年平均成長率とは?補助金の5年計画の目標の計算と達成の確かめ方
この記事の要点
補助金の年平均成長率は、基準年度の数字を毎年同じ率で複利で伸ばしたときの1年あたりの伸び率です。足し算で目標を作ると届かない理由、制度ごとの要件、最終年度での達成の確かめ方と表計算の式を公式のよくある質問の計算例で整理しました。
この記事の目次
補助金の年平均成長率は、基準年度の数字を毎年同じ率で複利で伸ばしたときの「1年あたりの伸び率」です。
5年計画で年3.5%なら、17.5%を足すのではなく1.035を5回掛けた約18.8%増が最終年度の目標になり、達成は基準年度と最終年度の実績を比べて確かめます。
新事業進出・ものづくり補助金などの「年平均成長率」の目標を計画書に書くときに、毎年いくらにすればよいか、どう計算すれば要件を満たすかを知りたい方に向けた記事です。
公募要領と公式のよくある質問の計算例から、目標の出し方と達成の確かめ方を整理します。
新事業進出・ものづくり補助金とは?
新事業進出・ものづくり補助金は、中小企業の新製品・新サービスの開発や新しい市場への進出を、設備投資の面から国が支える補助金です。採択後は3〜5年の事業計画期間に、付加価値額と給与の伸びを毎年報告します。
付加価値額は付加価値額の年平均成長率4.0%以上(付加価値額=営業利益+人件費+減価償却費)が基本の要件です1。制度の全体は新事業進出・ものづくり補助金とは?申請枠・補助率・要件で取り上げています。
年3.5%を5年で17.5%増とすると誤り?
誤りです。公式のよくある質問(Q77)は、年平均成長率は単純な足し算や掛け算ではなく複利で計算すると答えています。基準年度の1人当たり給与支給総額が200万円で、年3.5%ちょうどの5年計画なら、目標は200万円×1.035の5乗で約237.5万円です(よくある質問の例では約237.6万円)。17.5%を足した235万円では届きません。
| 年度 | 複利で伸ばした目安 | 単純に足した場合 |
|---|---|---|
| 基準年度 | 200.0万円 | 200.0万円 |
| 1年目 | 207.0万円 | 207.0万円 |
| 2年目 | 214.2万円 | 214.0万円 |
| 3年目 | 221.7万円 | 221.0万円 |
| 4年目 | 229.5万円 | 228.0万円 |
| 5年目(最終年度) | 237.5万円 | 235.0万円 |
出典:新事業進出・ものづくり補助金 第1回 よくあるご質問 Q77(計算例をもとに年度ごとの値を算出)
差は年を追うごとに広がり、5年計画では約2.5万円になります。1人当たりの給与で見ると小さな差でも、従業員が多い会社では総額で大きくなります。給与支給総額に入れる手当の範囲は給与支給総額に含まれるものは?で取り上げています。
制度ごとの成長率の目標はいくら?
年平均成長率で目標を決める制度は、付加価値額、1人当たり給与支給総額、労働生産性のどれかを使います。率は公募回で変わるため、申請する回の公募要領で確かめます。
| 制度 | 年平均成長率の要件 |
|---|---|
| 新事業進出・ものづくり補助金(給与) | 従業員の一人当たり給与支給総額の年平均成長率3.5%以上(全枠共通)。目標値は交付申請時までに従業員等へ表明 |
| 省力化投資補助金(一般型・給与) | 1人当たり給与支給総額の年平均成長率3.5%以上増加(事業計画期間終了時点、基準年度比)。目標値は交付申請時までに従業員等へ表明 |
| 成長加速化補助金(給与) | 最終年度の従業員1人当たり給与支給総額の年平均上昇率が、最低賃金の年平均上昇率(4.5%)(基準率)以上 |
| 省力化投資補助金(一般型・労働生産性) | 事業計画期間において毎年、基準年度と比較して労働生産性を年平均成長率(CAGR)4.0%以上向上 |
出典:中小企業省力化投資補助事業(一般型)公募要領(第8回公募) p.11『1-5(1)② 基本要件』台帳で見る
新事業進出・ものづくり補助金では、公募要領の基準より高い目標を自分で決めると審査で評価されます。ただし応募申請ガイドは、決めた目標を下回れば、基準を超えていても要件を満たさないとしています。労働生産性の計算は労働生産性とは?補助金で使う計算式で取り上げています。
達成したかはどの年度で確かめる?
