効果報告で目標に届かなかったら?返還になる要件・ならない要件
この記事の要点
効果報告や事業化状況報告で目標に届かなくても、返還の決まりがあるのは主に賃上げの要件です。報告の回数、付加価値額や労働生産性が届かないときの扱い、返還額の計算と返還を求められない場合を公募要領で整理しました。
この記事の目次
効果報告・事業化状況報告で目標に届かなくても、返還になるのは主に賃上げの要件です。付加価値額や労働生産性の目標は、届かなくても未達の理由を報告すれば足り、それだけで返還を求められることは公募要領に書かれていません。
賃上げの要件に届かないときは、未達の度合いに応じて返還額が計算され、ゼロ成長や基準を割った場合は全額になることがあります。天災など御社の責任でない理由があれば、返還を求めないと決めている補助金もあります。
補助事業を終えた後の報告で、計画の数字に届きそうにないときにどうなるのか、返還になる要件とならない要件を知りたい方に向けた記事です。
新事業進出・ものづくり補助金、成長加速化補助金、デジタル化・AI導入補助金、持続化補助金の公募要領とよくある質問から、事業を終えた後の報告と返還に絞って整理します。
事業を終えた後に続く報告の回数
補助金は入金で終わりではなく、事業を終えた後も数年にわたって成果を報告します。回数と期間は補助金ごとに違います。
- 新事業進出・ものづくり補助金:補助事業完了年度の終了後を初回に、以降5年間にわたる計6回、事業化状況・知的財産権等報告書を提出。
- 持続化補助金:補助事業終了から1年後の状況について交付規程第29条の「事業効果等状況報告」を事務局指定の期限までに行う。未提出・提出後1年未満の事業者は次の申請に制限がある。
報告で示した数字は、申請のときに書いた目標と比べられます。新事業進出・ものづくり補助金の公募要領は「付加価値額目標値・一人当たり給与支給総額目標値の算出根拠を具体的に示す。示した数値は補助事業終了後も毎年度の事業化状況等報告で達成状況が確認される」としています1。事業期間の決まりは補助事業期間とはで取り上げています。
付加価値額や労働生産性が届かないとき
付加価値額や労働生産性の目標は、届かなくても、それだけで返還を求める決まりは公募要領にありません。求められるのは、届かなかった理由と今後の見通しの報告です。
デジタル化・AI導入補助金のよくある質問は、労働生産性の目標に届かない場合について「Q:労働生産性の年平均成長率の目標が未達なら返還対象か→ A:計画数値を達成できるよう事業を進める。未達の場合は効果報告で未達の要因や改善方法などの報告を求められる。事業を実施していないことによる未達は交付決定の取消しとなる可能性がある。」と答えています。
ただし、報告を出さないことは別の扱いになります。報告の未提出は、次の申請の制限や返還の理由になる補助金があるため、数字が悪くても期限までに出します。目標の数字の作り方は事業計画の売上予測の作り方で取り上げています。
返還につながるのは賃上げの要件の未達
返還の決まりがあるのは、給与支給総額や1人当たり給与支給総額の伸びを約束する賃上げの要件です。返還額は、目標にどこまで届いたかで計算されます。
| 補助金 | 賃上げの要件に届かないとき |
|---|---|
| 新事業進出・ものづくり補助金 | 未達の場合、補助金返還額=補助金交付額×(1-最終年度の年平均成長率/目標値)。ゼロ・マイナス成長は全額返還。目標値未表明は全額返還 |
| 成長加速化補助金 | 年平均上昇率の目標を達成できなかった場合、未達成率に応じて補助金の返還(天災など責めに帰さない理由がある場合は求めない) |
| デジタル化・AI導入補助金(通常枠) | 事業計画終了時点で給与支給総額の年平均成長率3%(前回採択者3.5%)未達なら全部返還を求める場合がある |
出典:新事業進出・ものづくり補助金 第1回 公募要領 p.12『1-3-1. 基本要件(2)賃上げ要件』台帳で見る
成長加速化補助金のよくある質問は、計算の例を「Q:未達成率の計算例は → A:1人当たり目標6.0%に対し実績が年平均約5.1%なら達成率85%・未達成率15%で、15%に応じた補助金額を返還する。」と示しています。賃上げの加点を受けた場合の扱いは、返還とは別に補助金の賃上げ加点とは?で取り上げています。
返還を求められない場合と判定の時期
