省力化投資補助金は怪しい制度?国の事業かを確かめる方法と注意したい勧誘
この記事の要点
省力化投資補助金は中小企業庁と中小機構が進める国の補助金です。公式の事務局サイトの見分け方、「実質無料」「自己負担を後で戻す」勧誘が公募要領で不正とされる理由、販売事業者と契約する前に確かめる点をまとめました。
この記事の目次
省力化投資補助金は、経済産業省(中小企業庁)と中小企業基盤整備機構(中小機構)が進める国の補助金で、制度そのものは怪しいものではありません。公式の事務局サイトは go.jp で終わる shoryokuka.smrj.go.jp です。
注意したいのは制度ではなく、「実質無料」「自己負担分をあとで戻す」といった売り方で、公募要領はこうした還元を交付の目的に反する行為として扱っています。
販売店や営業の電話で省力化投資補助金を勧められ、本当に国の制度なのか、話に乗って大丈夫なのかを知りたい方に向けた記事です。
カタログ注文型と一般型の公募要領・応募申請の手引きから、運営している機関、公式サイトの見分け方、気をつけたい勧誘の言い方、販売事業者と契約する前に確かめる点を整理します。
どの国の機関が運営している補助金?
省力化投資補助金は、人手不足に悩む中小企業がロボットやIoT機器などを導入する費用の一部を国が補助する制度です。お金の流れは公募要領に示されていて、「カタログ注文型の事業スキームでは、経済産業省から基金設置法人である中小機構に補助金が交付され、事業実施事務局(全国中小企業団体中央会を幹事者とするコンソーシアム)に委託される」とされています1。
つまり、申請を受け付けて審査や確認をするのは国から委託を受けた事務局で、販売店やコンサルティング会社が補助金を出すわけではありません。補助の対象になる製品も、工業会や事務局の審査を経て中小企業庁が承認したものだけがカタログに載ります。
カタログ注文型と一般型の違いは省力化投資補助金のカタログ注文型と一般型の違いで取り上げています。
本物の事務局サイトはどう見分ける?
公式の事務局サイトは 中小企業省力化投資補助金 公式サイト(shoryokuka.smrj.go.jp)です。go.jp は日本の政府機関などしか使えないドメインで、smrj は中小機構を表します。
公募要領・製品カタログ・申請の手引きは、このサイトからPDFで配られています。似た名前の民間サイトにある資料は、古い版だったり、一部だけを切り出していたりすることがあるため、申請の判断は公式サイトの資料で行います。
問い合わせ先も公募要領の表紙に載っていて、中小企業省力化投資補助金事務局コールセンター:ナビダイヤル0570-099-660/IP電話03-4335-7595、受付9:30~17:30(月~金、土日祝除く)です2。事務局を名乗る電話やメールで不安になったときは、届いた連絡先ではなく、この番号に自分からかけて確かめます。
申請に使うGビズIDの取り方はGビズIDとは?で取り上げています。
気をつけたい勧誘にはどんな言い方がある?
危ないのは、自己負担を実質的に無くす話と、申請を事業者自身の手から離してしまう話です。営業でよく聞く言い方と、公募要領・手引きでの扱いを並べました。
| 勧誘の言い方 | 公募要領・手引きでの扱い |
|---|---|
| 「実質無料で導入できる」「自己負担分は後でキャッシュバックする」 | 形式・時期を問わず発注先から補助事業者へ実質的に還元して自己負担を減らす・無償にする販売方法や、一部の利害関係者に不当な利益を配る行為は、交付の目的に反する行為として扱う(ポイント・クーポン、払い戻し、第三者を介した資金還流など) |
| 「ポイントやクーポンで差額を埋める」 | カタログ注文型でも、販売事業者から補助事業者への実質的な還元は形式・時期を問わず交付の目的に反する行為とされ、ポイント・クーポンの例が挙がっている |
| 「採択はほぼ確実」「採択されれば全額出る」 | 採択は事業計画の補助対象経費の全額を確定するものではない。交付申請の内容を中小機構が精査して交付額を決定し、対象外経費が含まれていれば減額または全額対象外になる場合がある |
| 「GビズIDを預かって全部こちらで申請する」 | 効果報告を含む事業の遂行に主体的でない事業者は対象外。GビズIDの貸し出しや他者のIDの使用、事務局との窓口担当者を外部に任せる等は主体的でないとみなす |
| 「申請担当者はうちの社員の名前で登録しておく」 | 申請担当者は申請者自身か申請者が雇用する従業員に限る。認定経営革新等支援機関を含む外部機関の者やグループ企業の別部門の者は不可。それ以外を登録すると虚偽として不採択の場合がある |
| 「手伝ったことは申請書に書かなくていい」 | 外部支援を受けている場合は事業計画書作成支援者の名称、報酬、契約期間を必ず記載。未記載は虚偽として不採択・取消・返還・公表 |
出典:省力化投資補助金 一般型 第8回 応募申請の手引き p.4『はじめに』台帳で見る
省力化投資補助金 一般型 第8回 応募申請の手引き p.14『1-6 補助対象外となる事業者』台帳で見る
省力化投資補助金 一般型 第8回 応募申請の手引き p.42『5-2 補助対象経費における留意事項』台帳で見る
一般型 第8回 公募要領 p.3『【重要】応募手続きの前に』台帳で見る
一般型 第8回 公募要領 p.26『4-1 電子申請』台帳で見る
カタログ注文型 公募要領 p.8『2-2(1) 製品本体価格について』台帳で見る
還元が疑われたときの事務局の動きも決まっていて、「還元行為等が疑われる場合、事務局は事前連絡なしに立入調査を行い、不当な申請の可能性が高いと判断すれば交付決定を取り消し、事業者名・代表者名・不正内容を公表し、再度の交付申請を拒否できる」とされています。
不正とされたときの返還や罰則は補助金の不正受給はどうなる?で取り上げています。
販売事業者と契約する前に何を確かめる?
