補助金で買った設備は売れる?財産処分の承認と国に納める額
この記事の要点
補助金で買った単価の高い設備は、事務局の承認を受ければ売れますが、売った額か残っている簿価に補助率をかけた額を国に納めます。売れない期間、承認の手順、担保や事業承継も処分になる場面を5つの補助金の公募要領で整理しました。
この記事の目次
補助金で買った単価の高い設備は、事務局の承認を受ければ売れます。承認を受けずに売る・貸す・捨てると、交付決定の取消しと加算金付きの返還の対象になります。
承認を受けて売った場合も、売った額か残っている簿価のどちらかに補助率をかけた額を国に納めます。売る時期が耐用年数に近いほど、納める額は小さくなります。
補助金で買った機械や改装した店舗を、事業の縮小・移転・買い替えで手放したい方に向けた記事です。
持続化補助金、新事業進出・ものづくり補助金、省力化投資補助金、成長加速化補助金、デジタル化・AI導入補助金の5つについて、売れない期間、承認の手順、国に納める額の決まり方を公募要領と交付規程の記載で整理します。
承認なしで手放せない設備と期間の決まり
承認なしで手放せないのは「処分制限財産」で、どの制度でも1点の値段が一定額以上の設備や、ウェブサイト・店舗改装のように価値が増えたものが当たります。処分制限財産とは、補助金で買ったり価値を高めたりした財産のうち、決められた期間は自由に売れない財産のことです。
| 制度 | 処分制限財産になるもの |
|---|---|
| 持続化補助金 通常枠 | 単価50万円(税抜き)以上の機械装置等、自社ウェブサイトの外注作成、店舗改装による不動産の効用増加等は処分制限財産。補助金の支払後も一定期間、目的外使用・譲渡・担保提供・廃棄等が制限される |
| 新事業進出・ものづくり補助金 | 取得価格又は効用の増加価格が単価50万円(税抜き)以上の財産は処分制限財産。処分時は事前承認と納付が必要 |
| 省力化投資補助金 一般型 | 単価50万円(税抜)以上の機械等の処分制限財産を、目的外使用・譲渡・交換・貸付け・担保・廃棄等する場合は事前に承認を受ける。承認なしの貸付けや転売は交付決定の取消し |
| 成長加速化補助金 | 単価50万円(税抜き)以上の財産は処分制限期間内の処分に事務局の事前承認が必要。処分時は残存簿価相当額等を国庫納付 |
| デジタル化・AI導入補助金 通常枠 | 第31条(財産の管理及び処分):補助で取得・効用が増した財産は完了後も適切に管理する。取得価格の単価50万円以上の財産(処分制限財産)は、事務局の事前承認なしに目的外使用・貸付け・譲渡・交換・廃棄・担保にできない。 |
出典:新事業進出・ものづくり補助金 第1回 公募要領 p.57『4-1. 補助事業者の義務・注意事項(5)財産処分の制限』台帳で見る
売れない期間は、どの制度も「減価償却資産の耐用年数等に関する省令」の耐用年数に合わせます。新事業進出・ものづくり補助金は「処分を制限する期間は減価償却資産の耐用年数等に関する省令を準用し、事業計画期間の終了後も法定耐用年数を経過するまでは処分が制限される」としていて、5年間の事業化状況報告が終わっても、耐用年数が残る設備は自由になりません。
中古で買った設備は期間が短くなり、持続化補助金の交付規程では、耐用年数を全部過ぎた中古資産は耐用年数の20%、2年未満なら2年と決めています。設備ごとの耐用年数は、決算で使っている固定資産台帳の年数と同じなので、顧問の税理士に聞けばすぐに分かります。
補助金で買った設備の会計処理は補助金の圧縮記帳で取り上げています。
売る・貸す・捨てる前に出す承認の申請
処分制限財産を手放すときは、売買の契約や撤去の前に事務局へ承認の申請を出し、承認の通知が届いてから実行します。後から報告する形は認められていません。
「処分」とは、補助金の目的に反して使い道を変える、売る、交換する、貸す、担保に入れる、取り壊す・捨てることを指します。持続化補助金の交付規程では、業務時間外や休日だけの一時的な転用、事業のための修理や機能の強化は処分に当たらないとしています。
- 処分したい財産が取得財産等管理台帳に載っているか、取得日と耐用年数から期間が残っているかを確かめる。
- 処分の理由、相手、予定額、撤去費用の見積をそろえ、制度の様式で処分承認申請書を出す。持続化補助金は交付規程の様式第12です。