達成は、基準年度と最終年度の実績を比べて確かめます。途中の年の伸びが目標に届かなくても、最終年度に年平均で目標を超えていれば満たしたことになります。
公募要領は、1人当たり給与支給総額の年平均成長率を、報告した年度の値を基準年度の値で割り、効果報告の回数で開いた根から1を引く式で計算するとしています2。成長加速化補助金のよくある質問(Q40)も、1・2年目に目標を下回っても、3事業年度目と基準年度を比べた年平均上昇率が目標以上なら返還の対象にならないと答えています。
- 最終年度の値を基準年度の値で割ります(例:237.5÷200=約1.188)。
- その値を、年数分の根で開きます(5年なら5乗根で1.035)。
- 1を引いて100を掛けた値(3.5%)が、自社で決めた目標以上かを見ます。
表計算ソフトでは「=(最終年度÷基準年度)^(1/年数)-1」で計算できます。比べる起点の決め方は基準年度とは?補助金での決め方で取り上げています。
専門家から見た年平均成長率のポイント
年平均成長率は、目標の高さより「届く筋道が書けているか」で見られます。新事業進出・ものづくり補助金の採択事例97件のうち、コスト・収益性を課題にした事例は29件あり、設備で原価を下げて利益を伸ばし、それを給与に回す計画がよく見られます。
目標を立てやすい会社
昇給の率が毎年ほぼ決まっていて、賞与も業績連動の決まりがある会社です。昇給の率を複利で5年分伸ばし、基準を上回るかを表で確かめれば、そのまま計画書の数字になります。
目標の置き方に迷う会社
今後数年で採用を増やす予定の会社です。若い人を多く採ると1人当たりの給与の平均が下がり、既存の社員の給与を上げても年平均成長率が伸びないことがあります。採用の計画と給与の計画を同じ表で試算します。目標に届かなかったときの扱いは効果報告で目標に届かなかったら?で取り上げています。
間違えやすい点
年平均成長率で間違えやすいのは、足し算で目標を作ることと、比べる年度の取り違えです。
計画書の最終年度の目標を「基準年度×(1+率×年数)」で作ると、複利の分だけ目標が低くなり、計画どおりに進めても要件に届きません。最終年度の目標は必ず「基準年度×(1+率)の年数乗」で出します。
年平均成長率の起点は、申請の時点の直近の期ではなく、補助事業が終わる期を含む基準年度です。申請の時点の数字から5年分を計算すると、比べる期がずれます。事業計画書の数字の書き方は新事業進出・ものづくり補助金の事業計画書の書き方で取り上げています。
よくある質問
3年計画と5年計画で、最終年度の目標はどう変わりますか?
年平均の率が同じでも、年数が長いほど最終年度の目標は高くなります。基準年度が200万円で年3.5%なら、3年計画で約221.7万円、5年計画で約237.5万円です。
給与の年平均成長率に届かなかったら返還ですか?
新事業進出・ものづくり補助金では、未達の場合、補助金返還額=補助金交付額×(1-最終年度の年平均成長率/目標値)。ゼロ・マイナス成長は全額返還。目標値未表明は全額返還です。付加価値額が増えず、事業計画期間の過半数で営業利益が赤字の場合などは、返還を求めない決まりもあります。
付加価値額の年平均成長率に届かないと返還ですか?
新事業進出・ものづくり補助金のよくある質問(Q91)は、付加価値額の要件に届かないことを理由にした返還は公募要領で定めていないと答えています。
マイナスの年があっても大丈夫ですか?
判定は基準年度と最終年度の比べ方で行うため、途中に下がった年があっても、最終年度に取り戻していれば満たせます。ただし成長加速化補助金では、基準年度の給与が申請時の直近の期を下回ると全額返還になります。
出典(2件)
- 新事業進出・ものづくり補助金 第1回 公募要領 p.11『1-3-1. 基本要件(1)付加価値額要件』
- 新事業進出・ものづくり補助金 第1回 公募要領 p.12『1-3-1.(2)賃上げ要件』
参考資料
- 中小企業基盤整備機構「新事業進出・ものづくり補助金 第1回 公募要領」
- 中小企業基盤整備機構「新事業進出・ものづくり補助金 第1回 応募申請ガイド」
- 中小企業基盤整備機構「新事業進出・ものづくり補助金 よくあるご質問」
- 中小企業基盤整備機構「中小企業省力化投資補助事業(一般型)公募要領(第8回公募)」
- 中小企業基盤整備機構「中小企業成長加速化補助金 3次公募 公募要領」
- 中小企業基盤整備機構「中小企業成長加速化補助金 3次 よくあるご質問」
- 公募要領の台帳(新事業進出・ものづくり補助金)
- 公募要領の台帳(省力化投資補助金)
- 公募要領の台帳(成長加速化補助金)
確認日:2026年10月17日
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