補助金の交付決定が取り消されるとき|返還額と加算金の法律の決まり
この記事の要点
補助金の交付決定は、ほかの用途への使用や条件・法令への違反で取り消され、受け取った分を返します。違反による取消では受け取った日からの加算金が付き、天災などの事情変更では付きません。補助金適正化法と交付規程の条番号で整理しました。
この記事の目次
補助金の交付決定は、補助金をほかの用途に使ったとき、交付決定の条件や法令に違反したときに、全部または一部を取り消されます(補助金適正化法 第17条)。取り消された部分は、すでに受け取っていれば返します(第18条)。
違反による取消では、受け取った日から返す日までの日数に応じて年10.95%の加算金が付き、期限に遅れると同じ率の延滞金も付きます(第19条)。天災などの事情変更による取消には加算金は付きません。
補助金を受け取ったあとに取り消されるのはどんなときか、返す額と加算金がどう決まるのかを、法律の条文で確かめたい方に向けた記事です。補助金適正化法と、持続化補助金などの交付規程の条番号で整理します。
交付決定が取り消される理由は法律のどこ?
取消の理由は補助金適正化法の第17条が定めていて、他の用途への使用、交付決定の内容や条件への違反、法令や処分への違反の3つが柱です。
第17条は「各省各庁の長は、補助事業者等が、補助金等の他の用途への使用をし、その他補助事業等に関して補助金等の交付の決定の内容又はこれに附した条件その他法令又はこれに基づく各省各庁の長の処分に違反したときは、補助金等の交付の決定の全部又は一部を取り消すことができる」と定めています。同じ条の第3項で、補助金の額が確定したあとでも取り消せるとしています。
各制度の交付規程は、この条文を具体的な場面に分けています。持続化補助金の通常枠では「第23条(交付決定の取消し等):中止・廃止の申請があったときや、法令・規程違反、目的外使用、不正・怠慢、事情変更、申請書類が真正でない、反社会的勢力排除の誓約違反、期限までに未完了、実績報告の提出を怠ったときは、交付決定の全部または一部を取り消し・変更できる。」と書かれています1。
出典:補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律 第17条(e-Gov法令検索)
取消につながりやすい採択後の場面は採択後に補助金が減額・返還になるケースで取り上げています。
返還額と加算金はどう計算される?
返す額は「取り消された部分のうち、すでに受け取った補助金」で、違反による取消ではその額に年10.95%の加算金が日割りで上乗せされます。
| 条文 | 何が決まっているか |
|---|---|
| 第18条第1項(返還) | 取り消した部分について、すでに交付された補助金の返還を期限を決めて命じる |
| 第18条第2項(返還) | 確定した額を超えて交付していたときは、超えた分の返還を命じる |
| 第19条第1項(加算金) | 第17条第1項の取消で返還を命じられたときは、受け取った日から納付の日までの日数に応じ、年10.95%の加算金を納める |
| 第19条第2項(延滞金) | 返還金を期限までに納めないときは、期限の翌日から納付の日までの日数に応じ、年10.95%の延滞金を納める |
| 第21条(徴収) | 返還金・加算金・延滞金は国税滞納処分の例で強制的に徴収でき、国税と地方税に次ぐ順位で優先される |
出典:補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律 第18条・第19条・第21条(e-Gov法令検索)
当てはめの例として、補助金を200万円受け取り、ちょうど1年後に全部を返すよう命じられた場合、加算金は200万円×10.95%でおよそ21万9千円になり、返す合計はおよそ221万9千円です。受け取ってから時間がたつほど加算金は増えるため、入金のあとに見つかった違反ほど負担が重くなります。
補助金が入金されるまでの手順は補助金はいつ入金される?で順に取り上げています。
天災による取消なら加算金はかからない
交付決定のあとに天災など特別な事情が生じて取り消される場合は、補助金適正化法の第10条による取消で、第17条の違反による取消とは別に扱われ、加算金は付きません。
