マルチエネルギーステーション化支援事業|東京都のガソリンスタンド向け助成
この記事の要点
都内のガソリンスタンドが省エネ設備への更新や新しい事業を始めるときに、専門家の派遣と助成金で支える東京都中小企業振興公社の事業です。2つのコースの違い、対象の設備と家賃、専門家派遣から入金までの流れを募集要項で整理しました。
この記事の目次
マルチエネルギーステーション化支援事業は、都内のガソリンスタンドがEV充電や水素などを扱う拠点に変わっていけるよう、東京都中小企業振興公社が専門家の派遣と助成金で設備の入れ替えや新しい事業を後押しする制度です。
コースは、専門家派遣を受けたスタンドの事業者が使う「機能向上・事業多角化」と、スタンドの空きスペースで新しい事業を始める会社が使う「空きスペース活用」の2つで、上限は機能向上・事業多角化 2,500万円(下限10万円)、空きスペース活用 脱炭素化に役立つビジネス100万円・それ以外75万円、助成率は機能向上・事業多角化 3分の2以内、空きスペース活用 脱炭素化に役立つビジネス3分の2以内・それ以外2分の1以内です。
都内でガソリンスタンドを営む会社や、スタンドの敷地で新しい商売を始めたい会社が、この助成で何に使えるか、どの順番で申し込めばよいかを知りたい方に向けた記事です。公社の公式ページと各コースの募集要項で確かめた範囲で書いています。
東京都の環境に配慮したマルチエネルギーステーション化に向けた経営力強化・設備導入等支援事業とは?
ガソリンの需要が減っていく中で、スタンドを地域のエネルギー供給の拠点として残すための事業です。省エネ設備への更新や、カーシェア・カフェのような新しいサービスの立ち上げを、専門家の助言と助成金の2つで支えます。
機能向上・事業多角化のコースで助成金を申請できるのは、次の条件を満たす会社です。
- この事業の専門家派遣の支援を受けた
- 中小企業者で、大企業が実質的に経営に入っていない(組合なども対象)
- 法人は都内に本店か支店があり、個人事業主は都内で開業届を出しているか確定申告をしていて、都内で実際に事業をしている
- 対象のスタンドが都内にあり、自社で持っているか借りている
- 将来のマルチエネルギーステーション化を目指し、都の脱炭素の施策のPRに協力する
この事業を使う会社は、東京都の制度融資「HTT・ゼロエミッション支援」で信用保証料の3分の2の補助を受けられます。公社のほかの助成金と並べて比べたいときは、東京都中小企業振興公社の助成金一覧で制度ごとにまとめています(東京都中小企業振興公社「マルチエネルギーステーション化 助成金 募集要項」 p.2『4 申請要件』)。
2つのコースは誰が何に使える?
2つのコースは、申請できる人も対象の経費も大きく違います。スタンドを営む会社自身が設備に使うのが機能向上・事業多角化、スタンドの場所を借りて商売をする会社が家賃に使うのが空きスペース活用です。
| 項目 | 機能向上・事業多角化 | 空きスペース活用 |
|---|---|---|
| 申請できる人 | 専門家派遣を受けたスタンドの事業者 | 都内のスタンドの空きスペースで新しく事業を始める中小企業者 |
| 対象経費 | 専門家の報告書に書かれた取組の設備費・工事費、求人広告費、資格の取得費 | 空きスペースの土地・建物の賃借料(最大12か月分) |
| 専門家派遣 | 助成金の前に必ず受ける | 使いたい会社だけ受ける |
| 主な条件 | 報告書の内容に沿った取組であること | 申請した場所で3年以上事業を続ける予定であること |
出典:東京都中小企業振興公社「マルチエネルギーステーション化 助成金 募集要項」 p.1『2 助成内容』
助成金の受付は空きスペース活用 2026年5月20日(水)~12月25日(金)、機能向上・事業多角化 専門家派遣終了後~12月25日(金)です。どちらのコースも受付は先着順で、期間の中でも予算に達すると締め切られます。助成対象期間は交付決定日から1年間で、この間に発注・納品・支払いまで終わらせます。
脱炭素の設備に使える国や都の制度はGX・脱炭素に活用できる補助金・助成金で並べています。
機能向上・事業多角化で対象になる設備は?
