事業承継・M&A補助金は業務システム・ITに使える?採択事例と注意点
この記事の要点
事業承継・M&A補助金は業務システム・ITに使えるかを、採択事例11件をもとに整理しました。製造業3件が最多で、システム開発費は委託費の対象外のため、経費区分の選び方や対象の線、承継後の注意点もまとめています。
この記事の目次
事業承継・M&A補助金は、承継後の業務システム・ITの導入を含む計画で採択された例があり、採択事例のうち2026年10月時点で11件あります。
業種は製造業が3件で最も多く、小売業・卸売業と飲食店・宿泊業が各2件で続きます。ただしソフトウェア・システム開発の費用は委託費の対象外のため、どの経費区分で申請するかを先に確かめる必要があります。
事業を継いだ後に会社の業務システムを入れ替えたいが、システム開発の費用まで補助金で出るのか分からない。採択された使い道と経費の線を知りたい方に向けた記事です。
事業承継・M&A補助金は、事業承継やM&Aに伴う設備やシステムの導入などを補助する国の制度です。公募要領の内容は公募要領の台帳で確かめられます。
製造業が11件中3件で最多
業務システム・ITの採択事例11件を業種で分けると、製造業が3件で最も多くなります(採択事例のうち、2026年10月時点)。
| 業種 | 件数 | 割合 |
|---|---|---|
| 製造業 | 3件 | 27% |
| 小売業・卸売業 | 2件 | 18% |
| 飲食店・宿泊業 | 2件 | 18% |
| 士業・専門サービス業 | 1件 | 9% |
| 医療・福祉 | 1件 | 9% |
| サービス業 | 1件 | 9% |
| 建設業 | 1件 | 9% |
割合は業務システム・ITの採択事例11件に対するもので、1つの事例は1つの業種として数えています。製造業では、承継を機に内製化や業務の一元化を進める例が見られます。
廃業する同業者の工場を引き継いだ例では、内製化率が10%から70%に上がり、納期が1日縮み、コストも約10%下がりました。
13D設計と人事の見直し
設計の納期遅れを3次元CADと人事改革で解消
株式会社吉野機械製作所✓ 経産省などの認定・選定
成果収支とんとんだった業績が、1年の決算で大きな利益を出せる水準になり、若手の定着も進みました。
2創業支援型|CAD
廃業する同業者の工場を引き継ぎ、内製化率を10%から70%に
Rainbow Metal株式会社
成果内製化率が10%から70%に上がり、納期が1日縮み、コストも約10%下がりました。
3経営者交代型|買取・販売・在庫の一元化
ばらばらの表計算データを一つにまとめる在庫管理システムを導入
オカセイ株式会社
成果ばらばらだったデータを一つにまとめ、業務時間を大きく減らせる見込みになりました。
小売・卸売は倉庫と店舗を一本化
小売業・卸売業の2件は、引き継いだ倉庫や薬局の業務を、共通の端末やソフトにまとめた例です。
食品卸の例では、伝票入力から出荷指示までが大幅に速くなり、出庫作業の時間も短くなりました。薬局の例でも、店の間の人の行き来と調剤の作業が効率よくなりはじめています。
1創業支援型|倉庫とハンディ端末
倉庫の在庫ずれと出庫作業を端末で効率化し、伝票入力から出荷指示まで大幅に短縮
シキシマ醤油株式会社
成果伝票入力から出荷指示までが大幅に速くなり、出庫作業の時間も短くなりました。
2M&A型|全店共通の業務ソフト
後継者のいない薬局を引き継ぎ、共通の業務ソフトで店の間の行き来と調剤を効率化
株式会社中村薬局(売上高:3億円~5億円)
成果店の間の人の行き来と調剤の作業が効率よくなりはじめました。
飲食・宿泊は予約と顧客を管理
飲食店・宿泊業の2件は、予約や顧客の管理をシステムで行い、客との接点を広げた例です。
宿がリフト券を売るアプリをつくった例では、アプリ経由の予約も入るようになり、予約は前年比500%以上に伸びました。寿司店の例では、記念日が近い客への案内で少人数の宴会が増えています。
1経営者交代型|リフト券を売るアプリ
コロナ禍の打撃に対し、宿がリフト券を売るアプリで予約が前年比500%以上に
成果アプリ経由の予約も入るようになり、予約は前年比500%以上に伸びました。
医療・サービスは客との関係づくり
医療・福祉とサービス業の各1件は、会員証やオンラインの仕組みで、客との関係を深めた例です。