第10条は、交付決定の後に事情が変わったときに、交付決定の全部または一部を取り消したり、内容や条件を変えたりできると定めています。加算金を定めた第19条は「第17条第1項の規定による処分」に関して返還を命じた場合に限っているため、第10条の取消は加算金の対象から外れます。
交付規程も同じ分け方をしていて、持続化補助金は「第23条(交付決定の取消し等):取り消した部分に交付済みの補助金があれば返還を命じる。事情変更(第4号)以外の理由で取り消した場合は、受領日から納付日までの期間に応じて年利10.95%の加算金もあわせて命じる。」としています。デジタル化・AI導入補助金の交付規程も、事情変更による取消を加算金の対象から除いています2。
事業を続けられなくなったときの中止・廃止の手続きは持続化補助金の採択後の手続きでも触れています。
制度ごとの取消と加算金の書かれ方
国の主な補助金は、どれも公募要領か交付規程で「取消のときは加算金を付けて返還」と書いていて、法律の決まりを制度の側でも確かめられます。
| 制度 | 公募要領・交付規程の記載 |
|---|---|
| 持続化補助金 | 宣誓に違反した場合は交付規程に基づき交付決定取消となり、交付済みなら加算金を課したうえで返還を求められる |
| 新事業進出・ものづくり補助金 | 不正による交付決定取消の時点で補助金が交付済みの場合は、加算金を課した上で補助金の返還を求められる |
| 省力化投資補助金(一般型) | 補助金等適正化法第11条第1項に従い善良な管理者の注意で事業を行う。不注意で機械装置等を焼失・紛失し事業継続が困難になった場合は、故意がなくても交付決定の取消や返還に至る場合がある |
| デジタル化・AI導入補助金 | 第29条(加算金):取消しで補助金を返すときは、受け取った日から納めた日までの日数に応じ、返す額に年10.95%の加算金がかかる。交付決定後の事情変更(第27条第1項第九号)による取消しの場合は除く。 |
| 事業承継・M&A補助金 | 不正受給は交付取消し+加算金(年10.95%の利率)を加えた額を返還 |
出典:新事業進出・ものづくり補助金 第1回 公募要領 p.3『【重要:注意事項】不正行為の禁止』台帳で見る
省力化投資補助金の一般型は、故意がなくても不注意で機械を焼失・紛失して事業を続けられなくなれば取消に至ると書いていて、補助金適正化法の第11条(善良な管理者の注意)を根拠に挙げています。省力化投資補助金のルールは省力化投資補助金の対象者と経費ルールで取り上げています。
取消のあとに続く罰則と申請の制限
偽りや不正で補助金を受けた場合は、返還と加算金に加えて補助金適正化法の第29条〜第32条の刑事罰の対象になり、法人の場合は会社にも罰金が科されます。
- 第29条(不正受給):偽りその他不正の手段で補助金の交付を受けた者は、5年以下の拘禁刑もしくは100万円以下の罰金、またはその両方。
- 第30条(目的外使用):補助金をほかの用途に使った者は、3年以下の拘禁刑もしくは50万円以下の罰金、またはその両方。
- 第31条(報告・検査):報告をしない、虚偽の報告をする、検査を拒むなどした者は、3万円以下の罰金。
- 第32条(両罰規定):代表者や従業員が違反したときは、本人に加えて法人にも罰金刑。
罰則とは別に、次の申請にも響きます。省力化投資補助金の一般型は「本事業で補助金等適正化法第17条による交付決定取消を受けた事業者は対象外」としています3。
受け取ったあとに収益の一部を納める「収益納付」は取消とは別の仕組みで、補助金の収益納付で取り上げています。
専門家から見た取消を防ぐポイント
取消の多くは悪意からではなく、補助金で買った物を計画と違う形で使ったり、承認を取らずに売ったりすることから起きるため、物の扱いのルールを先に押さえることがいちばんの予防です。
採択事例では、持続化補助金でウェブサイト関連費を使った事例が32.7%、新事業進出・ものづくり補助金で建物費を使った事例が12.4%あります。ウェブサイトや建物も、金額によっては補助金適正化法の第22条で処分が制限される財産にあたり、事業が終わったあとも長く手元で管理が続きます。
取消の心配が大きくなる会社
補助事業のあとに移転・廃業・事業譲渡の予定がある会社、買った設備を別の事業に回すかもしれない会社です。持続化補助金の交付規程は、単価50万円(税抜き)以上の機械・器具・備品などを処分制限財産とし、承認なしの処分を認めていません。予定があるなら、申請前に耐用年数と承認の手続きを確かめます。
