事業承継・M&A補助金は販路拡大・集客に使える?採択事例の使い方

この記事の要点

事業承継・M&A補助金は販路拡大・集客に使え、広告やWebサイトの制作費は委託費の対象外です。採択事例23件をもとに、業種別の使い方と実例、製造業が9件で最多の傾向、見落としやすい経費の決まりを整理しました。

この記事の目次
  1. 製造業が23件中9件で最多
  2. 小売・卸は通販と共同開発
  3. 飲食・宿泊は客層を広げる
  4. 農業・林業は販売先を増やす
  5. エステは客単価が約3倍
  6. 設備と拠点で対応と受注を整える
  7. 基準の数字で対象が決まる
  8. 旅費と外注費が販路の経費
  9. 採択率は公募回で変わる
  10. 専門家から見たポイント
  11. 間違えやすい点
  12. よくある質問
結論

事業承継・M&A補助金は販路拡大・集客に使えます。採択事例では、2026年10月時点で販路拡大・集客に使った例が23件あり、製造業が9件(39%)で最も多くなっています。

ただし、広告やWebサイトの制作費は委託費の対象外です。引き継いだ工房や店、農園で、新しい取引先や客層を開いた例が中心です。

引き継いだ工房や店の売り先を広げたいが、広告やサイト制作の費用まで補助金で出せるのか分からない。販路拡大・集客に使った採択事例を知りたい方に向けた記事です。

事業承継・M&A補助金は、事業を引き継ぐ際にかかる費用を補助する国の制度です。公募要領の内容は公募要領の台帳で確かめられます。

製造業が23件中9件で最多

採択事例のうち、販路拡大・集客に使った例は2026年10月時点で23件です。業種別の内訳は次の表のとおりです。

業種 件数 割合
製造業 9件 39%
小売業・卸売業 2件 9%
飲食店・宿泊業 2件 9%
美容・生活サービス業 2件 9%
農業・林業 2件 9%
士業・専門サービス業 1件 4%
教室・教育業 1件 4%
その他 1件 4%

割合は販路拡大・集客の採択事例23件に対するものです。表の件数は合計20件で、23件に届かない分は表にない業種の事例です。そのため、割合の合計も100%にはなりません。

製造業では、工房や工場を引き継ぎ、新しい分野や取引先を開く例が見られます。桐箱の工房を買い取った例は、見本市への出展で新しい取引先を3社得ています。事例は販路拡大・集客の採択事例でも見られます。

小売・卸は通販と共同開発

採択事例では、2026年10月時点で小売業・卸売業が2件あり、どちらも自社ブランドを使って新しい販路を広げた例です。

衣料品卸を継いだ例では、取引先の小売店との共同開発が増えて大手量販店への販路が広がり、ネット通販の売上も伸びました。ジュエリーブランドの例では、SNSのフォロワーとオンラインショップへの訪問が増えています。同じ業種の事例は事業承継・M&A補助金の採択事例にまとめています。

飲食・宿泊は客層を広げる

採択事例のうち2026年10月時点で飲食店・宿泊業は2件あり、宿の周りに体験の場を加えた例と、店を譲り受けて客層を広げた例です。

宿の例では、周りが歩きやすくなり、雲海やホタルを楽しむ客が増えました。ラオス料理店の例では、新しい客層を呼べる店になり、SNSからの来店やネット販売につなげる体制ができています。

2M&A型|ラオス料理店の客層拡大

店の譲り受けで専門家を使う場合の経費は、事業承継・M&A補助金の専門家活用枠|対象経費と契約日の注意点で取り上げています。

農業・林業は販売先を増やす

採択事例では、2026年10月時点で農業・林業が2件です。農家向けの苗づくりの会社が一般の人にも販売を広げた例と、いちご農園を譲り受けて生産拠点を増やした例があります。

いちご農園の例では、2023年12月〜2024年1月の売上が前年より26%増えました。苗の例では、プロ向けと一般向けの両方の販売で相乗効果が見込めるようになっています。

