新事業進出・ものづくり補助金の事業計画書の書き方|4項目の構成
この記事の要点
新事業進出・ものづくり補助金の事業計画書は、会社概要・目指す姿・経営戦略・補助事業計画の4項目を、今の姿からありたい姿への道筋としてつなげて書きます。項目ごとに書く中身、枠ごとに書き足す点、目標値の根拠の示し方を整理しました。
この記事の目次
新事業進出・ものづくり補助金の事業計画書は、電子申請の4つの項目(会社概要、自社の目指す姿、経営戦略、補助事業計画)の順に、「今の姿→3〜5年後のありたい姿→その差を埋める戦略→補助事業」とつなげて書きます。
審査は公募要領の書面審査の項目で行われるので、各項目の中身を漏れなく入れ、付加価値額と賃上げの目標値は計算の根拠まで示します。申請する枠ごとに書き足す点もあります。
新事業進出・ものづくり補助金の事業計画書を書き始める前に、どんな構成で、どの項目に何を書けばよいかを知りたい方に向けた記事です。
新事業進出・ものづくり補助金について、事業計画書の4つの項目の書き方、枠ごとに求められる記載、目標値の根拠の示し方を、公募要領と事務局の資料で整理します。審査項目ごとの評価と加点は新事業進出・ものづくり補助金の審査項目と加点で取り上げています。
事業計画書を組み立てる4つの項目
事業計画書は電子申請の画面に入力する形で、「1.会社概要」「2.自社の目指す姿」「3.経営戦略」「4.補助事業計画」の4つの項目でできています。事務局の資料は、今の姿とありたい姿の差(問題)から課題を出し、その課題を解く戦略と補助事業を書く流れを示しています。
| 項目 | 書くこと | 主につながる審査項目 |
|---|---|---|
| 1.会社概要 | 今の事業、売上と利益の推移、これまでの取組 | 経営戦略との整合性(過去の取組との一貫性) |
| 2.自社の目指す姿 | 経営理念とビジョン、3〜5年後のありたい姿、今との差 | 経営戦略との整合性 |
| 3.経営戦略 | 強み・弱み・機会・脅威から出した課題、事業全体の方向性と経営資源の使い方 | 経営戦略との整合性、事業の実現可能性 |
| 4.補助事業計画 | 新事業の中身、既存事業との振り分け、人・設備・収支の計画 | 事業の実現可能性、新市場性・高付加価値性、公的補助の必要性 |
出典:新事業進出・ものづくり補助金 第1回 経営戦略に基づく補助事業計画の考え方 p.3『事業計画の作成にあたって』
4つの項目は順につながっていないと、審査員に「補助金のための計画」と読まれます。1と2で書いた強みや課題が、3と4で使われているかを、書き終えてから線で結んで確かめます。
枠ごとの要件と補助額は新事業進出・ものづくり補助金とはで確かめられます。
会社概要と目指す姿は今との差を書く
会社概要と自社の目指す姿の項目では、今の会社の数字と、3〜5年後になりたい姿を並べ、その差を「問題」として書きます。差がはっきりしないと、次の項目で書く課題と戦略の必然性が伝わりません。
- 会社概要:主な製品・サービス、取引先の構成、直近3期の売上・営業利益・人件費の推移、これまでの設備投資や新しい取組を書きます。
- 目指す姿:経営理念と、3〜5年後の売上・付加価値額・従業員数・賃金の水準を数字で書きます。
- 今との差:「売上の8割が1社に集中していて、取引先の発注が減ると赤字になる」のように、ありたい姿に届かない理由を事実で書きます。
公募要領は、経営理念・経営戦略を踏まえた中長期ビジョンの下で課題解決と事業展開の方向性を示し、本事業の位置づけを明確にするとしています1。ビジョンは飾りの言葉ではなく、補助事業がなぜ今必要かを説明する出発点です。
申請できる会社の条件は新事業進出・ものづくり補助金の対象者で取り上げています。
経営戦略は強みと市場の根拠で書く
経営戦略の項目では、強み・弱み・機会・脅威を整理して課題を出し、その中から補助事業で取り組む課題を選んだ理由を書きます。審査では、外部環境と自社の強み・弱みを踏まえた競争優位性があるかが問われます。
市場の規模と成長は、公的な統計や業界団体の資料で裏付けます。公募要領は継続的に売上・利益を確保できる市場規模があり、成長が見込まれる市場であることを示すとしていて、地域の人口や人の流れの確認には地域経済分析システム(RESAS)も使えると案内しています。
優位性は「品質が良い」ではなく、競合と比べた数字で書きます。たとえば「同じ加工の納期が競合の半分」「不良率が業界平均の3分の1」のように、顧客が御社を選ぶ理由を比べられる形で示します。
課題を選んだ理由には、既存事業の人や設備をどう振り分けるかも書きます。審査では、第三者に頼りすぎていないか、手を広げすぎて人や資金が足りなくならないかも見られます。
出典:新事業進出・ものづくり補助金 第1回 公募要領 p.44『3-1. 書面審査』台帳で見る
審査で落ちる原因はものづくり補助金で落ちる原因で取り上げています。
補助事業計画は枠ごとの条件を書き足す
補助事業計画の項目では、新事業の製品・サービス、顧客、売り方、設備、実施体制とスケジュール、収支を書き、申請する枠で求められる条件を満たすことを示します。枠によって、示すべき点がはっきり違います。
- 革新的新製品・サービス枠:革新的新製品・サービス枠では、開発する新製品・新サービスの革新性を事業計画書に具体的かつ詳細に書くとされています。何が今までの製品・サービスと違うのかを、技術や仕様の比較で示します。