カタログ注文型では、御社と販売事業者が共同で申請します。公募要領は「販売事業者は中小企業等と共同で交付申請し、事業の実施について連帯して責任を負う。製造事業者が販売事業者を兼ねることもできる」とし、販売事業者を「販売事業者:省力化製品を販売し中小企業等と共同で申請する事業者。事務局と外部審査委員会の審査で登録され、申請や事業実施等の各種サポートを行う責務がある」と定めています3。
契約や発注の前に、次の点を確かめます。
- 勧められた製品と販売事業者が、公式サイトの製品カタログ・販売事業者の検索に載っているか
- 見積書の金額と、実際に御社が払う金額が一致しているか(値引きや還元を後で上乗せする約束が無いか)
- 交付決定の前に、購入・契約・支払いをさせようとしていないか
- 申請の操作や事務局とのやり取りを、御社の役員か従業員が自分で行える段取りになっているか
- 納品後の保守や効果報告への協力を、販売事業者が書面で引き受けているか
契約後のもめごとについては、「製造事業者・販売事業者等との係争やトラブルは事務局は責任を負わず、事業者間で解決する」とされています。口約束で済ませず、書面に残すことが御社を守ります。
販売事業者が負う責任の範囲は省力化投資補助金の販売事業者の責任で取り上げています。
間違えやすい点
- go.jp 以外のサイトがすべて詐欺というわけではありません。販売事業者や申請サポートをする会社のサイトは民間のものです。ただし申請そのものは、公式サイトから入る電子申請システムで行います。
- 還元は申請の後に行われても対象です。「交付を受けたあとで値引きする」「別の取引で埋め合わせる」といった約束も、時期を問わず不正として扱われます。
- 不正が見つかったとき、処分を受けるのは販売事業者だけではありません。「悪質な不正行為が発覚した場合は、共同申請の販売事業者を含め、事業者名・不正時点の代表者名・不正内容を公表する場合がある」とされ、申請した事業者も交付決定の取消や返還の対象になります。
- 採択の通知は、補助金額が決まったという意味ではありません。交付申請と交付決定を経て、初めて対象の経費と金額が決まります。
申請サポートを頼むときに確かめたい範囲は省力化投資補助金の申請サポートとは?で取り上げています。
専門家から見たポイント
相談を受けていると、怪しいと感じるきっかけの多くは制度ではなく、「御社の負担はゼロです」という営業の一言です。補助金は経費の一部を後から補うものなので、自己負担がまったく無い話はそれだけで疑ってかまいません。
採択された事業を見ると、省力化投資補助金の採択事例28件のうち、100.0%が生産性や人手不足を課題にしていて、57.1%がカタログに載った製品を導入していました。一般型の採択率は第6回で63.9%で、審査で不採択になる申請も少なくありません。
向いている会社
人手が足りない作業がはっきりしていて、どの製品で何時間減らすかを自社で説明でき、販売事業者と書面で役割を決められる会社です。
迷う会社
製品より先に「補助金が使えるから」と営業を受けて検討を始めた会社は、いったん止まって、自社で同じ製品を自己負担込みで買う価値があるかを考えてから進めると失敗が減ります。
省力化の採択事例は採択事例で業種ごとに探せます。
よくある質問
省力化投資補助金は本当に国の補助金ですか?
国の補助金です。経済産業省から中小機構に交付された資金をもとに、委託を受けた事務局が申請の受付や確認を行っています。
販売店から「自己負担分を後で値引きする」と言われました。受けてもよいですか?
受けないでください。形式や時期を問わず、販売事業者から補助事業者への実質的な還元は交付の目的に反する行為とされ、交付決定の取消や事業者名の公表の対象になります。
事務局を名乗る電話やメールが来たら、どう確かめればよいですか?
届いた番号やリンクには返信せず、公式サイトや公募要領の表紙に載っているコールセンターに自分から問い合わせて確かめます。
申請サポートを外部に頼むのは問題ありませんか?
頼むこと自体は問題ありません。一般型では、支援を受けた場合に支援者の名称・報酬・契約期間を申請書に書く決まりがあり、申請担当者も御社の役員か従業員にする必要があります。
不正に関わると、販売事業者だけが処分されるのですか?
販売事業者だけではありません。申請した事業者も交付決定の取消や補助金の返還の対象になり、悪質な場合は事業者名などが公表されることがあります。
出典(3件)
- 省力化投資補助金 カタログ注文型 公募要領 p.6『1-5 事業スキーム』
- 省力化投資補助金 一般型 第8回 公募要領 p.1『表紙「問い合わせ先」』
- 省力化投資補助金 カタログ注文型 公募要領 p.3『1-2 定義(5)』、p.4『1-3(3) 販売事業者の登録』、p.20『4-3(3) 不正対策について』
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