機能向上の設備は、募集要項で次の10種類が挙げられています。
- POSシステム
- デジタルサイネージ
- 遠隔監視装置(監視カメラなど)
- タブレット型の給油許可システム
- 車番認証システム
- ピットで使う機器
- ピットの整備・改修
- サービスルームなどの整備・改修
- 省エネ型の洗車機
- LED照明(屋内照明、キャノピー灯など)
事業多角化は、新しい事業のための設備費と工事費が対象で、カーシェア、コインランドリー、カフェ、コンビニ、マッサージ店、自動販売機、無人販売店が例に挙がっています。人材の確保・育成として、求人広告、採用イベントへの出展、事業に必要な資格の受験料や講座の受講料も対象です。
EV充電設備や水素の設備だけを取り出した助成のメニューは、募集要項にはありません。スタンドと別の場所にある水素ステーションなども、スタンドと一体で経営されていれば対象になり得るとされています。
対象にならないのは、専門家の報告書に書かれていない取組の経費、中古品、リース・レンタル、人件費、保守費、汎用のパソコン・タブレット・ソフトウェア、一次側の電気工事や土木工事などです。車両の購入は、専門家の報告書で認められた場合を除いて対象外です。
省エネの設備の入れ替えに使える国の制度は省エネ補助金でエネルギーコストを削減で取り上げています。
空きスペース活用は何が助成される?
空きスペース活用は、スタンドの敷地の使っていない場所を借りて、新しく事業を始める会社の家賃を助成するコースです。スタンドの事業者でなくても、都内で1年以上事業をしている中小企業者なら申請できます。
助成率と上限が高くなる「脱炭素化に役立つビジネス」は、ゼロエミッション東京戦略のエネルギー、都市インフラ、資源・産業、気候変動適応の4分野のどれかに入り、事業そのものが脱炭素に直接つながるものです。EVのカーシェア、食品のシェアリング、資源の回収が例に挙がっています。事業の中で環境に気を配るだけでは当たりません。
対象は賃借料で、敷金・礼金・仲介手数料・保証金・管理費・共益費、保険料、水道光熱費、消費税は外れます。申請者や三親等以内の親族が持つ不動産の賃料も対象外です。
次の場合は申請できません。
- 交付決定日より前から、その場所で事業をしている
- 同じ場所にある今の店舗を改装する、業種を変える
- スタンドを営む会社と賃貸借の契約を結んでいない
家賃が助成の対象になる都の制度はほかにもあり、創業の段階で使える制度は家賃や人件費も対象になる創業支援助成事業で取り上げています。
専門家派遣から助成金の入金までの流れは?
