研修費・資格取得の費用は補助金の対象?使える助成金との使い分け
この記事の要点
従業員の研修費や資格の講座・受験料は、国の主な補助金では原則対象外です。制度ごとの扱い、ソフトの導入研修のような例外、訓練の費用と賃金を助成する人材開発支援助成金との使い分けと手続きの順番を、公募要領と厚生労働省の案内で整理しました。
この記事の目次
従業員の研修費や、資格を取るための講座の受講料・試験の受験料は、国の主な補助金では原則として対象外です。
例外はデジタル化・AI導入補助金のソフトの導入研修などに限られ、社員の教育そのものに使うなら、厚生労働省の人材開発支援助成金で訓練の費用と訓練中の賃金の一部を助成してもらう方法があります。
新しい事業や設備のために社員に研修を受けさせたい、資格を取らせたいと考えていて、その費用を補助金で出せるかを知りたい方に向けた記事です。
補助金の公募要領と公式のよくある質問、厚生労働省の助成金の案内から、使える場面と使い分けを整理します。
厚生労働省の人材開発支援助成金とは?
人材開発支援助成金は、会社が従業員に、仕事に関係する専門的な知識や技能を身に付けさせる訓練を計画どおりに行ったときに、訓練の経費と訓練中の賃金の一部を厚生労働省が助成する制度です。雇用保険に入っている会社が対象で、審査で選ばれる補助金と違い、要件を満たせば受け取れます。
人材育成支援コース、人への投資促進コース、事業展開等リスキリング支援コースなど、目的ごとにコースが分かれています。雇用関係の助成金の申請の流れは雇用関係助成金の申請方法と対象者で取り上げています。
補助金ごとに研修や資格の費用はどう扱う?
国の主な補助金は、研修や資格の費用を対象外の経費にはっきり挙げています。
| 補助金 | 研修・資格の費用の扱い |
|---|---|
| 新事業進出・ものづくり補助金 | 事業に必要な資格の講座の受講料や試験の受験料は対象外(よくある質問Q36) |
| 事業承継・M&A補助金 | 求人広告、通信運搬費、消耗品、研修費、税理士等の申告費用、公租公課、振込手数料、借入金利息等は対象外 |
| 持続化補助金(創業型) | 各種保証・保険料(航空保険料と展示会主催者が義務付ける保険料は対象)、支払利息・遅延損害金、免許・特許等の取得費、セミナー参加費・図書購入費は対象外 |
| 持続化補助金(ビジネスコミュニティ型) | 資格の取得や制度の認定を目的とする経費は対象外 |
| デジタル化・AI導入補助金 | 登録されたソフトの導入の設定・マニュアル作成・導入研修は対象(導入関連費) |
出典:事業承継・M&A補助金 16次 事業承継促進枠 公募要領 p.67『(別紙)その他、補助対象とならない経費の主なもの』
補助金は設備やソフト、販路を広げる取り組みなど、事業に残る投資を支える制度なので、人に身に付く研修や資格は外されています。対象外の経費の考え方は補助金の対象外経費7分類で取り上げています。
ソフトや機械の操作研修は対象になる?
導入するソフトの使い方を覚えるための研修は、デジタル化・AI導入補助金なら対象になります。公募要領は、導入の設定・マニュアルの作成・導入の研修を1つの分類にまとめています1。IT導入支援事業者が登録した研修に限られ、外部のパソコン教室などは入りません。
新事業進出・ものづくり補助金では、補助事業のために外部の専門家から技術の指導や助言を受ける謝金は、専門家経費に入れられます。ただし、資格を取るための講座の受講は対象外です。研修の中身が「補助事業のための指導」か「資格の取得」かで分かれます。
デジタル化・AI導入補助金で研修を含めて申請する流れはIT導入支援事業者とは?で取り上げています。
補助金と助成金はどう使い分ける?