取消の心配が小さい会社
チラシ・看板・展示会の出展費など、使えばなくなる経費が中心で、計画どおりに使い切る会社です。それでも計画変更の承認と実績報告の期限を守らないと取消の理由になるため、変更が出たら事前に事務局へ申請します。
経費ごとの採択事例は持続化補助金の対象経費別の採択事例から探せます。
間違えやすい点
間違えやすいのは、取消の時期、加算金の起点、返す額の範囲の3つです。
入金されたら終わり、ではありません。補助金適正化法の第17条第3項により、補助金の額が確定したあとでも交付決定は取り消せます。処分制限財産の管理や事業効果の報告が続く間は、取消の理由が生じる可能性が残ります。
加算金は、返還を命じられた日からではなく、補助金を受け取った日から数えます。受け取ってから数年後の取消では、加算金だけで補助金の数割になることがあります。
取り消されるのは交付決定の「全部または一部」です。違反があった経費だけが取り消されることもあれば、要件を満たさないとして全部が取り消されることもあり、どちらになるかは交付規程の条と違反の中身で決まります。
交付規程と公募要領の役割の違いは公募要領・交付規程・交付要綱の違いで取り上げています。
よくある質問
採択の取消と交付決定の取消は違いますか?
違います。採択の取消は交付決定の前の段階で、まだ補助金を受け取っていないため返還は起きません。交付決定の取消は補助金適正化法の第17条による処分で、受け取っていれば返還と加算金が伴います。
加算金はいくらになりますか?
返す額に年10.95%を掛け、受け取った日から納めた日までの日数で日割りした額です。違反による取消のときに付き、天災などの事情変更による取消では付きません。
加算金を免除してもらうことはできますか?
補助金適正化法の第19条第3項は、やむを得ない事情があると認められるときに、加算金や延滞金の全部または一部を免除できると定めています。免除されるかどうかは所管の判断で、申請者が選べるものではありません。
返還を命じられたのに払えないとどうなりますか?
期限を過ぎると年10.95%の延滞金が付きます。補助金適正化法の第21条により、返還金・加算金・延滞金は国税滞納処分の例で強制的に徴収されることがあります。
賃上げの目標に届かなかった場合も加算金が付きますか?
制度によって違います。デジタル化・AI導入補助金のインボイス枠(電子取引類型)の公募要領は、賃上げ要件の未達による返還額は交付額が上限で、加算金と延滞金を含まないとしています。御社の制度の公募要領と交付規程で確かめます。
出典(3件)
- 持続化補助金 通常枠 交付規程 2026年3月6日改定 p.6『第23条 交付決定の取消し等』(公募要領の台帳)
- デジタル化・AI導入補助金2026 通常枠 交付規程 第7回からの改訂版 p.12『第29条 加算金』(公募要領の台帳)
- 省力化投資補助金 一般型 第8回 応募申請の手引き p.14『1-6 補助対象外となる事業者』
参考資料
- e-Gov法令検索「補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律」(昭和30年法律第179号)
- 全国商工会議所「持続化補助金 通常枠 第20回 公募要領 第8版(商工会議所地区)」
- 全国商工会議所「持続化補助金 通常枠 交付規程(2026年3月6日改定)」
- 中小企業基盤整備機構「新事業進出・ものづくり補助金 第1回 公募要領」
- 中小企業基盤整備機構「省力化投資補助金 一般型 第8回 公募要領」
- 中小企業基盤整備機構「省力化投資補助金 一般型 第8回 応募申請の手引き」
- 中小企業基盤整備機構「デジタル化・AI導入補助金2026 通常枠 交付規程(第7回からの改訂版)」
- 中小企業基盤整備機構「デジタル化・AI導入補助金2026 インボイス枠(電子取引類型)公募要領(改訂版)」
- 事業承継・M&A補助金事務局「事業承継・M&A補助金 16次 事業承継促進枠 公募要領」
- 公募要領の台帳(持続化補助金)
- 公募要領の台帳(新事業進出・ものづくり補助金)
- 公募要領の台帳(省力化投資補助金)
- 公募要領の台帳(デジタル化・AI導入補助金)
- 公募要領の台帳(事業承継・M&A補助金)
確認日:2026年10月17日
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