- 承認の通知が届いてから、売買・撤去・廃棄を行う。
- 処分の後に、売った額が分かる通帳の写しや、撤去の前後の写真を付けて報告し、事務局の通知に従って納付する。
成長加速化補助金の交付規程では、納付の期限を「様式第15-5(財産処分納付通知書):財産処分に伴う納付金の納付期限は通知書の発信日から30日以内で、振込手数料は補助事業者の負担」と決めています。承認から納付までが短いので、売却代金が入る前に納付期限が来ないよう、売買の決済日を先に決めておきます。
省力化投資補助金のカタログ注文型では、財産処分の申請と納付は、その財産の所有者が行う(ファイナンス・リースの場合は所有権を持つ対象リース会社)とされています1。リースで入れた設備は、御社ではなくリース会社が申請する点に気をつけます。
採択後の義務の全体は採択後に補助金が減額・返還になるケースで取り上げています。
処分したときに国へ納める額の計算
国に納める額は「売った額か残っている簿価の高いほう」に補助率をかけた額で、その設備に出た補助金の額が上限です。耐用年数に近づくほど簿価が下がるので、納める額は小さくなります。
| 処分のしかた | 計算のもとになる額 | 上限 |
|---|---|---|
| 有償で売る・貸す | 売った額・貸した額 × 補助率 | その財産に出た補助金の額 |
| 使い道を変える・無償で譲る・交換する | 残っている簿価 × 補助率(鑑定評価額のほうが高ければそちら) | 同上 |
| 取り壊す・捨てる | 残っている簿価 × 補助率(撤去費用を差し引いてから計算) | 同上 |
出典:持続化補助金 通常枠 交付規程(2026年3月6日改定) p.7『第25条(財産の処分の制限)』
たとえば補助率3分の2で300万円の機械を買い、200万円の補助を受けた場合、簿価が90万円まで下がった時点で100万円で売ると、100万円×3分の2で約67万円を納めます。補助金の200万円を超えて納めることはありません。
省力化投資補助金の一般型も、財産処分する場合は、残存簿価相当額又は時価(譲渡額)のいずれか高い額で、その財産に係る補助金額を限度に納付するとしています。売る相手が身内の会社で、時価より安く売る場合も、簿価との高いほうで計算されるので、安く売っても納める額は減りません。
処分とは別に、補助事業で利益が出たときに納める仕組みは補助金の収益納付で取り上げています。
担保や会社の承継も処分になる場面
銀行の借入の担保に入れること、補助事業と関係のない既存事業に使うこと、対象外の会社へ事業を引き継ぐことも、承認が要る「処分」です。売る予定がなくても、資金調達や事業承継の計画を立てる段階で確かめておきます。
- 既存事業での使用:新事業進出・ものづくり補助金は「補助事業で取得した財産は、事業計画書に書いた新たな事業にだけ使う。既存事業など補助事業以外で使うと目的外の使用とされ、残存簿価相当額等の納付が必要」としています。新しい事業のために買った機械を、繁忙期に既存の製品ラインへ回すのも目的外の使用です。
- 担保・根抵当権:新事業進出・ものづくり補助金は、処分制限財産の建物等への抵当権の設定は原則不可。補助事業に必要な資金調達で、担保権実行時に納付する条件なら事前承認で認められる。根抵当権の設定は不可としています。工場の土地に根抵当権がある会社は、建物を建てる前に銀行と契約の条項を確かめます。
- 事業承継・M&A:事業計画期間中に、補助対象外となる事業者や大企業へ事業承継することも、補助金の交付の目的に反する使用に当たるとされています。事業計画期間の途中で会社を売る話が出たら、買い手が中小企業かどうかで扱いが変わります。
省力化投資補助金の一般型でも、買った機械を担保に借入するときは中小機構への事前の申請が要り、担保が実行されると国への納付が生じます2。
事業計画期間中の報告と義務は新事業進出・ものづくり補助金の採択後で取り上げています。
専門家から見たポイント
財産処分が問題になるのは、ほとんどが機械や建物に大きく投資した会社です。採択事例を見ると、新事業進出・ものづくり補助金の事例97件のうち、機械装置・システム構築費を使った事例が82.5%、建物費を使った事例が12.4%あり、ほぼすべての事例に処分制限財産があります。
