法人成りすると補助金はどうなる?申請前・採択後・交付決定後の扱い
この記事の要点
個人事業主が法人成りすると、補助金では別の事業者として扱われ、採択後・交付決定前に権利を会社へ移すことはできません。法人成りの時期ごとの扱い、交付決定後の承継の手続き、会社で申請するときの要件を公募要領で整理しました。
この記事の目次
個人事業主が法人成りすると、補助金では別の事業者として扱われます。そのため、採択の後から交付決定までの間に法人成りして、補助金の権利を新しい会社に移すことはできません。
法人成りを考えているなら、申請の前に済ませるか、交付決定の後に事務局へ事前に相談して承継の手続きをとるかのどちらかです。いつ法人成りするかで、使える補助金と出す書類が変わります。
個人事業主から会社にする法人成りが、補助金の申請や採択の後の手続きにどう影響するかを知りたい方に向けた記事です。
新事業進出・ものづくり補助金、省力化補助金、持続化補助金、事業承継・M&A補助金の公募要領から、法人成りの扱いだけを抜き出して整理します。
法人成りの時期で変わる補助金の扱い
法人成りの影響は、補助金のどの段階で会社にするかで分かれます。
| 法人成りの時期 | 扱い |
|---|---|
| 申請の前 | 新しい会社として申請する。設立したばかりの会社が使えるかは制度ごとの要件しだい |
| 採択の後から交付決定まで | 交付申請の権利を新しい会社に移せない |
| 交付決定の後 | 事務局に事前に相談し、承継の手続きをとる。承継の日からの証憑は新しい会社の名義 |
出典:新事業進出・ものづくり補助金 第1回 公募要領 p.53『4-1.(1)補助金交付候補者の採択後~交付申請前』台帳で見る
新事業進出・ものづくり補助金 第1回 公募要領 p.55『4-1.(3)補助事業実施期間』台帳で見る
交付決定がいつ出るか、その前後で何が変わるかは交付決定通知書とは?で取り上げています。
採択後・交付決定前の法人成りはできない
いちばん気をつけたいのは、採択の後から交付決定までの間です。新事業進出・ものづくり補助金は「交付決定前に、事業譲渡・法人成り・会社分割等で交付申請の権利を他者に承継することは認められない。交付決定前に採択された事業計画を変更することも認められない」としています1。
省力化補助金の一般型も同じで、「交付決定前に法人成り・事業譲渡・会社分割等で、交付申請の権利を別の人格に承継することはいかなる理由でも認められない」としています2。
税理士から法人成りをすすめられていても、採択の通知が来たばかりなら、交付決定が出るまでは会社にしない計画にします。交付申請で何をするかは補助金の交付申請とは?で取り上げています。
交付決定後に法人成りするときの手続き
交付決定の後であれば、承継の手続きをとって新しい会社で補助事業を続ける道があります。新事業進出・ものづくり補助金は「補助事業を承継した場合は承継先が補助事業者となり、承継日以降の証憑は承継先の名義が必要。承継先・承継元ともに1回採択・交付決定を受けたものとして扱われる」としています3。
省力化補助金のカタログ注文型の公募要領も、「交付申請から支払までに事業承継(法人成り・個人成りを含む)等で実施主体が変わる可能性がある場合は、必ず事前に事務局へ相談する。事前連絡なく変わると交付を受けられない可能性がある」としています。
- 法人成りの前に、事務局に承継の予定を伝えて相談する。
- 承継の日より前の発注・支払いは個人の名義、後は会社の名義でそろえる。
- 実績報告では、名義が変わった日をはさんで証憑を分けて出す。
名義のずれは、実績報告で差し戻される原因になります。証憑のよくある不備は実績報告で差し戻される証憑の不備で取り上げています。
法人成りした会社が申請するときの要件
会社にしてから申請する場合は、設立したばかりの会社が要件を満たすかを確かめます。制度ごとに、個人事業主のころの実績を数えるかどうかが違います。
- 持続化補助金 創業型:「個人事業の法人化をした場合、個人事業の開業日から1年を経過している場合は申請不可」としています4。
- 新事業進出・ものづくり補助金:よくある質問で、法人成りして1年未満でも、事業の承継を事務局が確認できれば個人事業主のころの実績を含めて判定するとしています。承継契約書の写しや廃業届、青色申告決算書を出します。
