創意工夫チャレンジ促進事業|東京都の3コースの違いと選び方
この記事の要点
営業利益が減った都内の中小企業が使える東京都中小企業振興公社の助成で、業務改善・賃上げ重点・新市場・新分野進出の3コースがあります。コースごとの取組の線引き、賃金引上げ計画の中身、申請の流れと審査の観点を募集要項で比べました。
この記事の目次
創意工夫チャレンジ促進事業は、直近の決算で営業利益が減った都内の中小企業が、今の事業を磨く取組や新しい分野に出る取組の経費を東京都中小企業振興公社から助成してもらえる制度で、業務改善・賃上げ重点・新市場・新分野進出の3つのコースがあります。
今の事業の深化・発展なら業務改善コースか賃上げ重点コース(賃上げを約束すると助成率が上がる)、新しい製品で新しい市場に出るなら新市場・新分野進出コースを選びます。申請できるのはどれか1つのコースだけです。
この助成を使いたいが、3つのコースのどれに出せばよいか、上限や助成率、取組の中身の線引きがどう違うかを知りたい方に向けた記事です。公社の公式ページと各コースの募集要項で確かめた範囲で書いています。
東京都の経営力強化に向けた創意工夫チャレンジ促進事業とは?
原材料費や人件費の上昇など、事業環境の変化で利益が減った会社が、自社の工夫で立て直す取組を後押しする助成です。3つのコースに共通する主な条件は次のとおりです。
- 中小企業者(会社・個人事業主)で、大企業が実質的に経営に入っていない
- 都内に本店(取組を都内で行うなら支店でも可)がある。個人事業主は納税地が都内
- 申請の受付が始まった時点で、直近の決算期の営業利益が前の期より減っている、または営業損失を出している
- 同じテーマ・内容で、国や区市町村、公社のほかの事業の助成を受けていない
交付決定は1社1回だけで、不採択だった場合は次の回以降にもう一度申請できます。公社の専門家が計画づくりから伴走する中小企業収益力強化サポート事業とは同時に使えず、その支援の決定を受けた会社はこの事業に申請できません。
公社のほかの助成金と並べて比べたいときは、東京都中小企業振興公社の助成金一覧で制度ごとにまとめています(東京都中小企業振興公社「創意工夫チャレンジ促進事業(業務改善コース)募集要項」 p.5『4 申請要件』)。
3つのコースは上限・助成率・中身で何が違う?
使える経費の区分は3コースとも同じ11区分で、違うのは上限、助成率、取り組む中身、受付の時期です。
| 項目 | 業務改善コース | 賃上げ重点コース | 新市場・新分野進出コース |
|---|---|---|---|
| 取組の中身 | 今の事業の深化・発展 | 今の事業の深化・発展+賃金の引上げ | 新しい製品・サービスの開発と、新しい市場・分野への進出の両方 |
| 助成の上限 | 600万円 | 600万円 | 1,000万円 |
| 助成率 | 助成対象経費の3分の2以内 | 助成対象経費の4分の3以内(小規模事業者は5分の4以内、計画未達成の場合は3分の2以内) | 助成対象経費の3分の2以内(賃金引上げ計画を策定する場合は4分の3以内、小規模事業者は5分の4以内) |
| 販売促進費の上限 | 150万円 | 150万円 | 200万円 |
| 次の受付 | 第3回 2026年11月2日~11月13日16時 | 第3回 2026年12月1日~12月14日16時 | 第2回 2027年1月4日~1月14日16時 |
出典:東京都中小企業振興公社「創意工夫チャレンジ促進事業(新市場・新分野進出コース)募集要項」 p.7『助成対象経費』
11区分は、原材料・副資材費、機械装置・工具器具費、委託・外注費、産業財産権出願・導入費、規格等認証・登録費、設備等導入費、システム等導入費、専門家指導費、不動産賃借料、販売促進費、その他経費です。その他経費の上限は100万円(3コース共通)です。
受付期間の中に出した申請はすべて審査され、先着順ではありません。国の補助金で新しい分野に出る場合の枠は新事業進出・ものづくり補助金の新事業進出枠で取り上げています。
賃上げ重点コースの賃金引上げ計画とは?
賃上げ重点コースは、賃金を上げる計画を立てて実行することを条件に、業務改善コースより高い助成率で助成するコースです。新市場・新分野進出コースでも、同じ計画を立てれば助成率が上がります。計画の中身は助成事業の完了月の翌月から最大12か月の計画期間に、給与等総額を基準期間より2.0%以上増やし、事業所内の最低賃金を地域別最低賃金に30円以上上乗せした水準にすることです。
計画を立てられるのは、常に雇っている従業員が1人以上いる会社です。給与等の総額には、役員を除く非常勤を含めた全従業員の賃金台帳の金額を使います。
助成率がさらに上がる小規模事業者は、常時使用する従業員が製造業その他20人以下、商業(卸売・小売)・サービス業5人以下の会社です。中小企業団体は、構成員が小さな会社ばかりでも小規模事業者として扱われません。
助成金は2回に分けて支払われます。1回目は基本の助成率で計算した額で、計画期間が終わって賃上げを達成したことが確かめられると、上乗せの助成率で計算した額との差が2回目として支払われます。達成できなかった場合、2回目はありません。
賃上げを条件に補助率や上限が上がる仕組みは国の補助金にも多く、未達のときの扱いは補助金の賃上げ加点と未達のときの返還で比べています(東京都中小企業振興公社「創意工夫チャレンジ促進事業(賃上げ重点コース)募集要項」 p.21『7 賃金引上げ計画』)。
新市場コースとほかの2コースの境目は?
