事業承継を契機とした成長支援事業(販路開拓コース)|対象と経費・審査
この記事の要点
事業を引き継いだ都内の後継者が、承継をきっかけに新しい売り先を開く取り組みに使える東京都中小企業振興公社の助成です。対象になる承継の形、事業承継支援助成金との違い、広告や展示会など対象の経費、面接で問われる点を整理しました。
この記事の目次
事業承継を契機とした成長支援事業(販路開拓コース)は、事業を引き継いだ後継者が、承継をきっかけに新しい販路を開く取り組みに、東京都中小企業振興公社が市場調査・広告・展示会などの費用を助成する制度です。
上限は300万円、助成率は助成対象経費の3分の2以内で、承継の手続きそのものの費用ではなく、継いだあとに売り先を広げる費用が対象です。
親の会社や買い取った事業を引き継いだばかりで、新しい売り先づくりに打って出たい後継者が、自社の承継がこの助成の対象になるか、どの費用が出るか、審査で何を見られるかを知りたい方に向けた記事です。公社の公式ページと募集要項で確かめた範囲で書いています。
東京都の事業承継を契機とした成長支援事業(販路開拓コース)とは?
代替わりのあと、後継者が新しい発想で取引を広げることを後押しする助成です。新しく作った製品やサービスに限らず、これまで売ってきた製品を新しい客層や地域に売り込む取り組みも対象になります。
対象は2021年4月1日から申請日の前日までに事業承継した都内中小企業(個人事業者を含む)です。取り組みの例として、次のようなものがあります。
- 雑貨の小売店が、自社の商品をはじめて展示会に出して卸先を探す
- 家具の製造会社が、今ある家具を海外の客に売るためにECサイトを作る
- 町工場が、下請け以外の取引先を開くために業界誌に広告を出し、営業用の動画を作る
製品やサービスの開発・改良にかかる費用、社内の設備や備品をそろえる費用は対象外です。公社のほかの助成金と並べたいときは東京都中小企業振興公社の助成金一覧で取り上げています(東京都中小企業振興公社「令和8年度 事業承継を契機とした成長支援事業(販路開拓コース)第2回 募集要項」 p.2『1 事業目的』)。
いつ・どんな形の承継なら対象になる?
親族への承継、従業員への承継、M&Aのどれでも対象になり得ます。形ごとに、承継が終わったと認められる条件が決まっています。
| 承継の形 | 満たす条件 |
|---|---|
| 同じ会社の中での承継(親族・従業員) | 後継者が代表に就いて先代が代表を退いていること。後継者か後継者が代表を務める会社が株主であること |
| M&A(事業譲渡) | 後継者が代表を務める会社が主な事業を譲り受け、譲渡が完了していること |
| M&A(株式譲渡) | 株式が後継者や後継者の会社、買い手に移り、売り手側の代表が退いていること |
| 個人事業主の承継 | 後継者が開業し、先代が廃業していること。事業用の資産が先代から後継者に引き継がれていること |
出典:東京都中小企業振興公社「令和8年度 事業承継を契機とした成長支援事業(販路開拓コース)第2回 募集要項」 p.5『3 申請要件』
あわせて、都内に登記上の本店か支店があり、都内で実際に事業をしていて、取り組みを都内の事業所で行うことが必要です。過去にこの事業で助成を受けた会社は申請できず、不採択だった会社は再び申請できます。
国の補助金の審査で事業承継が加点になる条件は、事業承継の加点とアトツギ甲子園の取り方で取り上げています。
事業承継支援助成金とはどう違う?
公社には、名前の似た「事業承継支援助成金」もあります。違いは、承継を進めるための費用か、承継が終わったあとに事業を伸ばすための費用かです。
| 比べる点 | 販路開拓コース | 事業承継支援助成金 |
|---|---|---|
| 使う時期 | 承継が終わったあと | 承継の準備や実行の途中 |
| 対象の費用 | 市場調査費、専門家指導費、販売促進費、展示会出展費 | 事業承継・経営改善に関わる外部専門家等への委託費 |
出典:東京都中小企業振興公社「令和8年度 事業承継を契機とした成長支援事業(販路開拓コース)第2回 募集要項」 p.3『2 事業内容』、東京都中小企業振興公社「事業承継支援助成金 募集要項」
承継の手続きを専門家に頼む費用は、東京都の事業承継支援助成金で取り上げています。同じ公社の「事業承継を契機とした成長支援事業」には一般コースもあり、販路開拓コースとは併願できません。
広告や展示会の費用はいくらまで出る?
