東京都の海外商標対策支援助成事業とは?対象の手続きと助成額
この記事の要点
進出先の国で現地の第三者に自社ブランドと似た商標を先に登録された都内の中小企業が、取消や無効の手続きにかかる費用の助成を受けられる東京都中小企業振興公社の制度です。対象になる場面と費用、精算の仕組み、知財相談からの流れを整理しました。
この記事の目次
海外商標対策支援助成事業は、進出しようとしている国で第三者に自社ブランドと同じか似た商標を先に登録され、商売の妨げになっている都内の中小企業が、その商標を取り消す・無効にする手続きの費用を東京都中小企業振興公社が一部助成する制度です。
上限は500万円、助成率は2分の1以内で、申請は随時受け付けていますが、申請の前に東京都知的財産総合センターで知財相談を受けておく必要があります。
海外で自社のブランド名を現地の会社に先に出願・登録されてしまい、異議申立や審判で争うかを考えている会社が、この助成の対象になるか、どの費用が出るか、何から始めればよいかを知りたい方に向けた記事です。公社のページと募集要項で確かめた範囲で書いています。
東京都の海外商標対策支援助成事業とは?
自社のブランドで海外に販路を広げたい会社が、進出先の国で現地の第三者が持っている似た商標にぶつかったときに、その権利をなくすための行政手続や行政訴訟の費用を支える助成です。費用の助成だけでなく、知的財産総合センターが対策の進め方の相談にも継続して乗ります。
申請できるのは、都内の中小企業者(会社・個人事業者)、中小企業団体、一般社団・財団法人(1年度1社1案件)です。中小企業団体と一般社団法人・一般財団法人は、構成員や議決権・出資の半分以上が都内の中小企業者であることが条件で、医療法人・学校法人・宗教法人などは申請できません。
都内の要件として、会社は都内に登記上の本店か支店があること、個人事業主は都内に開業の届出をしていることが必要です。あわせて、2026年4月1日時点で1年以上都内で実質的に事業を行っている(1年未満なら都内で創業して事業を行っている)ことが求められます。公社のほかの助成金と並べたいときは東京都中小企業振興公社の助成金一覧で取り上げています(東京都中小企業振興公社「令和8年度 海外商標対策支援助成事業 募集要項」 p.9『8 申請要件』)。
自社の商標を先に取られたら使える?
使える可能性があります。条件は、妨げになっている商標が、御社が自分の名義で日本か海外で登録または出願している商標と同じか似ていることです。国内の登録がなくても、海外で出願していれば条件に当たり得ます。
| 場面 | 対象になるか |
|---|---|
| 進出予定の国で、現地の会社が御社のブランド名を先に登録している | 対象(取消・無効の手続きをとる場合) |
| 現地の会社が似た商標を出願中で、登録前に異議を出したい | 対象(情報提供・異議申立) |
| 相手が日系企業 | 対象外 |
| 日本国内の商標を取り消したい | 対象外 |
| 御社が手続きの当事者に入らず、取引先だけが争う | 対象外 |
出典:東京都中小企業振興公社「令和8年度 海外商標対策支援助成事業 募集要項」 p.3『4 助成内容』
同じ年度に交付決定を受けられるのは1社1件です。過去にこの助成を受けた会社は、決められた活用状況の報告を期日までに出していることが条件で、前の案件と別の対策なら新しく申請できます。
海外での販売や生産を広げる設備投資そのものには、国の補助金が使えることがあります。中身は新事業進出・ものづくり補助金のグローバル枠で取り上げています。
異議申立や審判の費用はどこまで対象?
相手の商標を調べる段階から、行政手続、行政訴訟、その後の和解交渉の代理人費用までが対象です。いずれも、国内と現地の代理人に払う費用を含みます。
| 段階 | 対象になる費用の例 |
|---|---|
| 情報収集 | 相手の出願・登録情報の入手、翻訳、相手企業や現地での使用状況の調査 |
| 行政手続 | 情報提供、異議申立、不使用取消審判、無効審判の手続費用と代理人費用、証拠集め・公証・翻訳・鑑定書や意見書 |
| 行政訴訟 | 審判の結果を争う行政訴訟の裁判所への手続費用と代理人費用、証拠集めの費用 |
| 和解・示談 | 行政手続や行政訴訟を起こしたあとの示談交渉の代理人費用 |
出典:東京都中小企業振興公社「令和8年度 海外商標対策支援助成事業 募集要項」 p.7『7 助成対象経費』
対象は情報収集、情報提供・異議申立・無効審判・不使用取消審判、行政訴訟に関する費用です。示談金や和解金そのもの、民事訴訟の費用、自社の商標の出願・登録・更新の費用、手続きの期限を延ばすための費用は対象になりません。鑑定はセカンドオピニオン以降と口頭の鑑定が外れます。
補助金や助成金で対象になる費用の一般的な考え方は、補助金の対象になる会社と費用で取り上げています。
3期に分けて助成金が払われる仕組みは?
