事業承継・M&A補助金の専門家活用枠|対象経費と契約日の注意点
この記事の要点
事業承継・M&A補助金の専門家活用枠は、M&Aの仲介・FAやデュー・ディリジェンスの費用を補助する枠です。対象経費、買い手と売り手の補助率の違い、契約日と支払日で対象外になる場面、登録業者の条件、成約しなかったときの扱いを公募要領で整理しました。
この記事の目次
事業承継・M&A補助金の専門家活用枠は、M&Aの仲介・FA、デュー・ディリジェンス(DD)、表明保証保険などの費用を補助する枠で、買い手と売り手のどちらでも申請できます。
対象になるのは、交付決定の後、補助事業期間の中で専門家と契約し、相手との最終契約と支払いまで終えた費用だけです。期間の前に仲介会社と契約していると、成約時の報酬は対象になりません。
会社や事業の売買を考えていて、仲介会社やFAへの報酬に補助金を使えるか、いつ契約すれば対象になるかを知りたい方に向けた記事です。
事業承継・M&A補助金(16次公募)の専門家活用枠のうち、買い手支援類型と売り手支援類型について、対象経費、補助額、契約日と支払日の決まり、登録業者の条件、成約しなかったときの扱いを公募要領の記載で整理します。4つの枠の全体と締切は事業承継・M&A補助金16次公募で取り上げています。
専門家活用枠で補助される専門家の費用
専門家活用枠で補助されるのは、M&Aの相手探しから最終契約までに使う専門家の費用で、中心は委託費(仲介・FAの報酬とDDの費用)です。M&Aの後の統合(PMI)にかかる費用は、この枠ではなくPMI推進枠の対象です。
| 経費の区分 | 主な中身 |
|---|---|
| 委託費 | 委託費の費用形態は、着手金、マーケティング費用、リテーナー費用、基本合意時報酬、成功報酬、価値算定費用、DD費用(プレPMI費用を含む)、弁護士の契約書作成・レビュー費用、クロージング手続き費用など。 |
| 謝金 | 謝金は、事業に必要な謝金として専門家等(士業と大学博士・教授等に限る)に払う経費。主に学術的な観点から数時間程度教わった礼金を想定。 |
| システム利用料 | M&Aマッチングプラットフォームへの登録料及び利用料(成約手数料を含む) |
| 保険料 | 表明保証保険の保険料(買い手は買い手手配、売り手は売り手手配。重複加入不可) |
| 外注費 | 業務の一部を第三者に外注(請負)する経費(FA・仲介費用は委託費で整理) |
| 廃業費 | 廃業支援費、在庫廃棄費、解体費、原状回復費、リースの解約費、土壌汚染調査費、移転・移設費用 |
出典:事業承継・M&A補助金 16次 専門家活用枠 買い手・売り手支援類型 公募要領 p.20『9. 補助対象経費』台帳で見る
対象にならない費用もはっきり決まっています。FA・仲介契約締結前のコンサルティング費用、バリューアップ・M&A成立後の経営改善のコンサルティング費用は対象外で、補助金の書類づくりを頼んだ費用も対象になりません。
対象になるM&Aにも条件があり、親族間の事業承継、グループ内の事業再編、物品・不動産等のみの売買は原則対象外とされています。親族への承継を考えている会社は、事業承継促進枠の対象になるかを確かめます。採択後の手続きは事業承継・M&A補助金の採択後の手続きで取り上げています。
補助額と補助率は買い手と売り手で違う
補助の上限額は買い手と売り手で同じですが、補助率は買い手が一律で、売り手は会社の業績で変わります。DDを行う場合と、廃業費を一緒に使う場合は、上限額が上乗せされます。
- 補助上限:600万円(DD実施時+200万円、廃業費併用+300万円)
- 買い手支援類型の補助率:補助対象経費の2/3以内
- 売り手支援類型の補助率:原則1/2以内。①営業利益率が低下している者、②直近決算期の営業利益又は経常利益が赤字の者のいずれかは2/3以内
- 補助の下限:50万円(補助対象経費×2/3又は1/2が50万円を下回る申請は受け付けない)
買い手支援類型は、買い手支援類型は補助対象経費の計上有無を問わずデュー・ディリジェンス(DD)を実施が要件です1。事務局のよくある質問では、買い手が専門家を使わずに自分でDDをしても要件を満たさないとしています。
仲介・FAの報酬で上限額が埋まりそうなときは、DDの上乗せ分でDDの費用を補助の対象にできます。報酬の見積を取った段階で、仲介・FAの報酬とDDの費用を分けて上限に当てはめておきます。
補助率の考え方は補助率とはで取り上げています。
契約日と支払日で対象外になる場面
仲介・FAの成約時の報酬が対象になるのは、補助事業期間の中で、専門家との契約、相手との最終契約、成約時の報酬の支払いの3つをすべて行った場合だけです。どれか1つでも期間の前か後にずれると、その報酬は対象外です。
| ケース | 補助事業期間の前 | 補助事業期間の中 | 期間の後 | 対象か |
|---|---|---|---|---|
| ① | なし | 専門家契約・最終契約・成約時の報酬の支払い | なし | 対象 |
| ② | 専門家契約 | 最終契約・成約時の報酬の支払い | なし | 対象外 |
| ③ | 専門家契約・最終契約 | 成約時の報酬の支払い | なし | 対象外 |
| ④ | なし | 専門家契約・最終契約 | 成約時の報酬の支払い | 対象外 |
出典:事業承継・M&A補助金 16次 専門家活用枠 買い手・売り手支援類型 公募要領 p.19『9. 補助対象経費【補助対象経費の該当可否(契約等の時期別)】』台帳で見る
補助事業期間は2027年1月(下旬予定)から14か月以内を想定とされていて、始まるのは交付決定の後です。今の公募回の申請の締切は2026年11月6日(金)17:00なので、申請から期間の始まりまでの数か月は、仲介会社と正式な契約を結ばずに準備だけ進めます。