賃上げに届かなくても、返還を求めない場合を決めている補助金があります。判定するのは事業計画期間の最後で、途中の年の数字だけで返還になるわけではありません。
- 赤字や天災のとき:付加価値額が増えておらず、3年の事業計画期間の過半数で営業利益が赤字の場合や、天災など事業者の責任ではない理由がある場合は、給与支給総額の未達による返還は求めない。
- 判定の時期:給与支給総額の要件は事業計画終了時点(3年度目)で達成かどうかを判断する。1年度目も判断するが、未達でも返還は求めない。
- 途中の目標:Q:やむを得ず足下の賃上げ目標に届かなかったら返還か → A:返還義務は生じない。ただし交付決定までに目標を従業員等に文書で表明することが必須で、怠ると不採択又は交付決定取消等になり得る。。
途中で辞退しても返還から逃れられるわけではありません。デジタル化・AI導入補助金は「賃上げが必須要件の事業者が効果報告前・達成判定前に辞退すると賃上げ未達とみなし全額返還」としています2。交付決定の取消しと返還の法律上の決まりは補助金の交付決定が取り消されるときでまとめています。
専門家から見た効果報告のポイント
効果報告で困るかどうかは、申請のときに無理のない賃上げの目標を置いたかでほぼ決まります。新事業進出・ものづくり補助金の採択事例97件でも、課題に「生産性・人手不足」を挙げた事例が56.7%あり、省人化と賃上げを同じ計画で約束する会社が多い補助金です。
報告で困りにくい会社
給与の総額と1人当たりの額を毎月の数字で追い、決算の前に目標との差を確かめている会社です。差が出た年は、翌年の昇給や賞与の計画で取り戻す手を早めに打てます。
報告で困りやすい会社
加点を取るために高い賃上げの目標を置き、その後の人の出入りを見込んでいない会社です。退職と採用が重なると1人当たりの額が下がることがあり、計画の段階で従業員数の見込みも書いておきます。採択された計画の目標の置き方は採択事例のデータで確かめられます。
間違えやすい点
効果報告で間違えやすいのは、どの目標が返還につながるか、判定の時期、報告の出し忘れの3つです。
付加価値額の未達と賃上げの未達は扱いが違います。付加価値額は理由の報告で足りても、賃上げは未達の度合いに応じた返還の計算があります。
報告の期限を過ぎると、数字が目標に届いていても返還や申請の制限の理由になることがあります。報告の時期は、事業を終えた時点で予定表に入れておきます。
受け取った補助金を返す場面の全体は採択後に補助金が減額・返還になるケースで取り上げています。
よくある質問
売上が計画より少なかったら返還になりますか?
売上や付加価値額の目標に届かないことだけで返還を求める決まりは、公募要領にありません。届かなかった理由と、今後の取り組みを報告します。
返還額に加算金はかかりますか?
賃上げの未達による返還では、加算金や延滞金を含めないと決めている補助金があります。デジタル化・AI導入補助金は、返還額の上限を補助金の交付額としています。
会社を畳んだら報告はどうなりますか?
ほかの質問も見る補助金のよくある質問出典(2件)
- 新事業進出・ものづくり補助金 第1回 公募要領 p.43『2-2-2. 事業計画書への記載事項』
- デジタル化・AI導入補助金2026 通常枠 公募要領(第7回からの改訂版)p.30『3-5(1) 効果報告完了前の辞退について』
参考資料
- 中小企業基盤整備機構「新事業進出・ものづくり補助金 第1回 公募要領」
- 中小企業基盤整備機構「中小企業成長加速化補助金(3次公募)公募要領」
- 中小企業基盤整備機構「成長加速化補助金 3次 よくあるご質問」
- 中小企業基盤整備機構「デジタル化・AI導入補助金2026 通常枠 公募要領(第7回からの改訂版)」
- 中小企業基盤整備機構「デジタル化・AI導入補助金2026 通常枠 よくあるご質問」
- 全国商工会議所「持続化補助金 通常枠 第20回 公募要領 第8版(商工会議所地区)」
- 公募要領の台帳(新事業進出・ものづくり補助金)
- 公募要領の台帳(成長加速化補助金)
- 公募要領の台帳(デジタル化・AI導入補助金)
- 公募要領の台帳(持続化補助金)
確認日:2026年10月17日
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