新事業進出・ものづくり商業サービス補助金の採択後|交付申請・実績報告・返還
この記事の要点
新事業進出・ものづくり補助金の採択後は、2か月以内に交付申請、完了30日以内に実績報告、5年間で6回の報告が続きます。採択予定・申請予定の社長向けに、必要書類、入金時期、賃上げ未達の返還額を公募要領で確かめます。
この記事の目次
新事業進出・ものづくり商業サービス補助金の第1回公募で採択された会社は、採択発表日から2か月以内に交付申請を出し、交付決定のあとで発注を始めます。
補助事業は交付決定から10か月以内(革新的新製品・サービス枠)か14か月以内(新事業進出枠・グローバル枠)に終え、完了から30日以内に実績報告を出します。
補助金の入金は確定検査のあとで、その後も5年間で計6回の事業化状況報告が続き、賃上げ目標に届かなければ未達の割合に応じて返還を求められます。
第1回公募の締切は2026年10月30日(金)18:00で、採択発表は2027年1月頃の予定です。この記事では、申請時の書類から交付申請、実績報告、入金、5年間の報告、賃上げ未達のときの返還まで、採択後にやることを順番に整理します。
新事業進出・ものづくり補助金は、採択後に何をする?全体の流れ
新事業進出・ものづくり補助金は、採択後に交付申請、補助事業、実績報告、確定検査、入金、5年間の報告と手続きが続きます。正式名称は新事業進出・ものづくり商業サービス補助金です。採択は「補助金交付候補者に選ばれた」段階で、この時点ではまだ補助金の額は決まっていません。
公募要領の事業スキームをもとに、採択から最後の報告までの手続きを順に並べた表です。
| 順番 | 手続き | 期限・目安 |
|---|---|---|
| 1 | 採択発表・交付候補者向けオンライン説明会への参加 | 採択発表は2027年1月頃(予定) |
| 2 | 交付申請(見積書などを出して経費を精査してもらう) | 採択発表日から2か月後の日まで |
| 3 | 交付決定 | この日以降に発注・契約できる |
| 4 | 補助事業の実施(発注・納品・検収・支払) | 交付決定から10か月以内または14か月以内 |
| 5 | 実績報告 | 完了から30日以内(完了期限日の方が早ければその日) |
| 6 | 確定検査・補助金額の確定・精算払請求・入金 | 実績報告のあと |
| 7 | 事業化状況報告 | 完了年度の終了後から5年間で計6回 |
説明会に参加しないと、説明会の最終開催日をもって採択が自動的に無効になります。採択の通知が届いたら、日程を最初に押さえます。
出典:新事業進出・ものづくり商業サービス補助金(第1回)公募要領 p.37『2-1. 事業のスキーム』
申請時に必要な書類は、決算書・労働者名簿・確定申告書の控えの3点が基本です
応募申請で全社が添付するのは、直近3期分の決算書、労働者名簿の写し、確定申告書の控えの3点で、加点や特例を希望する会社は追加の書類を出します。事業計画は書類として添付するのではなく、電子申請システムに直接入力します。
全社が出す書類
- 決算書:法人は直近3期分の貸借対照表と損益計算書など。個人事業主は青色申告決算書(白色申告なら収支内訳書)。3期分そろわない場合は今期までの分をすべて出します。
- 従業員数を示す書類:労働基準法に基づく労働者名簿の写し(申請時点のもの)。
- 収益事業を行っていることを示す書類:法人は確定申告書別表一と法人事業概況説明書の控え、個人事業主は確定申告書第一表と青色申告決算書の控え。電子申告なら受付日時・受付番号が載っているものが必要です。
該当する会社だけが出す書類
- 金融機関から借り入れて補助事業を行う場合:金融機関による確認書(自己資金だけなら不要)
- リース会社と共同申請する場合:リース料軽減計算書、リース取引に係る宣誓書
- 再生事業者として申請する場合:再生事業者であることを証明する書類
- 地域別最低賃金引上げ特例・加点、事業場内最低賃金引上げ加点を希望する場合:所定の様式と賃金台帳の写し
- 経営革新計画の加点を希望する場合:承認書の写し(計画期間が書かれていなければ計画書の写し)
- 研究開発費・試験研究費の加点を希望する場合:別表六(十)の写しなど
添付ファイルには「決算書等(申請者名)」のように決まったファイル名を付けます。申請にはGビズIDプライムアカウントが必要で、発行には1週間程度かかります。
出典:新事業進出・ものづくり商業サービス補助金(第1回)公募要領 p.40『2-2-1. 添付書類』
採択から交付決定まで:交付申請は採択発表から2か月以内に出します
交付申請は、採択発表日から遅くとも2か月後の日までに出す必要があり、間に合わなければ採択が取り消されます。交付決定(事務局から「この内容で補助します」と正式に通知されること)までの標準的な日数は、公募要領には書かれていません。
交付決定の前は、次のことが認められていません。
- 発注・契約:交付決定日より前に契約(発注を含む)した経費は補助対象外です(交付決定前の発注)。
