東京都の中小企業収益力強化サポート事業とは?専門家派遣と助成金
この記事の要点
物価高で利益が減った都内の中小企業が、経営の専門家と収益力強化計画を作り、その計画に沿った経費の助成を受けられる東京都中小企業振興公社の事業です。申し込める会社の条件、専門家派遣の中身、助成金の対象経費と流れを募集要項で整理しました。
この記事の目次
中小企業収益力強化サポート事業は、物価高で利益が減った都内の中小企業に、東京都中小企業振興公社が経営の専門家を無料で派遣して収益力強化計画を一緒に作り、その計画に沿った経費を最大300万円まで助成する2段階の制度です。
助成金だけの申請はできず、まず専門家派遣に申し込みます。派遣の受付は第2回 2026年10月1日~12月14日(予定)で、予定の件数に達すると早く締め切られます。
原材料や光熱費の値上がりで利益が細っている会社が、この事業で何をしてもらえるのか、助成金がいくら・何に出るのか、申し込みで何を準備すればよいかを知りたい方に向けた記事です。公社の事業サイトと募集要項で確かめた範囲で書いています。
東京都の中小企業収益力強化サポート事業とは?
この事業は「専門家派遣」と「助成金」の2つが続けてセットになっています。前半で外部の専門家が会社を訪ね、売上・原価・経費の数字を一緒に分析して、利益を戻すための計画(収益力強化計画)を作ります。後半で、その計画に書いた取組の経費の一部を助成金で受け取ります。
申し込める会社の条件は、次の6つをすべて満たすことです。
- 都内に登記上の本店か支店がある
- 都内で実際に事業をしている(登記だけでなく、看板・名刺・雇用の状況などで判断)
- 中小企業基本法の中小企業者で、大企業が実質的に経営に入っていない
- 直近の決算期の営業利益が前の期より減っている、または営業損失を出している(個人事業主は青色申告決算書・収支内訳書の該当欄で判断)
- 創意工夫チャレンジ促進事業の交付決定を受けていない
- 専門家の助言を受け、それを踏まえた取組を自社で進められる
営業利益の比べ方は、受付が始まった日の時点の直近決算期とその前の期です。売上が伸びていても、原価や経費の上昇で営業利益が下がっていれば当てはまります。
公社のほかの助成金と並べて比べたいときは、東京都中小企業振興公社の助成金一覧で制度ごとにまとめています(東京都中小企業振興公社「中小企業収益力強化サポート事業 専門家派遣 募集要項」 p.9『申込資格』)。
専門家の派遣では何をしてもらえる?
派遣される専門家は、経営診断の知識と、コスト削減や売上拡大の支援の実績がある人です。事務局が申込の内容を見て派遣機関に依頼し、御社に合う専門家を選びます。自分で専門家を指名する仕組みではありません。
支援の進め方は次のとおりです。
- 回数は1社あたり6回まで(収益力強化計画の策定まで)で、費用はかかりません
- 期間の目安は支援決定から3〜5か月程度です
- 原則として平日の日中に、本社や工場を訪ねる対面の形で、1回あたり1.5〜2時間ほど行います
- 初回と最終回には、最終的に決める立場の代表者か担当役員が同席します
- 中身は、経営環境と課題の整理、財務の分析、改善策の検討、行動計画づくりと、その実行の確認までです
専門家は助言をする立場で、資料づくりや作業そのものを引き受けるわけではありません。計画は専門家の提案をもとに御社が自分で決めて作ります。支援が完了したと認められるのは、計画ができあがり、事務局のアンケートに答えた時点です。
派遣先は都内のほか、神奈川・埼玉・千葉・群馬・栃木・茨城・山梨の拠点も選べますが、都外の拠点に来てもらえるのは都内に本店の登記がある会社だけです。
国の補助金で事業計画を一緒に作る外部の支援者には、認定支援機関という別の仕組みもあり、役割は認定支援機関とは?役割と選び方で取り上げています。
助成金はいくらで、どの経費に使える?
助成金は、専門家派遣の中で作った収益力強化計画に書いた取組の経費だけが対象です。計画に無い設備や広告は、たとえ利益の改善に役立つものでも対象から外れます。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 対象になる会社 | 物価高騰により事業継続に影響を受けている都内中小企業等のうち、この事業の専門家派遣で計画を作った会社 |
| 助成率 | 助成対象経費の3分の2以内(賃金引上げ計画を掲げて申請した場合は4分の3以内、小規模企業者は5分の4以内。計画が未達成の場合は3分の2以内) |
| 対象経費 | 原材料・副資材費、機械装置・工具器具費、委託・外注費、産業財産権出願・導入費、店舗等改装費、規格等認証・登録費、設備等導入費、システム等導入費、販売促進費の9区分 |
| 助成対象期間 | 交付決定日から1年間 |
| 助成金の申請時期 | 第2回の専門家派遣を受けた会社は2027年1月頃(予定)。以降は四半期ごとに募集 |
出典:東京都中小企業振興公社「中小企業収益力強化サポート事業 専門家派遣 募集要項」 p.6『中小企業収益力強化サポート助成金』
助成率が上がるのは、賃金引上げの計画を掲げて申請した場合です。計画どおりに賃金を上げられなかったときは、基本の助成率に戻ります。賃上げを条件に補助率や上限が上がる仕組みは国の補助金にも多く、未達のときの扱いは補助金の賃上げ加点と未達のときの返還で比べています。
委託・外注費のうち、市場調査の費用だけで申請することはできません。どの区分に入るか迷う経費は、計画を作る段階で専門家と一緒に整理しておくと、あとで経費を組み替える手間が減ります。
申し込みから入金までの流れは?