- 事業承継・M&A補助金:よくある質問で、個人事業主から法人成りして開業からの通算が5年以上なら要件を満たすとしています。
個人事業主のまま申請するか、会社にしてから申請するかの比べ方は個人事業主が使える補助金で取り上げています。
個人のころの補助金は会社にも引き継がれる
法人成りしても、個人事業主のころに受けた補助金の履歴は消えません。新事業進出・ものづくり補助金は「過去に交付決定を受けた個人事業主が設立した法人も、みなし同一事業者として扱う」としています5。
会社にすれば新しい事業者としてもう一度申請できる、という考えは通りません。過去に同じ補助金を受けた場合の制限は、新しい会社にもかかります。対象経費や申請できる事業者の決まりは新事業進出・ものづくり補助金の対象経費で取り上げています。
専門家から見た法人成りの時期のポイント
法人成りの時期は、税金だけで決めず、補助金の手続きの日程と重ねて決めます。採択事例を見ると、持続化補助金の採択事例364件のうち、個人事業主として申請して採択された事例も多くあり、補助金のために急いで会社にする必要はありません。
先に法人成りしたほうがよい会社
申請の前に会社にする予定が決まっていて、設立したばかりでも要件を満たせる会社です。申請してから名義を変える手間がなくなります。
補助事業が終わるまで待ったほうがよい会社
すでに採択や交付決定を受けていて、補助事業の期間中に会社にしたいと考えている事業者です。補助事業が終わり、実績報告が済んでから法人成りすると、名義の手続きが少なくなります。期間の考え方は補助事業期間とは?で取り上げています。
間違えやすい点
法人成りで間違えやすいのは、相談の時期と名義の2つです。
法人成りの後に事務局へ知らせるのでは遅い場合があります。省力化補助金のカタログ注文型は、事前に連絡がないまま実施する人が変わると交付を受けられない可能性があるとしています。
事業承継・M&A補助金では、事業承継が済んだ後に法人成りする場合、個人事業主として申請し、法人成りの後すぐに「補助金登録変更届」を出します6。
名義をそろえる支払いの決まりは補助金申請で用意する公的書類一覧もあわせて確かめてください。
よくある質問
採択の後に法人成りしたら、補助金は取り消されますか?
交付決定の前に法人成りすると、交付申請の権利を会社に移せないため、補助金を受けられなくなるおそれがあります。交付決定が出るまで待つのが安全です。
法人成りで口座が変わった場合はどうすればよいですか?
承継の手続きの中で、振込先も会社の口座に変えます。補助金は補助事業者の名義の口座に振り込まれるため、名義と口座をそろえます。
会社の代表者が個人事業主と同じなら、同じ事業者として扱われますか?
ほかの質問も見る補助金のよくある質問出典(6件)
- 新事業進出・ものづくり補助金 第1回 公募要領 p.53『4-1.(1)補助金交付候補者の採択後~交付申請前』
- 中小企業省力化投資補助事業(一般型)公募要領(第8回公募) p.38『7-1(1) 留意事項』
- 新事業進出・ものづくり補助金 第1回 公募要領 p.55『4-1.(3)補助事業実施期間』
- 持続化補助金 創業型 第4回 公募要領 第8版 p.7『5. 申請要件』
- 新事業進出・ものづくり補助金 第1回 公募要領 p.10『1-2. 補助対象事業枠(注意事項)』
- 事業承継・M&A補助金 16次 事業承継促進枠 公募要領 p.16『7. 申請単位』
参考資料
- 中小企業基盤整備機構「新事業進出・ものづくり補助金 第1回 公募要領」
- 中小企業基盤整備機構「新事業進出・ものづくり補助金 よくあるご質問」
- 中小企業基盤整備機構「中小企業省力化投資補助事業(一般型)公募要領(第8回公募)」
- 中小企業基盤整備機構「中小企業省力化投資補助事業(カタログ注文型)公募要領」
- 全国商工会議所「持続化補助金 創業型 第4回 公募要領 第8版」
- 事業承継・M&A補助金事務局「16次 事業承継促進枠 公募要領」
- 事業承継・M&A補助金事務局「16次 事業承継促進枠 よくある質問」
- 公募要領の台帳(新事業進出・ものづくり補助金)
- 公募要領の台帳(省力化補助金)
- 公募要領の台帳(持続化補助金)
- 公募要領の台帳(事業承継・M&A補助金)
確認日:2026年10月17日
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