広域ものづくりネットワーク形成支援事業|連携開発の助成と中核企業認定
この記事の要点
複数の中小企業で試作品を共同開発し、大企業への提案につなげたい都内のものづくり企業が使える東京都中小企業振興公社の支援です。中核企業の認定から助成の申請、対象経費、面接審査までの流れと、間違えやすい点を募集要項で整理しました。
広域ものづくりネットワーク形成支援事業は、都内の中小企業が「中核企業」になり、ほかの中小企業と組んで試作品を共同で開発・改良し、大企業へ提案するまでを、東京都中小企業振興公社が最長2年間支える事業です。
助成の上限は1,500万円(申請下限50万円)、助成率は2分の1以内です。助成を申請する前に中核企業の認定を受ける必要があり、申請は提出締切 2026年10月30日(金)16時までに出します。
自社だけでは作れない試作品を、加工や設計の得意な会社と組んで形にし、大企業との取引につなげたいものづくり企業が、この事業を使えるか、どんな順番で何を準備するかを知りたい方に向けた記事です。公社の公式ページと募集要項で確かめた範囲で書いています。
東京都の広域ものづくりネットワーク形成支援事業とは?
この事業は、助成金だけの制度ではありません。連携先の候補探し、専門家の無料派遣、コーディネーターによる進み具合の確認といった支援があり、その中の1つとして開発費の助成があります。担当は公社の多摩支社です。
中核企業になれるのは、都内で2年以上事業を行う中小企業(中核企業。みなし大企業を除く)です。法人は都内の登記上の本店か支店、個人事業主は都内の開業届で所在を示します。大企業が株式の半分以上を持つ会社など、実質的に大企業が経営に加わっている会社は対象外です。
中核企業には、次の4つがそろっていることが求められます。
- 少なくとも1社の中小企業と組まないと実現できない製品・技術の開発や改良を計画していること
- 開発した試作品で、大企業へ提案できる見込みがあること
- 事業が終わったあとも都内で事業を続けること
- 食品・化粧品・医薬品など、口に入れたり体に塗ったりする製品の開発ではないこと
開発を行う場所は原則として都内で、埼玉・神奈川・千葉など首都圏の場所は案件ごとに認められることがあります。公社のほかの助成と並べて比べたいときは、東京都中小企業振興公社の助成金一覧で制度ごとに整理しています(東京都中小企業振興公社「令和8年度 広域ものづくりネットワーク形成支援事業 募集要項」 p.9『申請要件』)。
中核企業の認定から助成までの順番は?
助成は、中核企業の認定を受けた会社だけが申請できます。認定と助成の審査は別々で、認定を受けても助成が決まるわけではありません。
- 公社の多摩支社に電話かメールで連絡し、コーディネーターの聞き取りを受ける。
- 中核企業の認定を申し込む。条件は、助成の申請日の1か月前までに中核企業の認定を受けていること(認定までは審査会を含めて1〜2か月ほど)です。
- 連携先を決める。公社のデータベースでの候補探しや、専門家の派遣を受けられます。
- GビズIDプライムを取り、Jグランツで助成を申請する。発行までの目安は2週間程度で、取り方はGビズIDプライムの取得方法で取り上げています。
- 一次審査(書類)と二次審査(面接)を受ける。時期は一次審査(書類)2026年11月中旬~下旬、二次審査(面接)2026年12月中旬~下旬です。
- 交付決定を受ける。日付は2027年2月1日(予定)です。
- 助成対象期間(2027年2月1日~2029年1月31日(最長2年))の中で開発し、1年を超える場合は中間報告と中間検査を受ける。
- 完了報告を出して完了検査を受け、額が確定してから請求する。終わったあとも5年間は事業化の状況を毎年報告します。
面接審査は対面だけで、日時は公社が決め、変更はできません。認定にかかる期間と、申請日の1か月前までに認定を受けている条件を考えると、締切の直前に動き出しても今の回には間に合いません。これから準備する会社は、認定を先に済ませて次の募集に備えるのが現実的です(東京都中小企業振興公社「令和8年度 広域ものづくりネットワーク形成支援事業 募集要項」 p.22『審査』)。
助成の対象になる経費とその上限は?