- 事業計画の変更:採択された計画は、交付決定前にはどんな理由でも変えられません。
- 事業の承継:事業譲渡、個人事業からの法人成り、会社分割などで交付申請の権利を他者に移すことは認められません。
交付申請で出すもの
応募申請のときは見積書は不要ですが、交付申請では補助対象にする経費の見積書を出し、事務局が経費を1件ずつ精査します。主な決まりは次のとおりです。
- 発注先1件当たりの見積額の合計が50万円(税抜き)以上なら、3者以上から同じ条件で見積もりを取ります。
- 金融機関確認書を出した金融機関や、事業計画作成支援者(計画づくりを手伝った外部の支援者)からは見積もりを取れず、発注もできません。
- 課税事業者は、消費税の仕入控除分を差し引いた額で申請します。
- 賃上げ要件の目標値(一人当たり給与支給総額の年平均成長率)は、交付申請時までに全従業員または従業員代表に表明しておきます。
詳しい様式は、事務局が後日公開する「補助事業の手引き」で示されます。
交付申請で補助対象外の経費が見つかると、交付決定額は減ります。減額の結果、補助金額が補助下限額(革新的新製品・サービス枠100万円、新事業進出枠・グローバル枠750万円)を下回ると採択取消です。応募時に入れていなかった経費を交付申請で足すこともできません。
出典:新事業進出・ものづくり商業サービス補助金(第1回)公募要領 p.55『4-1.(2)交付申請~交付決定』
補助事業の期間は10か月か14か月、実績報告は完了から30日以内です
補助事業の期間は、革新的新製品・サービス枠が交付決定日から10か月以内、新事業進出枠とグローバル枠が14か月以内で、発注から支払までをこの期間に終えます。期間には採択発表日からの上限もあり、交付申請が遅れるとその分だけ使える期間が短くなります。
申請枠ごとの補助事業実施期間を比べた表です。
| 申請枠 | 交付決定日から | 採択発表日から(上限) |
|---|---|---|
| 革新的新製品・サービス枠 | 10か月以内 | 12か月以内 |
| 新事業進出枠 | 14か月以内 | 16か月以内 |
| グローバル枠 | 14か月以内 | 16か月以内 |
期間内に契約、納入、検収、支払のすべてを終える必要があり、延長は天災など会社の責任によらない事情がある場合に限られます。支払は銀行振込だけが認められ、現金払い、相殺、手形、小切手、PayPayやPayPalなどの決済サービスは対象外です。分割払いで1回でも期間を過ぎると、その契約の経費がすべて対象外になります。
実績報告の期限と出すもの
補助事業が終わったら、完了日から30日を過ぎる日か、補助事業の完了期限日のどちらか早い日までに実績報告書を出します。期限を過ぎると交付決定が取り消されます。公募要領と事務局FAQで示されている提出物は次のとおりです。
- 補助事業実績報告書と、請求書・納品書・銀行振込の記録などの証憑(支払の事実を示す書類)
- 建物や設備にかけた保険・共済(自然災害を補償し、補助率以上の付保割合のもの)への加入を示す書類
- 子育て等に関する職場環境整備の取り組みを実施したことを示す証憑
実績報告のあとは、原則として事務局が会社に来て現物と帳簿を確かめる実地検査があります。取得した設備や帳簿を確認できない経費は、補助対象から外れます。
出典:新事業進出・ものづくり商業サービス補助金(第1回)公募要領 p.57『4-1.(4)実績報告~額の確定』
入金は確定検査のあと。概算払いは公募要領・FAQに記載がありません
補助金は、実績報告と確定検査(事務局が経費と成果を確かめて補助金額を確定する手続き)を終えたあとに、精算払請求を出してから振り込まれます。つまり、設備代や工事代はいったん会社が全額を立て替えて支払います。
事業が終わる前に補助金の一部を受け取る概算払いについては、2026年10月13日時点の公募要領と事務局の「よくあるご質問」には記載がありません。立て替える期間の資金は、自己資金か金融機関からの借入で用意する前提で計画します。
数字の根拠は公募要領の台帳にまとめています。例として、新事業進出枠で3,000万円の設備を入れ、補助率1/2で1,500万円の補助を受ける場合を考えます。この場合でも3,000万円を期間内に銀行振込で払い終え、実績報告と確定検査を経てから1,500万円が入る順番です。借入を使う場合は、応募申請の時点で「金融機関による確認書」が必要になります。入金までの資金繰りの考え方は補助金はいつ入金される?でもまとめています。
出典:新事業進出・ものづくり商業サービス補助金 事務局 よくあるご質問『Q34』
ほかの質問も見るものづくり・新事業進出補助金のよくある質問事業化状況報告は、補助事業の完了後5年間で計6回出します
補助事業が終わった年度の終了後を1回目として、そこから5年間にわたり計6回、事業化状況・知的財産権等報告書を出します。報告をしない、または数字を偽ると、交付決定の取消と補助金の返還を求められ、以後の応募もできなくなります。
