補助金の廃業費の上乗せとは?併用できる枠と対象になる廃業の費用
この記事の要点
事業承継やM&Aに合わせて店舗や工場をたたむ費用は、事業承継・M&A補助金の各枠に廃業費として上乗せできます。上乗せできる枠、対象になる7つの経費区分と対象外の例、廃業を終える時期、廃業費だけで申請する再チャレンジ枠を整理しました。
この記事の目次
廃業費の上乗せは、事業承継・M&A補助金の事業承継促進枠・専門家活用枠・PMI推進枠で、承継やM&Aに合わせて事業所や事業をたたむ費用を、各枠の上限に足して申請できる仕組みです。
対象は廃業登記の専門家費用・在庫の処分・解体・原状回復・リースの解約などで、廃業費だけで申請する場合は廃業・再チャレンジ枠を使います。
事業を引き継ぐ、またはM&Aで譲るのに合わせて、古い工場や店舗を閉じる費用まで補助金で出せるかを知りたい方に向けた記事です。
事業承継・M&A補助金の各枠の公募要領から、廃業費の上乗せ額・対象になる費用・廃業を終える時期を整理します。
事業承継・M&A補助金とは?
事業承継・M&A補助金は、事業承継やM&Aをきっかけにした設備投資、M&Aの専門家の費用、M&A後の統合、事業をたたむ費用の一部を国が補助する制度です。枠は事業承継促進枠・専門家活用枠・PMI推進枠・廃業・再チャレンジ枠の4つです。
廃業費は、このうち廃業・再チャレンジ枠の経費ですが、ほかの3つの枠に上乗せする形でも申請できます。各枠の中身と申請の時期は事業承継・M&A補助金の公募と4つの枠で取り上げています。
廃業費を上乗せできる枠といくら足せる?
廃業費の上乗せは、枠ごとに足せる額と補助率が決まっています。小規模売り手支援類型だけは、上乗せ額が小さくなります。
| 上乗せする枠 | 廃業費の上乗せ |
|---|---|
| 事業承継促進枠 | +300万円(廃業費の補助率は事業費の補助率に従う) |
| 専門家活用枠(買い手・売り手支援類型) | +300万円(関連する経営資源の引継ぎが補助事業期間内に実現しなかった場合は廃業費は対象外) |
| 専門家活用枠(100億企業特例) | +300万円(廃業費の補助率は1/2以内) |
| 専門家活用枠(小規模売り手支援類型) | +150万円(引継ぎ未実現の場合は廃業費は対象外) |
| PMI推進枠(PMI専門家活用類型) | 単独申請は+300万円(補助率1/2以内)。同時申請は専門家活用枠(買い手)のフォームで併用申請 |
| PMI推進枠(事業統合投資類型) | +300万円(補助率は事業費の補助率に従う) |
出典:事業承継・M&A補助金 16次 事業承継促進枠 公募要領 p.20『10. 補助上限額、補助率等(注4)』
上乗せは各枠の事業費に足す扱いなので、廃業・再チャレンジ枠に別の申請を出す必要はなく、それぞれの枠の申請フォームから一緒に申請します。複数の枠を同じ回に出せるかは補助金は併用できる?で取り上げています。
対象になる廃業の費用はどの区分?
廃業費は7つの経費区分に分かれます1。
- 廃業支援費:廃業登記の司法書士費用、解散・清算等事業年度の会計処理・税務申告の専門家活用費用。上限50万円
- 在庫廃棄費:既存の事業商品在庫を専門業者に依頼して処分した際の経費
- 解体費:既存事業の廃止に伴う建物・設備等の解体費
- 原状回復費:借りていた設備等を返却する際に義務となっていた原状回復費用
- リースの解約費:リースの解約に伴う解約金・違約金
- 土壌汚染調査費:土壌の汚染状況を把握するために支払う費用
- 移転・移設費:効率化のため設備等を移転・移設する経費(併用申請のみ計上可)
移転・移設費は、廃業費をほかの枠に上乗せする時だけ使える区分です。たとえば2つの工場を1つにまとめる時、閉じる工場から残す工場へ機械を移す費用がこれに当たります。経費の区分ごとの考え方は補助金の対象経費とは?で取り上げています。
廃業の費用で対象外になるものは?
