補助金適正化法とは?補助金を受け取る会社が守る4つの決まり
この記事の要点
補助金適正化法は、国の補助金を受け取る会社が守るルールを定めた法律で、持続化補助金など中小企業向けの主な補助金にも適用されます。目的どおりに使う、報告する、財産を勝手に処分しない、検査に応じるの4つの義務と、違反したときの返還・加算金・罰則を条文で整理しました。
この記事の目次
補助金適正化法(補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律)は、国のお金で出る補助金を受け取る会社が守るルールを定めた法律です。持続化補助金や新事業進出・ものづくり補助金など、中小企業向けの主な補助金も、この法律に沿って交付されます。
受け取る会社に求められるのは、目的どおりに使う、終わったら報告する、買った財産を勝手に処分しない、検査に応じるの4つです。違反すると交付決定の取消、加算金付きの返還、悪質な場合は刑事罰の対象になります。
公募要領に何度も出てくる「補助金適正化法」が、補助金を受け取る会社に何を求めているのかを知りたい方に向けた記事です。
補助金適正化法(昭和30年法律第179号)の条文を、e-Gov法令検索の本文で確かめ、条番号つきで、採択から入金、入金の後までの順に整理します。
補助金適正化法は国の補助金の共通ルール
補助金適正化法とは、国の補助金について、申請・交付決定・使い方・報告・返還の手続きと、不正への罰則を定めた法律のことです。第1条は、補助金の不正な申請と不正な使用を防ぎ、交付決定を適正にすることを目的に掲げています。
この法律は、補助金を出す国の側と、受け取る会社の側の両方に決まりを置いています。第3条第2項は、受け取る側に対し、補助金が国民の税金などでまかなわれていることに留意し、法令と交付の目的に従って誠実に事業を行うよう努めることを求めています。
公募要領や交付規程に書かれた細かい決まりの多くは、この法律の条文を制度ごとに具体的にしたものです。たとえば財産の処分の制限や、実績報告の期限は、法律の大枠を受けて交付規程が中身を決めています。
出典:補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律 第1条・第3条(e-Gov法令検索)
補助金と助成金の仕組みの違いは補助金と助成金の違いで取り上げています。
中小機構や事務局の補助金にも及ぶ範囲
中小企業向けの主な補助金は、国から中小機構などを通して出るものでも、補助金適正化法に沿って交付されます。事務局の名前で通知が届いても、守るべきルールは国の補助金と同じです。
事業承継・M&A補助金の公募要領は、本補助金の事業には、国の補助事業と同様に「補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律」(補助金適正化法)の規定が適用される。と書いています1。持続化補助金の交付規程の第1条も、第1条(通則):補助金の交付は、補助金適正化法・同施行令などの法令と、中小機構の「中小企業生産性革命推進事業補助金交付要綱」のほか、この交付規程に従って行う。としています。
省力化投資補助金、成長加速化補助金、デジタル化・AI導入補助金の交付規程にも、同じ形の通則があります。都道府県や市区町村の独自の補助金は、国の法律ではなく、それぞれの補助金交付規則に沿って出るので、決まりは自治体ごとに確かめます。
補助金のルールを決める書類の上下の関係は、公募要領と交付規程の違いとして整理できます。制度ごとの決まりの違いは補助金の併用・同時申請のルールでも取り上げています。
採択から入金までに条文が求めること
採択から入金までの手続きは、補助金適正化法の条文の順番どおりに進みます。申請、交付決定、事業の実施、実績報告、額の確定の各段階で、受け取る会社に決まった義務があります。
| 段階 | 条文 | 受け取る会社に求められること |
|---|---|---|
| 申請 | 第5条 | 決められた書類で申請する |
| 交付決定 | 第6条・第7条 | 交付決定に付いた条件(計画変更の承認など)を守る |
| 事業の実施 | 第11条 | 善良な管理者の注意で事業を行い、補助金を他の用途に使わない |
| 事業の実施 | 第13条 | 決定どおりに進んでいないと、遂行や一時停止を命じられる |
| 実績報告 | 第14条 | 事業が終わったら成果を報告する |
| 額の確定 | 第15条 | 報告が決定どおりなら、交付する額が確定して通知される |
出典:補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律 第5条〜第15条(e-Gov法令検索)
第11条の「善良な管理者の注意」は、故意でなくても問われることがあります。省力化投資補助金の公募要領は、不注意で機械を焼失・紛失して事業を続けられなくなった場合、故意がなくても取消や返還に至る場合があるとしています。
第15条の額の確定までは金額が決まらないので、入金は事業が終わった後になります。入金までの流れは補助金の入金時期で取り上げています。
入金の後も続く財産と検査の決まり
補助金が入金された後も、補助金で買った財産の処分の制限と、国の検査に応じる義務は続きます。この2つは、事業が終わったことに気づかずに破りやすい決まりです。