- 新事業進出枠:新事業進出枠では、過去に製造等した実績がない製品等に取り組むことと、既存事業と新規事業の顧客層が異なることを事業計画書で示すとされています。既存の顧客と新しい顧客の違いを、業種・地域・購買のしかたで書き分けます。
- グローバル枠:グローバル枠では、海外販路開拓の戦略が自社の事業戦略に基づくことと、顧客層がこれまでの事業と国・地域単位で異なることを事業計画書で示すとされています。輸出先の国の法規制や商習慣の違いも把握していることを書きます。
外注先や専門家を使う場合は、相手の概要と選んだ理由、助言が欠かせない理由も計画書に書きます。書いていない外注費や専門家経費は、採択後の交付審査で対象外とされることがあります。
枠ごとの対象経費と書き足す点は新事業進出・ものづくり補助金の新事業進出枠でも取り上げています。
付加価値額と賃上げの目標値の根拠
付加価値額と一人当たり給与支給総額の目標値は、補助事業でどう売上と利益が増え、どれだけを人件費に回すかの計算から出し、その根拠を計画書に書きます。数字だけを書いて根拠が無いと、実現できる計画かを判断してもらえません。
基本の要件は、付加価値額が「付加価値額の年平均成長率4.0%以上(付加価値額=営業利益+人件費+減価償却費)」、賃上げが「従業員の一人当たり給与支給総額の年平均成長率3.5%以上(全枠共通)。目標値は交付申請時までに従業員等へ表明」です2。基準を上回る目標を書くと、高さと実現できる見込みの両方が審査されます。
- 新事業の売上を、顧客数×単価×回数で年度ごとに出す。
- 既存事業の売上の見込みと合わせ、原価と販管費を引いて営業利益を出す。
- 営業利益に人件費と減価償却費を足して付加価値額を出し、年平均の伸びを計算する。
- 人件費の増え方を、採用の予定と昇給の予定から年度ごとに出す。
計画書に書いた目標値は、採択後も毎年の事業化状況報告で達成の度合いを確かめられます。賃上げの未達には返還の決まりもあるので、届く見込みのある数字で書きます。採択後の報告と返還は新事業進出・ものづくり補助金の採択後で取り上げています。
専門家から見たポイント
事業計画書で評価が分かれるのは、「なぜ御社がこの新事業をやるのか」が既存事業の強みから説明できているかです。採択事例では、新事業進出・ものづくり補助金の事例97件のうち、製造業が78.4%を占め、課題として生産性・人手不足を挙げた事例が56.7%、新事業・新市場を挙げた事例が45.4%ありました。
多くの事例は、今の設備や技術の延長に新しい顧客や製品を置いています。既存事業で培った加工技術や取引先を新事業の強みとして書き、新しく買う設備がその強みをどう伸ばすかを示すと、経営戦略との整合性と実現可能性の両方に答えられます。
計画を書き始めやすい会社
新事業の顧客候補とすでに話をしていて、試作や見積の依頼など、ニーズの裏付けを持っている会社です。顧客の声や引き合いの数を計画書に入れられるので、市場性と実現可能性の根拠が強くなります。
計画を練り直したほうがよい会社
設備を入れることが先に決まっていて、誰に何を売るかが固まっていない会社です。審査は新事業の市場と顧客から読まれるので、設備の性能だけを詳しく書いても評価は上がりません。顧客と売り方を先に決めてから、設備の選定に戻ります。
業種ごとの採択事例は採択事例のデータから探せます。
間違えやすい点
間違えやすいのは、計画書の流用、目標値の根拠、口頭審査の準備の3つです。
ほかの会社と同じか酷似した計画は、故意や重大な過失があれば、その後の申請を受け付けない扱いになることがあります。例文や他社の計画をそのまま使わないでください。
目標値の根拠を書かずに要件ぎりぎりの数字だけを入れると、実現できる計画かを判断できず評価が下がります。売上と人件費の計算の流れを計画書に残してください。
口頭審査は申請した会社の代表者などが自分で答え、計画を手伝った人の同席は認められません。計画書の数字と理由を、代表者が自分の言葉で説明できるようにしておきます。
口頭審査で聞かれる点はものづくり補助金の口頭審査で取り上げています。
よくある質問
事業計画書に図や写真を入れてもよいですか?
入れてかまいません。公募要領は、必要に応じて図表や写真を使うよう案内しています。ただし社長や従業員、顧客の顔写真のように事業に関係のない個人情報は載せません。
事業計画書のページ数に決まりはありますか?
入力欄の文字数などの決まりは、電子申請システムの操作マニュアルで確かめます。長さよりも、書面審査の項目を漏れなく書いているかが評価されます。
複数の新事業を1つの計画書に書けますか?
書けます。複数の事業を1つの事業計画書に書いて申請でき、その場合も1つの計画として審査されます。
計画書の作成を外部に頼んだ費用は補助の対象ですか?
対象外です。事業計画書など事務局に出す書類の作成費用は補助の対象にならず、計画づくりを手伝った人への専門家経費も対象外です。
採択後に計画書の内容を変えられますか?
変える場合は事務局の承認が要ります。交付申請の時点で計画書のスケジュールどおりに進んでいないと理由を聞かれ、続けられないと判断されると採択が取り消されることもあります。
出典(2件)
- 新事業進出・ものづくり補助金 第1回 公募要領 p.43『2-2-2. 事業計画書への記載事項』
- 新事業進出・ものづくり補助金 第1回 公募要領 p.11『1-3-1. 基本要件』
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