迷いやすいのは、新しい商品を作る取組がどのコースに入るかです。業務改善コースと賃上げ重点コースは、今の事業の「深化」と「発展」が対象で、新しい商品・サービスの開発や新しい提供方法の導入もここに入ります。
新市場・新分野進出コースは、新しい製品・サービスを作ることと、これまでと違う市場・分野に出ることの両方がそろって初めて対象になります。公社が挙げている例は次のようなものです。
- 自社の技術やノウハウを、別の市場や分野に転用する
- 企業向けの事業から、一般の消費者向けの市場に新しい製品で出る
- 飲食や物販など異業種の機能を加えて、新しい客層を開拓する
- 持っている特許などを使った新製品で、新しい市場を開く
反対に、すでに売上があり提供の体制ができている取組、今の製品をそのまま別の市場に売る取組、高性能な設備や省エネ機器の導入で競争力や生産性を上げる取組は、新市場・新分野進出コースの対象外です。設備の更新で生産性を上げたい場合は、業務改善コースか賃上げ重点コースを選びます。
新しい製品の試作や開発の経費に使える制度は開発費・試作品開発費に使える補助金で並べています。
申請から交付決定までの流れと審査の観点は?
申請はJグランツの電子申請だけで、GビズIDプライムが要ります。取り方はGビズIDプライムの取得方法で取り上げています。その年度の最新の申請書を使う決まりで、前の年度の事業の様式は使えません。
- コースを1つ選び、申請書と決算書などの書類をそろえる。
- 受付期間の中にJグランツで申請する。
- 書類審査を受ける。
- 面接審査を受ける。指定された1日に1時間ほどで、日程は変えられません。
- 交付決定を受け、助成対象期間(交付決定日から1年間(3コース共通))の中で契約・実施・支払いを済ませる。
- 事業が終わったら原則1か月以内に実績を報告し、完了検査のあと後払いで受け取る。
書類と面接の審査で見られる観点は、コースで少し違います。
- 業務改善・賃上げ重点:発展性(今の事業の深化・発展につながるか)、市場性、実現性、優秀性(創意工夫や今後の展望)、自己分析力
- 新市場・新分野進出:新規性、市場の妥当性、実現性、優秀性、自己分析力
どのコースでも、事業環境が変わる前と後で市場や自社の数字がどう変わったかを説明できることが土台になります。
間違えやすい点
コースを選んだあとに起きやすいのは、申請の重なりと経費の組み立ての手戻りです。
3つのコースに同時に申請すると、どれも受け付けられません。ほかのコースで交付決定を受けた会社や、ほかのコースで審査中の会社も申請できません。
販売促進費は、新しい商品・サービスのための販売促進だけが対象で、今の事業の広告には使えません。専門家指導費、販売促進費、その他経費、委託・外注費のうち市場調査費は、その経費だけでは申請できません。
機械装置・設備・システムは税抜10万円未満のものが対象外で、中古品や自社で作れるもの、要件定義などのコンサルティング費も外れます。不動産賃借料は敷金・礼金・保険料、バーチャルオフィス、会議室の単発の利用が対象外です(東京都中小企業振興公社「創意工夫チャレンジ促進事業(業務改善コース)募集要項」 p.7『6 助成対象経費』)。
広告費が補助金で使える範囲の考え方は広告宣伝費は補助金の対象?使える範囲で取り上げています。
専門家から見たポイント
コース選びで大事なのは、上限の大きさより、取組の中身が審査の観点に合うかです。上限の大きい新市場・新分野進出コースに無理に寄せると、新規性の説明が弱くなり、評価されにくくなります。
向いている会社
業務改善コースと賃上げ重点コースは、今の顧客や商品を軸に、設備やシステムで品質や生産性を上げたい会社に向いています。賃上げの予定がある会社は、賃上げ重点コースで助成率を上げられます。
新市場・新分野進出コースは、自社の技術を別の業界に持ち込む、企業向けの製品を消費者向けに作り直すなど、新しい売り先がはっきりしている会社に向いています。売り先の市場の大きさや競合を調べた資料が、市場の妥当性の説明に使えます。
迷う会社
新しい商品を作るものの、売る相手が今の顧客と同じ会社は、新市場・新分野進出コースではなく業務改善コースの「発展」に当たる可能性が高くなります。賃上げを約束できるか迷う会社は、達成できなかったときに2回目の助成が無くなる点を踏まえて、人件費の見通しから決めます。
コースは受付の時期もずれています。取組の中身でコースを決めてから、そのコースの次の受付に間に合うように見積と申請書を逆算します。
国の補助金の審査項目と比べて計画書を組み立てる考え方は新事業進出・ものづくり補助金の審査項目と加点で取り上げています。
御社の取組がどのコースに当たるかは、専門家に無料で相談できます。
よくある質問
営業利益が黒字でも申請できる?
黒字でも、直近の決算期の営業利益が前の期より減っていれば申請できます。前の期より増えている場合は、営業損失を出していない限り対象になりません。
2つのコースに同時に出してもいい?
出せません。重ねて申請した場合はどれも受け付けられないため、1つのコースを選んで申請します。
不採択だったら別のコースに出し直せる?
交付決定を受けていなければ、次の回以降にもう一度申請できます。ほかのコースで審査中の間は申請できないため、結果が出てから出し直します。
賃上げを達成できなかったら返還になる?
募集要項では、達成できなかった場合は上乗せの無い基本の助成率で計算するとされています。1回目は基本の助成率で支払われているため、上乗せ分の2回目が支払われない形です。
個人事業主も申請できる?
申請できます。納税地が都内にあり、直近の決算期の営業利益の減少か営業損失を確定申告の数字で示します。
ほかの質問はよくある質問にまとめています。
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