IT導入補助金は終了?デジタル化・AI導入補助金2026の変更点と違い
この記事の要点
IT導入補助金は2026年度からデジタル化・AI導入補助金に名前が変わり、制度は続いています。2025年度との比較表で、変わった賃上げ要件・AIの扱いと、変わらない補助額・補助率を示し、前に採択された会社の注意点もまとめます。
この記事の目次
2025年度までの制度は、2026年度からデジタル化・AI導入補助金2026として続いており、制度が無くなったわけではありません。
通常枠の補助額は5万円〜450万円以下、補助率は1/2で前年度と同じですが、150万円以上の申請では賃上げ要件が厳しくなり、小規模事業者も賃上げ要件の対象になりました。
公式サイトのスケジュールに出ている直近の締切は2026年10月30日(金)17:00で、ソフトやクラウドを入れたい中小企業・個人事業主が使えます。
会計ソフトやクラウドを補助金で入れようとしたら、去年までの制度名が見当たらず戸惑っている社長に向けた記事です。2026年度の公募要領と2025年度の公募要領を並べ、名前のほかに何が変わり、何が変わらないのかを比較表で示します。
IT導入補助金は終了?2026年度からデジタル化・AI導入補助金に名前が変わりました
制度は終了しておらず、2026年度から「デジタル化・AI導入補助金2026」という名前で同じ事務局が受け付けています。
デジタル化・AI導入補助金(旧:IT導入補助金)は、中小企業や個人事業主が業務ソフトやクラウドサービスを入れる費用の一部を国が補助する制度です。中小企業基盤整備機構(中小機構)の事業で、事務局はどちらの年度もTOPPAN株式会社が運営しています。
事業の正式名も「サービス等生産性向上IT導入支援事業」から「中小企業デジタル化・AI導入支援事業」に変わりました。申請の窓口となる事務局サイトのURL(https://it-shien.smrj.go.jp/)は同じで、2025年度に採択された会社の実績報告や効果報告のお知らせも同じサイトに載っています。
2026年度の枠は次の5つです。
- 通常枠:業務ソフトやクラウドを入れる基本の枠(5万円〜450万円以下)
- インボイス枠(インボイス対応類型):会計・受発注・決済ソフトとPC・レジ(ソフトは350万円まで)
- インボイス枠(電子取引類型):発注側が取引先に無償でアカウントを配る受発注システム(350万円まで)
- セキュリティ対策推進枠:サイバーセキュリティお助け隊サービスの利用料(5万円〜150万円)
- 複数者連携デジタル化・AI導入枠:10者以上のグループで申請する枠(合計3,000万円まで)
制度全体の概要はデジタル化・AI導入補助金の新枠・対象・採択ポイントでまとめています。
出典:デジタル化・AI導入補助金2026 通常枠 公募要領(第7回からの改訂版) p.3『デジタル化・AI導入補助金2026 通常枠について』
名前以外に何が変わった?賃上げ要件とAIの扱い
大きく変わったのは賃上げ要件で、150万円以上の申請は「1人当たり給与支給総額を年3%以上」に上がり、小規模事業者も対象になりました。
150万円以上の申請は賃上げの基準が上がった
2025年度の通常枠では、150万円以上を申請する会社に「給与支給総額の年平均成長率1.5%以上」と「事業場内最低賃金を地域別最低賃金+30円以上」を求めていました。2026年度は、物差しが会社全体の給与総額から1人当たり給与支給総額に変わり、伸び率も1年後に3%以上、3年間の年平均で3%以上になりました。
1人当たり給与支給総額とは、パートも含む従業員の給与・賞与・手当の合計を、従業員数で割った額のことです。人を増やして総額を伸ばす方法では達成できず、1人ひとりの給与を上げる計画が必要になります。
小規模事業者も賃上げ要件の対象に入った
2025年度は、小規模事業者(商業・サービス業なら従業員5人以下など)は150万円以上の申請でも賃上げ要件の適用外でした。2026年度の適用外は、保険医療機関・介護サービス事業者・社会福祉事業者・学校などだけで、小規模事業者は外れました。
従業員3人の美容室が200万円の予約・顧客管理システムを申請する場合、2026年度は3年間の賃上げ計画を立て、従業員に表明してから申請することになります。
前に採択された会社は150万円未満でも賃上げが必須
2022年度〜2025年度に交付決定(事務局から「この内容で補助します」と正式に通知されること)を受けた会社は、2026年度は150万円未満の申請でも賃上げ要件が必須です。基準は1人当たり給与支給総額を1年後に3.5%以上、年平均3.5%以上で、インボイス枠やセキュリティ対策推進枠でも同じ扱いです。2025年度は、150万円未満の申請では賃上げは加点項目で、必須ではありませんでした。
補助率2/3になる条件の期間が変わった
通常枠の補助率は1/2のままで、最低賃金に近い水準で働く従業員が多い会社は2/3になる特例も続いています。2026年度の条件は、令和7年10月〜令和8年9月のうち、最低賃金以上〜令和8年度改定額未満で働く従業員が全体の30%以上の月が3か月以上あることです。2025年度は「地域別最低賃金+50円以内」の従業員で判定していました。