基本合意に基づく中間報酬も同じ考え方で、期間の中で専門家と契約し、基本合意書を結んで支払ったものが対象です。意向表明書は基本合意書の代わりになりません。期間の前に最終契約を結び、覚書で契約日を期間の中にずらす形も認められません。
交付決定前の契約が対象外になる理由は交付決定前の発注・契約で取り上げています。
登録FA・仲介業者でないと対象外
仲介・FAの報酬が補助の対象になるのは、国の「M&A支援機関登録制度」に登録された業者に頼んだ場合だけです。登録されているかどうかは、交付決定の時点で判断されます。
公募要領は実績報告でFA・仲介費用を計上しても、交付決定時に登録制度の登録業者を使っていなければ確定検査で認められない。としています2。頼もうとしている業者が登録しているかは、中小企業庁やM&A支援機関登録制度のホームページで公表されている一覧で確かめます。
- 登録が必要な費用:仲介・FAの報酬、仲介・FAと実質的に同じ内容を含むDDの費用、仲介・FAも行うマッチングサイトの利用料。
- 登録が要らない費用:財務・法務等のDD費用と、マッチングサイトの登録等に係るシステム利用料は、登録制度の登録が不要。
相見積もりにも決まりがあり、仲介・FAの報酬は原則として複数社の見積が要ります。報酬が一定の計算表の額以下なら相見積もりを省ける条件もあるので、見積の取り方は補助金の相見積もりで確かめます。
M&Aが成約しなかったときの扱い
補助事業期間の中でM&Aが成約しなかった場合も、補助金は出ますが、上限額が下がり、対象になる費用も原則としてDDの費用に限られます。成約しなかったときも、期間の終わりに報告を出します。
公募要領は、補助事業期間内に引継ぎが実現しなかった場合は補助上限額300万円(原則DD費用のみ対象)としています3。売り手の場合は、企業概要書の作成やマッチングサイトへの掲載など、専門家の支援で売却に着手したことが分かる資料を出します。
成約しなかったときの未成約時の追加報告書を出さないと、交付の後でも交付決定が取り消されることがあります。報告は、補助金を受け取るかどうかにかかわらず出すものと考えておきます。
採択後の不成約の扱いは事業承継・M&A補助金の採択後でも取り上げています。
専門家から見たポイント
専門家活用枠で失敗が多いのは、補助金を知る前に仲介会社と契約してしまう場面です。M&Aの相談先は増えていて、中小企業庁の一覧(2026年10月15日時点)では、M&Aに対応する認定支援機関があります。最初の相談の段階で、補助金を使う予定であることを伝え、契約の時期を合わせてもらいます。
事業承継・M&A補助金の採択事例19件でも、事業承継・後継者を課題に挙げた事例が47.4%あり、承継の準備と事業の立て直しを同時に進める会社が多く見られます。
専門家活用枠が使いやすい会社
買い手候補や売り手候補がまだ決まっておらず、これから仲介会社やFAを選ぶ会社です。登録業者の中から選び、交付決定の後に契約すれば、相手探しから最終契約までの費用をまとめて対象にできます。
使えるか先に確かめたい会社
すでに仲介会社と契約していて、交渉が進んでいる会社です。期間の前の契約に基づく成約時の報酬は対象外なので、対象になるのはDDなど期間の中で新しく契約する費用に限られます。どの費用が残せるかを、契約書の日付と支払いの予定から確かめます。
事業承継に関する加点は事業承継の加点とアトツギ甲子園で取り上げています。
間違えやすい点
間違えやすいのは、契約の時期、業者の登録、親族への承継の3つです。
仲介会社との契約を補助事業期間の前に結ぶと、その契約に基づく成約時の報酬は対象外です。申請の段階では見積と提案書までにとどめ、交付決定の後に契約します。
交付申請までに頼む業者がM&A支援機関登録制度に登録していないと、仲介・FAの報酬は対象になりません。申請の前に一覧で登録を確かめます。
親族への承継やグループ内の再編は、専門家活用枠の対象外です。株式譲渡の後に買い手の議決権が過半数に届かないM&Aも対象になりません。
持続化補助金など他の制度との併用は補助金の併用のルールで取り上げています。
よくある質問
売り手でもDDの費用を補助してもらえますか?
必要性があれば計上できます。ただし売り手がDDを行う場面は限られるため、どんな想定で計上するかを事務局に確認されることがあります。
マッチングサイトの成約手数料は対象ですか?
対象です。ただし交付決定の前にサイトに加入し、期間の中で成約した場合の成約手数料は対象外です。
見積書は申請のときに出しますか?
申請の時点では出さず、採択後の交付申請で出します。DDの費用も、交付申請のときにDDを行う専門家の見積書を出します。
買い手支援類型とPMI推進枠に同時に申請できますか?
できます。買い手支援類型は、同じ公募回でPMI推進枠のPMI専門家活用類型と同時に申請できます。
個人事業主の事業を買う場合も対象ですか?
ほかの質問も見る事業承継・M&A補助金のよくある質問出典(3件)
- 事業承継・M&A補助金 16次 専門家活用枠 買い手・売り手支援類型 公募要領 p.12『6.1.【補助対象事業の要件】』
- 事業承継・M&A補助金 16次 専門家活用枠 買い手・売り手支援類型 公募要領 p.73『21.3. その他』
- 事業承継・M&A補助金 16次 専門家活用枠 買い手・売り手支援類型 公募要領 p.21『10. 補助上限額、補助率等』
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