公募回ごとの枠の違いは事業承継・M&A補助金16次公募|4つの枠の補助額と締切11/6で取り上げています。

エステは客単価が約3倍

採択事例では、2026年10月時点で美容・生活サービス業が2件あり、そのうち赤字のエステサロンを譲り受けた例は、新しい施術メニューで客単価を上げています。

この例では、客単価が3,000円前後から9,000円前後に上がり、月の売上は100万円を超えました。引き継いだ店のメニューを見直す使い方の参考になります。

1M&A型|新しい施術メニュー

同じ使い方の事例は販路拡大・集客の採択事例で見られます。

設備と拠点で対応と受注を整える

表にない業種の事例として、医療・福祉と建設業の例を1件ずつ紹介します。どちらも設備や拠点を整えて、対応時間や受注の面で成果を出しています。

電気治療器を入れた例では、職員の顧客対応の時間が30%減りました。機材レンタル会社を引き継いだ例では、元請企業から機材をまとめて発注できる点を評価されています。

基準の数字で対象が決まる

事業承継・M&A補助金は、資本金や従業員数などの基準で中小企業者等かどうかが決まります。基準の数字は、次の表で確かめられます。詳しい定義は公募要領の台帳にもまとめています。

確かめること 公募要領の決まり
中小企業者等の基準 製造業その他:資本金3億円以下又は従業員300人以下/卸売業:1億円以下又は100人以下/小売業:5千万円以下又は50人以下/サービス業:5千万円以下又は100人以下
小規模事業者等の基準 製造業その他:従業員20人以下/商業・サービス業:5人以下/サービス業のうち宿泊業・娯楽業:20人以下
対象外になる所得 直近過去3年分の課税所得の年平均額が15億円を超える中小企業者等は対象外

出典:事業承継・M&A補助金 16次 事業承継促進枠 公募要領 p.10『5. 補助対象者【対象となる中小企業者等】』台帳で見る

引き継いだ店や工房の販路づくりの計画が、御社の規模で対象になるかは、AIで確かめられます。

AIで対象か確認する

旅費と外注費が販路の経費

販路拡大・集客に関わる経費には、旅費や外注費が入ります。旅費の対象は「販路開拓等を目的とした国内外出張に係る交通費、宿泊費」です。外注費の対象は「業務の一部を第三者に外注(請負)するために支払われる経費」です。

補助上限は800万円(賃上げ要件を満たした場合1,000万円)です。補助の下限は100万円(補助対象経費×補助率が100万円を下回る申請は受け付けない)です。採択率の推移と審査の傾向は事業承継・M&A補助金の採択率の推移と審査の傾向で取り上げています。

出典:事業承継・M&A補助金 16次 事業承継促進枠 公募要領 p.17『9. 補助対象経費【事業費・廃業費の経費区分と概要】』台帳で見る

採択率は公募回で変わる

事業承継補助金の採択率は、最新回(15次)で61.3%です。回ごとの推移は、次のグラフのとおりです。

事業承継・M&A補助金の採択データ

事業承継・M&A補助金(10次までは事業承継・引継ぎ補助金)の15次の採択率は61.3%でした。採択事例では製造業が45%と最も多く、経費は設備費が93%の事例で使われています。

採択率の推移

15次61.3%
直近5回の平均61.0%

採択事例 141件採択事例を見る ›

出典(1件)
  1. 事業承継・M&A補助金 事務局「採択結果」・中小企業庁「採択結果」(11次〜15次)
採択率は採択数÷応募数で計算しています。業種・経費は、国・省庁などが公開している採択事例141件を数えた割合です(1つの事例で複数使うため、合計は100%を超えることがあります)。

業種別の採択率は公表されていないため、この記事では業種ごとの率は示していません。採択されなかったときに理由を聞けるかは、補助金の不採択の理由は教えてもらえる?で取り上げています。

