製品開発着手支援助成事業|試作前の技術検証に使える経費と申請の流れ
この記事の要点
新しい製品や技術を開発する前に、素材や機能が実現できるかを外部の力を借りて確かめたい都内の中小企業と創業予定者向けの、東京都中小企業振興公社の助成です。対象になる取り組みと経費、申請の流れ、間違えやすい点を募集要項で整理しました。
この記事の目次
製品開発着手支援助成事業は、都内の中小企業や都内で創業を予定している個人が、本格的な製品開発に入る前に、素材・機能・方式が実現できるかを外部の力を借りて確かめる費用を、東京都中小企業振興公社が一部助成する制度です。
上限は100万円(申請下限10万円)、助成率は助成対象経費の2分の1以内です。申請はJグランツだけで、受付は2026年10月28日(水)~11月18日(水)17時です。
試作の前段階で「この材料で強度が出るか」「この方式で動くか」を確かめたい会社が、この助成を使えるか、どの費用が対象か、いつ何をすればよいかを知りたい方に向けた記事です。公社の公式ページと募集要項で確かめた範囲で書いています。
東京都の製品開発着手支援助成事業とは?
この助成が支えるのは、製品化の手前にある「技術的な検討」です。新しい製品や技術を作る前に、素材の特性、機能の実現性、作り方の見通しを、大学や専門の会社などの外部の力を使って確かめる取り組みが対象になります。
申請できるのは都内に本店または支店があり都内で1年以上事業を行う中小企業者等、都内で創業を具体的に計画している個人です。会社の場合は、都内に登記上の本店か支店があり、都内で実際に事業をしていることが条件で、業種や創業からの年数は問われません。創業予定の個人は、交付決定のあと速やかに都内で開業し、開業届の写しか登記簿で示します。
次の法人は申請できません。
- 社会福祉法人・医療法人・NPO法人
- 一般社団法人・一般財団法人・学校法人
- 有限責任事業組合(LLP)
1つの会社が申請できるのは同じ年度に1件だけです。公社のほかの助成と並べて比べたいときは、東京都中小企業振興公社の助成金一覧で制度ごとに整理しています(東京都中小企業振興公社「令和8年度 製品開発着手支援助成事業 募集要項」 p.3『4 申請要件』)。
助成の対象になる検証とならない検証は?
対象になるのは、製品化を目指した技術の検討で、外部の資源を使い、委託・外注・共同研究のどれかを1つ以上含むものです。社内だけで検討を進める計画は対象になりません。
| 判断 | 取り組みの例 |
|---|---|
| 対象になる | 新しい素材の耐熱性を大学の試験設備で確かめる、センサーの方式を専門の会社に委託して比べる、部品の形状を外注で試作して機能を確かめる |
| 対象にならない | 基礎研究、ほぼ終わっている開発、量産の段階に入った技術、既製品のまねや小さな改良、特定の取引先だけに向けた開発、他社から頼まれた開発 |
| 対象にならない | 開業資金・運転資金、量産用の機械や金型への投資、試作品そのものを売ること |
出典:東京都中小企業振興公社「令和8年度 製品開発着手支援助成事業 募集要項」 p.2『3 助成対象事業』
この段階で作った試作品は売ることができず、5年間保管する決まりです。検証の結果を受けて本格的な試作に進む段階は、公社の別の開発助成や国の補助金が受け皿になります。開発の段階ごとに使える制度は開発費・試作品開発費に使える補助金で取り上げています。
助成額と、使える2つの経費の中身は?
経費は「原材料・副資材費」と「委託・外注費」の2つだけで、原材料・副資材費、委託・外注費(原材料・副資材費だけの申請は不可)です。助成額は経費の合計に助成率を掛けた額で、千円未満は切り捨てになります。
- 原材料・副資材費:検証に使う材料や部品。使い残した分は対象外で、受け払いの記録が要ります。
- 委託・外注費:研究開発の委託、加工などの外注、大学などとの共同研究、見込み客のニーズを探る市場調査の4種類です。市場調査は交付申請額のうち25万円まで(新たに委託するものに限る)で、委託・外注・共同研究のどれかと組み合わせる必要があります。
反対に、機械装置やソフトウェアの購入、規格の認証にかかる費用、特許などの出願費、社員の人件費、建物の工事は対象外です。関連会社や親族の会社との取引、消費税や振込手数料も外れます。検証の中身が社内の人の手作業中心だと、対象の経費がほとんど残らない点に気をつけます。
委託先が受けた仕事を丸ごと別の会社に回す再委託も認められません。委託・外注の見積は、検証の中身ごとに内訳を出してもらうと審査で説明しやすくなります。国の補助金で開発を進める場合の経費の考え方は新事業進出・ものづくり補助金の概要で取り上げています(東京都中小企業振興公社「令和8年度 製品開発着手支援助成事業 募集要項」 p.6『5 助成対象経費』)。
申請から助成金の入金までの流れは?