対象の経費は原材料・副資材費、機械装置・工具器具費、委託・外注費、直接人件費、産業財産権出願・導入費の5つです。経費の区分ごとに、実際にかかった額の半分と交付が決まった額を比べ、低いほうが助成額になります。
| 経費の区分 | 中身の例 | 主な条件 |
|---|---|---|
| 原材料・副資材費 | 試作品を作るのに使う材料や部品 | 使い残しは対象外。受け払いの記録が要る |
| 機械装置・工具器具費 | 試験装置、試作用の金型、測定機器、ソフトウェア | 中古品・改造・パソコンなど汎用の機器は対象外 |
| 委託・外注費 | 設計や加工の外注、試験の委託、認証の初回の申請、専門家の技術指導 | 委託・外注計画書が要る。再委託・人材派遣は対象外 |
| 直接人件費 | 設計・製作・試験に直接かかわった社員の時間 | 直接人件費の助成金交付申請額は助成対象期間の合計で500万円まで。残業・休日出勤・事務作業は対象外 |
| 産業財産権出願・導入費 | 特許の調査・出願・審査請求、特許の実施許諾や譲渡を受ける費用 | 印紙代・登録料は対象外 |
出典:東京都中小企業振興公社「令和8年度 広域ものづくりネットワーク形成支援事業 募集要項」 p.11『助成対象経費』
1件100万円(税抜)以上の機械や外注には、2社以上の見積が必要です。量産用の設備や金型、建物の工事、関連会社との取引は対象になりません。国の補助金で設備まで含めて開発する道は新事業進出・ものづくり補助金の概要で取り上げています。
間違えやすい点
この事業は助成の前の手続きが長く、順番を取り違えると申請そのものができません。
中核企業の認定を受けていない会社は、助成を申請できません。認定は、助成の申請日の1か月前までに受け終えている必要があります。
交付決定より前に支払った経費は対象外です。見積は交付決定前に取ってかまいませんが、発注と支払いは交付決定のあとにします。
完了検査で目標を達成していないと判断されると、助成金は支払われません。中間検査の時点でも支払いはありません。
同じテーマで公社のほかの助成に同時に申請することはできず、1社が申請できるのは同じ年度に1件です。国のものづくり補助金などに同じテーマで出すことはできますが、両方で採択されたらどちらかを辞退します。交付決定前の発注が対象外になる理由は交付決定前の発注・契約が対象外になる理由で取り上げています(東京都中小企業振興公社「令和8年度 広域ものづくりネットワーク形成支援事業 募集要項」 p.7『助成対象事業』)。
専門家から見たポイント
この事業の強みは、助成だけでなく、連携先探しと大企業への提案までをコーディネーターと一緒に進められる点です。その分、計画の中心に「どの大企業に何を提案するか」がはっきりしているかが問われます。
向いている会社
得意な加工や部品の技術があり、ほかの会社の技術と合わせれば大企業の課題に応える試作品が作れる、と見通しのある会社です。面接審査では市場性と提案の見込み、新しさ、技術と体制の面で実現できるかが見られるため、提案先の部署やニーズをつかんでいる会社ほど説明しやすくなります。
開発の中心を社内の技術者が担う会社は、直接人件費を経費に入れられる点も使いやすいところです。
迷う会社
連携先がまだ決まっておらず、提案先の大企業のイメージもない会社は、認定と連携先探しから始めることになり、時間がかかります。1社で完結する開発や、販路の開拓が主な目的の計画は、この事業の形に合いません。複数の事業者で組む取り組みは国の制度にもあり、持続化補助金の共同・協業型で取り上げています。
試作品は、原則として大企業への提案に使うことが前提です。申請書では、試作品の完成を目標にするだけでなく、誰にどの場面で見せるかまで書いておくと、計画の筋が伝わります。
御社の開発が中核企業の要件に合うか、連携の組み方をどうするかは、専門家に無料で相談できます。
よくある質問
連携先は都内の会社でなければいけない?
公式ページと募集要項には、連携先の所在地を都内に限る記載はありません。開発の場所は原則都内で、首都圏は案件ごとに判断されます。迷う場合は多摩支社に確かめます。
中核企業の認定にはどれくらいかかる?
公式ページでは、審査会を含めて1〜2か月ほどとされています。認定は助成の申請日の1か月前までに受け終えている必要があるため、締切から逆算すると2〜3か月前には動き始めます。
個人事業主も中核企業になれる?
都内の開業届があり、都内で2年以上事業をしていればなれます。ただし個人事業主本人の報酬は直接人件費の対象外です。
面接審査はオンラインで受けられる?
対面だけです。日時と場所は公社が決め、変更はできません。
開発した試作品を売ってもいい?
試作品そのものの販売は助成の対象外です。提案に使う前提で開発し、売るための量産は事業が終わってから自社の負担で進めます。
ほかの補助金の質問はよくある質問の一覧から探せます。
出典
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