AIは「枠」ではなくソフトウェアの中身として明記された
2026年度の公募要領では、対象のITツールの定義が「ソフトウェア(AIを含む)」と書き換えられました。2025年度の定義には「AI」の語はありません。
ただし「AI活用枠」のような専用の枠はできていません。AI機能つきの会計ソフトや顧客分析ツールも、事務局に登録されたITツールであれば通常枠やインボイス枠で申請する形です。AIの搭載の有無は、事務局サイトの「ITツール検索」で確かめられます。
2026年10月9日に出た第7回からの改訂版で、賃上げ要件に「1年後に1人当たり給与支給総額を3%(前に採択された会社は3.5%)以上」の目標が加わりました。年度の途中でも条件が変わるため、申請する回の公募要領で確かめてから計画を立てます。
出典:デジタル化・AI導入補助金2026 通常枠 公募要領(第7回からの改訂版) p.10『2-1-1 申請の対象となる事業者及び申請の要件』
変わらない点は?補助額・補助率と申請の仕組み
通常枠・インボイス対応類型・セキュリティ対策推進枠の補助額と補助率は、2025年度と同じ数字です。
通常枠は、業務プロセスを1つ以上カバーするソフトで5万円〜150万円未満、4つ以上で150万円〜450万円以下です。クラウドの利用料は最大2年分が対象で、この点も変わっていません。
インボイス対応類型は、補助額50万円以下の部分が3/4(小規模事業者は4/5)、50万円を超える部分が2/3です。PC・タブレットは10万円まで、レジ・券売機は20万円までで、ハードウェアの補助率は1/2です。具体的な対象ツールはインボイス対応類型の補助率・対象ツールで説明しています。
申請の仕組みも同じで、会社が単独で申請するのではなく、事務局に登録されたIT導入支援事業者(ソフトを販売・導入する登録業者)と組んで申請します。申請できるのは、IT導入支援事業者が提供し、事務局に登録されたITツールだけです。支援事業者の選び方はIT導入支援事業者の探し方と役割にまとめています。
GビズIDプライムの取得と、IPAの「SECURITY ACTION」の一つ星か二つ星の宣言が必要な点も2025年度と同じです。GビズIDの取り方はGビズIDプライムの取得方法で手順を説明しています。
出典:デジタル化・AI導入補助金2026 インボイス枠(インボイス対応類型)公募要領(改訂版) p.16『2-3 補助対象経費、補助率及び補助額』
2025年度と2026年度の比較表
2025年度と2026年度の違いは、補助額より賃上げ要件と対象の定義に集中しています。
次の表は、2025年度と2026年度の公募要領を並べ、両方で確かめられた項目だけを比べたものです(金額は補助額)。
| 比べる項目 | 2025年度 | 2026年度 |
|---|---|---|
| 事業の正式名 | サービス等生産性向上IT導入支援事業 | 中小企業デジタル化・AI導入支援事業 |
| 交付申請の受付開始 | 2025年3月31日〜 | 2026年3月30日〜 |
| ITツールの定義 | ソフトウェア・オプション・役務・ハードウェア | ソフトウェア(AIを含む)・オプション・役務・ハードウェア |
| 通常枠の補助額 | 5万円〜150万円未満、150万円〜450万円以下 | 同じ |
| 通常枠の補助率 | 1/2(最低賃金+50円以内の従業員が30%以上の状態が3か月以上で2/3) | 1/2(令和7年10月〜令和8年9月に、最低賃金以上〜令和8年度改定額未満の従業員が30%以上の月が3か月以上で2/3) |
| 150万円以上の賃上げ要件 | 給与支給総額 年平均1.5%以上、最低賃金+30円以上 | 1人当たり給与支給総額 1年後3%以上・年平均3%以上、最低賃金+30円以上 |
| 賃上げ要件の適用外 | 小規模事業者、医療・介護・福祉、学校など | 医療・介護・福祉、学校など(小規模事業者は対象) |
| 前に採択された会社の賃上げ | 150万円未満は必須ではない(加点項目) | 2022〜2025年度の交付決定事業者は150万円未満でも必須(3.5%以上) |
| 労働生産性の目標 | 1年後3%以上・年平均3%以上(過去の特定枠の採択者は4%) | 同じ |
| インボイス対応類型の補助率 | 50万円以下3/4(小規模4/5)、50万円超2/3、ハード1/2 | 同じ |
| セキュリティ対策推進枠 | 5万円〜150万円、1/2(小規模2/3)、利用料最大2年分 | 同じ |
| グループで申請する枠の名前 | 複数社連携IT導入枠 | 複数者連携デジタル化・AI導入枠 |
出典:デジタル化・AI導入補助金2026 通常枠 公募要領(第7回からの改訂版) p.17『2-3 補助対象経費、補助率及び補助額』
2025年度の欄は、事務局サイトに掲載されている2025年度の公募要領(通常枠・インボイス枠(インボイス対応類型)・セキュリティ対策推進枠)で確かめました。数字の根拠は公募要領の台帳にまとめています。補助額や補助率、締切は公募回ごとに変わるため、最新の公募要領で確認が必要です。
前に採択された会社はどこで不利になる?
