利益率が低い会社が補助金で変えたこと|コスト・収益性の採択事例
この記事の要点
利益率の低さを補助金で変えた採択事例は、客単価を上げる、外注していた工程を自社でやる、安く売っていた物を商品にする、の3つで変えています。持続化補助金と省力化投資補助金などの使い分けと、計画の書き方を整理しました。
この記事の目次
利益率の低さを補助金で変えた採択事例は、経費を削るより、客単価を上げる、外に頼んでいた工程を自社でやる、安く売っていた物を商品にする、の3つで変えています。
持続化補助金は新しい客に売る取り組みとセットなら使えます。人件費や事務の時間を減らすことが中心なら、省力化投資補助金やデジタル化・AI導入補助金が合います。
売上はあるのに利益が残らず、補助金を使ってどこを変えればよいかを知りたい方に向けた記事です。
採択事例のうち課題を「コスト・収益性」とした事例を、打ち手ごとに分けて、合う補助金と計画の書き方を整理します。
小規模事業者持続化補助金とは?
小規模事業者持続化補助金は、従業員の少ない事業者が販路を広げる取り組みの費用の一部を補助する国の制度で、商工会・商工会議所の助言を受けて計画を作ります。補助率は2/3(賃金引上げ特例のうち赤字事業者は3/4)です1。
今の公募の締切と申請の流れは持続化補助金の最新公募で取り上げています。
利益率を上げた事例に多い3つの打ち手
採択事例で利益率が上がった道筋は、単価、内製化、未利用の資源の3つにほぼ分かれます。経費を減らすこと自体を目的にした事例は少なく、どれも売り方や作り方を変えた結果として利益が増えています。
| 打ち手 | 採択事例の取り組み | 主に使った経費 |
|---|---|---|
| 客単価を上げる | メニューを作り直す、食事の案内を客室の画面に流す、商品のラベルと値付けを見直す | 広報費・機械装置等費 |
| 外注していた工程を自社でやる | 加工の機械を入れて、頼んでいた加工を自社で即日仕上げる | 機械装置等費・機械装置・システム構築費 |
| 安く売っていた物を商品にする | 規格外の農産物を冷凍して菓子の素材にする、余った資源を規格品にして出荷する | 機械装置・システム構築費 |
原材料や光熱費の値上がりがきっかけの事例でも、計画の中身は「値上げしても選ばれる理由をつくる」形にしています。持続化補助金の経費の区分は持続化補助金の対象経費一覧で確かめられます。
持続化補助金で客単価を上げた店と工房
持続化補助金は、目的が販路開拓なので、単価を上げる取り組みも「新しい客に、新しい売り方で届ける」計画にします。交付規程は目的を「第3条(交付の目的):物価高騰・賃上げ・インボイス導入などの制度変更に対応するため、生産性向上につながる経営計画にもとづく販路開拓等の経費の一部を補助する。」としています2。
- ハーブを育てる飲食店:ランチのメニューを作り直し、自家製のハーブ茶葉を通販サイトで地域の外にも売りました。ランチの客単価は250円上がり、月8万円ほどだった茶葉の売上は80%増えています。
- 食事どころのある入浴施設:客の目に入る場所に画面を置き、部屋の雰囲気や食事のメニューを英語と台湾語でも流しました。「ついでの食事」が増え、客単価は1,000円から1,500円上がっています。
- 蜂蜜を作る農家:他社の国産蜂蜜より安い値付けが品質を疑われる元になっていたため、価格とラベルを見直し、品質を伝えるリーフレットを作りました。新規の客が10件増え、直販の売上は前年より1割増えています。
- 企画とデザインだけを請けていた印刷業:ラミネーターとカッティングマシンを入れ、外に頼んでいた加工を自社でできるようにしました。新規の客を60名ほど得て、印刷部門の売上高は30%ほど増えています。
値付けやパッケージを変える取り組みの事例は持続化補助金でパッケージを作り直すでも取り上げています。
人件費と事務の時間を減らす補助金は?