事業計画期間は、新しい事業の内容に合わせて3年から5年の範囲で会社が決めます。報告では、申請時に立てた付加価値額(営業利益+人件費+減価償却費)と一人当たり給与支給総額の目標に対する実績を、決算書や賃金台帳で示します。
報告期間中に守ること
- 単価50万円(税抜き)以上の設備などは処分制限財産となり、売却・貸付・廃棄・担保設定の前に事務局の承認が要ります。処分するときは補助金の一部を納めます。
- 処分の制限は法定耐用年数まで続くため、事業計画期間が終わっても残ることがあります。
- 補助事業の経理の証拠書類は、補助金を受け取った年度の終了後5年間保存します。
- 補助金は受け取った事業年度の収入として課税対象になり、固定資産の取得に充てた部分は圧縮記帳が使えます。
- 入金後も、会計検査院や事務局が予告なく実地検査に来ることがあります。
出典:新事業進出・ものづくり商業サービス補助金(第1回)公募要領 p.58『4-1.(5)事業計画期間(事業化状況報告期間)』
賃上げ要件を達成できなかったら、未達の割合に応じて返還します
事業計画期間の最終年度に一人当たり給与支給総額の目標に届かなかった場合、補助金交付額に未達成率を掛けた額を返還し、伸びがゼロかマイナスなら全額返還です。途中の年度で目標を下回っても、最終年度に達成していれば返還の対象にはなりません。
返還額の計算例
返還額は「補助金交付額×(1-最終年度の年平均成長率÷目標値)」で計算します。たとえば交付額1,000万円、目標値3.5%、最終年度の実績2.1%なら、1,000万円×(1-2.1÷3.5)=400万円の返還です。
賃上げに関係する要件ごとに、返還の決まりを並べた表です。
| 要件 | 判定のタイミング | 未達のときの返還 |
|---|---|---|
| 賃上げ要件(年平均3.5%以上) | 事業計画期間の最終年度 | 交付額×未達成率。ゼロ・マイナス成長は全額 |
| 目標値の従業員への表明 | 交付申請時まで | 表明していなければ交付決定取消・全額返還 |
| 事業場内最賃水準要件(地域別最低賃金+30円以上) | 毎年の事業化状況報告 | 未達の年ごとに、交付額÷事業計画期間の年数 |
| 賃上げ特例(合計+6.0%、最低賃金+50円) | 事業化状況報告 | 上限額の引上げ分を全額+基本要件分も未達成率に応じて |
事業場内最賃水準要件の例では、交付額1,000万円で事業計画期間5年なら、未達の年1回ごとに200万円の返還です。付加価値額が増えず、かつ会社全体で営業利益が赤字の場合(賃上げ要件では事業計画期間の過半数の年度、事業場内最賃水準要件ではその年度)や、天災など会社の責任によらない事情がある場合は、この一部返還は求められません。返還額は、交付された補助金額が上限です。
中途採用や退職で全月分の給与を受け取っていない従業員は、その年度の計算から外します。パートタイムの従業員は正社員の就業時間に換算して人数を数えます。採用計画や残業時間の変化も、申請前に目標値の計算に入れておきます。
出典:新事業進出・ものづくり商業サービス補助金(第1回)公募要領 p.13『1-3-1. 基本要件(2)賃上げ要件』
この補助金のポイント
採択後の手続きは5年以上続くため、申請の段階から「交付申請で減らされない経費」と「最終年度に届く賃上げ目標」を作っておく会社が、採択後に困りにくくなります。公募要領の審査項目と減点項目から、採択前後で効く点を整理します。
向いている会社
補助事業の期間中に設備代を全額立て替えられる会社、または金融機関と早めに資金の相談ができる会社です。経理担当者が見積書・発注書・振込記録を1件ずつ保管できる体制があると、実績報告で慌てずに済みます。
採択されるために効く点
公募要領は、付加価値額と一人当たり給与支給総額の目標値について算出根拠を具体的に示すよう求めており、その数字は毎年の事業化状況報告で確かめられます。基準値より高い賃上げ目標は、高さと実現可能性に応じて審査で評価されます。応募前に複数社から見積もりを取っておくと、採択後すぐ交付申請に進めます。
採択後の結果は次の申請にも響きます。新事業進出補助金・事業再構築補助金・ものづくり補助金を受けた会社は、直近の事業化状況報告で事業化の段階が3段階以下だと、次の申請で減点されます。ものづくり補助金か新事業進出補助金の第1回公募以降に交付決定を受け、賃上げ要件や事業場内最賃水準要件を達成できなかった会社も減点の対象です。
よくある失敗
- 採択の連絡を受けて、交付決定の前に設備を発注してしまう。
- 応募時の見積額だけを根拠にして、交付申請で相見積もりが3者そろわない。
- 賃上げの目標値を交付申請までに従業員へ表明していない。
- 支払の一部を手形や相殺で済ませ、その経費が対象外になる。
出典:新事業進出・ものづくり商業サービス補助金(第1回)公募要領 p.50『3-1. 書面審査(9)減点項目』
よくある質問
申請のときはどんな書類が必要?