2022年度〜2025年度に交付決定を受けた会社は、賃上げ要件の必須化に加えて、申請の制限と審査の減点があります。
- 2025年度の通常枠か複数社連携IT導入枠で交付決定を受けた会社は、交付決定日から12か月以内は2026年度の通常枠に申請できません。
- 2022年度〜2025年度に交付決定を受けた会社は、通常枠の審査で減点されます。
- 2024年度・2025年度に交付決定を受けたソフトと業務プロセスが重なると減点され、完全に一致すると不採択です。
- 労働生産性の目標も、2023年度〜2025年度の特定の枠で採択された会社は3%ではなく4%以上になります。
2025年5月に会計ソフトで交付決定を受けた会社なら、2026年5月までは通常枠に申請できず、会計と重ならない業務(受発注や在庫管理など)を選ぶと、プロセス重複による減点を避けられます。
出典:デジタル化・AI導入補助金2026 通常枠 公募要領(第7回からの改訂版) p.26『3-3 交付申請の審査』
この補助金のポイント
2026年度は、初めて申請する会社で、150万円未満の範囲でソフトを入れたい会社ほど使いやすい設計です。
向いている会社
手書きやExcelで回している受発注、勤怠、顧客管理をクラウドに移したい会社が中心です。過去に採択されたことがない会社は、150万円未満なら賃上げが加点項目にとどまり、前回採択による減点もありません。インボイス対応の会計ソフトとPC・レジをまとめて入れたい小売店や飲食店は、補助率の高いインボイス対応類型が候補になります。
採択されるために効く点
審査では、自社の課題と導入するソフトの機能が合っているか、労働生産性がどれだけ上がるかが見られます。加点項目には、クラウド製品やインボイス対応製品を選ぶこと、交付申請前に「IT戦略ナビwith」を済ませること、デジタル化セカンドオピニオンの面談を終えることなどが並びます。
無理なく達成できる範囲で賃上げ計画を立てると、150万円未満でも加点になります。事業場内最低賃金を地域別最低賃金+50円以上にする計画ならさらに加点されます。
よくある失敗
交付決定前にソフトを契約・発注すると、その費用は補助対象になりません。理由は交付決定前の発注がNGな理由で説明しています。加点を受けて採択されたのに賃上げなどの加点要件を達成できないと、未達の報告から18か月間、中小企業庁の他の補助金で大幅に減点されます。
150万円を少し超える計画なら、補助額を自主的に150万円未満に抑えて申請することもできます。その場合、前に採択されていない会社は賃上げ要件が必須ではなくなります。
出典:デジタル化・AI導入補助金2026 通常枠 公募要領(第7回からの改訂版) p.24『3-3 交付申請の審査』
今から申請する人は何から始める?
