事業譲渡と株式譲渡で補助金の扱いは変わる?要件と申請者の違い
この記事の要点
事業承継・M&A補助金の専門家活用枠とPMI推進枠は、事業譲渡と株式譲渡のどちらのM&Aも対象です。株式譲渡で求められる議決権の過半数、事業譲渡で必要な経営資源のまとまり、売り手の申請者の違いを公募要領で整理しました。
この記事の目次
事業承継・M&A補助金の専門家活用枠とPMI推進枠では、事業譲渡と株式譲渡のどちらのM&Aも対象で、補助される経費の区分は変わりません。
違うのは要件で、株式譲渡は買い手が議決権の過半数を持つこと、事業譲渡は設備・従業員・顧客などをまとめて引き継ぐことが求められ、売り手の申請者も変わります。
会社を株式ごと譲るか、事業だけを切り出して譲るかで、補助金の使い方や申請の要件がどう変わるかを知りたい方に向けた記事です。
事業承継・M&A補助金の専門家活用枠・PMI推進枠の公募要領と説明会資料から、M&Aの形で変わる所を整理します。
事業承継・M&A補助金とは?
事業承継・M&A補助金は、中小企業の事業承継とM&Aを後押しする国の補助金で、承継をきっかけにした設備投資、M&Aの仲介やDDの費用、M&A後の統合の費用、廃業の費用を補助します。M&Aの形が関わるのは、M&Aの専門家の費用を補助する専門家活用枠と、M&A後の統合を補助するPMI推進枠です。
4つの枠の補助額と申請の時期は事業承継・M&A補助金の公募と4つの枠で取り上げています。
枠ごとに認められる譲渡の形は?
専門家活用枠は、買い手と売り手で認められる形が少し違います1。
- 買い手支援類型(Ⅰ型)の対象となるM&Aは、承継者が法人なら株式譲渡・第三者割当増資・株式交換・吸収合併・吸収分割・事業譲渡、個人事業主なら株式譲渡・第三者割当増資・事業譲渡。
- 売り手支援類型(Ⅱ型)は、対象会社と支配株主(株主代表)による株式譲渡(+廃業)、被承継者(法人)による株式交換・合併・分割・事業譲渡等、被承継者(個人事業主)による事業譲渡・事業再編等(+廃業)が対象。
- 小規模売り手支援類型の対象は、対象会社と支配株主(株主代表)による株式譲渡(+廃業)、被承継者(法人・個人事業主)による事業譲渡(+廃業)。
親族や従業員への承継を補助する事業承継促進枠は、第三者へのM&Aを対象にしていません。法人は同じ会社の中での代表交代、個人事業主は後継者への事業譲渡の形だけです。どの枠に何の費用を出せるかは事業承継・M&A補助金の専門家活用枠で取り上げています。
株式譲渡で求められる議決権の過半数
株式譲渡では、M&Aの後に買い手が会社を支配していることが求められます。株式譲渡後に承継者が保有する対象会社の議決権が過半数に満たない場合は対象外とされています。
| ケース | 株式譲渡 | 事業譲渡 |
|---|---|---|
| M&Aの後、買い手の議決権が過半数に届かない | 申請できない | この要件は無い |
| M&Aの前から買い手が過半数を持っている | 申請できない | この要件は無い |
| 補助事業期間中に過半数にならない | 要件を満たさない | この要件は無い |
出典:事業承継・M&A補助金 16次 専門家活用枠 買い手・売り手支援類型 公募要領 p.15『6.2. M&A 形態に係る区分整理』台帳で見る
株式を何回かに分けて買う計画なら、補助事業期間の中で過半数に届く日程にします。グループ会社の申請の決まりは別法人・グループ会社で複数申請できる?で取り上げています。
事業譲渡で必要な経営資源のまとまり
事業譲渡では、事業として動くひとまとまりの経営資源を引き継ぐことが求められます。公募要領は次のように定めています。
- 事業譲渡で設備・従業員・顧客等の有機的一体の経営資源の譲渡が確認できない場合は要件を満たさない可能性がある。有形資産だけ・無形資産だけの譲渡は原則対象外。
- 物品・不動産等の物的資産だけの売買は事業譲渡に当たらない。
説明会資料は、認められない例を具体的に挙げています。
| 引き継ぐもの | 扱い |
|---|---|
| 店舗と調理設備、従業員、常連客の名簿をまとめて引き継ぐ | 事業としてのまとまりがあり、対象になりうる |
| 店舗(調理設備など)だけ、施術台・施術用機器だけ、車両だけ | 有形資産だけの引継ぎで、対象外 |
| 従業員だけ、ノウハウだけ、顧客リストだけ、店舗の賃貸借契約だけ | 要件を満たさないとみなされることがある |
出典:事業承継・M&A補助金 16次 専門家活用枠 説明会資料 p.29『補助対象と認められないM&A事例』
実績報告では、事業譲渡契約書に加えて、従業員名簿や譲渡する資産の一覧を出します。採択後に出す書類は事業承継・M&A補助金の採択後の手続きで取り上げています。
売り手側は誰が申請者になる?