ゴルフ練習場の例では、リピート率が20%から45%に上がり、収益と労働生産性がそれぞれ5%ほど良くなりました。調剤薬局の例では、オンラインでの服薬指導と服薬中の確認が増え、患者のリピートにつながっています。
1M&A型|会員証で客との関係づくり
老朽化したゴルフ練習場を会員証で顧客管理し、リピート率を45%に
株式会社ウィルトラスト✓ 経産省などの認定・選定
成果リピート率が20%から45%に上がり、収益と労働生産性がそれぞれ5%ほど良くなりました。
2創業支援型|オンライン服薬指導
地域に貢献する薬局を、引き継ぎ後のオンライン服薬指導で患者のリピートに
株式会社LEAPH✓ 経産省などの認定・選定
成果オンラインでの服薬指導と服薬中の確認が増え、患者のリピートにつながっています。
建設・専門サービスは自社ITを事業に
建設業と士業・専門サービス業の各1件は、社内で使うITや引き継いだ開発力を、新しい事業や取引先の開拓につなげた例です。
建設業の例では、従業員の意欲が上がり、中途採用にもつながりました。ソフト開発会社を引き継いだ例では、新しい取引先の口座を1社開き、留学生の新卒採用もできました。
1経営者交代型|建設業向けアプリの外販
社内DXの業務アプリ60個超を建設業向けに外販し、新事業を始動
株式会社河北✓ 経産省などの認定・選定
成果従業員の意欲が上がり、中途採用にもつながりました。
2M&A型|ソフト開発会社の引き継ぎ
後継者のいない取引先を雇用ごと引き継ぎ、新規取引先を1社開拓
成果新しい取引先の口座を1社開き、留学生の新卒採用もできました。
対象は資本金と従業員数
御社が対象かは、資本金や従業員数、法人の形で決まります。確かめる項目は次の表のとおりです。
| 確かめること | 公募要領の決まり |
|---|---|
| 中小企業者等の基準 | 製造業その他:資本金3億円以下又は従業員300人以下/卸売業:1億円以下又は100人以下/小売業:5千万円以下又は50人以下/サービス業:5千万円以下又は100人以下 |
| 小規模事業者等の基準 | 製造業その他:従業員20人以下/商業・サービス業:5人以下/サービス業のうち宿泊業・娯楽業:20人以下 |
| 対象外になる課税所得 | 直近過去3年分の課税所得の年平均額が15億円を超える中小企業者等は対象外 |
| 対象外の法人形態 | 社会福祉法人、医療法人、一般社団・財団法人、公益社団・財団法人、学校法人、農事組合法人、組合、法人格のない任意団体は対象外 |
| グループ会社の扱い | 親会社が議決権50%超を有する子会社は同一法人とみなし、いずれか1社の申請しか認められない |
細かな条件は事業承継・M&A補助金の公募要領の台帳で確かめられます。
承継後に入れたい業務システムの計画が、御社の会社の形で対象になるかは、AIで3分ほどで確かめられます。
補助上限は賃上げ要件で変わる
補助上限は800万円(賃上げ要件を満たした場合1,000万円)です。補助額の決まりは次のとおりです。
- 補助率:小規模事業者等は2/3以内、それ以外は1/2以内。800万円超~1,000万円部分は1/2以内
- 800万円を超える部分:補助額の内800万円を超え1,000万円以下の部分の補助率は1/2以内
- 補助下限:100万円(補助対象経費×補助率が100万円を下回る申請は受け付けない)
- 廃業費を併用するとき:+300万円(廃業費の補助率は事業費の補助率に従う)
専門家活用枠の補助上限は別の決まりのため、枠ごとの違いは公募要領の台帳で確かめられます。
出典:事業承継・M&A補助金 16次 事業承継促進枠 公募要領 p.19『10. 補助上限額、補助率等』台帳で見る
システム開発費は委託費の対象外
ソフトウェア・システム開発の費用は、委託費の区分では対象外です1。業務システムの費用は委託費には入れられず、設備費や外注費の対象になるかを、表の各区分の決まりで確かめる必要があります。
| 経費の区分 | 公募要領の決まり |
|---|---|
| 設備費 | 国内の店舗・事務所等の工事、国内で使用する機械器具等調達費用(品目1件20万円以上(税抜き)) |
| 外注費 | 業務の一部を第三者に外注(請負)するために支払われる経費 |