今から申請するなら、GビズIDプライムの取得とIT導入支援事業者への相談を同時に進め、締切より余裕をもって見積りをそろえます。
- GビズIDプライムを取得する(未取得なら最初に申し込む)
- IPAの「SECURITY ACTION」で一つ星か二つ星を宣言する
- 自社のどの業務を効率化したいかを決め、IT導入支援事業者にソフトの提案と見積りを依頼する
- 2022年度〜2025年度に交付決定を受けたことがあるか、受けたソフトと業務プロセスが重ならないかを確認する
- 150万円以上を申請する場合は、3年間の賃上げ計画を作り、従業員に表明する
- IT導入支援事業者から申請マイページの招待を受け、交付申請を提出する
- 交付決定を受けてから、ソフトの契約・導入・支払いをする
事務局サイトのスケジュールでは、公表されている直近の締切が2026年10月30日(金)17:00、交付決定が2026年12月10日(木)の予定です。この回の事業実施期間と実績報告の期限は2027年5月31日(月)17:00(予定)で、その後の回の日程は事務局サイトで順次公表されます。
通常枠の要件や対象経費は通常枠の補助率・対象ツール・採択のポイントで詳しく説明しています。
出典:デジタル化・AI導入補助金2026 通常枠 公募要領(第7回からの改訂版) p.18『3-1 補助事業の流れ』
よくある質問
IT導入補助金とデジタル化・AI導入補助金は何が違いますか?
同じ制度の名前が2026年度から変わったもので、補助額と補助率は通常枠・インボイス対応類型・セキュリティ対策推進枠とも2025年度と同じです。違うのは賃上げ要件で、150万円以上の申請は1人当たり給与支給総額を年3%以上上げる計画が必要になり、小規模事業者も対象になりました。ITツールの定義に「AIを含む」と書き加えられた点も変わっています。
IT導入補助金はもう申請できないの?
名前が変わっただけで、2026年度もデジタル化・AI導入補助金2026として申請を受け付けています。交付申請は2026年3月30日から始まっており、締切ごとに審査があります。次の締切は事務局サイトのスケジュールで確かめます。
前にIT導入補助金をもらった会社も申請できる?
申請はできますが、条件が厳しくなります。2022年度〜2025年度に交付決定を受けた会社は、150万円未満でも賃上げ要件が必須で、審査でも減点されます。2025年度に通常枠で交付決定を受けた会社は、交付決定日から12か月以内は2026年度の通常枠に申請できません。
AIが入っていないソフトでも対象になる?
対象になります。2026年度の定義は「ソフトウェア(AIを含む)」で、AIを搭載していることは条件ではありません。事務局に登録されたITツールで、自社の業務プロセスに合っていれば申請できます。
従業員5人の会社でも、150万円以上なら賃上げが必要?
必要です。2025年度は小規模事業者が賃上げ要件の適用外でしたが、2026年度は適用外から外れました。1人当たり給与支給総額を1年後に3%以上、3年間の年平均で3%以上上げ、事業場内最低賃金を地域別最低賃金+30円以上にする計画を、申請時に従業員へ表明しておきます。
2025年度に採択された分の報告はどこでするの?
2025年度分の実績報告や効果報告も、同じ事務局サイトの申請マイページから行います。事務局サイトでは、2026年3月2日に2025年度分の効果報告(事業計画期間前)の受付開始が告知されています。補助金の交付が終わるまでは効果報告はできません。
ほかの質問はよくある質問(デジタル化・AI導入補助金)にまとめています。
まとめ
制度は名前を変えて続いており、補助額と補助率はほぼ2025年度のままです。注意が要るのは、150万円以上の申請と、前に採択された会社にかかる賃上げ要件と申請制限です。自社が対象になるか、どの枠でいくら申請するのがよいか迷ったら、使えるか・採択されるかは専門家がお答えします。
参考資料
- 中小企業デジタル化・AI導入支援事業事務局ポータルサイト(デジタル化・AI導入補助金2026)
- 中小企業デジタル化・AI導入支援事業事務局「デジタル化・AI導入補助金2026 公募要領(通常枠)」第7回からの改訂版(2026年10月9日)
- 中小企業デジタル化・AI導入支援事業事務局「デジタル化・AI導入補助金2026 公募要領(インボイス枠 インボイス対応類型)」改訂版(2026年10月9日)
- 中小企業デジタル化・AI導入支援事業事務局「デジタル化・AI導入補助金2026 公募要領(セキュリティ対策推進枠)」改訂版(2026年10月9日)
- 中小企業デジタル化・AI導入支援事業事務局「デジタル化・AI導入補助金2026 公募要領(複数者連携デジタル化・AI導入枠)」(2026年8月28日改訂)
- 中小企業デジタル化・AI導入支援事業事務局「スケジュール」
- サービス等生産性向上IT導入支援事業事務局「2025年度 公募要領(通常枠)」(2026年5月15日改訂)
- サービス等生産性向上IT導入支援事業事務局「2025年度 公募要領(インボイス枠 インボイス対応類型)」(2026年5月15日改訂)
- サービス等生産性向上IT導入支援事業事務局「2025年度 公募要領(セキュリティ対策推進枠)」
確認日:2026年10月13日
中小企業診断士 神谷 恒一が内容を確認しました(2026年10月13日)。
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