申請はJグランツの電子申請だけで、紙・郵送・メールでは受け付けていません。審査は書類審査と総合審査の2段階で、面接の記載はありません。
- GビズIDプライムを取る。発行までの目安は2週間程度で、取り方はGビズIDプライムの取得方法で取り上げています。
- 申請書(Excel)と、登記簿か開業届、納税証明書、確定申告書などをそろえてJグランツで出す。
- 書類審査を受ける。時期は2026年12月~2027年1月(書類審査)、2027年2月上旬(総合審査)です。
- 交付決定を受ける。時期は2027年2月下旬(予定)です。
- 助成対象期間(2027年3月1日~2028年2月29日(最長1年))の中で、発注・検証・支払いを済ませる。交付決定から1〜2か月で公社の担当者が事前の訪問に来ます。
- 検証が終わったら助成事業の完了から15日以内に報告を出し、完了検査を受ける。
- 額が確定したら請求し、およそ1か月で振り込まれる。終わったあとも2年間は状況の報告が続きます。
技術面の審査では、市場性・新しさ・必要性・実現できるか・実施の体制が見られます。申請書には、検証で何がわかれば次の開発に進めるのかを具体的に書いておくと、必要性と実現性の両方を伝えやすくなります(東京都中小企業振興公社「令和8年度 製品開発着手支援助成事業 募集要項」 p.14『9 審査』)。
間違えやすい点
不備で多いのは、経費の組み立てと支払いの方法です。申請前に次の点を確かめておきます。
原材料・副資材費だけの申請はできません。委託・外注・共同研究のどれかが計画に入っていないと、申請の要件を満たしません。
助成対象期間の前に発注・契約した分は対象になりません。見積を取るのは申請前でかまいませんが、発注は交付決定のあとにします。
支払いは会社名義の口座からの振込が原則です。手形・小切手・電子記録債権での支払いや、ほかの取引との相殺は認められません。
このほか、検証にかかわるコンサルタントは申請の手続きを代わりに行えません。同じテーマ・同じ経費で、公社のほかの助成や国・区市町村の補助を受けることもできません。交付決定前の発注が対象外になる理由は交付決定前の発注・契約が対象外になる理由で取り上げています(東京都中小企業振興公社「令和8年度 製品開発着手支援助成事業 募集要項」 p.17『13 経費の支払い方法』)。
専門家から見たポイント
この助成は上限が小さい分、構想の段階でも申請しやすい制度です。大きな開発助成に進む前に、技術の見通しと委託先との関係を作っておく使い方に向いています。
向いている会社
アイデアはあるものの、素材や方式が実現できるかを社内の設備だけでは確かめられない会社です。大学や公的な試験機関、専門の加工会社に検証を頼む計画なら、経費の中心が委託・外注費になり、この助成の形にそのまま合います。
創業前の個人が、事業の柱になる技術を開業前に確かめたい場合も対象になります。創業の資金そのものには使えないため、開業の費用は東京都の創業助成事業など別の制度と分けて考えます。
迷う会社
すでに試作品があり、改良や量産の準備に入っている会社は、検討がほぼ終わった段階とみなされるおそれがあります。社内のエンジニアの人件費が経費の大半を占める計画も、この助成では対象の経費が残りません。どちらも、より後の段階を対象にした開発助成を先に比べます。
検証で作った試作品は、完了検査が終わるまで販売できず、その後も5年間の保管が必要です。検証の結果を展示会で見せたい場合は、販売と誤解されない見せ方を先に決めておきます。
御社の検証の中身が対象に入るか、どの段階の助成から使うのがよいかは、専門家に無料で相談できます。
よくある質問
創業前の個人でも申請できる?
都内で創業を具体的に計画していれば申請できます。交付決定のあと速やかに開業し、開業届の写しや登記簿で開業を示します。
社内で試作する場合の材料費だけでも申請できる?
できません。委託・外注・共同研究のどれかを1つ以上含めることが条件で、原材料・副資材費だけの計画は対象外です。
検証に使う機械やソフトを買う費用は対象?
対象外です。必要な設備は、委託先や試験機関の設備を使う形で計画に組み込みます。
都外に本店がある会社でも使える?
都内に登記上の支店があり、都内で実際に事業を続けていれば対象になり得ます。都内での事業の期間の条件は募集要項で確かめます。
過去に公社の助成を受けたが申請できる?
過去の助成で求められた報告をすべて出していれば申請できます。過去と同じテーマ・同じ経費での申請は認められません。
ほかの補助金の質問はよくある質問の一覧で探せます。
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