専門家派遣の申込は事業サイトのフォームから、助成金の申請はJグランツの電子申請で行います。助成金は後払いなので、設備や広告の支払いはいったん自社で立て替えます。
- 直近3期分の決算書(貸借対照表、販管費の内訳を含む損益計算書、法人税申告書の別表1〜2)と、発行から3か月以内の履歴事項全部証明書をそろえる。個人事業主は確定申告書第一表と収支内訳書か青色申告決算書、開業届の控えです。
- 申込フォームに入力し、書類を添付して送る。受付が終わると確認のメールが自動で届きます。
- 事務局の審査を受ける。申込からおおむね1週間程度で結果をメールで通知の見込みです。
- 支援が決まったら、事務局から初回の日程調整の連絡が来る。期日までに返事をしないと支援が止まることがあります。
- 専門家と面談を重ね、収益力強化計画を作る。
- GビズIDプライムを使い、Jグランツで助成金を申請する。IDの取り方はGビズIDプライムの取得方法で取り上げています。
- 交付決定のあとに契約・支払いをし、取組を進める。
- 実績を報告し、額が確定してから助成金を受け取る。
受付には全体の上限があり、第1回と第2回の合計で500社に達した時点で締め切られます。立て替えの期間の資金の手当ては、補助金はいつ入金される?受取までの期間で考え方を取り上げています。
間違えやすい点
この事業でつまずきやすいのは、ほかの公社の制度との関係と、申し込む前の準備の段階です。
創意工夫チャレンジ促進事業(業務改善・賃上げ重点・新市場の3コース)とは同時に使えません。創意工夫チャレンジで交付決定を受けた会社はこの事業に申し込めず、逆にこの事業で支援の決定を受けた会社は創意工夫チャレンジに申請できません。
導入するシステムや解決策がすでに決まっている会社、助成金を受け取ることだけが目的の申込は、支援の対象外とされています。専門家と課題を洗い出すところから始める事業です。
このほか、専門家派遣を受けられるのは1社1回だけです。日程の変更が3回以上続いたり、直前のキャンセルが重なったりすると、支援が途中で止まることがあります。公社や専門家と個別の秘密保持契約は結べず、専門家は派遣機関との契約で守秘義務を負う形です(東京都中小企業振興公社「中小企業収益力強化サポート事業 専門家派遣 募集要項」 p.14『留意事項』)。
交付決定の前に契約や支払いをした経費は助成の対象になりません。理由と例外の考え方は交付決定前の発注・契約はなぜ補助対象外?で取り上げています。
創意工夫チャレンジとどちらを選ぶ?
どちらも営業利益が減った都内の会社が対象で、経費の区分もよく似ています。違いは、計画を自分で書いて申請するか、専門家と一緒に作ってから申請するかです。
- 収益力強化サポート:専門家が数回訪ねて計画づくりから伴走する。助成の上限は小さめで、計画ができるまで数か月かかる
- 創意工夫チャレンジ:自社で申請書を書き、書類と面接の審査を受ける。上限は大きいが、取組の中身を自分で固めておく必要がある
原価の上昇にどう手を打つか社内で決めきれていない会社は、収益力強化サポートで課題を整理するほうが進めやすくなります。販路を広げるための小さな広告や展示会が中心なら、国の持続化補助金も候補で、経費の範囲は持続化補助金の補助対象経費一覧で取り上げています。
専門家から見たポイント
この事業の価値は、助成金そのものより、利益が減った理由を数字で分解してもらえる点にあります。値上げで原価が上がったのか、売価を上げきれていないのか、固定費が膨らんだのかで、打つべき手が変わるからです。
向いている会社
決算書は手元にあるものの、どの商品や取引先で利益が落ちたのかを分けて見られていない会社です。専門家と一緒に原価と売価を見直し、値上げの交渉材料や設備の入れ替えの優先順位を計画にまとめると、助成金をどこに使うかも自然に決まります。
賃上げを予定している会社は、賃金引上げの計画を掲げることで助成率を上げられます。計画の作成と賃上げの時期を合わせて考えておくと、助成金と人件費の両方の見通しが立てやすくなります。
迷う会社
入れたい設備やシステムが決まっていて、すぐに発注したい会社は、計画づくりの期間を待つ分だけ導入が遅れます。助成の上限を超える大きな投資を考えている場合も、創意工夫チャレンジや国の補助金と比べてから決めるほうが無駄がありません。
専門家との面談の前に、直近3期の決算書から商品別・取引先別の粗利をざっくり出しておくと、限られた回数の面談を課題の深掘りに使えます。
計画のあとに使う設備投資の資金を融資で手当てする方法は補助金を受取までの資金繰り対策で取り上げています。
御社が申し込みの条件に当てはまるか、どの制度から使うかは、専門家に無料で相談できます。
よくある質問
個人事業主も申し込める?
申し込めます。都内で事業をしていることを開業届の控えで示し、営業利益の減少は青色申告決算書か収支内訳書の数字で判断されます。
助成金だけを申請できる?
できません。助成金はこの事業の専門家派遣で作った収益力強化計画に沿った取組だけが対象で、先に専門家派遣を受ける必要があります。
専門家に払う費用はかかる?
派遣を受ける会社の費用負担はありません。決められた回数の範囲で、専門家が会社を訪ねて計画づくりを手伝います。
決算期が3期そろっていなくても申し込める?
創業から3年たっていないなど3期分が無い場合は、出せる期の分だけで申し込めます。営業利益の比較には直近とその前の期の決算が必要です。
専門家派遣の審査で不採択になったら、もう申し込めない?
支援の決定を受けられなかった場合は、次の回以降にもう一度申し込めます。支援を受けられるのは1社1回までです。
ほかの質問はよくある質問にまとめています。
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