機能向上・事業多角化のコースは、専門家派遣を受けてからでないと助成金を申請できません。流れは次のとおりです。
- 専門家派遣を申し込む。申込書はメールか郵送で出し、受付は2026年5月20日(水)~10月30日(金)です。
- 専門家の助言を受け、取組をまとめた報告書を受け取る。派遣の日は、日程の都合で希望より遅れることがあります。
- 助成金を申請する。メール、記録が残る郵送、Jグランツのどれかで出します。Jグランツを使う場合は派遣が終わったあとにフォームのURLがメールで届き、GビズIDプライムが要ります。IDの取り方はGビズIDプライムの取得方法で取り上げています。
- 審査を受ける。届いた順ではなく、書類に不備の無いものから順に審査され、効果の見込み、資金計画、実施の体制と納期が見られます。
- 交付決定を受け、設備の発注・設置・支払いを済ませる。
- 実績を報告し、必要に応じて完了検査を受ける。
- 額が確定したら請求書を出す。振込は請求書の受領からおよそ2~3週間です。
申請に使う書類は、申請書、事業税・住民税の納税証明書、見積書などの金額の根拠、設置場所と仕様がわかる資料、登記簿謄本か開業届、直近2期分の確定申告書です。マイナンバーが載っている書類は番号を黒塗りにして出します。
間違えやすい点
この事業でいちばん多い行き違いは、専門家派遣と助成金の受付の締切が別になっている点です。
助成金の受付は年末まで続きますが、機能向上・事業多角化のコースは、その前に専門家派遣を受けている必要があります。派遣の申込の締切を過ぎると、その年度の助成金は申請できません。
助成金の対象は、専門家の報告書に書かれた取組の経費だけです。報告書に無い設備を後から足すことはできないため、入れたい設備は面談の段階で専門家に伝えておきます。
このほか、この助成は1年度に1件までで、同じ内容の経費に国や区市町村などの助成を重ねて受けることはできません。支払いは会社名義の口座からの振込が原則で、ポイントで払った分は経費から引かれます。公社が個別に認めた業者だとうたう勧誘にも注意するよう、募集要項に書かれています(東京都中小企業振興公社「マルチエネルギーステーション化 助成金 募集要項」 p.8『6 助成対象経費』)。
対象外になりやすい経費の考え方は補助金の対象外経費7分類で整理しています。
専門家から見たポイント
この事業は、設備の補助というより、スタンドの今後の稼ぎ方を専門家と一緒に考えるところから始まる制度です。報告書に書かれた取組が助成の範囲になるため、面談で何を話すかが助成金の中身を決めます。
向いている会社
洗車やピット作業など燃料以外の売上を伸ばしたいスタンドは、省エネ型の洗車機やピットの改修、POSや遠隔監視で人手を減らす取組を組み合わせやすくなります。照明のLED化は電気代の削減がわかりやすく、効果の説明もしやすい取組です。人手を減らす設備は、国の省力化投資補助金も候補になります。
敷地に使っていない場所があるスタンドは、空きスペース活用で出店する会社を探すことで、貸す側も新しい収入を得られます。脱炭素につながる事業の会社を誘うと、借りる側の助成も大きくなります。
迷う会社
EV充電器や水素の設備そのものを大きく入れたい会社は、この事業だけでは足りないことがあります。国や都の充電設備・水素の補助と組み合わせられるか、経費を分けて考えます。決算や納税の書類がそろっていない会社も、申請の前に準備が要ります。
専門家との面談の前に、燃料以外の売上の内訳と、敷地の使っていない場所の広さを出しておくと、機能向上と事業多角化のどちらを軸にするかを早く決められます。
設備の資金を東京都の制度融資で借りるときの考え方は信用保証協会の制度融資の要件で取り上げています。
御社のスタンドでどの取組が助成の対象になりそうかは、専門家に無料で相談できます。
よくある質問
フランチャイズのスタンドでも申請できる?
募集要項の条件は、中小企業者であることと、都内のスタンドを自社で持っているか借りていることです。元売りの看板を掲げていても、この条件を満たせば対象になり得ます。
専門家派遣だけ受けて、助成金は申請しなくてもいい?
専門家派遣だけを受けることもできます。ただし、機能向上・事業多角化の助成金は専門家派遣を受けた会社しか申請できません。
中古の洗車機は対象になる?
中古品は対象外です。リースやレンタルも対象にならず、新しく買う設備だけが助成の対象です。
スタンドの事業者が空きスペース活用に申請できる?
空きスペース活用は、スタンドの事業者と賃貸借の契約を結んで新しく事業を始める会社が対象です。スタンドの事業者が自社で新しい事業を始める場合は、機能向上・事業多角化の事業多角化を使います。
交付決定の前に契約した賃貸借は対象になる?
空きスペース活用では、交付決定より前に結んだ契約でも対象になります。ただし、助成の対象になるのは交付決定日以降の賃料です。
ほかの質問はよくある質問にまとめています。
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