給与支給総額に含まれるものは?役員報酬・賞与・手当の扱いと従業員の数え方
この記事の要点
補助金の賃上げ要件でいう給与支給総額は、従業員の給料・賃金・賞与・各種手当の合計で、役員報酬や法定福利費、退職金は含みません。含めるもの・除くもの、1人当たりの従業員の数え方、基準年度を公募要領で整理しました。
この記事の目次
補助金の賃上げ要件でいう「給与支給総額」は、従業員に払った給料・賃金・賞与・各種手当の合計です。役員報酬、福利厚生費、法定福利費(会社が払う社会保険料)、退職金は含みません。
「1人当たり給与支給総額」は、これを従業員の数で割った額です。パートは正社員の働く時間に換算して数え、年の途中で入社・退社した人は数え方に決まりがあります。
補助金の賃上げ要件で使う給与支給総額に、何を含めて何を除くのか、どう計算するのかを知りたい方に向けた記事です。
新事業進出・ものづくり補助金、成長加速化補助金、デジタル化・AI導入補助金の公募要領とよくある質問から、給与支給総額の範囲と数え方だけを整理します。
給与支給総額に含めるもの・除くもの
給与支給総額は、給与所得として税金がかかる支払いかどうかで分けます。新事業進出・ものづくり補助金は「一人当たり給与支給総額は給与支給総額÷従業員数。給与支給総額は給料・賃金・賞与等を含み、役員報酬・福利厚生費・法定福利費・退職金は除く」としています。
| 区分 | 含める | 除く |
|---|---|---|
| 毎月の支払い | 給料・賃金 | 役員報酬 |
| 賞与 | 従業員の賞与 | 役員の賞与、賞与引当金 |
| 手当 | 残業・休日出勤・職務・地域・家族・住宅手当 | 通勤費など課税されない手当 |
| 会社の負担 | なし | 法定福利費・福利厚生費・退職金 |
出典:新事業進出・ものづくり補助金 第1回 公募要領 p.11『1-3-1.(2)賃上げ要件』台帳で見る
手当の細かい分け方は、成長加速化補助金のよくある質問にも同じ考え方で載っています。賃上げ要件そのものの全体は補助金の賃上げ加点とは?で取り上げています。
役員報酬と家族の給与を入れない理由
役員報酬を除くのは、賃上げ要件が従業員の給与を上げることを目的にしているためです。成長加速化補助金のよくある質問は、どちらの目標でも役員の報酬や賞与は含めず、個人事業主の場合は専従者への給与や賞与も含めないとしています。
役員の報酬を上げても、賃上げの実績にはなりません。家族を専従者として雇っている個人事業主は、その給与を除いて計算します。個人事業主の申請の違いは個人事業主が使える補助金は?で取り上げています。
1人当たり給与支給総額の従業員の数え方
1人当たりの額を出すときの従業員の数え方は、制度ごとに決まりがあります。デジタル化・AI導入補助金は、パートタイム従業員は、正社員の就業時間に換算して人数を算出するとしています1。
- パート・アルバイト:正社員の年間の所定労働時間に換算して数える。
- 年の途中の入社・退社:デジタル化・AI導入補助金では、中途採用や退職等で全月分の給与等を受けていない従業員は、全月分を受けていない事業年度に限り、1人当たり給与支給総額の算出対象から除く。
- 育児休業・介護休業などの時短勤務:産前・産後休業、育児休業、介護休業など福利厚生等で時短勤務している従業員は算出対象から除くことができる。
成長加速化補助金のよくある質問は、年の途中の在籍者を在籍期間で換算するとしており、制度によって扱いが違います。従業員の数え方は補助金の従業員数の数え方で取り上げています。
賃上げの目標を総額と1人当たりで選ぶ
成長加速化補助金は、目標にする数字を選べます。公募要領は「「従業員の給与支給総額」か「従業員の1人当たり給与支給総額」のどちらを目標に掲げるかは応募申請時に選択。申請後の変更不可」としています2。
従業員を増やす計画なら、給与支給総額を目標にすると伸ばしやすくなります。ただし総額を選んでも、1人当たりの伸びも基準を上回る必要がある、とよくある質問は書いています。人を増やして1人当たりの額が下がる計画は、どちらを選んでも気をつけます。成長加速化補助金の賃上げの全体は中小企業成長加速化補助金の要件・対象経費・賃上げで取り上げています。
比べる基準年度と達成を確かめる時期
給与支給総額は、いつの数字と比べるかも決まっています。新事業進出・ものづくり補助金は「補助事業実施期間の終了時点を含む事業年度(基準年度)の一人当たり給与支給総額を基準に、事業計画期間最終年度に目標値を達成する。達成状況の確認のため事業化状況報告時に決算書・賃金台帳等を提出」としています3。
基準年度は、補助事業が終わる時点を含む事業年度です。その年度の給与が下がると、そこから伸ばす計画でも出発点が低くなります。報告で目標に届かなかったときの扱いは効果報告で目標に届かなかったら?で取り上げています。
専門家から見た給与支給総額のポイント
給与支給総額で差がつくのは、計算の前に「誰の、どの支払いを入れるか」を決めておけるかどうかです。採択事例を見ると、新事業進出・ものづくり補助金の採択事例97件のうち、課題に人手不足を挙げた事例の割合は56.7%で、人を増やしながら賃上げする計画が多くあります。
計算がしやすい会社
給与ソフトで役員と従業員、課税と非課税の手当が分かれていて、年ごとの賃金台帳がそろっている会社です。毎年の報告も同じ集計で出せます。
計算でつまずきやすい会社
役員と従業員の給与を同じ科目にまとめて記帳している会社や、パートの所定労働時間を記録していない会社です。申請の前に、科目を分けて集計し直しておきます。賃上げを支える助成金はベースアップに使える補助金と助成金で取り上げています。
間違えやすい点
給与支給総額で間違えやすいのは、決算書の数字をそのまま使うことです。
決算書の「給料手当」や「人件費」には、役員報酬や法定福利費が入っていることがあります。賃金台帳から、従業員の課税される支払いだけを集計し直します。
賃上げの目標は、交付申請までに従業員に表明しておく必要があります。表明していないと、目標を達成していても要件を満たさない扱いになるおそれがあります。
事業場内の最低の賃金の要件もあわせて確かめるときは、持続化補助金の賃上げ要件の適用・注意点も参考になります。
よくある質問
通勤手当は給与支給総額に入りますか?
税金がかからない範囲の通勤手当は入れません。上限を超えて課税される部分の扱いは、制度のよくある質問か事務局で確かめます。
決算期の途中で賞与の時期を変えたらどうなりますか?
事業年度ごとに集計するため、賞与を払う年度が変わると、その年度の給与支給総額も変わります。基準年度や最終年度に影響しないよう、支払いの時期は計画的に決めます。
従業員がいない法人はどう計算しますか?
ほかの質問も見る補助金のよくある質問出典(3件)
- デジタル化・AI導入補助金2026 通常枠 公募要領(第7回からの改訂版) p.8『2-1-1(2) 申請要件』
- 中小企業成長加速化補助金(3次公募)公募要領 p.2『1.(3)【賃上げ要件について】』
- 新事業進出・ものづくり補助金 第1回 公募要領 p.11『1-3-1.(2)賃上げ要件』
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