- 財産の処分の制限(第22条):補助金で買ったり価値を高めたりした財産は、各省庁の長の承認を受けずに、交付の目的に反して使う、譲る、交換する、貸す、担保に入れることができません。制限される財産と期間は施行令と各制度の交付規程で決まり、期間は減価償却資産の耐用年数に合わせる制度が多くあります。
- 報告と立入検査(第23条):国は、予算の執行を適正にするため、報告を求め、職員に事業所への立入検査や質問をさせることができます。
第22条を受けて、省力化投資補助金のカタログ注文型の公募要領は、処分制限期間は補助金適正化法施行令第14条第1項第2号に基づき、減価償却資産の耐用年数等に関する省令を準用するとしています2。
財産を手放すときの承認の手順と納める額は補助金で買った設備の財産処分で取り上げています。
違反したときの返還・加算金・罰則
補助金適正化法に違反すると、交付決定の取消、補助金の返還、加算金の支払いが求められ、不正の手段で受け取った場合は刑事罰の対象にもなります。返還だけでなく、加算金と延滞金にも条文があります。
- 交付決定の取消(第17条):補助金を他の用途に使った場合や、交付決定の内容・条件・法令に違反した場合に、全部または一部が取り消されます。
- 返還(第18条):取り消された分や、確定額を超えて受け取っていた分は、期限を決めて返還を命じられます。
- 加算金と延滞金(第19条):取消による返還では、受け取った日から返す日までの日数に応じて年10.95%の加算金がかかり、期限までに返さないと同じ率の延滞金もかかります。
- 罰則(第29条〜第32条):偽りや不正の手段で受け取った場合は5年以下の拘禁刑か100万円以下の罰金(または両方)、他の用途に使った場合は3年以下の拘禁刑か50万円以下の罰金(または両方)です。会社の役員や従業員が業務で違反すると、会社にも罰金が科されます。
出典:補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律 第17条〜第19条・第29条〜第32条(e-Gov法令検索)。罰則の「拘禁刑」は、2025年6月の刑法改正の施行前は「懲役」と書かれていました。
取消のほかにも、次の申請ができなくなる制度があります。省力化投資補助金では、本事業で補助金等適正化法第17条による交付決定取消を受けた事業者は対象外とされています。採択後に減額や返還になりやすい場面は採択後に補助金が減額・返還になるケースで取り上げています。
専門家から見たポイント
補助金適正化法の決まりは、採択の数が増えるほど、守れなかった会社も目立つようになります。公開されている採択者一覧を数えると、主な7制度の採択は222,167件(2026年10月14日時点)あり、そのうち2つ以上の制度に採択された会社も10,607社あります。
複数の補助金を続けて使う会社ほど、制度ごとに違う報告の期限や財産の管理を同時に抱えます。法律の決まりは同じでも、交付規程の様式や期限は制度ごとに違うので、補助金ごとに義務の一覧を作り、期限を1つの表で管理します。
特に気をつけたい会社
補助金で機械や建物を買い、数年以内に移転・事業の縮小・売却の可能性がある会社です。第22条の財産の処分の制限は入金の後も続き、承認を受けずに手放すと第17条の取消と第19条の加算金につながります。
決まりの負担が軽い会社
チラシや広告など形の残らない経費が中心で、1回だけ補助金を使う会社です。実績報告までをきちんと終えれば、入金の後に残る義務は少なくなります。ただし国の検査(第23条)には、事業が終わった後も応じます。
制度ごとの採択事例は採択事例のデータで確かめられます。
間違えやすい点
間違えやすいのは、事務局の補助金の扱い、故意でない違反、入金後の義務の3つです。
中小機構や民間の事務局から通知が届く補助金でも、補助金適正化法が適用されます。国の補助金ではないから緩い、ということはありません。
他の用途への使用は、悪気がなくても違反です。新しい事業のために買った機械を既存の事業に回すことも、交付の目的に反する使い方になる制度があります。
入金で手続きが終わるわけではありません。財産の処分の制限と国の検査は、事業が終わった後も続きます。
交付決定の前の発注が対象外になる理由は交付決定前の発注・契約で取り上げています。
よくある質問
補助金適正化法は自治体の補助金にも適用されますか?
国の補助金の法律なので、自治体が自分の予算で出す補助金には直接は適用されません。自治体の補助金は、それぞれの補助金交付規則に従います。
加算金の年10.95%はいつから数えますか?
第19条では、補助金を受け取った日から返還する日までの日数で計算します。受け取ってから時間がたつほど、加算金は大きくなります。
うっかりミスでも罰則の対象になりますか?
刑事罰は、偽りや不正の手段で受け取った場合や、他の用途に使った場合などが対象です。ただし、うっかりミスでも交付決定の取消や返還は求められることがあります。
天災で事業ができなくなった場合も返還ですか?
取り消されて返還を命じられることはありますが、天災などやむを得ない事情による取消では、第19条の加算金はかかりません。事故が起きたら、すぐに事務局へ報告します。
法律の条文はどこで読めますか?
ほかの質問も見る補助金のよくある質問出典(2件)
- 事業承継・M&A補助金 16次 事業承継促進枠 公募要領 p.6『2. 事業の目的』
- 省力化投資補助金 カタログ注文型 公募要領 p.18『3-6 財産の処分の制限』
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