補助金の不正受給はどうなる?罰則・名前の公表・返還の決まり
この記事の要点
補助金の不正受給が見つかると、交付決定の取消と加算金付きの返還、刑事罰、事業者名の公表、申請の停止の対象になります。不正とされる行為の例、調べられ方、公表と申請停止の範囲を補助金適正化法と公募要領で整理しました。
この記事の目次
補助金の不正受給が見つかると、交付決定の取消と加算金付きの返還に加えて、補助金適正化法の刑事罰の対象になり、事業者名・代表者名・不正の内容が公表されます。
自己負担を実質ゼロにするキャッシュバックや、見積の水増し、ほかの補助金の受給歴を書かないことも不正とされ、一定期間は補助金の申請もできなくなります。
補助金の不正受給とはどこからを言うのか、見つかったら罰則・公表・返還がどうなるのかを知りたい方に向けた記事です。
補助金適正化法(補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律)の条文と、持続化補助金、新事業進出・ものづくり補助金、省力化投資補助金、デジタル化・AI導入補助金、事業承継・M&A補助金の公募要領から、不正受給に関わる決まりを整理します。
補助金の不正受給とは?
補助金の不正受給とは、うその申請や事実と違う報告によって、本来受け取れない補助金を受け取ることです。補助金適正化法の第29条は「偽りその他不正の手段」で補助金の交付を受けることを罰の対象にしています。
不正受給は、お金を受け取った後だけの話ではありません。申請の段階でうそを書けば、採択や交付決定の前でも不正として扱われます。持続化補助金では、申請のときに「申請時に、虚偽申請による不正受給・目的外利用・補助金額の不当な釣り上げと関係者への報酬配賦に加担していないこと、今後も加担しないことを宣誓する」ことになっています1。
法律の全体の決まりは補助金適正化法とは?で取り上げています。
不正受給とされる行為にはどんな例がある?
公募要領には、不正とされる具体的な行為が並んでいます。新事業進出・ものづくり補助金の公募要領は、虚偽の申請による不正受給、取得財産の目的外利用、自己負担を減額・無償にする販売方法、受給額を不当に釣り上げて関係者に報酬を配る等の不正が判明した場合は、交付決定取消となるとしています。
| 行為 | 中身 |
|---|---|
| 自己負担の還元 | 販売業者がポイント・クーポン・キャッシュバック・払い戻しで、御社の自己負担を減らしたり無料にしたりする |
| 価格のつり上げ | 見積や請求の金額を通常の価格より高くし、補助金の額を大きくする |
| 資金の還流 | 紹介料・コンサル料などの名目で、販売業者や第三者からお金を受け取る |
| 架空・水増しの経費 | 買っていないもの、届いていないものを買ったことにする |
| 受給歴の書き漏れ | 過去や申請中のほかの補助金を申請の画面に書かない |
| なりすまし | 申請や面接の手続きを、申請する会社以外の人が行う |
出典:中小企業省力化投資補助事業(一般型)応募申請の手引き(第8回公募) p.42『5-2 補助対象経費における留意事項』台帳で見る
デジタル化・AI導入補助金の公募要領は、資金の還流について「不正の例:IT導入支援事業者や第三者から資金を受け、紹介料・コンサル料などの名目で還流させるもの。紹介の実態があっても実質的な還元に当たる。取引の正当性が書類で確認できなければ直ちに交付規程に基づく措置がとられる」としています。紹介の事実があっても、お金の流れによっては不正とされる点に気をつけます。経費の正しい扱いは補助金の対象外経費7分類で取り上げています。
不正の疑いはどうやって調べられる?
