東京都の商店街起業・承継支援事業とは?対象と助成額・申請の流れ
この記事の要点
都内の商店街で店を開く人や、商店街の店を継いで改装する人が使える東京都中小企業振興公社の助成です。年齢や性別を問わず会社も申請できる点、事業承継の条件、工事費・設備・家賃の対象範囲と申請の流れを募集要項で整理しました。
この記事の目次
商店街起業・承継支援事業は、都内の商店街で店を開く人や、商店街の店を引き継いで改装する人に、東京都中小企業振興公社が工事費・設備費・家賃の一部を助成する制度です。
助成率は助成対象経費の3分の2以内、助成の上限は合計694万円で、40歳以上の男性や会社、事業承継・多角化での出店はこちらの制度が受け皿になります。
都内の商店街で店を出す、親や前の店主から店を継ぐといった計画があり、この助成の対象になるか、いくら出るか、どんな順番で準備すればよいかを知りたい方に向けた記事です。公社の事業サイトと募集要項で確かめた範囲で書いています。
東京都の商店街起業・承継支援事業とは?
都内の区市町村に登録された商店街の中で店舗を構え、商店街のにぎわいにつながる商売を始める人を後押しする助成です。開業のときに一度に出ていく工事や設備の支払いと、開業後3年間の家賃の負担を軽くすることが狙いです。
対象になる出店のかたちは次の5つです。
- 新規開業:はじめて店舗を持つ
- 多角化:今の店と主な業種が違う店を新しく開く
- 事業承継:都内の商店街にある店を引き継ぎ、改装などをする
- 2店舗目:今の店と同じ業種の店を別の場所に開く
- 移転:商店街の外にある店を商店街の中へ移す(都内の商店街どうしの移転は除く)
業種は公社が決めた一覧に入るものに限られ、店で常に商品やサービスを提供し、お客さんが訪れられることが前提です。期間限定のシェアキッチンやチャレンジショップは店舗に数えません。
同じ募集で動いている若手・女性向けの制度との違いは、若手・女性リーダー応援プログラム助成事業で取り上げています。
公社のほかの助成金と並べて比べたいときは、東京都中小企業振興公社の助成金一覧が使えます(東京都中小企業振興公社「令和8年度 若手・女性リーダー応援プログラム助成事業/商店街起業・承継支援事業 募集要項」 p.9『1 事業の目的』)。
法人や40歳以上の男性も対象になる?
どちらも対象です。この制度には年齢や性別の条件がなく、会社(中小企業者)でも申請できます。ここが若手・女性向けの制度との大きな違いで、41歳で脱サラして飲食店を開く男性や、地域で長く続く会社が商店街に新しい業態の店を出す場合は、こちらで申請します。
| 申請する人 | 申請できる出店のかたち |
|---|---|
| これから創業する個人 | 新規開業 |
| 個人事業主 | 新規開業・多角化・2店舗目・移転・事業承継 |
| 会社(中小企業者) | 多角化・2店舗目・移転(会社の代表者として事業承継を申請することはできない) |
出典:東京都中小企業振興公社「令和8年度 若手・女性リーダー応援プログラム助成事業/商店街起業・承継支援事業 募集要項」 p.10『3 助成対象事業』
会社で申請する場合は、大企業が株式の多くを持つなど経営に実質的に関わっていないことが条件です。フランチャイズ本部が大企業である店も対象外になります。
申請する人は、助成を受ける期間もその後も、その店で専従して働くことが求められます。会社の場合は、店に専従する正社員の責任者を置く形でもかまいません。開業の資金を融資でそろえる場合の条件は、創業融資を借りられる人・借りられない人で取り上げています。
親の店を継ぐときに満たす条件は?
事業承継で申請できるのは、店を引き継ぐ後継者が個人(創業予定の人か個人事業主)の場合だけです。親族でなくても、先代が健在なら第三者への承継も認められます。継ぐだけでは足りず、店舗の改装や設備の入れ替えを伴うことが条件です。
先代が健在のときは、先代が基準日(第3回は2026年10月1日)の時点で、都内で1年以上続けて事業を営んでいることが求められます。先代が亡くなっている場合は、次の3つをすべて満たす必要があります。
- 先代が後継者から見て3親等以内の親族である
- 先代が亡くなる1年以上前から、都内でその事業を実際に営んでいた
- 亡くなってから1年以内に申請する
承継の場合も、交付決定日から1年以内に改装後の店で営業を始めることが必要です。工事費と設備・備品費の両方がゼロになると、家賃や広告費だけでは助成を受けられません(東京都中小企業振興公社「令和8年度 若手・女性リーダー応援プログラム助成事業/商店街起業・承継支援事業 募集要項」 p.15『4 申請要件(事業承継)』)。
株式の移し替えや専門家への相談の費用など、承継の手続きそのものにかかる費用は、公社の別の制度の対象です。中身は東京都の事業承継支援助成金で取り上げています。
工事費・設備・家賃はいくらまで出る?