海外の審判や訴訟は年をまたいで続くことが多いため、助成の期間は長くとられ、年度ごとに区切って精算します。期間は2026年4月1日から最長2028年12月31日まで(2年9か月。年度ごとの3期に分けて精算)です。
上限は3期を通した合計で、期ごとの上限はありません。各期が終わるごとに実績報告を出し、検査で額が確定したあとに、その期の分を請求します。実績報告は、事業の完了か各期の終了から15日以内に出します。
期ごとに確定する額は、その期の対象経費に助成率をかけた額と、助成予定額からそれまでに確定した額を引いた残りの、低いほうです。助成金を請求するときは、発行から3か月以内の印鑑証明書が要ります(東京都中小企業振興公社「令和8年度 海外商標対策支援助成事業 募集要項」 p.14『11 助成金の交付』)。
助成率や対象期間の読み方は、補助率の考え方で取り上げています。
知財相談から交付決定までの流れは?
申請は随時受け付けていますが、最後の受付は随時受付(最終受付 2026年12月1日(火)17時)です。相談の予約からGビズIDの発行まで日数がかかるため、相手の商標に気づいた時点で動き始めます。
- GビズIDプライムを取る。発行の目安は2週間程度で、取り方はGビズIDプライムの取得方法で取り上げています。
- 東京都知的財産総合センターに予約し、申請内容について知財相談を受ける。
- 現地の代理人などから、手続きにかかる費用の見積をとる。
- Jグランツで申請し、紙の書類を簡易書留・レターパック・宅配便など記録が残る方法で郵送する。
- 書類審査を受ける。必要に応じて面接審査がある。
- Jグランツで交付決定の通知を受ける。
審査では、対策の目的が妥当か、急ぐ必要があるか、妨げがどれだけ深刻か、効果が見込めるか、相手の商標についての情報に根拠があるかが見られます。申請の手続きは申請する会社の代表者か従業員が行い、出願などを請け負う代理人が代わりに申請することはできません(東京都中小企業振興公社「令和8年度 海外商標対策支援助成事業 募集要項」 p.13『10 審査』)。
間違えやすい点
手続きの中身よりも、時期と支払い方で対象から外れるケースが目立ちます。
発注・契約・実施・支払いのどれか1つでも助成対象期間が始まる前に終わっている対策は、対象になりません。申請書に書いていない国や区分を途中で足した分、対象の商標を変えた分の費用も外れます。
支払いは御社名義の口座からの振込が原則で、現金・手形・小切手・電子記録債権での支払いは一切認められません。ポイントを使った支払い、ほかの取引との相殺、関係会社や共同で実施する相手との取引も対象外です。
代理人への支払いは、源泉所得税の納付まで期間内に済ませる必要があります。外国の代理人の請求書は外貨の額と為替レートがわかるものを残し、外国語の書類には日本語の訳をつけます。
同じ対策で国や他の公的機関の助成に同時に申請することはできますが、両方で採択された場合は一方を辞退します。組み合わせの考え方は補助金の併用と重複のルールで取り上げています。
専門家から見たポイント
この助成は、費用の半分が戻るだけでなく、知財の専門の相談員と一緒に争い方を組み立てられる点に価値があります。手続きの国が増えるほど費用はふくらむため、どの国で何を争うかを最初に絞ることが計画の中心になります。
向いている会社
展示会や越境ECで海外の取引先が見つかり、いざ輸出しようとしたら現地で自社の名前が使えないとわかった会社は、売上の見込みと妨げの深刻さを示しやすく、審査の観点に合います。現地で出願中の段階の相手に異議を出せる会社は、登録後に審判で争うより費用を抑えやすくなります。展示会への出展の費用を助成する公社の制度は、東京都の市場開拓助成事業で取り上げています。
迷う会社
まだ進出の予定国が決まっていない会社や、自社の商標を国内でも海外でも出願していない会社は、条件を満たしにくくなります。相手が現地で長く商売をしていて実際に使っている商標は、不使用取消が認められにくく、和解も含めた落としどころを相談で詰めます。
現地の代理人の見積は手続きの段階ごとに分けてとっておくと、各期の実績報告で費用を区切りやすくなります。
御社の案件がこの助成の対象になるか、どの手続きから始めるべきかは、専門家に無料で相談できます。
よくある質問
中国や東南アジアの案件も対象になる?
募集要項に特定の国に限る記載はありません。進出を予定している国で、現地の第三者の商標が商売の妨げになっていることが条件です。
他社と共同で手続きをする場合は?
共同で実施することもできます。助成は費用を負担した割合に応じて分け、上限は全体で同じです。共同で実施する相手との取引は対象になりません。
知財相談はどこで受ける?
東京都知的財産総合センターで受けます。ホームページから予約し、申請する日より前に申請内容について相談を済ませます。
交付決定の前にかかった費用は対象になる?
対象になるかどうかは、交付決定の日ではなく助成対象期間で決まります。発注から支払いまでがすべて期間の中に入っている費用が対象ですが、事前に知的財産総合センターで確かめておきます。
ほかの質問はよくある質問にまとめています。
出典
参考資料
確認日:2026年10月17日
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