不正の疑いがあると、事務局は前もって知らせずに事業所へ立ち入って調べることがあります。調べる相手は御社だけでなく、発注先や委託先にも及びます。
- 持続化補助金:取引先(委託先・外注先以降を含む)に不明瞭な点がある場合、受給者立ち会いのもとで現地調査等を行う。受給者から取引先へ協力を依頼するとしています。
- 省力化投資補助金:還元行為等が疑われる場合、事務局は事前連絡なしに立入調査を行い、不当な申請の可能性が高いと判断すれば交付決定を取り消し、事業者名・代表者名・不正内容を公表し、再度の交付申請を拒否できるとしています。
- 新事業進出・ものづくり補助金:不審な勧誘や不正の内部告発を受け付ける通報窓口を設けています。
確定検査で取引の書類と支払いの記録が合わないことから見つかる例もあります。支払いの証拠のそろえ方は実績報告で差し戻される証憑の不備で取り上げています。
見つかったときの返還と刑事罰は?
不正が見つかると、交付決定が取り消され、受け取った補助金に加算金を付けて返します。事業承継・M&A補助金の公募要領は、不正受給は交付取消し+加算金(年10.95%の利率)を加えた額を返還としています2。
返還とは別に、刑事罰の対象にもなります。補助金適正化法の第29条は、不正の手段で補助金を受けた者に5年以下の拘禁刑か100万円以下の罰金(または両方)を定め、第32条で会社の役員や従業員が違反したときは会社にも罰金を科すとしています。返還額と加算金の計算は補助金の交付決定が取り消されるときで取り上げています。
名前の公表と申請の停止はどこまで?
悪質な不正では、事業者の名前と不正の内容が公表されます。新事業進出・ものづくり補助金の公募要領は「悪質な不正行為が発覚した場合は、事業者名、不正を行った時点での代表者名、不正内容が公表される」としています。
あわせて、一定期間は新しい補助金を受けられなくなります。事業承継・M&A補助金は「不正が認められた場合、一定期間新たな補助金等を交付しない等の措置をとり、補助対象者の名称と不正の内容を公表する。」とし、新事業進出・ものづくり補助金も、申請時に虚偽の内容を申請した事業者は対象外。故意又は重過失による虚偽申請の場合は、次回以降の公募への申請も一切受け付けないとしています。
制限は1つの補助金の中にとどまりません。経済産業省や中小機構の補助金で不正をした事業者は、ほかの補助金でも申請の対象から外れます。採択した事業者の名前が公表される通常の仕組みは、制度ごとの公募要領で決まっています。公募要領の読み方は公募要領の読み方で取り上げています。
専門家から見た不正受給を防ぐポイント
補助金を続けて使う会社ほど、1つの補助金の問題がほかの補助金に広がります。公開されている採択者一覧を数えると、主な7制度の採択222,167件のうち、2つ以上の制度に採択された会社は10,607社(2026年10月14日時点)あり、成長加速化補助金の公募要領も補助事業期間中に他の補助金で同様の行為等をした場合にも、交付決定の取消・補助金の返還を行うことがあるとしています。
不正の心配が少ない会社
相見積を取り、決まった価格で発注し、銀行振込で支払って、そのまま書類を残している会社です。販売業者からの値引きやおまけを受けていなければ、お金の流れは書類どおりになります。
取引の条件を見直したい会社
「補助金を使えば実質無料」「紹介料を払う」と勧められている会社や、申請サポートの業者が見積の金額を決めている会社です。勧められた条件が還元や水増しに当たらないか、契約の前に確かめます。申請サポートの選び方は補助金の相談はどこにできる?で取り上げています。
間違えやすい点
不正受給で間違えやすいのは、自分では不正のつもりがない行為が当てはまる場合です。
販売業者からのポイントや後日の値引きは、時期や形を問わず自己負担の還元とみなされます。補助事業で買ったものについては受け取らないようにします。
外部の支援者が書いた事業計画書でも、申請した会社の責任になります。支援者に「書かないで」と言われても、作成を手伝った支援者の名前や報酬は求められたとおりに書きます。
新事業進出・ものづくり補助金の公募要領は、外部支援者の不適切な行為の例として「不適切な行為の例:サービス内容とかい離した高額な成功報酬の請求、不透明な契約・強引な働きかけ、費用の水増し等の虚偽記載の教唆、作成支援者名を書かないよう求めること、認定支援機関による支援の他者への委託」を挙げています。認定支援機関の役割は認定支援機関とは?で取り上げています。
よくある質問
うっかり書き間違えた場合も不正受給になりますか?