| 委託費 | 業務の一部を第三者に委託(委任)する経費。事業費合計額(税抜)の2分の1が上限 |
| 委託費の対象外 | Webサイトの新規制作・更新、ソフトウェア・システム開発、広告に係る費用は委託費の対象外 |
業務システムの採択事例は業務システム・ITの採択事例で見られます。費用をどの区分に入れるかは、表の行を先に確かめてください。
採択率は公募回で変わる
事業承継・M&A補助金の採択率は、最新回(15次)で61.3%です。回ごとの推移は、次のグラフのとおりです。
事業承継・M&A補助金の採択データ
事業承継・M&A補助金(10次までは事業承継・引継ぎ補助金)の15次の採択率は61.3%でした。採択事例では製造業が45%と最も多く、経費は設備費が93%の事例で使われています。
採択率の推移
採択の多い業種
よく使われた経費
採択事例 141件採択事例を見る ›
出典(1件)
採択されなかったときに理由を聞けるかは、補助金の不採択の理由は教えてもらえる?で取り上げています。
専門家から見たポイント
事業承継・M&A補助金の採択事例は、採択事例のうち141件(2026年10月時点)あります。そのうち業務システム・ITに使われたのは11件で、承継を機に業務の仕組みを変える計画が中心です。実例は事業承継・M&A補助金の採択事例で確かめられます。
業務の一元化から始める会社
買取・販売・在庫など、ばらばらのデータを一つにまとめる計画は、業務時間の短縮という成果を示しやすいです。
承継と同時に設備を入れる会社
設備費と業務システムを同じ計画に入れる場合は、システム開発費が委託費に入らない点を踏まえ、どの経費区分に入るかを先に整理すると進めやすくなります。
新しい事業を始める会社
既存のアプリを外販するなど、システムを新しい事業に生かす例も見られます。
承継の計画に業務システムを組み込めるか、費用をどの区分に入れるかは、専門家に無料で相談して確かめられます。
間違えやすい点
間違えやすいのは、譲り渡す側への支払いと、システム開発費の区分、中古品や不動産の扱いです。
- 譲り渡す側への支払いは原則対象外。被承継者に支払う譲受費用(土地、資産購入費用等)など被承継者に支払う費用は原則対象外
- システム開発を委託費に入れない。委託費は対象外の費用が決まっているため、システム開発費は経費区分の表で先に確かめます。
- 中古品や不動産は設備費の対象外。中古品購入費、不動産の購入費、道路運送車両法の自動車の購入費(リース・レンタルは対象)
- 共通の対象外経費がある。求人広告、通信運搬費、消耗品、研修費、税理士等の申告費用、公租公課、振込手数料、借入金利息等
- 事例は過去の公募回のもの。紹介した事例で公募回が分かるものは、令和2年度の第3次補正予算から令和4年度の公募回までのもので、補助上限や経費の決まりは今の公募要領で確かめます。
採択後の手続きは事業承継・M&A補助金の採択後の手続きで取り上げています。
よくある質問
業務システムの開発費は補助の対象になりますか?
ソフトウェア・システム開発の費用は、委託費の区分では対象外です。どの区分で申請するかは、公募要領の台帳の経費の行で確かめられます。
M&Aの専門家費用は、この補助金で使えますか?
専門家費用には、専門家活用枠という別の枠の決まりがあります。詳しくは事業承継・M&A補助金の専門家活用枠の記事で取り上げています。
紹介された事例の使い道は、今も同じように使えますか?
公募回が分かる事例は、令和2年度の第3次補正予算から令和4年度の公募回までのものです。補助上限や対象経費は公募回で変わるため、今の決まりは公募要領の台帳で確かめます。
採択後に何を出せばよいですか?
採択後の手続きと報告の流れは、事業承継・M&A補助金の採択後の手続きで取り上げています。
出典(1件)
- 事業承継・M&A補助金 16次 事業承継促進枠 公募要領 p.63『(別紙)補助対象経費(3)(6)委託費【対象とならない経費の一部】』
いま申請できる回
事業承継・M&A補助金
- 公募回
- 16次
- 締切
- 2026年11月6日(金)17:00
公募要領の台帳より(2026年10月30日確認)
まだ相談は早いと感じる方は、まず資料で全体をつかんでください。
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