用いた個別化の薬剤感受性試験は新しい分野で、他のがん腫への拡大や抗がん剤開発への応用も見込まれている。

もう一歩だった観点

  • 2
    費用対効果医療費削減が期待されるとの記述はあるが、補助金額に対する付加価値額や生産性の数値は示されていない。
経営戦略との整合性3.3
  • これまでの取組との一貫性3

    大学発ベンチャーとして京都大学の研究成果を事業化する設立経緯があり、がんスフェロイド培養技術の開発を継続している一貫性が読み取れる。

  • 強み・弱みを踏まえた優位性4

    培養成功率90%(従来技術40%)と独自技術の優位性が数字で示され、画像解析法は発光酵素の組込み不要で時間とコストを削減できるとしている。

  • 課題の認識と解決3

    遺伝子情報のみでは薬剤感受性試験が不十分と課題を把握し、画像解析法の改良や臨床データ蓄積で解決に向けた計画を示している。

事業の実現可能性3.2
  • 付加価値・賃上げの目標3

    2028年の新規株式上場を目指すとあり、試験の実績件数や成功率など事業の目標に向けた数値的な進捗も示されている。

  • 事業を進める体制3

    京都大学や関連企業との産学共同講座や大学との契約締結があり、研究体制と連携の枠組みが確保されていると読み取れる。

  • 顧客とニーズの裏付け3

    大腸がん患者ごとに有効な抗がん剤を選ぶ個別化治療というニーズと、医師100名へのアンケートで期待の声があったことが示されている。

  • 事業化までの道筋4

    術後から薬剤投与までの約1ヶ月を計画策定期間と設定し、検体の管理システムや自動分注装置の開発など遂行方法と課題解決が具体的に示されている。

  • 財務と資金の調達3

    財務の状況は公開されている事例には出ないため、中間の3としています。

新市場性・高付加価値性4.0
  • 新しさ・高付加価値4

    がんスフェロイドを用いた個別化の薬剤感受性試験は新しい分野で、他のがん腫への拡大や抗がん剤開発への応用も見込まれている。

公的補助の必要性3.0
  • 波及効果・雇用3

    大腸がん患者約16万人という多い患者数を背景に、医療費削減や患者の心身の負担軽減が期待されると社会的意義を示している。

  • 費用対効果2

    医療費削減が期待されるとの記述はあるが、補助金額に対する付加価値額や生産性の数値は示されていない。

  • イノベーションへの貢献4

    画像解析法やAIによる感受性自動判定、血液からのがん細胞分離など先端技術を活用し、産学連携で医療分野の革新を目指している。

政策面2.0
  • 成長分野への進出2

    次世代のがん診断分野への進出は触れられているが、日本経済の構造転換への寄与を示す記述は薄い。

  • 地域経済への波及2

    京都大学を拠点とした大学発ベンチャーであることは示されるが、地域の経済成長や雇用創出への言及は薄い。

今後の展望

大学やAFIテクノロジー、SCREENホールディングスと2021年11月に設立した京都大学の産学共同講座で技術改善を加速し、胃がんや乳がんなど他のがん腫への拡大や抗がん剤開発への応用を図ります。2028年に新規株式上場(IPO)を目指します。

  • 目標:培養の成功率 40%→90%

同じ設備を入れた採択事例

出典・注記
  • 出典:公式の事例集(令和元年度、全国中小企業団体中央会)。事例集の再利用は中央会の許可を得ています。
  • 課題・取り組み・設備・効果・展望は、事例集の本文からAIで項目に分けて短くまとめたものです。数字は事例集に書かれているものだけを載せ、時間の単位などをそろえています。原文のまま載せているのは事業者の声だけです。
  • 審査の観点:公募要領 p.44(審査項目)
  • 代表者名・電話番号・番地は載せていません。法人の形が名前にない事業者は名前を出していません。