罰則の対象になるのは、うそや不正の手段で受け取った場合です。書き間違いに気づいたら、すぐに事務局へ連絡して直します。放っておくと、虚偽の申請として扱われることがあります。
不正をした申請サポートの業者だけが罰せられますか?
補助金を受け取ったのは申請した会社なので、返還は会社に求められます。業者が不正を主導した場合は、業者も罰則や公表の対象になります。
自分から申し出れば罰は軽くなりますか?
軽くなるかどうかは法律に書かれていませんが、早く申し出れば返還までの日数が短くなり、加算金は少なくなります。わかった時点で事務局に相談します。
不正の疑いを見つけたらどこに知らせればよいですか?
ほかの質問も見る補助金のよくある質問出典(2件)
- 持続化補助金 通常枠 第20回 公募要領 第8版(商工会議所地区) p.1『注意事項』
- 事業承継・M&A補助金 16次 事業承継促進枠 公募要領 p.3『【申請を行うにあたり】』
参考資料
- e-Gov法令検索「補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律」
- 持続化補助金事務局「持続化補助金 通常枠 第20回 公募要領 第8版(商工会議所地区)」
- 中小企業基盤整備機構「新事業進出・ものづくり補助金 第1回 公募要領」
- 中小企業基盤整備機構「省力化投資補助金 一般型 第8回 応募申請の手引き」
- 中小企業基盤整備機構「デジタル化・AI導入補助金2026 通常枠 公募要領(第7回からの改訂版)」
- 事業承継・M&A補助金事務局「16次 事業承継促進枠 公募要領」
- 事業承継・M&A補助金事務局「16次 専門家活用枠 買い手・売り手支援類型 公募要領」
- 中小企業基盤整備機構「成長加速化補助金 3次 公募要領」
- 公募要領の台帳(持続化補助金)
- 公募要領の台帳(新事業進出・ものづくり補助金)
- 公募要領の台帳(省力化投資補助金)
- 公募要領の台帳(事業承継・M&A補助金)
確認日:2026年10月17日
公募・締切・改訂のお知らせ(無料)
補助金の公募・締切・改訂を、メールでお知らせします
- 公募開始新しい公募回の公募要領が出たとき
- 締切前締切の2週間前と3日前(事前の書類の締切も)
- 改訂公募の途中で公募要領が変わったとき。変わった箇所とページ番号をお送りします
お送りするのはこの3つだけです。配信はメールの下のリンクからいつでも止められます。
補助金の関連記事
一覧へ公開 2026/10/18
要点省力化投資補助金は中小企業庁と中小機構が進める国の補助金です。公式の事務局サイトの見分け方、「実質無料」「自己負担を後で戻す」勧誘が公募要領で不正とされる理由、販売事業者と契約する前に確かめる点をまとめました。
公開 2026/10/18
要点成長加速化補助金の準備は、GビズIDの取得と100億宣言の掲載から始めます。申請の時点で宣言が載っていないと申請できません。見積・金融機関の確認書・投資計画書を締切から逆算して進める順番と、締切後の日程をまとめました。
公開 2026/10/18
要点持続化給付金はコロナ禍で売上が減った事業者への給付で、申請はすでに終わっています。持続化補助金は販路開拓の費用を後払いで補助する今も続く制度です。目的・受け取れる額・条件・時期の違いと、給付金を受けた事業者も申請できるかをまとめました。
公開 2026/10/18
要点自治体のAI導入の補助金は「DX」「デジタル化」の名前で募集されることが多く、J-Net21や自治体のサイトで探します。国のデジタル化・AI導入補助金との違いと、同じ経費に両方は使えない併用の決まりをまとめました。