専門家から見たポイント

公式の採択データで直近の回を見ると、応募は551件、採択は338件でした。販路拡大・集客の例は、事業を引き継いだ後に新しい取引先や客を増やす計画として読むと分かりやすいです。

採択された計画の傾向は事業承継・M&A補助金の採択事例で確かめられます。

工房や工場を引き継ぐ会社

後継者のいない工房や工場を譲り受けた例では、設備の入れ替えと新しい分野への進出が一緒に書かれています。引き継ぎの段階で、どの製品をどの取引先へ売るかを先に決めておくと、計画の筋道が立ちます。

客層や販路を変えたい会社

店や農園を引き継いだあとに、ネット販売や体験の場づくりで客層を広げた例があります。今の客だけでなく、どの層を増やすかを決めてから経費を選ぶと、計画の全体像をつかみやすくなります。

出張や外注で販路を開く会社

販路開拓の出張や、業務を外部に任せる計画は、旅費や外注費の区分で書きます。広告やWebサイトの制作費は委託費の対象外のため、御社の計画がどの区分に当てはまるかは、専門家に無料で相談して確かめられます。

間違えやすい点

間違えやすいのは、広告やWebの費用、中古品や不動産の扱い、被承継者への支払い、事例の公募回です。

  1. 広告やWebは委託費で対象外。Webサイトの新規制作・更新、ソフトウェア・システム開発、広告に係る費用は委託費の対象外1
  2. 中古品と不動産は対象外。中古品購入費、不動産の購入費、道路運送車両法の自動車の購入費(リース・レンタルは対象)
  3. 被承継者への支払いは対象外。被承継者に支払う譲受費用(土地、資産購入費用等)など被承継者に支払う費用は原則対象外
  4. 求人広告や消耗品は対象外。求人広告、通信運搬費、消耗品、研修費、税理士等の申告費用、公租公課、振込手数料、借入金利息等
  5. 事例は過去の公募回のもの。紹介した事例は令和3年度から令和6年にかけての公募回や2023年の第5回の採択で、補助上限や経費の決まりは今の公募要領で確かめます。

採択後の手続きは事業承継・M&A補助金の採択後の手続き|不成約・賃上げ未達と報告義務で取り上げています。

よくある質問

広告やWebサイトの制作費は補助の対象になりますか?

Webサイトの新規制作・更新、ソフトウェア・システム開発、広告に係る費用は、委託費としては対象外です。対象外の経費の一覧は、公募要領の台帳で確かめられます。

旅費は国内の出張だけが対象ですか?

旅費は、販路開拓などを目的にした国内外への出張が対象です。国内の出張だけに限られるわけではありません。

事業承継の譲り受けの費用は対象になりますか?

被承継者に支払う譲受費用は、原則として対象外です。支払い先と内容は、公募要領の台帳で確かめます。

紹介された事例の使い方は、今も同じように使えますか?

紹介した事例は過去の公募回の採択です。補助上限や対象経費は公募回で変わるため、今の決まりは公募要領の台帳で確かめます。

採択後に何をすればよいですか?

採択後の手続きは事業承継・M&A補助金の採択後の手続き|不成約・賃上げ未達と報告義務で取り上げています。報告の流れや注意点も、そこで確かめられます。

ほかの「よくある質問」を見る

ほかの質問も見る事業承継・M&A補助金のよくある質問
出典(1件)
  1. 事業承継・M&A補助金 16次 事業承継促進枠 公募要領 p.63『(別紙)補助対象経費(6)委託費【対象とならない経費の一部】』

いま申請できる回

事業承継・M&A補助金

公募回
16次
締切
2026年11月6日(金)17:00

公募要領の台帳より(2026年10月30日確認)

この補助金の採択事例

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同じ取り組みで、実際に採択された会社です。

VOICE

この補助金を使った人の声

出典:国・省庁などの公開情報をもとに当社が加工

中小機構「補助金活用ナビ」の事例記事にある事業者の発言を引用しています。

まだ相談は早いと感じる方は、まず資料で全体をつかんでください。

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