経費は4つの区分に分かれ、市場調査と専門家の指導には区分ごとの上限があります。販売促進と展示会の出展には区分の上限がなく、全体の助成の上限の中で使えます。
| 経費の区分 | 中身の例 | 区分の上限 |
|---|---|---|
| 市場調査費 | 売り込む製品の市場や顧客の調査を外部に頼む費用 | 50万円 |
| 専門家指導費 | 販路開拓の進め方を指導する外部の専門家への謝金と旅費(顧問契約の範囲の助言は除く) | 50万円 |
| 販売促進費 | パンフレットなどの印刷物、動画の制作、広告の掲載、ホームページの制作・改修、ECモールの初期登録料、ポップアップストアの費用 | 区分の上限なし |
| 展示会出展費 | 出展の小間代、ブースの装飾、展示品の運搬、通訳、オンライン展示会の基本料 | 区分の上限なし |
出典:東京都中小企業振興公社「令和8年度 事業承継を契機とした成長支援事業(販路開拓コース)第2回 募集要項」 p.8『6 助成対象経費』
助成の対象期間は交付決定日から1年間で、発注・契約・実施・支払いのすべてがこの期間に入っている必要があります。申請より前に払った費用は、対象になりません。
展示会の出展だけを考えている場合は、公社の展示会向けの制度も選べます。中身は東京都の市場開拓助成事業で取り上げています。
面接審査で問われる新規性と市場性は?
書類審査と面接審査は、同じ5つの観点で行われます。承継をきっかけに何が新しくなるのかを、先代の時代との違いで説明できるかが中心です。
- 新規性:承継前にはなかった新しい取り組みか
- 必要性・市場性:売り込む先に需要があり、取り組む理由がはっきりしているか
- 実現性:体制・資金・スケジュールに無理がないか
- 優秀性:取り組みに独自の工夫があるか
- 自己分析力:自社の強みと弱みをつかんでいるか
面接は対面で、出席できるのは2人まで、時間はおよそ1時間です。書類審査のあと面接に進む会社にはメールで連絡があり、面接は2027年1月28日~2月3日ごろに行われるため、この間の予定を空けておきます。交付決定は2027年2月中旬(予定)です(東京都中小企業振興公社「令和8年度 事業承継を契機とした成長支援事業(販路開拓コース)第2回 募集要項」 p.22『審査』)。
申請の受付は第2回 2026年10月13日~11月12日16時で、Jグランツでの電子申請です。GビズIDプライムの取り方はGビズIDプライムの取得方法で取り上げています。
間違えやすい点
販路開拓の費用は細かな発注が多く、支払い方で対象から外れやすい経費です。
支払いは会社名義の口座からの振込が原則で、役員や従業員の口座から払った分は対象外です。現金払いは税抜10万円以下の契約に限られ、手形・小切手・電子記録債権は使えません。クレジットカードは会社か代表者のカードで、引き落としが期間内に終わるものに限られます。
パソコンなどの汎用の機器、中古品、車両、関連会社との取引、市場の相場を大きく超える支払いも対象外です。
実績報告の期限は事業完了後1か月以内で、遅れると助成金が支払われないことがあります。報告のあとに公社の完了検査があり、額が確定してから請求します。
同じテーマで公社のほかの助成事業に申請することはできず、国などの補助金と両方で採択された場合は一方を辞退します。組み合わせの考え方は補助金の併用と重複のルールで取り上げています。
専門家から見たポイント
この助成は、承継の直後で手元の資金に余裕がない時期に、売り先を広げる費用を、自己負担を抑えて試せる点が魅力です。審査の観点に新規性が入っているため、先代のやり方を続けるだけの計画では評価されにくくなります。
向いている会社
下請けの仕事が中心だった町工場を継いだ後継者が、自社の技術を生かした製品で直販や新しい業界への売り込みを始める場合は、承継との結びつきと新規性を説明しやすくなります。M&Aで小売店を引き継いだ会社が、ECサイトとポップアップストアで新しい地域の客をつかむ計画も、販売促進費を中心に組み立てやすい取り組みです。
迷う会社
承継から日がたち、承継の期間の条件ぎりぎりの会社は、承継の時期を示す登記や株主名簿を先にそろえます。先代がまだ代表に残っている会社は、代表権の移転の条件を満たさないことがあります。承継の前後で費用を国の補助金でまかなう場合は、事業承継・M&A補助金の枠と補助額で取り上げています。
面接では、後継者本人が自分の言葉で、承継してから何を変えたいのかを話せるかが見られます。計画書を外部の支援者と作る場合も、本人が中身を説明できるように準備します。
御社の承継の形と取り組みがこの助成に合うかは、専門家に無料で相談できます。
よくある質問
今まで売ってきた製品でも対象になる?
対象になります。新しい製品に限らず、既存の製品やサービスを新しい販路に売り込む取り組みも含まれます。
個人事業主の承継でも申請できる?
できます。後継者が開業し、先代が廃業して、事業用の資産が引き継がれていることが条件です。
交付決定の前に見積をとってもよい?
見積は交付決定の前にとってかまいません。契約・実施・支払いは交付決定のあとの助成対象期間に行います。
不採択だったが、次の回にまた申請できる?
不採択の場合は再び申請できます。交付決定を受けた会社は、もう一度申請することはできません。
ほかの質問はよくある質問にまとめています。
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