利益を圧迫しているのが人の手間なら、作業を機械やソフトに置きかえる補助金が合います。省力化投資補助金の一般型は、補助を受ける会社に「事業計画期間において毎年、基準年度と比較して労働生産性を年平均成長率(CAGR)4.0%以上向上」を求めています3。
- 券売機を入れた飲食店:省力化投資補助金のカタログ注文型で券売機を入れ、閉店後に2〜3時間かかっていた現金の締めが数分になりました。売れ筋のデータでメニューを100前後から60前後に絞り、食材の廃棄も減っています。
- 車検の検査ラインをつないだ整備工場:一般型で検査の機器を一括で動かすラインを入れ、検査の時間は1日約6.9時間から約0.9時間になりました。経験の浅い人でも検査ができるようになり、利益率が上がっています。
- 見積に1週間かかっていた工務店:デジタル化・AI導入補助金で、図面から材料を拾う積算のソフトを入れました。単価を確かめて直すだけの作業になり、見積を1日で出せる見込みです。
設備とソフトのどちらで手間を減らすかの選び方は省力化・省人化に使える補助金で取り上げています。
原価を下げる設備は新製品とセットにする
原料の無駄や加工のロスを減らす設備は、新事業進出・ものづくり補助金で入れた事例があります。ただし、この補助金の革新的新製品・サービス枠は「革新的な新製品・新サービス開発が対象。既存の製品・サービスの生産等のプロセスの改善・向上を図る事業は補助対象外」としていて、今の製品のままの原価下げだけでは対象になりません4。
- 染料のメーカー:工業用水の不純物を取る純水の装置を入れて品質を上げ、原料の原価率を30%以下に抑えました。
- 資源ごみを扱う処理業:ペットボトル専用だった圧縮機を、大きく硬いプラスチックも包んで束ねられる設備にしました。1時間の処理量は最大200kgから500kgに増え、輸送の費用も下がっています。
どちらも、品質の高い製品や新しく受け入れる品目という「新しい売り物」があって、原価の改善がその結果になっています。計画書での書き分けは新事業進出・ものづくり補助金の事業計画書の書き方で取り上げています。
専門家から見た利益率改善のポイント
利益率の計画は、「何をやめて、何に置きかえて、粗利がいくら残るか」を1つの商品か1つの工程で示すと伝わります。採択事例545件のうち、課題を「コスト・収益性」とした事例は86件です。
この課題の割合は、持続化補助金の事例で10.2%、新事業進出・ものづくり補助金の事例で29.9%です。設備の大きい補助金ほど、利益率を課題に正面から書いている事例が多くなっています。
持続化補助金で単価を上げると向いている会社
商品の質には自信があるのに、安い値付けのまま売っている会社です。値上げの理由になる強みを、パッケージや案内の画面、試食などで新しい客に見せる計画が組めます。
どの補助金にするか迷う会社
利益が少ない理由が、人手のかかる作業なのか、値付けなのか、まだ分かっていない会社です。商品ごとの粗利と、作業ごとの時間を1か月だけ記録すると、売り方を変えるか、作業を減らすかが決まります。業種ごとの課題の傾向は採択事例のデータで確かめられます。
間違えやすい点
利益率を上げる計画で間違えやすいのは、目的の書き方、汎用品、今の機械の買い替えの3つです。
持続化補助金で「仕入れ値を下げる」「光熱費を減らす」だけを目的にした計画は、販路開拓の取り組みになりません。利益の改善は、新しい売り方の結果として書きます。
持続化補助金の公募要領は「パソコン・事務用プリンター・タブレット端末等、汎用性が高く目的外使用になりえるものは対象外」としています。事務の手間を減らすためのパソコンは、計画に入れられません。
今の機械と同じ性能の物に入れ替えるだけでは、どの補助金でも対象外です。新しくできることが増える機械を選び、その違いを計画に書きます。
機械を買う計画が対象になる条件は持続化補助金で買える機械は?で取り上げています。
よくある質問
値上げをする計画でも持続化補助金は使えますか?
使えます。値上げに合わせて商品の見せ方や売り先を変える取り組みなら、販路開拓の計画として組めます。値上げそのものではなく、そのための広報や試作の費用が対象です。
外注をやめて自社で作るための機械は対象ですか?
持続化補助金では、内製化で短い納期や新しい加工を売りにして新しい客を取る計画なら、機械装置等費として対象になります。内製化だけで客が変わらない計画は、販路開拓とは言えません。
赤字の会社でも利益率の計画で申請できますか?
申請できます。持続化補助金では、賃金引上げ特例を使う赤字の事業者の補助率が上がる決まりもあります。赤字の理由と、補助事業でどこが変わるかを数字で書きます。
省エネの設備で電気代を下げたい場合はどの補助金ですか?
ほかの質問も見る補助金のよくある質問出典(4件)
- 持続化補助金 通常枠 第20回 公募要領 第8版(商工会議所地区) p.7『6.(1) 補助率、補助上限額』
- 持続化補助金 通常枠 交付規程(2026年3月6日改定) p.1『第3条(交付の目的)』(公募要領の台帳)
- 中小企業省力化投資補助事業(一般型)公募要領(第8回公募) p.10『1-5(1)① 基本要件』
- 新事業進出・ものづくり補助金 第1回 公募要領 p.6『1-2-1. 革新的新製品・サービス枠』
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