設備やソフトは補助金、それを使う人の教育は助成金、と分けて考えると組み立てやすくなります。
| 比べる点 | 補助金(新事業進出・ものづくりなど) | 人材開発支援助成金 |
|---|---|---|
| 所管 | 経済産業省・中小企業庁 | 厚生労働省 |
| 対象になるもの | 機械・システム・建物など | 訓練の経費と訓練中の賃金 |
| 受け取れるか | 審査で採択された会社だけ | 要件を満たせば受け取れる |
| 先にやること | 交付決定の前に発注しない | 訓練を始める前に計画届を出す |
出典:厚生労働省「人材開発支援助成金」
新しい機械を補助金で入れ、その操作や加工の技術を身に付ける訓練を人材開発支援助成金で行うように、同じ計画の中で役割を分けられます。同じ経費に両方を使うことはできません。くわしくは助成金と補助金は同じ経費で両方使える?で取り上げています。
専門家から見た研修費のポイント
研修そのものは補助金の対象外でも、計画書では人を育てる計画が評価の材料になります。持続化補助金の採択事例364件のうち、品質・技術を課題にした事例は37件あり、設備を入れたうえで技術を磨き、商品の質を上げる計画が見られます。
助成金と組み合わせやすい会社
新しい設備を入れる時期に合わせて、社員に外部の訓練を受けさせる予定がある会社です。設備は補助金、訓練は人材開発支援助成金と分け、訓練の計画届を出す時期を設備の納品より前に置くと、両方の手続きを無理なく進められます。
どちらを使うか迷う会社
従業員がいない個人事業主や、役員だけの会社です。人材開発支援助成金は雇用保険に入っている従業員の訓練が対象なので、本人の資格取得には使えません。省力化投資補助金のように、省力化で空いた時間を高い付加価値の仕事に回すための人材育成を、計画書に書くよう求める補助金もあります。省力化投資補助金の計画の考え方は省力化投資補助金 一般型の審査と採択で取り上げています。
間違えやすい点
研修費で間違えやすいのは、補助金の「研修」の言葉と、助成金の手続きの順番です。
省力化投資補助金の一般型で採択された会社が見る「研修動画」は、事務局が用意する手続きの説明で、費用の対象ではありません。視聴しないと採択が無効になるので、研修費の話と混ぜないようにします。
人材開発支援助成金は、訓練を始めたあとに計画届を出しても対象になりません。研修会社と契約する前に、管轄の労働局で手続きの期限を確かめます。補助金と助成金の違いは補助金と助成金の違いとは?で取り上げています。
よくある質問
展示会やセミナーへの参加費は対象ですか?
持続化補助金の創業型では、セミナーの参加費や図書の購入費は対象外です。展示会への出展の費用は、展示会等出展費として対象になります。
資格を取った社員の手当は補助金で出せますか?
出せません。社員の給与や手当は補助金の対象外です。資格の取得に伴う賃金の引上げは、賃上げの計画の一部として書くことはできます。
研修のための講師を社内に呼ぶ費用は対象ですか?
持続化補助金のビジネスコミュニティ型のように、研修会やセミナーを開くこと自体が補助の目的になっている枠では、講師の謝金が対象になることがあります。ほかの主な補助金では、社員の研修のための講師の費用は対象外です。
出典(1件)
- デジタル化・AI導入補助金2026 通常枠 公募要領(第7回からの改訂版) p.40『別紙2:業種・プロセス一覧』
参考資料
- 中小企業基盤整備機構「新事業進出・ものづくり補助金 よくあるご質問」
- 中小企業基盤整備機構「新事業進出・ものづくり補助金 第1回 公募要領」
- 事業承継・M&A補助金事務局「事業承継・M&A補助金 16次 事業承継促進枠 公募要領」
- 持続化補助金事務局「小規模事業者持続化補助金 創業型 第4回 公募要領 第8版」
- 中小企業基盤整備機構「デジタル化・AI導入補助金2026 通常枠 公募要領(第7回からの改訂版)」
- 中小企業基盤整備機構「中小企業省力化投資補助事業(一般型)公募要領(第8回公募)」
- 厚生労働省「人材開発支援助成金」
- 公募要領の台帳(事業承継・M&A補助金)
- 公募要領の台帳(デジタル化・AI導入補助金)
- 公募要領の台帳(持続化補助金)
確認日:2026年10月17日
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