持続化補助金の事例364件でも、機械装置等費を使った事例が40.9%あります。小さな補助金でも、厨房機器や加工機のように1台の値段が高い設備は処分制限財産になります。
承認の手続きを先に考えておく会社
工場や店舗の移転・統合を数年以内に考えている会社です。移転先で同じ事業に使い続けるなら処分に当たらないこともありますが、使い道や場所が変わる時点で事務局に相談し、承認が要るかを文書で確かめておくと、後から返還を求められる心配がなくなります。
事業承継やM&Aを考えている会社も、売却の交渉に入る前に、補助金で買った財産の一覧と残りの期間を整理しておくと、買い手のデューデリジェンスで指摘されずに済みます。
あまり気にしなくてよい会社
チラシや広告など、形の残らない経費だけで補助金を使った会社です。持続化補助金で多い広報費は処分制限財産になりません。ただしウェブサイトは、一定額以上で外注して作ると処分制限財産になるので、サイトを閉じる・作り直す前に確かめます。
業種や経費ごとの採択事例は採択事例のデータから探せます。
間違えやすい点
間違えやすいのは、承認の時期、事業化報告の終わりとの混同、リース設備の扱いの3つです。
承認は処分の前に受けます。売ってから報告しても承認にはならず、持続化補助金では承認を得ずに処分すると交付規程違反により補助金交付取消・返還命令(加算金付き)の対象とされています。
事業化状況報告や効果報告が終わっても、耐用年数が残っている財産の処分の制限は続きます。報告の義務と処分の制限は別の決まりです。
壊れて使えなくなった設備を捨てるのも処分です。故障の写真と修理できない理由を残し、廃棄の前に承認を受けます。
持続化補助金の採択後の手続きは持続化補助金の採択後の手続きで順に説明しています。
よくある質問
耐用年数が過ぎたら自由に売ってよいですか?
売ってかまいません。処分制限期間は耐用年数省令の年数なので、期間を過ぎた財産は承認も納付も要りません。期間の始まりは取得日(検収日)です。
同じ機能の新しい機械に買い替えるときも承認は必要ですか?
必要です。古い機械を下取りに出すことは有償の譲渡に当たるので、下取りの前に承認を受け、下取り額に補助率をかけた額を納めます。
補助金で買った車や機械を社長個人に譲ってもよいですか?
承認なしではできません。身内や個人への譲渡も処分で、無償なら残っている簿価をもとに納付額が計算されます。
会社をたたむときはどうなりますか?
廃業で使わなくなる財産も処分に当たるので、廃業の手続きの前に事務局へ申請します。残っている簿価や売却額をもとに納付額が決まります。
財産処分で納めたお金は経費になりますか?
扱いは会計処理と圧縮記帳の有無で変わるため、顧問の税理士に確かめます。処分のときの簿価は、圧縮後の額ではなく補助金相当を含めた額で計算する制度があります。
出典(2件)
- 省力化投資補助金 カタログ注文型 公募要領 p.18『3-6 財産の処分の制限』
- 省力化投資補助金 一般型 第8回 応募申請の手引き p.43『5-3 1.機械装置・システム構築費』
参考資料
- 中小企業基盤整備機構「新事業進出・ものづくり補助金 第1回 公募要領」
- 全国商工会議所「持続化補助金 通常枠 第20回 公募要領 第8版(商工会議所地区)」
- 全国商工会議所「持続化補助金 通常枠 交付規程(2026年3月6日改定)」
- 中小企業基盤整備機構「省力化投資補助金 一般型 第8回 公募要領」
- 中小企業基盤整備機構「省力化投資補助金 一般型 第8回 応募申請の手引き」
- 中小企業基盤整備機構「省力化投資補助金 カタログ注文型 公募要領」
- 中小企業基盤整備機構「成長加速化補助金 3次 公募要領」
- 中小企業基盤整備機構「成長加速化補助金 3次 交付規程」
- 中小企業基盤整備機構「デジタル化・AI導入補助金2026 通常枠 公募要領(第7回からの改訂版)」
- 公募要領の台帳(新事業進出・ものづくり補助金)
- 公募要領の台帳(持続化補助金)
- 公募要領の台帳(省力化投資補助金)
- 公募要領の台帳(成長加速化補助金)
- 公募要領の台帳(デジタル化・AI導入補助金)
確認日:2026年10月16日
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