助成の対象は、店をつくる「事業所整備費」と、開業後3年間の「店舗賃借料」の2本立てです。事業所整備費の上限は250万円(店舗新装・改装工事費、設備・備品購入費、宣伝・広告費の合計)です。
| 経費の区分 | 中身の例 | 上限 |
|---|---|---|
| 店舗新装・改装工事費 | 内装・外装の工事、厨房や給排水の工事、看板の取り付け | 事業所整備費の上限の範囲内 |
| 設備・備品購入費 | 1点が税込10万円以上の新品の業務用冷蔵庫・レジ・什器など | 事業所整備費の上限の範囲内 |
| 宣伝・広告費 | ホームページ制作、チラシ、開業告知の広告 | 対象経費で100万円まで(うちホームページ制作は税抜50万円まで) |
| 店舗賃借料 | 新しく借りる店舗の家賃(交付決定日以降に払う分) | 1年目は月額15万円、2年目は月額12万円、3年目は月額10万円 |
出典:東京都中小企業振興公社「令和8年度 若手・女性リーダー応援プログラム助成事業/商店街起業・承継支援事業 募集要項」 p.21『6 助成対象経費』
家賃の上限は助成金の額の上限なので、月の家賃が高い物件ほど自己負担が増えます。敷金・礼金・仲介手数料・火災保険料・光熱費は対象になりません。助成の期間は交付決定日から1年間(店舗賃借料は交付決定日から3年間)です。
中古の設備やリース・レンタル品、消耗品も対象外です。店の改装を国の補助金で行う場合の考え方は、持続化補助金で店舗改装・内外装を行う例で取り上げています。
物件探しから交付決定までの流れは?
申請の前に、店を出す場所と、その場所がどの商店街に入るかを決めておく必要があります。物件の賃貸契約は申請の時点では要りませんが、場所と家賃がわかる資料は出します。
- 募集要項と対象業種の一覧で、自分の業種が対象かを確かめる
- 出店する場所を決め、区市町村の窓口でどの商店街に入るかを確かめる
- 商店街の会長などに計画を説明し、公社の様式の「商店街出店に関する確認書」をもらう
- 工事の見積と図面、備品の選定、損益計画をそろえて申請書を作る
- Jグランツで申請する(使えない場合だけ郵送)。受付は第3回 2026年10月9日(金)~10月30日(金)です
- 書類審査のあと面接審査を受ける。面接は第3回は2027年1月中旬~下旬です
- 交付決定を受ける。第3回は2027年3月1日(予定)です
Jグランツで申請するにはGビズIDプライムが必要で、発行までの目安は2週間程度です。取り方はGビズIDプライムの取得方法で取り上げています。
商店街の確認書は会長の都合で日数がかかることがあり、締切の直前に頼むと間に合わないことがあります。面接では、事業の実現性、資金計画の妥当性、商店街の活性化への貢献、経営者としての適性の4つが見られます(東京都中小企業振興公社「令和8年度 若手・女性リーダー応援プログラム助成事業/商店街起業・承継支援事業 募集要項」 p.32『10 審査』)。
間違えやすい点
多いのは、交付決定より前に店を開けてしまい、対象から外れるケースです。開業日は開業届の日付ではなく、その店で営業を始めた日で数えます。
交付決定日より前にその店で営業を始めると、申請の資格がなくなります。工事の契約は交付決定の3か月前から、賃貸借契約は6か月前からなら条件つきで認められますが、支払いの対象になるのは交付決定日以降の分です。
自分や3親等以内の親族、その人たちが経営する会社が持つ物件を借りる場合、家賃は対象になりません。親族の会社に工事を頼んだ場合の工事費も対象外です。
開業した月までに商店街の組合などに加入し、助成の期間が終わったあとも加入を続けることが必要です。助成の期間が終わった翌年度から5年間は、やむを得ない理由がなければ休業・廃業・移転ができず、毎年の実施状況報告も求められます。
経費の支払いは本人名義の口座からの振込が原則で、クレジットカードは本人名義の一括払いに限られます。国や区市町村の補助金と組み合わせる場合の決まりは、補助金の併用と重複のルールで取り上げています。
専門家から見たポイント
この制度は、店づくりの費用に加えて家賃を3年間支えてくれる点が、国の補助金にはない強みです。その分、商店街に溶け込んで長く続けられる計画かどうかを、書類と面接の両方で問われます。
向いている会社
先代が元気なうちに店を引き継ぎ、古くなった厨房や売場をまとめて改装したい後継者は、承継の条件を満たしやすく使いどころがはっきりしています。商店街の外で営業してきた店が、人通りの多い商店街の空き店舗へ移る場合も、工事費と家賃の両方を見込めます。
商店街の空き店舗に、地域にない業態の店を出す会社の多角化も対象です。商店街のイベントや清掃に参加する体制まで計画に書けると、商店街への貢献を説明しやすくなります。
迷う会社
女性、または2027年3月31日時点で39歳以下の男性に当たる方は、助成率の高い若手・女性リーダー応援プログラムとあわせて申請できるため、どちらか一方に絞る必要はありません。工事をほとんどせず居抜きのまま開く店は、事業所整備費が少なく助成の効果が小さくなります。開業後5年の継続や商店街への加入が負担になる業態は、申請の前に続けられるかを考えます。
審査は約4か月かかり、交付決定のあとに開業する決まりです。物件の空き期間の家賃をどう払うかまで含めて、開業日から逆算して申請する回を選びます。
御社の出店が5つのかたちのどれに当たるか、若手・女性向けの制度と併願できるかは、専門家に無料で相談できます。
よくある質問
都外に住んでいても申請できる?
できます。条件になるのは住まいではなく、店舗が都内の商店街の中にあることです。
開業届をもう出していても申請できる?
申請できます。開業日はその店で営業を始めた日で判断するため、交付決定の前に店を開けていなければ対象になり得ます。
若手・女性向けの制度と同時に申請できる?
同時に申請できます。両方で採択された場合は、若手・女性向けの制度で助成を受けることになります。
過去に公社の創業助成事業を受けたが申請できる?
公社の創業助成事業、この制度、若手・女性向けの制度のどれかで助成を受けたことがある場合は、もう一度受けることはできません。
物件が見つからなくなったらどうなる?
同じ商店街の中の別の物件に変えることはできますが、先に事務局へ届け出る必要があります。
ほかの質問はよくある質問にまとめています。
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