全社が出すのは、直近3期分の決算書、労働者名簿の写し、確定申告書の控えの3点です。事業計画は電子申請システムに直接入力します。借入を使う場合は金融機関による確認書、加点を希望する場合はそれぞれの確認書類を追加します。
交付決定はいつ出る?
交付決定までの標準的な日数は、公募要領には書かれていません。交付申請は採択発表日から2か月以内に出す決まりで、第1回公募の採択発表は2027年1月頃の予定です。交付申請の書類に不備があると交付決定が遅れ、その分だけ補助事業に使える期間が短くなります。
交付申請ではどんな書類が必要?
中心になるのは補助対象経費の見積書です。発注先1件当たり50万円(税抜き)以上なら3者以上の相見積もりが要ります。様式の詳細は事務局が後日公開する「補助事業の手引き」で示されます。
実績報告はいつまでに出す?
補助事業の完了日から30日を過ぎる日か、補助事業の完了期限日のどちらか早い日までです。期限に遅れると交付決定が取り消されます。完了とは、納品・検収・支払がすべて終わった状態を指します。
実績報告ではどんな書類が必要?
実績報告書と、請求書・納品書・銀行振込の記録などの証憑です。あわせて、建物・設備の保険や共済に入っていることを示す書類と、子育て等に関する職場環境整備の取り組みを実施した証憑も出します。
補助事業が終わったあとの3〜5年の報告では何をする?
補助事業を終えた年度の終了後から5年間、計6回の事業化状況・知的財産権等報告書を出します。付加価値額と一人当たり給与支給総額の実績を、決算書や賃金台帳で示します。報告しないと補助金の返還を求められます。
賃上げ要件を達成できなかったらどうなる?
最終年度の実績に応じて、補助金交付額×未達成率の額を返還します。伸びがゼロかマイナスなら全額返還です。付加価値額が増えず、かつ事業計画期間の過半数の年度で会社全体が営業赤字の場合や、天災などの場合は、この一部返還は求められません。
補助金を先に一部もらうことはできる?
2026年10月13日時点の公募要領と事務局FAQには、概算払いの記載はありません。補助金は確定検査を経て金額が決まってから支払われるため、設備代はいったん全額を会社が払います。
ほかの質問はよくある質問(新事業進出・ものづくり補助金)にまとめています。
まとめ
採択後の手続きは、交付申請の見積書と賃上げ目標の表明で決まる部分が大きく、どちらも応募の前から準備できます。申請を考えている会社は、対象者の条件と対象経費を確かめ、見積もりと立て替え資金の計画を先に固めます。締切・上限・補助率・期間は公募回ごとに変わるため、最新の公募要領で確認が必要で、使えるか・採択されるかは専門家がお答えします。
参考資料
- 独立行政法人中小企業基盤整備機構 新事業進出・ものづくり商業サービス補助金 公式サイト
- 独立行政法人中小企業基盤整備機構 新事業進出・ものづくり商業サービス補助金 公募要領(第1回、1.3版、2026年9月)
- 新事業進出・ものづくり商業サービス補助金 事務局 よくあるご質問(Q1・Q16・Q19・Q34・Q45・Q54、2026年10月13日閲覧)
確認日:2026年10月13日
中小企業診断士 神谷 恒一が内容を確認しました(2026年10月13日)。
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