売り手の申請者は、譲渡の形で変わります。株式を売るのは会社ではなく株主なので、株主と会社の両方が申請に加わります2。
| 譲渡の形 | 売り手の申請者 | 費用を払える人 |
|---|---|---|
| 株式譲渡 | 対象の会社と、議決権の過半数を持つ株主(支配株主)の共同申請 | 会社と株主のどちらが払った費用も対象 |
| 事業譲渡 | 事業を譲る会社または個人事業主 | 申請者が払った費用 |
1人で過半数を持つ株主がいない会社は、過半数を持つ株主の代表者1人が「株主代表」として会社と共同申請し、ほかの株主から確認書を出してもらいます。売り手が払う仲介の報酬の扱いは事業承継・M&A補助金の専門家活用枠の対象経費で取り上げています。
専門家から見た譲渡の形のポイント
補助金の要件から見ると、株式譲渡は議決権、事業譲渡は引き継ぐものの中身が審査の焦点になります。中小企業庁の一覧(2026年10月15日時点)では、M&Aに対応する認定支援機関の割合はで、譲渡の形の選び方から相談できる窓口は少なくありません。
株式譲渡が向いている会社
会社ごと引き継いでもらい、許認可や取引先との契約をそのまま残したい会社です。買い手が株式の過半数を一度に取得できるなら、補助金の要件も満たしやすくなります。
譲渡の形で迷う会社
複数の事業のうち一部だけを売りたい会社です。事業譲渡なら残りの事業は手元に残せますが、譲る事業の設備・従業員・顧客をまとめて移す計画が要ります。譲った後に残った事業を閉じるなら、廃業費の上乗せも検討できます。廃業費の扱いは廃業・再チャレンジ枠と廃業費の上乗せで取り上げています。
間違えやすい点
譲渡の形で間違えやすいのは、価格の決め方と、不動産の扱いです。
事業譲渡の価格を0円にしたり、株価を1円にしたりして、価格に合理性が確かめられない取引は、原則として対象外です。親族や取引先との間の譲渡でも、価格の根拠を残します。
事業譲渡の形を選んでいても、実態が不動産の売買だけなら申請できません。不動産売買契約書で事業譲渡契約書の代わりにすることもできません。
土地や建物を引き継ぐ場合も、事業と一緒に移す形にします。補助の対象にならない費用の考え方は補助金の対象外経費7分類で取り上げています。
よくある質問
株式譲渡で子会社になった会社が統合の費用を払う場合はどう申請しますか?
PMI推進枠では、買い手の親会社と、費用を払う子会社が共同で申請します。親会社だけの申請では、子会社が払った費用は対象になりません。
会社分割や合併でも申請できますか?
買い手の会社は、株式交換・吸収合併・吸収分割などの形でも専門家活用枠を申請できます。売り手の会社も、株式交換・合併・分割の形が認められています。
事業譲渡の場合も議決権の要件はありますか?
ありません。議決権が過半数にならない場合に申請できない決まりは、事業譲渡と吸収分割には当てはまりません。
個人事業主が事業を譲る場合はどちらの形ですか?
ほかの質問も見る補助金のよくある質問出典(2件)
- 事業承継・M&A補助金 16次 専門家活用枠 買い手・売り手支援類型 公募要領 p.14『6.2. M&A 形態に係る区分整理』
- 事業承継・M&A補助金 16次 専門家活用枠 買い手・売り手支援類型 公募要領 p.17『7. 申請単位』
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