同じ処分や解体でも、対象から外れる費用があります。公募要領の主な定めは次のとおりです2。
- 在庫を売って対価(キックバックを含む)を得る場合の処分費や、海外在庫は対象外。
- 消耗品の処分費や、海外で使っていたものの解体は対象外。
- 自己所有物の修繕費、原状回復の必要が無い物件・設備、海外で使っていたもの、賃貸借やレンタル契約が無い物件・設備は対象外。
- ファイナンスリース取引の解約金・違約金や、リース資産の売買費用は対象外。
- 土壌汚染対策工事の費用は対象外。
在庫を買取業者に売って代金を受け取る場合は、処分の費用として申請できません。自社の建物を直して使い続ける費用も、原状回復費ではなく対象外です。どの補助金にも共通する対象外の費用は補助金の対象外経費7分類で取り上げています。
廃業費だけで申請するなら再チャレンジ枠
承継やM&Aを伴わず、廃業費だけで申請する場合は、廃業・再チャレンジ枠の「再チャレンジ申請」になります。補助上限は300万円(再チャレンジ申請・併用申請とも)で、補助率は「再チャレンジ申請(単独)は2/3以内、併用申請は他補助事業枠の補助率に従う」と定められています3。
再チャレンジ申請は、売り手としてM&Aに取り組んだが相手が見つからず、会社をたたんで新しい挑戦をする人のための申請です。対象になる人の条件は次のとおりです。
- 2020年以降にM&A(譲り渡し)に着手し成約に至らなかった者(公募申請期日時点で着手から3か月以上経過)
- 事業承継・引継ぎ支援センターへの相談依頼、M&A支援機関との包括契約、M&Aマッチングサイトへの登録のいずれか(申請者自身での着手は対象外)
- 廃業後に再チャレンジする事業に関する計画を作成し認定支援機関の確認を受けていること
再チャレンジ計画を確かめる認定経営革新等支援機関の役割は認定支援機関とは?で取り上げています。
廃業は補助事業期間中に終える必要がある?
上乗せで申請する場合と、再チャレンジ申請の場合で、求められることが違います。
| 申請の形 | 期間中に必要なこと |
|---|---|
| 事業承継促進枠に上乗せ | 承継の後に廃業を伴う取り組みを行うこと。廃業届の提出など、廃業そのものの完了までは求められない |
| 専門家活用枠に上乗せ | M&Aを期間中に終えること。M&Aが実現しなければ廃業費は対象外 |
| 一部の事業だけの廃業 | 期間中に行い、設備撤去の検収書などで実績報告の時に確かめられること |
| 廃業・再チャレンジ枠(再チャレンジ申請) | 会社は廃業登記、個人事業主は廃業届の提出と税務署の受理まで、期間中に終えること |
出典:事業承継・M&A補助金 16次 専門家活用枠 買い手・売り手支援類型 公募要領 p.21『10. 補助上限額、補助率等』
実績報告で出す書類や、M&Aが成約しなかった時の扱いは事業承継・M&A補助金の採択後の手続きで取り上げています。
専門家から見た廃業費の上乗せのポイント
廃業費の上乗せは、承継やM&Aの計画に「何をやめるか」まで書けると使いやすくなります。事業承継・M&A補助金は15次に551件の申請があり、採択は338件でした。事業費の計画と廃業の計画が一本につながっている申請ほど、審査で必要性を説明しやすくなります。
上乗せが向いている会社
後継者が引き継ぐのを機に、赤字の店舗や古い工場を閉じて、残す事業に設備投資を集める会社です。解体や原状回復の費用は数百万円になることも多く、事業費と一緒に申請すると自己負担を抑えられます。
上乗せするか迷う会社
M&Aの相手がまだ決まっていない売り手の会社です。専門家活用枠では、期間中にM&Aが実現しないと廃業費も対象外になります。相手探しに時間がかかりそうなら、M&Aの見通しが立ってから上乗せを考えるか、再チャレンジ申請の条件に当たるかを先に確かめます。小さな会社の売り手向けの類型は事業承継・M&A補助金の専門家活用枠で取り上げています。
間違えやすい点
廃業費で間違えやすいのは、契約の時期と見積の取り方です。
廃業費の契約・発注は、交付決定の後の補助事業期間に行います。解体業者や司法書士と先に契約を結んだ費用は、支払いが期間中でも対象になりません。
廃業費は原則としてすべての区分で、1件50万円以上(税抜)の支払いに相見積が要ります。解体と原状回復を同じ業者に頼む場合も、業者ごとの見積をそろえておきます。
相見積が要らない例外の条件は補助金の相見積もりはいくらから?で取り上げています。
よくある質問
廃業費の補助率はどうなりますか?
上乗せの場合、廃業費の補助率は上乗せする枠の事業費の補助率に合わせます。100億企業特例と、PMI専門家活用類型の単独申請は、廃業費の補助率が別に決まっているため、上乗せの表で確かめます。
事業承継促進枠で廃業費だけを申請できますか?
できません。事業承継促進枠・専門家活用枠・PMI推進枠では、廃業費は事業費への上乗せとしてだけ申請できます。廃業費だけなら廃業・再チャレンジ枠を使います。
ファイナンスリースの解約金も対象ですか?
対象外です。リースの解約費として認められるのは、ファイナンスリースではないリース契約の解約金・違約金です。
土壌汚染が見つかった場合の対策工事も出ますか?
ほかの質問も見る補助金のよくある質問出典(3件)
- 事業承継・M&A補助金 16次 廃業・再チャレンジ枠 公募要領 p.15『9. 補助対象経費』
- 事業承継・M&A補助金 16次 事業承継促進枠 公募要領 p.64『21.3. その他』
- 事業承継・M&A補助金 16次 廃業・再チャレンジ枠 公募要領 p.16『10. 補助上限額、補助率等』
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